2009年1月21日 (水)

IFSA注目の<ベタ>記事=<コイズミの失った5年を引きずる今>ほか(09.01.11現在)

★★麻生首相、定額給付金受け取る?「そのときに考える」
asahi.com・2009.01.06(A)
★★首相「さもしい」発言で金縛り 閣僚対応も”不一致”
TOKYO Web(共同)・09.01.09(B)

◇麻生首相の<定額給付金性格付け>態度一変はもはや全国に知れわたっているゆえ、いまさらIFSA通信で取り上げる気などない。◇にもかかわらず掲出の目的はただひとつ、アーカイブズとしての<記録記憶喚起>機能。

◇大切ではあってもあまりにばかばかしいと、すぐ忘れてしまうからだ。◇イラク戦争に関する一連のコイズミ発言を想起すればそれは明らかだろう。

◇「定額給付金の受け取りを辞退する考えを示していた麻生首相が6日夜、一転して『私自身がどうするかはまだ判断をしている段階ではありませんで、(支給される)そのときになって考えたい』と明言を避けた」。

◇そう、給付金を<生活支援>から<景気刺激>へと無原則的に変更するに及び、彼自身困っちゃっているのだ。

◇それまでの麻生は周知のように「(前略)『多額の収入をもらっている方が”1万2千円ちょうだい”というのはさもしい。そこは人間の矜持(きょうじ)の問題』と語っていた」。◇だから当然生まれる質問、<何で激変したの?>に彼はこうこたえる。

◇「(前略)『生活給付金というイメージで最初スタートしたが、時代が大きく変わった。(今は)消費刺激に意義がある』(後略)」(以上(A))。◇まさに<な~んちゃって>で、<時代が大きく変わった>だって?いったい、どんな時代がどんな時代へ?◇そもそも定額給付金くらいに<時代>を持ち出すこと自体しゃらくさい。

◇たとえ百歩譲ったにしても、大きく変わったとされる<時代>に12000円がどう寄与するというのだろう。◇いくらスベリまくりの麻生だって、これが詭弁(きべん)だくらいは<川口技研=スベらぬ先の、スベラーズ>の助けを得ずとも分かっているはず。◇すべては背景に、最大パトロンの公明党さんが控えているからにすぎない。

◇最近では逆効果と気づき、意図的にはずしているのかもしれないが、私の住む横浜市金沢区の路地裏には公明党のこんなポスターがまだまだ張られっ放しになっている。◇与党を誇らしげに、「それ、総理にかけあってみます。」(公明党)と。

◇だからこそ「麻生太郎首相が高額所得者の定額給付金受け取りを『さもしい』とした自らの発言で、身動きの取れない”金縛り状態”に追い込まれている」「わずか1カ月足らずの転換に、首相の『ぶれ』は覆い隠せない」(以下(B))となる。

◇「自民党の細田博之幹事長が辞退を表明した甘利明行政改革担当相を念頭に『格好を付ける人もいる』と批判するなど、給付金をめぐる政府与党の迷走には拍車が掛かるばかりだ」と記事は続ける。

◇この細田、抜擢(ばってき)の官房長官時代はひょうひょうとしていてなかなかと思っていたら、<幹事長就任代表質問だったか、異例の対民主党エキセントリック攻撃麻生に代わっての、ブラフ解散風・吹かせまくり脱藩すれば刺客をたててやる>等で正体をあらわし、おでこに青筋を立てるがお似合いの御仁を印象づけてしまった。

◇そんな横道はともかく、肝心かなめ<公明あっての自民党>。麻生選任当日(08.09.22)に評論家の塩田潮毎日新聞朝刊にこう書いた(★★<現在>を読む 自民党総裁選 目立った危機意識の欠如)

◇「振り返ると、自民党は二〇〇〇年の総選挙で比例区の得票率が三〇%に落ちた」。◇「小泉純一郎首相時代の〇一年の参院選と〇五年の総選挙は大量の上積みがあったが、〇四の参院選は三〇%、〇七年の参院選は二八%まで下落した」。

◇「裸の自民党は、小泉ブームのような特効薬がなければ、とうの昔から『三割政党』に転落していたのである」。◇だからこそ、あの公明党嫌いでならしたコイズミですら、首相になるや公明党さまさまと持ち上げるしかなかった。◇麻生が見苦しいさまを見せる<定額給付金>とは、この流れのなかにこそある。

★★景気:景気の山、07年10月 日米同時期に後退
毎日jp.・09.01.08

◇「内閣府は7日、02年2月から続いた戦後最長の景気拡大が07年10月に頂点(山)に達して終わり、同11月から景気後退に入ったと認定する方針を固めた」。◇「高度成長期の『いざなぎ景気』(65年11月~70年7月、4年9カ月)を上回った今回の景気拡大は、5年9カ月(69カ月)で終止符を打ったことになる」。

「07年10月に頂点」だって?何を今ごろのんきなことを。◇その8カ月後の08年6月にはまだこんなだらけたことを言っていたではないか。◇「政府は16日(08年6月-筆者註)発表した6月の月例経済報告で、景気の基調判断を3カ月ぶりに下方修正し、『景気回復は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きが見られる』とした」。

◇「大田経済財政相は同日の記者会見で『景気後退局面に入ったとは見ていないが、景気の下ぶれリスクは先月より高まっている』と警戒感を示した」(★★景気「一部弱い動き」、3カ月ぶり下方修正 月例報告・asahi.com・08.06.16)

◇しかも翌月の08年7月になってさえ「景気『足踏み』」を据え置いた揚げ句、「先行きに関してもアメリカ経済が持ち直すにつれ、輸出が増加基調となり、景気は緩やかに回復していく』と前月と同じ表現とした」のすっとぼけよう。◇その時点でも、とっくのと~にサブプライムなど顕在化していたというのにサ。

◇この張本人の大田弘子が、政策研究大学院大学教授へ復職している。すっごい国だ。◇あってはならない<派遣切り>は、こうした人間にこそ適用すべきだろうに。

◇政府が自慢してきたそのコイズミ・竹中景気も、「戦後最長の景気拡大は、実質経済成長率が年平均2%に満たず、10%を超えた『いざなぎ景気』の5分の1、5%程度だった『バブル景気』の半分以下」(上記・毎日jp.・09.01.08)

◇こんなものじゃ好景気の実感など生まれようもないし、それが米国のバブルに起因するとあってはなおさらのこと生活埒外(らちがい)。◇コイズミに始まる「失った5年」は、政治においても経済においても等しくこんな具合なのだった。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★ヒアルロン酸:しわ取り、自己注射「ダメ」
ネット頼り個人で輸入、後遺症に悩む例も
毎日jp.・09.01.11

◇「インターネットで購入したヒアルロン酸を、自分で顔などに注射する行為が広がっている」。◇「ヒアルロン酸は関節や真皮に含まれ、化粧品の保湿成分として使われる。美容クリニックなどでは、しわの下に注射して目立たなくさせる美容法が提供されている。効果を持続させるには約半年ごとの注射が必要だ」。

◇この美容法にすがること自体、愚の骨頂とIFSAは思うが、ぶっとびはそんなところにとどまらない。

◇美容クリニックでの注射は「口の両脇のしわに注入して約8万円」当然ながら高い!「(前略)同じメーカーのヒアルロン酸を、香港の輸入代行業者を通して1個約2万円で2個購入。備え付けの注射器を使い、掲示板の体験談などを基に(後略)」自分で注射。

◇これで何にも起きないほうが不思議だろう。◇「2、3カ月後、注射した部分の一部が膨らみ、しこりになった。クリニックでヒアルロン酸を分解する注射を打ったがしこりはなくならず、皮下にひきつれが起きる『異物肉芽腫症』と診断された」。

◇ヒアルロン酸は香港のどんなメーカーで、どんな環境下にて製造されているのか。また注射器はどぶ川に接するベニヤのあばら屋でカチャコンと作られているのではないか。そして自己注射は?

◇こんなイロハの疑問さえ当人に浮かばないとすれば、これはやはり日本人の民度の問題とはっきり言うしかなかろう。◇IFSAが高みに立って述べようというわけではなく、素朴な生活目線からしてあまりにレベルが低すぎる。

◇マスコミは被害者をかばうばかりでなく、はっきりした批判の姿勢も示さなくてはならない。

◇「10日、東京都内で開かれた日本美容外科学会で、日本医科大の百束比古(ひゃくそくひこ)教授(形成外科)らが自己注射による後遺症例を報告し、『素人は絶対にやめるべきだ』と呼び掛けた」。◇本来なら、専門家が呼びかけなくても分かるべきことでしょうに。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2009年1月10日 (土)

IFSA注目の地味な記事=<日本はイラク戦争支持への総括ナシ>ほか(08.12.28現在)

★★自衛隊イラク派遣:
「強者に追従」だけなのか=編集局次長・小松浩
毎日jp.・08.12.18


◇コイズミ政権における<対米国&対イラク戦争>のでたらめぶり。◇そしてそれを熱烈支持し、揚げ句の果ては忘却のかなたに!で平然の国民。そのことをIFSAはしつこく語ってきた。◇そんななか、毎日新聞・元政治部長の小松浩が2008年年末にきちっとした総括を行っているのでここに引用してみよう。

◇「日米同盟の証しと米国に感謝され、一人の戦死者も出さず、無事任務を完了した自衛隊イラク派遣。隊員たちの規律と献身があったればこそだが、これを日本の『成功体験』と呼ぶことには、あえて異を唱えたい」。

◇「『強い者(米国)につくのが国益』という損得勘定のほかに、私たちはイラク戦争とのかかわりを語る言葉を持たぬまま、今日まできてしまったからだ」

◇「乱暴な理屈がまかり通った5年間だった。航空自衛隊の空輸活動を『憲法違反』と断じた名古屋高裁判決を、当時の田母神俊雄・航空幕僚長は『そんなの関係ねえ』と笑い飛ばした」。◇「『何を言っても許される』。そんな空気がまん延し、社会のタガが外れた」。

◇「社会のタガがはずれた」?そりゃそうだろう、あのコイズミが以下のように敢然?と言い放つのを、多くの国民は当意即妙、素晴らしき切り返しであるかのようにうっとりと眺め、苦笑しつつも拍手を送っていたのだから。◇コイズミはさも得意げにこうアジッた。

◇「どこが非戦闘地域かって?そんなの私に聞かれたって分かるわけないじゃないですか。自衛隊の行っているところが非戦闘地域なんですよ」(大意)。◇自衛隊なる国軍のトップが平気でおちゃらけるというんだから、現地へ派遣された隊員もたまったものではない。

◇しかも小松の言うように、「サマワやバグダッドで汗を流す自衛隊員たちを、どれだけの人が心にとめていただろうか」状態なのだから。◇国際貢献・米国貢献という<大義名分のスイッチ>さえオンにしてしまえばめでたしめでたしで、政府も国民もあとは野となれの世界。

◇<貢献>の中身や効果など、まさに「そんなの関係ねえ」でやってきた。ほしいのはカタチだけだと。

◇「幾万もの死者を出したイラク軍事介入を正当化できるものは果たしてあるか、という真摯(しんし)な議論も、大量破壊兵器情報の誤りに対する悔恨や反省も、日本の政治指導者の口から語られることはなかった」。◇「『強い者』への追従を決めた後、多くの日本人にとって、イラクは『人ごと』になってしまった。イラク健忘症である」。

◇何度も言うように、威勢だけいはいコイズミは「大量破壊兵器が見つからないからってそれがないってことにはならないでしょう。フセインが見つからないからってフセインがいないことにならないのと同じで」(大意)。◇この破天荒ヘリクツぶりがまた受けるのだから始末が悪い。

◇ともあれ堂々とこうのたまった三百代言男は、大量破壊兵器がニセ情報と分かったいまでもトンデモ発言を自己批判する気などさらさらなく、野党もマスコミも国民もそれを執拗(しつよう)に追及しようとはしない。

◇何という不思議な国であろう。◇歴代の日本政府がペッタンコ従属する宗主国・アメリカですら、激しい指導者批判とそれを支持した大衆の自省が生まれ、一部ではあっても中枢部は非を認め始めているというのに。

◇だが日本のトップ連中はといえば、イラク問題など<リセット>ボタンのクリックで終わり。◇いつものように、<済んだことを言っても仕方がない>ってな調子で。◇そうした本質的問題より、オバマ新大統領が日本に対してどう出てくるかばかりを気にしている。◇日本サイドがまずどう出るかといったスタンスなど、そこにはみじんも見られない。

★★ロシア:大量解雇、深刻
鉄鋼や自動車、失業率6.5%--治安悪化の懸念
毎日jp.・08.12.27

◇「世界的な経済危機の影響でロシアの産業界が深刻な不況に陥っている」。◇「首都モスクワの建設業界や地方都市の基幹産業では、操業縮小に伴って大量の従業員が解雇・休職に追い込まれ、社会不安の拡大を懸念する声も出始めた。下落を続ける通貨ルーブルへの不信感も募り、国民は不安な年末を迎えている」。

◇「ロシア各紙の報道によると、特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業だ」。◇「またモスクワではこの数カ月で旧ソ連諸国からの出稼ぎ者を中心に約6万人の建設作業員が失職したとされ、同省は外国人による犯罪や逆に外国人を狙った犯罪の増加を警戒している」。

◇そして、地方での暴動を懸念するロシアの経済学者は、毎日新聞のインタビューにこうこたえる。

◇「地方には、ソ連時代の遺産で一つの企業が経済と雇用を支える『モノ都市』が多い。その企業が閉鎖されれば混乱は必至だ。国は中小ビジネスの育成、労働力の流動化促進、企業の競争力強化などでこの構造を改革する必要があったが、石油・ガスに依存した経済成長を過信して改革を怠ってきた」。

◇あのプーチンの油・ガスに依存した経済成長」を笠に着て再び二大大国へ躍り出んがごとき鼻息は、つい最近まで見られたもの。◇「新興国でも資源産出国のブラジル、ロシアは『勝ち組』といわれて」(★★エコナビ2008:負の連鎖、世界株安・毎日jp.・08.07.03)とあるように、ロシアは何しろ世界最大の産油国なのだから。

◇それもこれも、バクチ資本主義が実需など無視し、原油価格をピーク時150ドル近くまで<狂奔>させてくれたおかげだった。

◇一方の中国はと見れば、<★★世界の工場、KO寸前 輸出急減の中国、日系企業脱出・FujiSankei Business・08.12.18>のありさまで、「世界の工場」というよりも<世界の下請け工場>の実態を証している。

◇「人件費高騰や人民元上昇という生産コスト高に続き、米国発金融危機に伴う世界経済の急減速は、中国に『ダブルパンチ以上の衝撃』(香港の日系企業)を与えた」という。

◇たった1年半ほど前には<★★「BRICs」改め「BRIICS」 6カ国表記に・asahi.com・07.05.17>な~んて、ブラジル・ロシア・インド・中国にインドネシア&南アを優等生新興国へ加えようとのOECDの意向まで報じられた。◇ギャンブル資本主義に酔う大量消費国アメリカさんのおかげで、世界中が舞い上がっていたというわけだ。

◇こうした新興国のバブルパワーを米国バブルから意図的に切り離し、まるでBRICsの内在力に基づくオートマチズムかのように称揚しまくったエコノミストたち(=いわゆるデカップリング論者たち)。つい先日まで、こんな輩(やから)が日本には大勢いた。◇だからこそ、原油の異常高騰だって、新興国の特需が主因と臆面(おくめん)もなく言い張った。

◇米国中心のバクチ金融資本主義が世界中をバブル経済へと巻き込んだ!◇その事実を世間へ隠したいがため、彼らは都合のいいデカップリング論をでっち上げた。

◇それが見事なまでに破綻(はたん)したいま、連中は決まったようにシカト&エスケープ!◇かたわら、意匠を変え再登場の機をうかがっている。まったくいい気なものである。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★麻生、スベりまくりの3カ月
・・・支持率回復の青写真は?
解散先送りの大きすぎた代償
ZAKZAK・08.12.24

◇タイトルが気に入ったという以外、別段コメントの要はなしといったところ。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年12月18日 (木)

IFSA注目のシブイ記事=<ブッシュも反省。なのに小泉・竹中は>ほか(08.12.07現在)

★★ブッシュ大統領
「戦争の心構えなかった。誤情報が痛恨
asahi.com・2008.12,03

◇正直といえば正直だが、世界への影響力トップにランクするはずの人間がいまさら何だこりゃの世界。◇ネオコンどもの悪巧みのために米兵が4千人近くも死んだ、この戦争にいったい何のイミがあったのだ、<失敗>ではないかとの論調が一般には支持を得やすい。

◇たしかに国家の命令で戦地へと赴かされた若き兵士たちの死、それ自体は大変に重い。◇しかし他方では、イラク人が15万人以上も亡くなったといわれている。◇米国は土足で攻め入り、イラクはただただ勝手に攻撃にされて国民がこれほどまでの犠牲をこうむる。

◇冗談じゃない。人の命に軽重はなくとも、まずこの受け身の15万人から立論しない論評などIFSAはまったく信じはしない。◇往々にして<先進国>視点でしかモノを見ようとしない風潮は厳に避けられるべきである。◇15万人の死がそれほど報道されないからといってnegligible?発展途上国の国民は虫けらとでもいうのか。

◇たとえば、米兵の死が百人でイラク人が15万人超の犠牲。◇そうであれば、きわめて<効率>のいい戦争だったから成功!とでもいいたいのか。◇それは好戦国アメリカのリアルな論理であって、われわれがそんなものに付き合わされる筋合いはない。

◇当のブッシュ大統領は、テレビインタビューにこうこたえたという。◇「(前略)『大統領の職にあった中で、最大の痛恨事はイラクの情報の誤りだった』(後略)」。◇ブッシュは「イラク戦争開戦の大義とされた大量破壊兵器が見つからなかったことを、今さらながら悔やんだ」。

◇「その後の調査報告などで(フセインによる大量破壊兵器隠しは-筆者註)否定されたが、政権末期となった今、明け透けな反省の弁を口にした」。◇「イラク戦争について『多くの人がフセインを排除する理由に大量破壊兵器を挙げていた。政権の人間だけでなく、多くの議員もそうだった』などと釈明し、『情報が違っていたら、と思う』と語った」。

◇ここにあるのは、みずから仕掛けたイラク戦争が泥沼化し米国をガタガタにしてしまったことへの<反省>のみで、イラク人を15万人超も殺したうえ、ひとの国土を破壊したことへの痛みなどまるでない。

◇ブッシュ政権ではチェイニー副大統領や当時のラムズフェルド国防長官・ウルフォウィッツ副長官(=国務総省はネオコンの牙城だった!)らタカ派が突出しまくり、その高揚感の中、ハト派といってもいいパウエル国務長官が国連安保理で大量破壊兵器の<証拠>を示してはイラク侵攻の正当性を長時間主張(パウエル報告=03.02)したシーンを覚えている人も多かろう。

ラムズフェルドにいたっては、米国に逆らったフランスとドイツを「古い欧州」とあざけり、得意満面。◇わがコイズミ・ジャパンはといえば、頼まれるよりも前に米国の家来をさっさ&せっせと勤め上げたのだった。

◇ブッシュですらいまや勝手ながらの<反省>を口にするというのに、<フセインがつかまらないからといってフセインがいないことにはならない。大量破壊兵器が見つからないからといってないことにはならない>の奇妙きてれつなレトリックで国会を乗り切ったあのコイズミは、いまだ謝罪どころかエクスキューズもなしで大きい顔をしている。

◇いや、日本という社会が大きい顔を平気でさせている。◇当の国民はそんなこととうに忘れ去り、この際コイズミにきっちり総括させるという意図さえない。◇得意の、<終わったことを今さら言ってもネ>のスタイルなのだ。

◇そしてあの竹中平蔵は、日本社会がメタメタになり、コイズミカイカクの罪悪が明白となったいまでさえ、カイカクが足りないからこうなるのだとうそぶいている。◇にもかかわらず、日経新聞をはじめとするマスコミは、そんな竹中センセイに平気で駄文を書かせたり、テレビに出演させたりている。◇いったい何という国だろう。

★★話し合いでタクシー減車
→談合にあらず 国交省が方針
asahi.com・08.12,05(A)
★★タクシー過剰地域で減車促す新制度
国交省が最終報告案
NIKKEI NET・ 08.12,05(B)

◇「国土交通省は5日、台数が増え過ぎて過当競争が起きているとの指摘もあるタクシーについて、複数業者の話し合いによる減車を促す法改正を目指す方針を明らかにした」。◇「談合とみなされないよう、『お墨付き』を与える」。

◇「国交省は、都市部などでのタクシーの過当競争が運転手の労働環境を悪化させているとの認識がある」(以上A)。◇いわばカルテルを官主導でつくらせ、公取に認めてもらおうとの算段らしい。

◇「導入する制度は新規参入への審査を厳しくするなど規制強化色が強い。タクシー業界は2002年の参入自由化後、約6年間で規制の再強化へとかじを切る」(B)。◇こうした動きは何も最近始まったものではなく、仙台を発端に昨年からすでに運用されてきた。

◇たとえば<★★タクシー参入厳格化 6地区で 仙台は新規禁止へ・asahi.com・07.11.20>のように。◇ここでいう6地区とは「札幌、北海道旭川、仙台、長野、富山、広島」で、「交通事故増加など規制緩和の悪影響が出てきたとして、規制の一部強化にかじを切る」というものであった。

◇「タクシー業界への新規参入や増車は02年、国による免許制から許可制になった。それをきっかけに首都圏や地方の中核都市で台数が急増。運転手の収入が減る一方で事故が増えていた」。

◇この辺に関しては、毎日jp.08.07.05<★★クローズアップ2008:タクシー規制再強化 緩和、ひずみ生む>で当然のことを当たり前のように論じている。◇<狂風>というしかない例のコイズミ旋風もようやくメッキがはげ(=それにしても5年間とは長かった!)、マスコミも国民もようやく普通の感覚に戻りつつあるということなのか。

◇代償はあまりに大きすぎたけれど。◇まさに国民みずからが積極的に失った5年

◇「市場原理機能せず」として毎日新聞はこう書く。◇「タクシーは、利用者がサービスの良い事業者を選ぶのが難しいという特徴がある。一方、運転手の賃金は歩合給が主流で、非効率な事業者でも賃金を下げれば利益を確保できる場合が多い。経営者がリスクを負わないため、自由競争を通じた淘汰(とうた)が起きない構造だ」。

◇国交省交通政策審議会の「作業部会では『(規制緩和で期待された)市場原理は働かなかった』『規制は悪、規制緩和なら善という風潮はおかしい』などの指摘が相次いだ」。

◇ハハハ、<規制は悪、規制緩和なら善>といった単純二分法を2002年出版の拙著以来ずっと批判し続けてきたIFSAとしては、これを読んで逆に力が抜けてしまう。◇いつの時代も、マッチポンプが世の中を領導していくかのごとき図式をあからさまに見せられて。

◇国民もそのほとんどが、<規制緩和>なる絶対善的名辞に飛びついては酔いしれ、中身など検討することもなくヨッシャ!と支持しまくってきたというのに。◇あの郵政民営化だって、<民営化=絶対善>の単純図式にあっけなくもころっとやられた。

◇コイズミ・竹中はそのからくりをうまく利用し、それによって利益を生む者のために社会をガッタガタにしたのだった。

★★大阪中央郵便局を40階建てに再開発
劇場も併設
MSN産経ニュース・08.12,06

◇丸の内の東京中央郵便局ばかりか、ここ大阪も。◇大都市の玄関口にはどしっとした中央郵便局があって・・・・・・・といった昭和の風景は、郵政民営化によっていとも簡単にぶっ壊されていく。◇<民>(=実は道路公団と同じ疑似民)だから何をやっても文句ないでしょうとばかりに。

★★アパ代表のみ田母神氏に最高点 論文審査で(C)
★★田母神氏の応募、審査前から認識 アパ代表(D)
asahi.com・08.12,01

◇タイトルだけからもモロなれ合いの審査風景が目に浮かぶようだが、それより何より、審査員だったという右派系お歴々(花岡や渡部)の頼りなさのほうがおもしろい。◇上記朝日新聞から、審査員の談話部分を引用させてもらおう。

◇特に、国士?を気取るであろう人たちの、何と腰と肝の座らないことよ!日ごろのエセ過激さとのコントラストが絶妙ではないか。◇今回の田母神作文事件は、彼らの実態をさらけ出してくれただけでもgood!であった。

小松崎和夫・報知新聞社長 「こんな騒ぎになったのでよく考えてみると、元谷代表が田母神氏を最優秀にしようと考えればできたと思う。(中略)通常の懸賞論文とルールが異なっていたが、審査時は『お金を出しているのは元谷さん』という意識があり、追及しようと思わなかった。不思議なのは審査が粛々と進んだことだ。元谷代表に乗せられたのか判然としないでいる」。「

*花岡信昭・産経新聞客員編集委員 「(前略)採点では最高点を付けなかったが、『日本人よ、誇りを取り戻そう』といったメッセージが明確で雑誌論文的で読みやすかったことから、その後の議論の中で最優秀とした。審査は公正だったと考える。(後略)」

*山本秀一・中山泰秀衆院議員秘書 「審査では元谷代表が田母神論文を強く推し、審査委員もそうした空気につられた感じがする。私自身は(中略)田母神論文には違和感があり、採点では低い評価にした。振り返ってみると(中略)、田母神氏に賞金を渡すための懸賞論文だったと見られても仕方がないのではないか」。

*渡部昇一・上智大名誉教授の話 「審査はスムーズだったので特に記憶に残っていません。雑誌『WiLL』に書いた審査の経緯が私の記憶です。他の方の記憶と違うかもしれませんが、それはその方の記憶です」。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年10月 5日 (日)

<コイズミ=衆院選不出馬表明>が逆照射する日本社会の脆弱性(下)

☆【コイズミ=衆院選不出馬表明>が逆照射する日本社会の脆弱性(上)】(2008.09.28)ここをクリックください

★★小泉元首相:存在感・神通力薄れ
小池氏も総裁選惨敗
毎日jp.・08.09.26

◇「(前略)自民党総裁選で『小泉路線』の小池百合子元防衛相が敗北したことは、自らの存在感が希薄になったと悟る引き金になったようだ」。◇「『小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンは負けるだろう』 長く秘書として仕えた飯島勲元首相秘書官は、引退の報を聞くと周辺にこう語った」。

◇IFSAがしつこく言ってきたように、<飯島あってのコイズミ・コイズミあっての飯島>は紛れもない事実。◇まして飯島本人の思いからすれば、オレがいなくてできるのかヨ、となって当然だろう。◇もちろん、コイズミの名優ぶりは天性のもので、彼ひとりでもそこらの首相が束になってもかなわない力量ではあるが、しかし飯島なかりせば、全土をあげての歴史的陶酔劇は絶対に不可能なのであった。

◇「今回の総裁選で小泉氏は完全に『蚊帳の外』に置かれた」。◇「麻生氏も小泉政権時代、政調会長、総務相、外相と重用した経緯があるだけに、かつての部下たちの裏切りは(コイズミにとって-筆者註)『屈辱』だったとみられる」。◇浪花節的な親分・子分関係で<部下>とつながったわけではなく、単に<機能>だけのコネクションとなれば、離れていくときも<機能的>になるのは当然のところだろう。

◇あの偉大なるコイズミが、ばかにしきった<日本的人間関係>から復讐(ふくしゅう)される。まあそんな皮肉な構図と言い得よう。◇「(前略)得票率は麻生氏66.9%に対し、小池氏8.8%。しかも、小池氏は地方票がゼロ。01年の総裁選で地方票が小泉氏で雪崩を打ったのと好対照だった」。

◇今回は地方もまたコイズミ流をなぞり、<機能的>にコイズミを切った。◇そこで彼ははじめて、コイズミ流<機能>のもつ非情さにびっくりした。◇それは彼の属性たる<機能>が真のイミでのfunctionalismではなく、単なる自分勝手・自分本位・・・・・・・の代名詞にすぎなかったからだ。◇コイズミによる通り一遍の小池支持だって、絵に描いたようなコイズミ流<便宜的かつ機能的>であり、心などこもってやしない。

◇いざとなると弱点をさらけだす<非・浪花節>という名の<自分のことだけ>。◇2001年まで彼はなぜ、一匹狼の変人と言われ続けたか。それにはやはり理由があったのだ。◇だから、コイズミに<新党>なんて作れるわけもないし、また本人にはそんな気もない。◇中川・武部・小池やあのコイズミチルドレンたちは、この程度のことさえ見抜けない非政治家であった。

◇先の毎日新聞はこう結ぶ。◇「小池氏や中川秀直元幹事長らの『浸透力』の弱さを目の当たりにし、『小泉時代の栄光』が雲散霧消する前に、身を引いたという感が強い」。

◇そりゃそうでしょう。前回の(上)でも触れたように、コイズミの政治目標は<旧田中派>(+)<郵政>の撲滅、それ以外には何もありはしない。◇これを成就してしまえば、あとはもぬけの殻のアパシー状態に陥るは必定。◇もう一度戦いを!とたとえ願ったところで、リキなど入るわけもない。

★★「小泉さんらしい引き際」/地元横須賀支援者の反応
カナコロ(=神奈川新聞電子版)・08.09.25

◇地元紙だけあって、記事の中心はコイズミへのオマージュが多くを占める。◇しかし、なかにはこんな醒(さ)めた見解も。どこにも冷徹な人はいるものと、少しは救われた気持ちになる。

◇「湘南信用金庫の服部眞司会長は『男の花道で小泉さんらしい』と評価しつつも、『小泉さん自身は次の選挙に勝てるだろうが、自民党は大負けする。次の政権から小泉政権の失敗を責められるだろうから、それを察知しているのなら、世の中を見る目はさすがだ』と皮肉も」。◇「次男・進次郎さんの出馬については『麻生内閣も二世議員ばかりで嫌になる。(進次郎さんの)四世はどうなのか』と、懐疑的な見方を示した」。◇そしてなぜか三重県でも。

★小泉元首相:引退へ 野呂知事が酷評
「政治的にはまったく評価できない」/三重
毎日jp.・三重版/08.09.27

三重県の野呂昭彦知事は、コイズミの引退そのものは結構としたうえで、コイズミ&コイズミカイカクに関しこう語った。◇「『個性は魅力的だが、政治的にはまったく評価できない』(後略)」。◇「『わが国の政治漂流の原因を作った。郵政改革とか、改革という言葉で国民の期待を引き付け人気はあったが、結果的に本当に大事な改革を見えなくしてきた。格差を広げ、社会にいろいろなひずみを起こした』と酷評した」。

◇また、例の<三位一体の改革>は「『だましの改革だった』」と公言」。◇さらには、『(前略)郵政とか特定の改革にあれだけ力を入れるのなら、もっとなすべきことはあったのではないか』」。とも。

★★鳩山民主幹事長:
小泉元首相の後継者指名に「結局は凡人」
毎日jp.・08.09.26


◇「『小泉氏が次男を後継者に指名したことには「結局は普通のパパ。奇人でも変人でもなく凡人だった』と指摘」。◇「(前略)『自民党内でも、小泉改革は大きく路線変更せざるを得ない。小泉さんの時代は終わった』と感想を述べた」。

◇次男の進次郎を後継指名するに際してさえ、コイズミはかつての威光が忘れられないのか、いまだ名優ぶりを発揮したがる。◇たとえばこんなふうに。

★★”変人”が「普通の人」をアピール
・・・やゆを逆手の小泉氏
YOMIURI ONLINE・08.09.27

「『親ばかと言われるが、これで私が普通の人、普通の親だと分かったでしょう』--」。◇地元講演会で「こう理解を求めた」とはいえ、国民がまだ入眠状態にあった首相在任時ならともかく、こんな逆張り手法もいまとなっては悲しいかな、すべりまくるだけの状態にある。

◇上記鳩山のからかい(=「結局は凡人」)を「(前略)逆手に取って、地元支持者に『父の思い』をアピールしたようだ」としたところで、逆手にも順手にもなってはいない。◇刺客差し向けの酷薄さとエグさはいったい何だったのか。<父の思い>が登場では、あまりにみすぼらしくてかわいそうになる。◇いや、郵政も世襲もすべてはコイズミ自身のためと気づけば、得心がいこうか。

◇と同時に、こんなジコチュー男にコロッとだまされた大半の国民も、おそらくは無意識の自己嫌悪なるものに見舞われていることだろう。

◇そんななか、産経新聞の珍しい論調に出会い、IFSAは驚いた。そのあまりの<正直>ぶりに。◇他の新聞社では、ななかなここまでは言えなかろう。◇だがはたして、うぶな<正直>ベースにとどまっていていいものかどうか、それも同時に問われねばなるまいと思った。

★★【Re:社会部】「郵政選挙」の反省
MSN産経ニュース・署名は(浜)・08.09.28

◇「そんな取材(=政治部ではなく社会部による総選挙の取材-筆者註)で今でも思いだすのが、3年前のいわゆる『郵政選挙』です」。◇「(前略)振り返ると、(自民の圧勝に終わった-筆者註)あの選挙には大きな問題点がありました」。

◇「それは、争点が『郵政民営化にイエスかノーか』という一点に絞られたことです」。◇「当時は記者自身も、そして取材した識者も、争点の単純化を『わかりやすくていいことだ』と歓迎していました」

◇「しかし、今思えば(後略)」と記者は続ける。ただ、これ以下の引用はもう必要なかろう。容易に想像できるであろうから。◇IFSAはずっと言い続けてきた。単一テーマの選挙などあり得ない。そこで得た議席によって<郵政だけを可決する>など理屈上も実際上もあり得ない。何でこんな簡単なことにツラッとだまされてしまうんだ!と。

◇投票行動は、2/3超による横暴の連鎖をもたらした。◇安部晋三が強行採決の連続で郵政の<成果>をフルに使い切ったのは記憶に新しいし、福田康夫による衆院での<57年ぶり2/3以上再議決>というひっくり返しの荒わざには、さすがの国民もぶったまげた。

<新テロ特措法(+)ガソリン税などの暫定税率>再議決。こんな度はずれた暴挙も、郵政での自民圧勝あってのこと。◇だから言ったじゃないの、郵政だけにとどまるなんてあり得ないと!◇いや、もとはといえば、あの郵政民営化自体がめちゃくちゃとんでもない話なのだが。

「当時は、日本中が熱病のような高揚感に包まれていたように思います」。◇たしかにそのとおりではあるものの、はたしてそんな追憶で済まされる代物だろうか。◇戦前の一億火の玉も、鬼畜米英も・・・・・・・、まったく同質ではないか。◇ちょいとマズッタかな?程度の次元ではないのだ。

◇どうしてこんなイカサマに、まるで「熱病」のごとくやられるのか。◇その根底に向けた社会心理学的解明を全社会的規模でじっくり行わないかぎり、また歴史は繰り返すにきまっている。

◇そういえばコイズミ引退表明の日、町の若者がテレビに向かって言っていたっけ。◇「小泉さんには、リーダーとしてもっと引っ張っていってもらいたかったのに」。◇オ~オ、な~んちゃっての若者よ。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年9月28日 (日)

<コイズミ=衆院選不出馬表明>が逆照射する日本社会の脆弱性(上)

◇あのコイズミが、次期衆院選には出馬しないと表明した。◇このタイミングはまったくの予想外で、得意の<サプライズ>に一本取られたが、コイズミが政治的ターゲットをもはやひとつも持ち合わせないのはIFSAがしばしば述べてきたところ。◇それからすれば、本人による次のコトバは本物と思えた。

◇地元・横須賀市における2008.09.27夜の講演会でコイズミは、「(前略)政界引退の理由を『次の選挙で当選しても、今まで以上の活躍をするのは無理だ。議員としての能力を、首相在任中の五年五カ月で使い切った』と説明した」(★★『首相在任の間に 能力使い切った』  地元支持者に 小泉氏、引退を説明・TOKYO Web・08.09.28)。◇そう、彼は首相在任中に文字どおり全精力を使いつくした。ではいったい何に?

◇当IFSA通信で過去何度も指摘したように、それはふたつの<私怨>的対象に向けてだった。◇いやもっと言えば、たったこのふたつだけのために複数回総裁選へ挑戦した揚げ句それを手にし、今度は大多数の国民を巻き添えにしては<私怨>のカタルシスへと邁進(まいしん)した。◇すなわち、<憎っき旧田中派の壊滅>(+)<自分を袖にした郵政へ復讐(ふくしゅう)するための郵政民営化>という2点だ。

◇加えて、郵政民営化には米国からの強い要求もあり、そのことがコイズミの年来の主張をいっそうドライブさせた。

◇ともあれ、<私怨>であるなら勝手にやってりゃいいのに、日本をあげての大活劇としたところが彼のすごさ。並みの人間ではできない。◇あれだけの<私怨>ボルテージを保てる人間もそうはいないし、権謀術数を動員してそれを成しとげる執念深さと実行力も、これまたたぐいまれなものがある。

◇この2点を曲がりなりにも実行し成功を収めてしまったコイズミにあって、「今まで以上の活躍をするのは無理だ」は当然といえよう。◇もともとこの2点しか目標のない政治家だったのだから。

毎日新聞政治部編集委員の古賀攻<★★小泉元首相:引退へ 改革マジシャンの退場・毎日jp.・08.09.26>のなかで、注目すべきエピソードを披露している。◇「かつて政治権力の中枢を独占してきた旧橋本派(現津島派)は、小泉時代に徹底して弱体化させられた」。◇「首相当時、執務室で『経世会をやっつけるぞ』と腕を突き出しながら本人が語るのを聞いたことがある」。◇「それだけは小泉氏が確実に成し遂げたことだ」。

◇やっぱりそうだったのか!がIFSAの第一印象、◇そして、こうした単細胞ぶりが大ウケにうけてコイズミ人気は手をつけられないほどにまでヒートアップし、ついには刺客総動員の郵政解散劇を全国レベルで<成功>させたのだった。◇言うまでもなく、郵政問題自体もコイズミチルドレンも、ひいては大金を使っての総選挙も、コイズミにとっては<私怨カタルシス>のためのイチ道具でしかなかった。

◇よって、戦いさえ終わってしまえば、郵政事業がその後どうなり、国民生活にいかなる影響を与えようと知ったことではないし、関心もない。◇また、チルドレンなどは手兵以外の何ものでもなかったから、郵政選挙という戦闘後はさっさと御用済み。議席数を充足してくれさえすればいいだけのものだった。与党で2/3以上という鬼に金棒のファッショ的数字を。

◇親分であるべきコイズミがさっさと辞めてしまうのも、以上の文脈からすれば不思議でも何でもなかろう。

★★小泉元首相不出馬
・・・麻生政権の船出に打撃、衆院選に影響も
YOMIURI ONLINE・08.09.25

◇「自民党の小泉元首相が次期衆院選への不出馬を表明したことについて、自民党内には、小泉政権との路線転換を鮮明にする麻生政権の出はなをくじく印象を与えたと見る向きも少なくない」。◇麻生太郎内閣の発足が24日夕、コイズミの不出馬表明が25日の夕。このタイミングが巷間(こうかん)ささやかれるように<麻生への当てつけ>(註)かどうかはともかく、少なくともマイナス方向へ振れることを知ったうえでの所業とだけは言い得る。

(註)=あれだけの資産と血脈(=気色悪き単語だ)に恵まれながら、いまだ小派閥の頭領でしかない麻生。当然ながら人格や資質の問題があろうが、そこにはあえて目をつぶり引き上げてやったのはこのオレとの思いは、コイズミに強かろう。◇事実、麻生は小泉内閣で総務大臣・外務大臣をつとめたにもかかわらず、恩を忘れた彼はいまやコイズミカイカク否定のおもむき。◇とんでも8分!歩いて13分の世界にコイズミが陥ったとて不思議はない。

◇カラッとしたように見せながらネチネチ体質のコイズミは、旧田中派&郵政に続いて麻生へも<私怨>を全開モードにさせる。◇これは考えられない話ではない。◇ところで、このネチネチ人間がそれを悟らせまいとする装置こそが、お得意の<サプライズ>であった。

◇じゃじゃ馬・田中眞紀子の外相起用も、北朝鮮電撃訪問も、未熟者・安部晋三の幹事長抜てきも、郵政ごときでの解散も、すべてが度胸ある人間にしかできない意表を突く出来事と思わせるに十分・・・・・・・。◇そして今回の自民総裁選でも、久しぶりに例の手品師的イタズラ本能がうずきまくった。しかし!。

★★「小池惨敗」で決断、最後のサプライズ
文化社会部中山知子・nikkansports.com・08.09.26

◇コイズミ不出馬宣言で大騒ぎの永田町にあって「最後のサプライズに『らしさ』を感じた」という日刊スポーツの記者は、またこうも言う。◇「でも先日は『らしくなさ』を見た」。◇「総裁選で支持表明した小池元防衛相の激励ランチに登場。敗戦濃厚で、会に集まったのは二十数人。負ければ当然、『小泉氏の影響力は落ちた』と言われるリスクがあった」。

◇「小池氏のPRにはなったが、小泉氏にとって良かったかどうか」。◇「これまで、マスコミ戦略は腹心の飯島勲元秘書が担ってきた。飯島氏は、昨年の総裁選での対応の違いを理由に小泉氏のもとを去った」。◇「もし飯島氏がいれば、あの形で昼食会に出ただろうか」。◇これまたかねがね、名脚本家兼演出家・飯島(+)名優・コイズミあっての<コイズミ劇場>と述べてきたIFSAの主張に通ずる。

◇こんななか、あの5年間のコイズミ熱気はどこへやら、日本社会はいつになく醒めまくっている。◇中流階級以下の<経済>がガタガタではそれも当然のことだろう。◇その原因は、かつて<痛みに耐えろ>と絶叫したコイズミ・竹中コンビ自身にありと、お人よしの国民もいつしか気づくまでになった。

◇そんな日本人は、コイズミ引退ニュースに引っかけてテレビで流され続ける懐かしき<劇場VTR>を見、何と思うだろうか。◇コイズミの乗った街宣車を十重二十重に取り巻く大群衆の絵を前にして。◇それもわずか数年前の!

◇「01年4月の(小泉-筆者註)内閣発足時には85%という驚異的な支持率を獲得した(毎日新聞社調査)。共産党の支持層まで動員したその数字の裏側には、国民を倦(う)ませてきた自民党政治の衰退があった」(上記・古賀攻記事)という消せない事実に対しての<無意識なる自己嫌悪>が、もしかしてあの薄汚いVTRから目をそむけさせるやもしれない。

◇「神保町で古書店を営む男性(63)が明かす。『どれだけ日本を悪くしたか。引退は遅すぎるくらいだ』。◇「帰宅途中の江戸川区のデザイナー、山岸昭人さん(44)は『壊すだけ壊し、道半ばで放り投げた感じ』と首をかしげた。首相時代の支持率は高かった。『自分も小泉さんに期待した一人。改革を最後までやり遂げてほしかった』と残念がった」。

◇「立川市の会社員、村上香代子さん(50)も『構造改革で生活は楽にならなかった。何をしてくれたのかしら。国民は浮かれすぎた』」(★★小泉元首相:有権者「壊して放り投げた」 実行力評価も・毎日jp.・08.09.25)。 【註】肯定的評価はあえて割愛してある

◇さて08.09現在でコイズミカイカクを否定的に総括する人たちは、全部が全部、たまたま当時の15%国民(=100-上記85%)だったのだろうか。そんなことはあるまい。◇何せあの狂信的な時代には、民主党議員の多くもコイズミを支持していたという事実を忘れるべきではないのだ。◇最近はだいぶ腰が据わってきた感のある民主党の鳩山幹事長も、コイズミを後押しせんと何度ふらついたことか。

◇まわりじゅうからの嘲笑のなか、孤軍奮闘で根源的コイズミ批判を展開していたIFSAが言うのだから、当時の情況描写にまちがいはない。◇問題の核心は、支持しまくっておいていまさらコイズミを批判するな!ではなく、なぜあの時代、国民の大半がコイズミにコロッとだまされてしまったのか、その点にこそあろう。

◇この総括をきちっとしておかなければ、第二・第三の<狂信>にまたまたするっとやられることになる。◇いや、もとをただせば、太平洋戦争の総括と止揚がさっぱりなされていないところにあるのだが。(敬称略)-つづく-

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年7月 5日 (土)

IFSA・週なか掲載=かなり気になる、先週の <ベタ扱い>的重要記事(08.06.29現在)

タイトルの<週なか掲載>、看板に偽りありとなってしまいました

★★集団的自衛権の論議失速 首相冷ややか、
法制懇幕引き
asahi.com・2008.06.25

◇福田政権発足時に指摘したように、まさにこの<失速>こそが福田康夫唯一の功績といえよう。◇それにしても、同じ政党が政権を担っているのに、首相次第でこうも変わるものか。◇コイズミ・安倍政権の時代、一時的に元気だったあの保守派連中はいま!?と揶揄(やゆ)してみたくもなる。

◇<親分こけたら皆こけた>のこの状態は、結果として好もしいとはいえ、左右を問わず日本社会に通底する安直なトレンドはいったい何なのだろうと思わざるをえない。

◇そういえば、昨年9月の安倍晋三・お子ちゃま首相退陣の際、保守の権化ともいえる産経新聞がこうぼやいていたっけ。◇「福田氏は憲法改正は党是と認めながらも『自民、公明両党だけで決めていいものか考えないといけない』との立場をとる」。◇「安倍首相が検討していた集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更についても『憲法に抵触するかどうかを慎重に考えたほうがいい』と否定的な見解を示している」と。

◇また、こうも言っていた。「福田氏は安倍首相が力を入れていた教育再生にも言及せず、教育再生会議は12月の最終報告を前に頓挫しかねない」以上、★★「保守」めぐり自民二分も・Sankeiweb・07.09.23)。◇産経の危惧どおり、ウフフ首相の福田は少なくとも、<美しい国><戦後レジームからの脱却>なるとんまな政治概念だけは、みずからの手で実質的に放逐してみせた。

◇ところで、コイズミ路線の完成を目指す安倍晋三が就任した時期の熱気。その異様なさまを、忘れっぽさが取りえの日本人はいまもどれほど覚えているだろうか。つい<さっき>の出来事だというのに。◇ならばせめて雰囲気だけでも再現をと、IFSA・マスコミデータバンクからさっと引用してみるとしよう。◇単なるタイトルだけからも、伝わってくるものがあるはずだから。

◇まず最初は、こんなぶったまげ記事から。現在なら誰もがエエ~ッ?と言いそうな行動を、安部は得意気になしているのだった。◇<★★安倍首相:「改憲の意義を近隣国に説明」内外記者会見・Mainichi INTERACTIVE・07.05.02>。◇ものごとの手順も何も分からぬ超ピンズレ男の面目躍如といえるだろう。◇そして、<★★憲法、ざわめく還暦 改憲派に熱、首相批判強める民主・asahi.com・07.05.03>。◇<★★安倍首相:改憲への意欲 談話で明確に・Mainichi INTERACTIVE・07.05.03>

<★★首相、改憲の議論「強く期待」・施行60年で異例の談話発表・NIKKEI NET・07.05.03>。◇<★★国民投票法案、14日成立へ 首相、改憲へ意欲・asahi.com・07.05.11>。◇<★★石原都知事、NYで講演 米が責任果たさぬなら核保有も・Sankei Web・07.05.18>

◇しかし、07.07.29の参院選で自民が惨敗して与野党が逆転するや、流れは一気に変わる。◇選挙戦最中でさえ<★★年金主役でかすむ改憲論議 参院選・asahi.com・07.07.23>と言われていたくらいだから、自民にとって衝撃的なあの結果が出たとなれば、安部がいくら力んだところで万事休すは当然となる。◇<★★集団的自衛権:安保懇報告棚上げへ 法制化に慎重論・asahi.com・07.08.05>は必定(ひつじょう)であった。

◇以降は、改憲派がっかり・保守派落ち込みばかりの記事が連なる。◇<★★参院「改憲派」、3分の2を割る 3年後の発議に壁・asahi.com・07.08.07>。◇<★★集団的自衛権の憲法解釈変更が困難に 公明側、反対明言・asahi.com・07.08.09>

◇そして本08年。<★★9条改正反対66%に増、賛成23%に減 本社調査・asahi.com・08.05.02>。そこではこう述べられていた。◇「前の安倍内閣時代の07年4月に実施した調査でも、9条は『変えない方がよい』が49%で『変える方がよい』の33%を上回っていたが、今回は大きく差が広がった」。◇そして産経新聞までがこう慨嘆する状態に。<★★国民投票法施行まであと2年 課題山積、盛り上がりに欠けたまま・MSN産経ニュース・08.05.02>

◇具体的にはこういうことだ。◇「昨年5月の憲法改正手続きを定めた国民投票法成立、公布からほぼ1年がたった」。◇「国会での憲法改正原案の審議や国民投票自体が可能になる同法施行(平成22年5月18日)まで、あと2年余りとなったが、国民投票実現までに解決すべき課題は山積している。だが各党の憲法論議の熱気は冷めたままだ」(上記・MSN産経ニュース)

<★★宙に浮く改憲論議  ねじれ、首相交代も影響・47NEWS=共同通信・08.05.02>
◇だからこそ、冒頭の記事<★★集団的自衛権の論議失速 首相冷ややか、法制懇幕引き・asahi.com・08.06.25となるわけだ。◇一時は舞い上がっていたタカ派の懇談会座長・柳井俊二(前駐米大使)。予想すらしない安部お坊ちゃまのずっこけで、思惑は無残にもチャラとなった。◇たまさかの順風に乗ろうともくろんだのに、あれよあれよでずっこけたに相違ない。

◇そのasahi.com・08.06.25の書き出しは、このようなものだった。◇「首相の私的諮問機関『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』(座長・柳井俊二元駐米大使)は24日、福田首相に報告書を提出し、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう政府に求めた」。◇「だが、首相に提言を正面から受け止め、本格検討するそぶりはない。安倍前首相の肝いりで設置された懇談会は、議論を喚起できないまま役目を終えた」。

◇そして、「報告書を受け取った首相も24日夜、記者団に『内容はまだ見ていません』。『(憲法解釈を)変えるなんて話したことはない』と語ったうえで、懇談会を閉じる考えを明らかにした」。◇これに関する東京新聞の見出しはもっとストレート。こんな具合だ。◇<★★スコープ 『集団的自衛権の解釈改憲』明記 安保法制懇報告ようやく日の目 前政権『遺産』すでに風化・TOKYO Web・08.06.25>

★★日雇い派遣「グッドウィル」、来月末の廃業を発表
YOMIURI ONLINE・08.06.25

◇ご存じ、折口雅博が権勢をふるったグッドウィル・グループ(GWG)。◇介護の現場でも、グループ傘下のコムスンを率い、一時は寵児(ちょうじ)に。◇私の手元には、安部官房副長官(当時)と得意気に対談する折口の「コムスン通信10号」(電子版)がある。◇そして最後のほうには、安部・折口ががっちり握手する写真も。◇表題は、「介護保険制度の将来への展望」ときた。

◇コイズミ政権&それを受け継いだ安部政権。すごい時代だった。

★★缶ビール・たこ焼き・刺し身
・・・「あしき慣習」霞が関全体に
YOMIURI ONLINE・08.06.25

◇「タクシー居酒屋」で刺身まで?腐っちゃわないかと心配したが、こちらはどうやらお歳暮としてらしい。◇いずれにしろ、このさもしさ・卑しさはメダカ状態(=すくいがたい)以外の何物でもない。◇もらえるものなら何でも。栄養ドリンクでもってか。ご立派。

★★”高級車”販売急減速・・・ベンツ、BMWなどマイナス
ZAKZAK・08.06.23

◇ついにバブル紳士淑女にまで不況の波がということらしい。◇まことに健全な現象で、ご同慶の至りというほかはない。

★★タクシー新規参入に歯止め 事前規制を復活、
法改正へ
asahi.com・08.06.27

◇だから言ったじゃないの、あれだけ!とIFSAならほえる権利がある。◇やるときは鳴り物入りで、撤回はひっそりとがいつもの手口だ。◇IFSAはこれを<リセット社会>と呼んでいる。◇単純な二分法から、<規制緩和>という絶対善を後押しした国民にもその責任はあろう。

◇類似の例として、昨今ではどの企業でも噴飯ものらしい<成果主義>に対しても、IFSAは02.08の著作時点からそのいかがわしさをじっくり説きまくってきたのだが・・・・・・・。◇飛びつくだけ飛びついて神格化したあげく、いまさらノン?大企業の人事セクションには思想がないのだ。◇八重洲ブックセンターに行き、最新のネタ(=流行)を常時渉猟(しょうりょう)しているようでは話にならない。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★韓国:竹中氏のお知恵拝借
李大統領、国際諮問団に起用
毎日jp.・08.06.27

◇この一点だけでも、李明博(イミョンバク)大統領政治の将来が見えようというもの。◇竹中平蔵は韓国でもまた、いい気な発言でけむに巻いたようだから、カラダが強い。

◇「竹中氏は郵政改革を例に出し『国民に議論のプロセスを公開しながら、だれが責任を持って話をしているか見せたのが効果的だった』などと、高支持率で小泉改革を成功させた秘訣(ひけつ)を伝授した」。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年6月12日 (木)

IFSA・週なか掲載=かなり気になる、先週の <ベタ扱い>的重要記事(08.06.08現在)

★★機長退職で異例の168便欠航・運休 スカイマーク
asahi.com・2008.06.02(A)
★★スカイマーク:機長2人が退職、病気
・・・異例の168便欠航(B)
毎日jp.・08.06.02

◇6月中に168便もが欠航するという。◇「操縦士の欠員により大幅な運休が生じることはきわめて異例」(A)はもちろんだが、その大もとにある以下の事情?も異例だろう。

◇「同社によると5月、同社の機長資格保持者約40人のうち、いずれもボーイング737の資格を持つ1人が病気療養を、1人が自己都合退職を申し出た」。◇「会社側は乗務の可否や満期を迎える契約の条件について本人と話しあったが慰留できず新たな機長の手当てもできなかった」(以下、いずれも(B))。

◇毎日jp.によれば、この背景として、(1)需要増によるパイロット不足(2)大型機から中型機への転換による要員増があるという。◇そうした環境下、「(前略)機長を自社で養成する経営体力のない新規航空会社にとって確保の問題は深刻だ。ある社の幹部は『特に中国での航空需要が旺盛で、機長1人を招へいするための相場が上がっている』と指摘する」。

◇そんななか、当のスカイマークまでが「『我々の体力では、機長1人にかけられる給与にも限界があり、契約が更新できないなどのリスクを常に抱えている』と話す」というから世話はない。

◇この現象を鉄道に置き換えれば話はもっと分かりやすくなる。◇退職や病欠により、某中小私鉄では運転士の手当がつかなくなった、よってラッシュ時のダイヤを間引きする、それも1カ月という長期にわたって。◇公共交通がもしこうなったら、当該企業への風当たりは一気に強まり、経営責任どころか経営者総退陣に追い込まれるやもしれぬ。

◇鉄道以上に特殊技能を要求される飛行機の場合は、上記「機長を自社で養成する経営体力のない新規航空会社」ばかりか、自社で機体を整備できない航空会社も存在意義を問われるのは必定。IFSAは以前からそう考えてきた。◇格安航空会社の雄・スカイマークはそれでも自社整備らしいが、操縦士同様、整備に欠員が出る心配はないのか。◇その他の格安会社の整備体制は?

◇そもそも、たった2人のパイロットに辞められただけで経営の存立にかかわる?そんな企業が航空会社としてはたして認められるかどうか、問うまでもなかろう。

◇そう、ここにはいち企業の問題ばかりでなく、自由主義者による<規制緩和>が大きく関与している。◇<規制>はすべて<悪>。だからそれを解き放してやれば、あとは市場原理にもとづき落ち着くところへとおさまるのイデオロギー。

◇国民もまた、<規制緩和>なるこの絶対善的響きを感覚的に支持したからたまらない。どんな分野にあっても群雄割拠こそが<善>とばかり、無理やり新規参入組(ベンチャー)を作り上げていったのであった。

◇そして結果は野となれ山となれのケセラセラ。◇することは中途半端そのもので、結果は見てのとおりのほころび。いやそれどころか、社会のすみずみに大混乱を招来した。◇たとえばタクシー業界の惨状だって、スカイマーク問題とちっとも次元は違わない。揚げ句は、<★★タクシー参入厳格化 6地区で 仙台は新規禁止へ・asahi.com・07.11.20>というから笑わせる。◇今度は規制強化だって?マッチポンプそのものじゃないか。

◇IFSAのデータバンク(いや、それほど大げさなものでもない)をさかのぼれば、以下のような記事(=いずれも06年)に出会う。◇「社民党の福島党首は28日(06.06.28-筆者註)の記者会見で、規制改革・民間開放推進会議議長の宮内義彦・オリックス会長について『規制緩和で金もうけをできるようにルールを変えている』と述べ、自派に都合よく選挙区を変える場合に使われる『ゲリマンダー』をもじって『ミヤマンダーだ』と批判した」(C)。

◇「オリックス会長の宮内義彦(70)が執念をもって主張してきたのがタクシー台数の規制撤廃だ」。◇「96年当時、政府の行政改革委員会規制緩和小委員会座長だった宮内によって台数規制の緩和がスタート。02年には規制改革・民間開放推進会議議長として参入規制を完全撤廃させた。『利用客の需給バランスに任せればいい』という市場原理主義だ」(いずれも(D))。

◇「無理な運転と過労でタクシー事故も増えている。こうした現実に宮内は新聞インタビューでこう答えている。『利用者は台数が増えて便利になり、新しい雇用も生んでいる。パートタイマーと無職のどっちがいいかということだ」(D)。◇<規制緩和>なる美名のもとにさえ、かならず利権政治家と政商はいる。

◇宮内に関しては、こんな記事もある。◇「『村上ファンド』の村上世彰代表が証券取引法違反容疑を認めた5日(06.06.05-筆者註)、永田町にも波紋が広がった」。◇「政府の規制改革・民間開放推進会議の宮内義彦議長が会長を務めるオリックスが、同ファンドの運営会社に出資し、資金運用も委託していたとされるためだ」(E)。

《註》(C)★★規制改革会議・宮内議長は「ミヤマンダー」
     社民が批判・asahi.com・06.06.28
   (D)★★【平成の政商 オリックス宮内義彦の”改革”
     利権と人脈】  タクシー台数の規制撤廃で業界は大混乱
     日刊現代(有料電子版)・06.06.28
   (E)
★★村上問題、永田町にも波紋・・・宮内氏、苦しい答弁
     ZAKZAK・06.06.05

◇ときの政府に対してこれだけ権勢を誇った宮内義彦は、なぜかコイズミ政権とともに表舞台から去った。◇そして昨今、政治の世界で名前を見ることはまずない。<規制緩和>のフルーツを十分手にしたためか、それとも近ごろの社会の空気をヤバイと感じているためか。◇資料として買っておいた「月刊現代・06.08」の80枚長編「★★平成の政商・宮内義彦」(森功)をあらためて読んでみることにする。

◇話がそれるうち、スカイマークの由々しき事態だけはさらに進んでいた。◇<★★スカイマーク、7月も300便運休・NIKKEI NET・08.06.07>。記事によれば、「8月も約200便を運休する見通し」というからすごい。◇本論のタイトル「08.06.08現在」には反するけれど、08.06.10のTOKYO Web<★★スカイマーク 8月末まで633便を運休>にはこうも書かれている。

◇「東京都内で記者会見した西久保慎一社長は『利用者の方々にご迷惑をかけ、深くおわびする。会社として未熟と言わざるを得ない』と陳謝」。◇「パイロットを確保し、九月以降は通常運航態勢に戻るとの見通しを示した」。◇とんでもない会社を<規制緩和>の旗手に仕立て上げたものだ。この会社などより、これを唱導した政治家と民間委員の罪は重い。

★★「フェラガモ」が値下げ・・・世界初、日本のみ実施
ZAKZAK・08.06.02(F)
★★フェラガモ、
日本だけ値下げ 客離れ懸念
asahi.com・08.06.02(G)

◇アイガモは知っていても、フェラガモなんざとんと縁なきIFSAだが、このタイトルには気を引かれた。◇「株安などの影響で高額品の消費に陰りが出ており、割安感を出したい考えだ」。◇「フェラガモは、ユーロ高や皮革類など原材料価格の上昇に伴い、この3年で平均20%程度値上げした。しかし、日本は米国に次ぐ重点市場とあって、値上げが顧客離れを招かないよう価格政策を見直すべきだ、との指示が伊本社からあった」(いずれも(G))。

◇「百貨店などで高額商品の販売が落ち込んでいる日本市場で需要を喚起する」(F)。◇要は、ブランド品大好きの日本で売り上げが落ち込んでは彼らもたまらないということなのだろう。◇でもさすがに、セレブだかなんだか層の「消費に陰りが出ており」なんですね。ミニバブルの崩壊で。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★タスポ:自販機につり下げ 福岡の業者「売上げ2割減り」
毎日jp.・08.06.04

◇「福岡県広川町の自営業者が、未成年者の喫煙防止策で導入されたたばこ自動販売機用成人識別ICカード『タスポ』を自販機に備え付け、自由にたばこが買えるようにしていることが分かった」。

◇このおっさん?最高だ。◇またどこぞの地域では、おじさんが自販機脇に立っていて、客がお金を入れればカードをサ~ッとタッチという店まであったという。◇ここには、商魂(+)格好つけのJTに対する辛辣なるあてこすりも含まれているように思える。◇だからウケルのだ。(敬称略)

*紙幅の関係上、一部の記事は来週に回します。

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月19日 (金)

いまだコイズミ時代の「爽快=カタルシス」が忘れられず、安倍批判で代償行為をなす社会

◇日本人は、みずからの閉塞感を、あのコイズミの歯切れよい「改革アジテーション」で癒やしている、こんなことをしていると、真の変革は逆に後ろへ追いやられ、閉塞はますます深まる、「失われた5年」は目に見えている、と私は2002年の拙著でくどいほど論じた。◇結果は、ご存じの格差社会。憲法改正と軍事大国に向かってのイデオロギーや諸装置の大転換。社会保障費関係の大削減。

◇カイカク・カタルシスの対価とはまさにこれであり、郵政民営化、旧田中派憎悪、対米従属しかアタマにない単純・小泉をうまく利用しまくった官僚国家が、結局は成功を収めたのだった。

◇しかし、小泉劇場のほころびがようやく表面化し始めた時期に符合し、記者の質問の意さえくめない安倍晋三(★註)が、「イケメン?+擬似北鮮強硬路線」だけを武器に首相の座を射止めたからたまらない。◇こんな軟弱なトップなら、叩いても跳ね返りはないとばかりに、マスコミは遠慮なく批判をするし、スタート時、戦後歴代3位の支持を与えた国民も、さっさと見放し始める。

(★註)日刊ゲンダイ(電子有料版・07.01.10・配信)は書く。◇「昨年末、記者から『総理にとって今年の一文字は?』と聞かれ、真顔で『”変化”の年でしたね』。『いや、一文字で』に『ま、”責任”ですね』。アホか」。◇「本間正明税調会長の辞任では、『一身上の都合』を13回も繰り返しシドロモドロ」。◇私も両方ともテレビで見たが、ウケでわざと言えるようなタイプではなし、任と対応力との不釣り合いに、気の毒にさえなった。

◇これとは対照的な前任者のコイズミは、少しでも非難をされれば、「そういうオマエはどうなんだ」式の、祖父譲りのタンカ。◇慶応ボーイのお坊ちゃんらしからぬこの風情がまた、異色の総理として、国民の溜飲を下げるという悪循環をもたらした。◇本当は、こんな男を論破するのはいちばん簡単なのに、論争に慣れぬ日本人は、先制攻撃に出られるとハハアーッと引いてしまい、逆に、そのやくざチックな迫力を、時代変転の象徴としてどこかで評価してしまうのだ。

◇そんな人間が、飯島秘書官演出のもと、竹中平蔵と組み、5年以上にもわたって破壊し続けた社会。その残がいがいまの日本である。◇しかし、いまさら小泉を批判すれば、一時は8割もが支持した国民にとっては、まさに自己否定。さすがにそれはできない。◇だから、マスコミも国民も、手軽かつ「たしかな」ところでの安倍政権批判と相成る。

◇今朝も、テレビ朝日のスーパーモーニングが、医療費等の切り上げに怒る巣鴨地蔵通りのお年寄りを映していた。◇しかし、それを断行したのは、お年寄りこそ真っ先に支持したはずの小泉政権。だが、コイズミカイカクの結果がこれなのだという風には、回路はつながっていかない。◇揚げ句には、日本社会の底流で、安倍批判→小泉再登場待望論までうずまく始末なのである。

毎日新聞中国総局の飯田和郎が、「重いツケ」と題し、コラム「発信箱」に書いている。(毎日新聞朝刊・07.01.18)。◇「『あの時』とは05年12月の第1回サミット(=東アジアサミット-筆者註)で、小泉純一郎首相(当時)が用意されたペンを使わず、隣の温首相にペンを貸してほしいと頼んだ時のことだ。靖国神社参拝への批判を突っぱねる小泉首相と、首脳会談を拒み続けた中国。それならばと、小泉首相はペンの貸し借りでの『交流』を試みた。虚を突かれた温首相は顔を引きつらせながらペンを渡した。(中略)一方の当事者にとって当意即妙のつもりが、相手方を、さらには背後の国民のメンツを傷つけた。中国人は何よりメンツを重んじる」。

◇飯田はさらに加える。その後の1年、中国は日本侵略戦争の被害者同士としてアジア諸国を巧みにオルグし、域内での主導権を強めたと。◇そして、「影響力を増す中国は日本を尻目に第2回サミットをリードした。安倍首相は前任者の演じたパフォーマンスのツケを懐に帰国した」。◇飯田は、小さなエピソードと大きな流れとを、うまくつないで表現しているといえよう。

◇ユーモアやエスプリと、芸能界的ノリとは違う。小泉は後者の達人だった。◇それこそが、国民に大ウケした。しかし、国際的な場においてさえ、この調子でつまらぬダジャレを連発し、あのブッシュに公然と注意されては大恥をかいた。◇おそらく、自衛隊のイラク派遣に関しても、この手の軽いノリが作用していたのだとIFSAは見る。

◇そして、ノリからくる決断の早さ。石橋を叩いても渡らない政治家を多く見てきただけに、国民はまた、石橋を叩きもしない異能ぶりに喝采を送った。何も考えないがゆえのアクションのすばやさに。

◇そして、小泉の正統的継承者を期待されて登場した安倍は、ユーモア・エスプリはもちろん、芸能界的ノリもゼロ。◇形だけ石橋を叩き、判断保留でボーッとしているような人物である。◇ワイドショーも、困った、切り口がなくて、というのが実態だろう。◇この程度の人間への批判では、カタルシスがもたない、さあどうしたものか。◇無理やりアッキーを仕立ててみても、誰もついてはこないし。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月20日 (水)

本間政府税調会長の豪華官舎愛人問題=小泉カイカク、それは口先権力者たちの草刈り場だった

★★ホンマに逆風 政府税調会長問題 与党に進退迫る動き
asahi.com(06.12.18)

◇何事にもけっして切り込まない朝日新聞(=少しばかりの本音は同社刊の両週刊誌にゆだね、ウサを晴らしている)。意外にも、サマにならないダジャレをムリして使っていると思ったら、記事内ではお得意の表現が。◇「問題の発端となったのは、東京都内の一等地の官舎に家族ではない女性と同居していると報じた11日発売の週刊誌報道」ときた。◇朝日の規準に照らせば、「愛人」は差別語とでもいうのだろうか。NHKを上回る時代錯誤感覚だ。

◇それはともかく、本間正明・阪大教授・政府税調会長の厚顔無恥なる所作。何はともあれ、品性の卑しさとセコさにはほとほとイヤになる。◇やり手ムンムンの面がまえは以前から気になって仕方がなかったが、閣僚をクビになるや参院議員まで平気でぶん投げる、弟子筋のそろばん高き竹中平蔵と連れ立ち、この程度の連中が中核ブレーンとして小泉内閣を支えてきた、いや、領導してきたのだから何とも救いがたい。

◇おおもとのコイズミは、テレビ向けワンフレーズを絶叫することで、旧来勢力へのファイティングポーズを印象づけ、国民の目線を常時引きつけるスキル以外、能力のない人間。◇そもそも、書類を熟読する程度のアタマの使い方すら、はなから嫌がるような人物なのだから、本間や竹中といった御用学者への政策丸投げもむべなるかなだ。◇これでは、投げられたほうがその気になり、全権委任で我が世の春を謳歌するわけである。

◇能天気な殿様あれば、やりたい放題の勘違い重臣あり。どの時代も同じことだろう。◇しかも、殿様のキャッチフレーズは、いつも絶対善に満ちたカッコいいものばかり。◇竹中や本間が、オレの天下とばかり舞い上がり、さらにまわりがそれをヨイショしたとしても不思議はない。

◇そう考えなければ、(本間がいくら無神経な人間であれ)経済財政諮問会議の一民間議員(大阪在住)風情で原宿の超高級官舎へ、さらには会長就任で最上階へとグレードアップ、しかも官舎内住人による衆人環視のなかでの「家族ではない女性」(朝日新聞)との同居、そんなことが実現されようはずもない。◇こうしたおごりは、コイズミの繰り出すカイカクの紋所、その威光と威力を背景にして可能以外の何ものでもなかろう。

◇オリックスの総帥で、長年にわたり政府の規制緩和関係委員会トップに君臨した宮内義彦。コイズミカイカクの最大ブレーンは、村上ファンド以来の逆風でマスコミから逃げ回っている。◇退任後の竹中平蔵は、またまた慶大教授に。慶応というのも変な大学だ。世渡り第一の彼は、次のポストの照準をどこに定めているものやら。◇竹中とはじっこんで一世を風靡した木村剛は、中心となって設立した日本振興銀行のゴタゴタ(現在は会長)で、鳴りをひそめている雰囲気。◇そして、ご存じ、村上世彰とホリエモン。そこへ本間正明。どこか共通項をもった、素晴らしいキャストではないか。

◇もしいまだ小泉政権が続いていれば、TMも本間問題もけっして明らかにはならなかったであろう。◇マジックが解けたからこそ、次々に出てくる。◇自民党政治家の、バラバラな発言もそれを象徴している。国民人気を背景に、統制のきいた小泉政権ではまずなかったことだ。◇たとえば、「イラク戦争、久間防衛長官『米支持は公式ではない』」・YOMIURI ONLINE(06..12.07)だって。本来であれば内閣が吹っ飛ぶほどの発言だが、民主党も深追いをしない。

◇それはともかく、「貯蓄から投資へ」を誘導し、競争原理一本やりで弱肉強食社会の到来をひたすら願う市場原理主義者に、この国をどうもっていこうなど、マクロのことを考える志向などあるはずもない。◇「官から民へ」や「規制緩和」などのきれいごとフレーズに隠された新手の利権誘導と自己保身、それに伴う変節。◇これらの武器を駆使し、新型権力者がばっこしているのである。

◇竹中などは、すでに小渕首相時代から政権へ取り入り、しかもその前半には、大盤振る舞いの財政路線をオーソライズ。しかし、以後はトーンダウン。◇森政権では、「IT戦略会議」(議長はカッコマンで、ソニーの惨状を導いた出井伸之)のメンバー。彼は、何を根拠にか、ITによる5百万人規模の雇用創出をぶち上げる。◇そして小泉政権では一転、絞り上げ財政路線と米国中心主義。◇コイズミ退陣に伴って御用済みとなるや、参院議員まで辞職し、次の儲け先へ。まさに、筋金入り・骨太の現実主義者なのであった。

◇そこへ、親方・コイズミに関する広告宣伝費の最新記事。◇「小泉政権官邸HP、5年の経費10億円・メルマガ8億円」・asahi.com(06.12.19)。◇また、例の174回TMは、初年度2千万円強、以降は1千万円前後(1回あたり)というから、仮に1千万としても17億円か。◇これを見ていたあの品性の本間先生が、官舎くらい!の金銭感覚と怖いものなさの権力意識に浸ったとしても、まああり得るでしょうねといったところだろうか。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月15日 (金)

日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(完)

今回は、以下の(上)(中)(下)を締めくくる、日朝平壌宣言関連・完結篇です。「日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(上)」「同・(中)」「同・(下)」では引き続き、2002年当時のIFSA・HP(その後、間をおいてブログへ移行)に掲載した日録風文章をお読みください

★02.11.08★
02.10.31の週刊新潮は、『外務省は知っていた、拉致日本人「死亡情報」』という記事を掲載している。趣旨は、そうした情報を出してもらえれば国交正常化交渉へ持っていける、その線でトップ(金正日総書記)と話を詰めてほしい、と日本の外務省高官が先方の交渉相手をミスリードしたというもの。◇もちろん、小泉首相もホイホイとそれに乗った。いまでこそ、拉致問題・核問題が解決されなければ正常化交渉などあり得ないと、白昼堂々の「転向」を成し遂げているのだが。◇その意味では、約束が違うという北朝鮮の抗議は、形式面において当たっているのである。もちろん、約2週間で一度は帰すといった約束においても。

◇ところで、第2回目の交渉のメドが立たないなか、テレビ市民主義は大いに焦りまくっている。◇このまま急に、拉致家族報道から降りるわけにもいかない、かといってもはや報道すべき新鮮な材料がない。◇不謹慎ながら、何かまったく別種の大事件が起きてくれれば、北朝鮮問題から自然な形でそこへシフトできるのにというのが、彼らのビジネス感覚に違いない。

◇だからこそ、その穴を埋めるように、連日、小浜と柏崎と佐渡にベテランの女性レポーターを張り付け、その日の天候だとか、安倍官房副長官一行を迎えるため、本人みずから家の掃除をしていたとか、愚にもつかぬ情報を厳かな声で流させてきた。◇また今週に入れば、金正日の生い立ちや北朝鮮の映像を毎日放映することともなった。

◇その上で、世界でも最悪の部類に入る独裁国家を俎上に載せ、何とも困ったものだ、それに較べて日本は・・・という笑っちゃう自慢話を、コメンテーター以下、皆で展開するのである。◇高校野球が三角ベース少年野球を引き合いに出し、優位を誇ったところで何になるというのだろう。大リーグと比較してもらわねばというのに。◇日本人は、一連の閉塞感を、北朝鮮との低次元な対比で<癒して>いるとしか考えられない。もしくは、ちょうと1カ月前に降ってきた、島津製作所サラリーマン・田中耕一のノーベル賞受賞で、一時的には<癒された>とでもいうのか。◇いずれにしろ、安直さたるや目を蔽うばかりだ。

★02.11.29★
◇現下の膠着状態に、テレビ・ワイドショーは内心困り果てている。◇北朝鮮の切手事情・芸能事情、あげくは金日成の長寿健康法、金正日のワインや刺身好き等々を、苦し紛れに、意味もなく取り上げている。◇アフガニスタンのときよりも更にすごい、重箱の隅的報道は、見ていて気の毒になるくらい。◇本当はもう止めたいのだろうが、11月中に決着がつくと勝手に思い定めていた交渉が暗礁に乗り上げてしまっているのだから、仕方あるまい。◇北朝鮮にはカードがない、日本にはたっぷりある、と自信満々に言いまくってきた評論家連中は、この現状をどう説明するのだろうか。

◇テレビは、自身の窮状を打破したい願いからだろう、論調のなかに少しずつ、このままでいいのだろうか、妥協が必要なのではなかろうかといった色合いを醸し出し始めている。◇ところがなぜか、現状に至った根因は小泉首相その人にありということだけは、誰も報じようとはしない。最初にあれだけ小泉を誉めてしまったゆえに、いまさら批判などできないからだ。

◇小泉は、田中均局長を中心とする「日朝国交正常化第一義」路線に便乗。歴史に名を留めようと野心をむき出しに、みずから訪朝しておきながら、世論の動向がヤバイと見るや、帰国後コロッと転向してしまった。可哀想なのは田中均その人だ。◇彼はおそらく、5人をいったん北朝鮮へ帰すと約束したのだろう。小泉や安倍晋三がそれを知らなかったなど考えられない。◇当初、10日では短い、せめて2週間だとか言っていたのは、いったいどこの誰だったのか。◇いずれにせよ、拉致をその程度にしか考えずに北鮮へ出かけていったことを、この事実は証明している。そして、日本に戻ってみて、空気の厳しさに当てが外れたというのが実態だろう、

★02.12.17★
◇小泉政権が森政権以上にとんでもない代物であることは、昨年の政権発足当初からくどいほど述べてきたし、拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人』(はる書房・2002年)においても、多くの紙幅を割いてその根拠を原理的に詳述した。◇そこにおいて私は、「予言」をしたのでもなければ、政治的な勘からそういった見解を述べたのでもない。小泉の手法が原理的に間違っていることがミエミエだったからこそ、素直にそう表出したに過ぎない。

◇しかし国民は、熱狂的に彼を支持をした。経済問題は犠牲にしてでも構造改革を!といっては、マゾヒスティックな支持を与えたのである。◇しかしなぜか、ここ数日の大マスコミによる世論調査では、小泉支持が急落すると同時に、構造改革よりも経済立て直しをという声が圧倒的に高まってきている。

◇何とも情けない話ではないか。国民が総出で志願をした<変革オタク><構造改革オタク>も、自身の懐が苦しくなり、いよいよ正直な実態を現したということなのだろうか。◇いったんこうなれば、国民もマスコミも無条件に近い支持を与えたいきさつなどすっぱりと忘れ、小泉批判の大合唱。そこには、自身の不明に回帰する姿など、微塵も見られない。◇02.01の田中眞紀子外相更迭、02.05の防衛庁による「情報公開請求者リスト」作成等で一度は落ち目に見舞われた小泉にもかかわらず、02.06の鈴木宗男逮捕という、コイズミにとっての順風に続き、一層の起死回生を目論んだ、あの仰天北朝鮮交渉に対し、頼まれもしないのに拍手喝采を送ったのは、いったい誰だったのだろう。

☆ときどきピンチを迎えながらも、コイズミの強運は以後も続く。03.03、米英軍がイラク戦争へ突入という大問題が発生し、小泉は何の躊躇もなく、決然とブッシュ政権を全面支持。「フセインがつかまらないから、フセインがイラクにはいないことにはならない。大量破壊兵器も同じこと」といったハチャメチャ論法で、またもや国民の支持を引き寄せつつ。次いで03.09、拉致問題で人気急上昇の安倍晋三を幹事長に起用、というサプライズ人事。そして最後は、05.08に始まる郵政解散と刺客騒動。歴史に残る小泉劇場の大クライマックスであった。そして任期切れが迫ったその後は、野となれ山となれのケセラセラで、外遊三昧ときた。(これらの項は、今回のブログにて追加)

◇本シリーズ《日朝交渉への直観》を一読いただければ明らかなように、IFSAは交渉自体の怪しげなところを最初から指摘してきた。◇これぞまさに、経済学者で慶大教授・金子勝のよく言う、「一発主義」(=コイズミのお家芸)の極致であるのが明らかだったからだ。◇しかし現在の膠着状態に至っても、世の中の批判は、聖域たる小泉純一郎本人にだけはけっして向かわない。あの事務方の田中均局長(=それでも、外務審議官への出世が約束されている)が悪いというわけだ。

◇もちろん当の田中にも、「一発主義」によってここ何年かの外務省の凋落を跳ね返そうとする目論見や野心があったことは否定できないだろう。しかし1年ほどの水面下での隠密行動を経てここまでもってきた腕力とネゴの力は、それなりに評価されて然るべき。◇あとは、それを首相として取り上げるかどうかだけの問題で、通常のバランス感覚を備えた首相なら、時期尚早として却下したことだろう。◇しかし、小泉だけは違った。「一発」による失地回復。そのためには、日朝平壌宣言ほど魅力的なマターもないと飛びついたのだ。◇かくして、理念としての「国交正常化交渉」が独り歩きを始める。そして、小泉や飯島秘書官の思惑どおり、マスコミも国民も「一発」の威力と爽快感に酔いしれた。

◇しかし政治というものは、具合が悪くなると、きまって官僚のせいだと言い募る。一方の国民は、エリートの高級官僚が叩かれさえすれば、いつでもスカッとする。◇なぜか。政治家へのそれとは違い、官僚批判をしているうちは、自身のイデオロギーを開示する必要がまったくないからである。◇富士山はきれいだとか、はげ山は汚いと言っているにそれは等しいといえる。「雨はいやですね」と言われて、反論するひとがいないような対象、それが官僚だということを、皆よく知った上で、官僚を批判しているのである。

◇ところで、もし本当に官僚が政治家を抑え込んでいるのであれば、鈴木某のような事件など起きるはずもなかろう。政治家にとって官僚とは、自身への批判の、便利この上ないバッファーなのだ。

動機がどう不純であれ、結果よければすべてよし。政治にはこうした一面もたしかにある。ただ、不純なら不純で、事前にシナリオをもっと詰めておかなければ、成功はおぼつかない。しかも今回は、相手が相手。にもかかわらずコイズミは、持ち前の「一発主義」でダーッと出かけていっては、あとは知らない、もう興味ナシ、でぶん投げた。(これらの項は、今回のブログにて追加)

その間隙を安倍晋三がうまく突き、北朝鮮への強硬姿勢を演じて見せたり、被害者家族に寄り添ったポーズを示しては、首相の座を射止めたのだ。小泉政権は、この安倍を最高度に利用。また癒し系の中山恭子を内閣官房参与に起用したりして、拉致問題がメーンテーマからフェードアウトするのを待った。☆そして世論誘導上、この「やらせ」(何もタウンミーティングばかりではない)はそれなりに成功したのだった。(これらの項は、今回のブログにて追加)

このようにして時系列的に追ってみると、日朝平壌宣言も郵政解散・刺客騒動も、どこか手法や構造の酷似しているのが見えてくる。それにしても、小泉政権も安倍政権も、やっていることが、まあ何と軽いことであろう。(この項は、今回のブログにて追加)

以上の「ドキュメンタリー風・日録」が、当時の空気を少しでも伝達できていれば、IFSAとしては幸いである。(敬称略)(完)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月13日 (水)

日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(下)

これまでの所論は、下記リンクからご覧ください
「日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(上)」「同・(中)」「日朝平壌宣言(02.09.17)」(外務省公式HP)
それでは、2002年の私のHP(日録風)からの引用を続けます

★02.10.07★
◇前回(註-02年アップのHP時点)の掲載から、はや2週間以上が経ったが、私の論は変わらない。◇いまは拉致問題こそが最大の外交問題であり、それはけっしてヒューマニティーな次元に留まるものではない、と相変わらず言い続けたい。◇テレビは知ってか知らずか、素朴ヒューマン路線+絶対善を主調音としている。そのほうが大衆受けすることを、職業的な勘で認識しているからだ。

★02.10.10★
一方の新聞は、大新聞の編集委員クラスが、いまだ次のようなご託宣を並べる。◇「拉致問題に特化した<感情論>に走るべきではない。きちんとした歴史意識をもって、日朝正常化交渉を希求せよ!」と。本人は高邁な知識人的観点から、国民にじんわり説教しているつもりのようだが、レベルの低さには失笑すらわかない。◇「国交正常化」なる美名(絶対善)こそが市民主義者の幼稚な<感情論>であることに、本人自身はまったく気づいていない。◇そこへいくと、「地球回覧ー『北朝鮮分析』のバイアス」=香港・鈴置高史(日本経済新聞・朝刊・02.10.04)の論考は冴え渡っていた。

当時のHPでは紹介していないが、スクラップブックから鈴置高史の報告の一部を引いてみたい。以下は、当ブログ執筆時点での追補である。◇「『北朝鮮は世界各国と関係を改善する』→『日本はバスに乗り遅れる』→『拉致事件にこだわり国交正常化を遅らせるべきではない』といった『空気』を(北朝鮮は-筆者註)日本に醸し出してきた(後略)」。◇「今も『感情論に流され国益(=国交正常化-筆者註)を無視すべきではない』との意見が一部で語られる。だが、国民の生命救出を『感情論』と片づけるのは言語道断だ」。◇「そもそも、(北朝鮮が-筆者註)日朝首脳会談に応じたのは米国の強硬措置を避け、さらに米国を交渉に引き出すのが最大の狙いだ」。◇これこそが、「感情論」に流されない記事の見本といえよう。

★02.10.22★(註=02.10.15に5人の帰国が実現)
◇やはり「まやかし」はうまくいかないものである。そのことは政府にも、また、いい加減な知識人・マスコミにもいえる。◇北朝鮮自身が核開発を行っていることを認めた、と米国が公表。そして、日本政府は日朝平壌宣言以前にその事実を知っていたことも明らかになった・・・。◇「まやかし」とは、そのことを指している。◇<とにかく国交正常化を!>という「感情論」の正体と、それが何を導くかが、逆証されてしまったのだ。

◇9月17日の平壌宣言以降1カ月、小泉政権の交渉を絶讃し続けてきた識者たちの声がここで途端に小さくなり、テレビ出演の機会が減ったのも偶然ではない。◇さあ、困った。あとにはもう、ヒューマン路線一本やりと、飢餓による北朝鮮自壊シナリオしか残されていない。◇この程度の良識派ぶった識者に乗せられる前に、われわれは最低限、「日朝平壌宣言」全文を読むことから始める必要があろう。A4・1枚にも満たない文章を見れば、誰でもがその問題点に気づくに違いないのだから。

★02.10.26★
◇テレビのニュースショーやワイドショーにおける司会者やコメンテーターの口吻に接していて、チャンチャラおかしいと思うことがある。◇あの、世界に冠たる独裁国家の北朝鮮と比較し、日本は自由で民主主義的な国だと、みずからの手柄のように自慢する人間の、いかに多いことか。◇私は、かつての左翼論法よろしく、以下のように言いたいのではない。「たしかに北朝鮮は不自由な国だろう。だが、この日本もはたして自由といえるか。通底する不自由さの本質は、日本も北朝鮮も何ら変わりはない」などと。◇そんな程度の意味でなら、私は逆に言う。日本はきわめて自由な国であると。

◇ここで指摘したいのは、そうした次元の話ではない。あの識者たちがアプリオリに、自由や民主主義を誇らしげに自慢する資格がどこにあるのかということだ。日本人はその獲得のために、はたしてどれほどの努力をなしてきたかということだ。◇敗戦直後からの米国による政策的な「民主主義化」に、ほぼ100%おんぶしてきただけではないのか。

◇たしかに、それにうまく乗ってきたという国民性は、ある意味で稀有の特技であったとしても、化石のような北朝鮮と比較し、その進捗度を自慢する傲慢さと軽薄さ、無責任さは到底認めがたいものがある。◇どさくさに紛れ、上前だけはねるような調子のいい識者連中に、国民がなぜ嫌悪の情を露にしないのか。それが不思議でならない。

★02.10.29★
◇IFSAは、この《日朝交渉への直観》シリーズのスタート時から一貫して、「拉致問題への固執=感情論」といった愚論を批判してきた。◇拉致への怒りと悲しみは分かるが、最大の課題は日朝国交交渉だ、拉致問題はそのなかでこそはじめて有効に解決され得るという、彼らのもっともらしい言説を、IFSAは嘲笑してきた。◇ところがどうだろう。北朝鮮の核開発問題が明るみに出されるや、日朝正常化交渉最優先のあの小泉内閣が真っ先に、「拉致・核開発問題が解決されない限り、正常化交渉には入らない」と180度の路線転換をしてしまったのだ。◇もちろんこれは、政府がようやく正論に目覚めたというよりも、核問題に絡む米国からの強烈なプレッシャーを受けてのことであるのはご存知のとおり。

◇ワイドショーやニュースショーなど「ビジネスとしてのテレビ市民主義」は当然のこと、新聞・学者・評論家のなかにも、旧来の「国交正常化第一義論」を唱えるものはもはやほとんど存在しなくなってしまった。◇彼らはつい10日あまり前までの主張に口を拭い、するっと得意の「転向」を成し遂げたのだ。

◇私が拙著で繰り返し述べてきた「日本的転向」と「リセット」。◇残念なことだが、この物指しを手に日本社会の動きを見てみれば、たいていのことは見えてくる情況にいまだある、といえよう。(敬称略)-今週金曜日につづく-

このシリーズは今回の(下)にて完了の予定でしたが、分量配分の関係上、明後日アップの(完)にて完結篇とします次回も是非お読みください

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月11日 (月)

日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(中)

☆本論の前に、是非とも「日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(上)」(06.12.08)をお読みいただければと思います☆なお、「日朝平壌宣言」は、外務省公式HPにて簡単に閲読できます(左記下線をクリック)。

◇それでは、日朝平壌宣言が出された2002年9月17日以降、同12月までの日録風叙述を、私のHPから引用していくとしよう。少しでも当時の雰囲気が伝われば幸いである。◇なお、再録に際しては、趣旨を変えない範囲で要約・削除・字句の修正を加えた部分がある。

★02.09.17★
◇日朝交渉が終わったばかりの17日22時:30分時点の直観をメモしておきたい。◇マスコミ、特にテレビは、ここ1週間ほど、金正日総書記は普通のおじさんだという環境作り(プロパガンダ)に専念してきた。◇本日(17日)の昼間の放送でも、この雰囲気は続いた。そして拉致された数人の安全が、その筋の話として流されるや、ホンワカムードは一層高まり、あとは「段階的にかえしていただく」式の日本的大甘路線が独り歩きを始めた。◇コメンテーターの伊豆見元・静岡県立大学教授などは、本当に専門家かと思えるような楽天的空気で、小泉オマージュ一色に染まっていた。◇そこへ、拉致被害者の多くが既に死亡している、との発表が公式になされる。◇そのため、夜のテレビニュースやニュースショーは、昼間との落差をいかに埋めるべきかに苦心惨憺し始めた。

テレビ朝日の特派員はその夜、現地から、外交を取るか人命を取るかという判断だったといった趣旨の報告をした。とんでもない。拉致問題こそ最高度の外交問題との認識が、そこからはすっぽりと抜け落ちている。◇ヒューマニティーだけの問題に矮小化されてはたまらない。ここにも、私が拙著で繰り返し述べた「単純な二分法」と、過去をなかったことにしてしまう「日本的リセット」が顔を出している。まず何よりも国民の人命を守るのが、外交の最大の目標ではないのか。◇さて明日以降、日本の世論はどんな方向へ動くことであろう。

★02.09.18=①
◇朝10:00時点の直観を以下に記す。◇今朝のTVワイドショーを見ていると、拉致問題に関しては次のような論調の顕著なことが分かる。◇拉致被害者家族は納得できないと思う→国民感情としても納得できない→しかしコメンテーターたちは、それ以上のことはけっして言わないものの、「国交正常化が最大の目的であり、小泉首相の尽力により、それに向かって踏み出せたことはよかった」という流れのなかに、実際はある。◇「今後こういうことが起きないためにも、対話が必要」といった優等生的物言いに、それはよくあらわれている。

◇もしそうであるのなら、「たしかに家族には気の毒だが、最大の眼目は国交正常化なのだから、今回の交渉は大成功」となぜ正面から言わないのか。自分を救うような小細工を弄さないで。◇だが、私の意見は違う。拉致問題という国家主権への侵害こそが、スタートにあたっての最大の問題、との認識がIFSAにはある。◇ふたりの首脳のイニシャルがK・Jなどと、くだらないことを言っている場合ではないだろう。◇しかそれにしても、外務省の腐敗ぶりにあれだけ悲憤慷慨していた進歩的知識人・市民主義者たちが、「国交正常化」という耳障りのいいタームを前にして見せてしまう、あまりのもろさ。情けないを通り越す。

◇フジテレビでは、小倉智昭が言う。「不審船問題を事前に知らなかった」という金総書記の発言、案外そういうこともあるのかな、と。いわゆる裸の王様論だ。◇伊豆見・静岡県立大学教授が応じる。そうかもしれない、ただ今後、金総書記はそういうことは言えませんよ、と。◇私のいう、日本的市民主義知識人の水準を、この会話は端的にあらわしている。

★02.09.18=②★
◇夕方のテレビ東京のニュースで、コメンテーターの天野祐吉が次のような趣旨の発言を行った(録音をしたわけではないので、あくまでも要旨)。◇「こうした異常なことが起こるのは、日朝の関係が異常だからだ。よって、まず何よりもその異常な関係を直すしかない」と。◇ここには、日本の進歩的知識人のもっともらしい言辞が、象徴的にあらわれている。北朝鮮という国のとてつもない異常を、日朝関係の異常へと巧妙にすりかえているからだ。

◇これでは、国交のない国に対して拉致をなしても、それは両者の関係性の責任といわんばかりではないか。◇とにもかくにも、<国交正常化>という絶対善に対してケチをつけるヤツは許さぬという、理想主義的非現実主義がそこには満ちている。しかも彼らは、それをこそ真の<現実主義>と錯覚しているのだから救いようがない。

◇小泉首相は、なぜ平壌宣言に署名したのかという批判に対し、それではあそこで椅子を蹴って帰ってくればよかったのかと、一国の首相とは思えない子供っぽさで切り返した。◇なるほど、私とてそれはかなり難しかっただろうことはよく分かる。だが、話を平壌以降に留めるからそうなるのだ。◇そもそも首相が出かけていくタイミングだったのかという原点にしっかり立ち返れば、問題はよりクリアになってくると私は考える。

★02.09.19★
◇拉致被害者の家族を見るのはつらい。しかしその上で言うのだが、「ご家族の真情を思うと」式の定型句を前段におきつつ、事態をクールに把握すべきだ、国交正常化への道は何ものにも優先されるべきだ、と「結果的に」言っている識者の意見を、私は認めるわけにはいかない。◇日本政府の対応が原理的に間違っているからだ。物事は「原理」を巡って論じ合うべきである。

◇日本の進歩的知識人の「原理」は、あくまで誰とも無条件に仲良くすること。共産党による小泉支持がまずそれを端的に物語っている。社民党もモグモグ言いながら、結局は国交回復至上主義に変わりはない。小泉同伴知識人も然りだ。◇当面は、彼らが扱いかねる「ご家族のご真情」も、覚めやすい日本の国民性とマスコミの志向からして、いずれ収束するだろうと彼らは見ているに違いない。◇だが、私の言う「原理的に間違っている」ところの「原理」は、時間とともに問題を先鋭化させこそすれ、風化することなどけっしてないだろう。いずれ重く効いてくる。そのことをいまこそ銘記すべきなのだ。

★02.09.20★
◇テレビは、以下の論調で溢れかえっている。<拉致問題は人道問題!国交正常化問題は外交問題だ!>と。◇とんでもない。他国へ不法侵入し、その国の国民を誘拐し、自国へ連れ帰る、これをこそ最高度の外交問題といわずして、何が外交問題だというのか。◇その意味では。金大中事件もまさにそうだったのに、これまた外交問題化を避けた。◇今回の日朝交渉の原点は、外交問題にしか存し得ない。極めて単純な話だ。◇にもかかわらず、テレビでのアンケートでは、①金総書記の拉致謝罪?=圧倒的支持②今回の調印=圧倒的支持③国交正常化=圧倒的支持④結果として、小泉内閣支持率急上昇・・・とくる。そして拉致問題への対応は?と問われれば、圧倒的不支持。

◇ここには、私が拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人-日本的閉塞社会論-』(はる書房・2002年)で繰り返し述べた、日本人の基本原理が見事にあらわれている。◇<絶対善>への無条件的帰依と、各論たる現実的ダイナミズムへの無関心!◇この径庭を、夕刻のニュースショーで木村太郎が、「国民の冷静な判断」と絶讃した。バランス感覚ある国民に較べ、グタグタ言っている一部の識者や政治家たちは何だ、と。◇保守の権化のような木村太郎までもが、私のいう「市民主義者」だったとは、何ともびっくりさせられる。

一億総市民主義者!実はこの点こそが、昨今の日本社会最大の問題なのである。(敬称略)-つづく-

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月 8日 (金)

日朝平壌宣言とは何だったのか。もう一度当時の情況に戻り、考えてみる必要がある(上)

◇スタート地点は、何といっても「日朝平壌宣言」(2002.09.17)。これは、外務省の公式HPから簡単に入手することができるので、ご覧いただきたい(左記アンダーラインをクリック)。◇何度も述べたことだから、あらためては触れないが、この文章が雄弁に物語る「思惑と背景」だけは、その曖昧な文面からも明確に伝わってこよう。

◇さて最近、以下のような「IFSA注目のマイナーな記事」的報道に接した。

★★宗男激怒「田中前外務審議官を参考人招致すべきだ」
ZAKZAK(06.12.04)

◇「宗男氏が問題視するのは11月1日発売の『現代』(講談社)に掲載された田中氏と、ジャーナリスト、田原総一郎(ママ)氏の対談『金正日の計算、体制崩壊の可能性』での次のようなやりとり」。◇「新党大地代表の鈴木宗男衆院議員が激怒している。日朝首脳会談など北朝鮮外交で“暗躍”した田中氏が、雑誌で『北朝鮮が(核開発に関して)嘘をついていると認識を抱えながら日朝平壌宣言を締結した』とも取れる発言をしているからだ」。◇私もいずれ図書館へ行き、「やりとり」を読んでみるとしたい。◇それにしても、鈴木宗男というのは、コトこういう点にだけは勘のいい男だ。

◇もう1本は、講談社のHPにあった以下のタイトル。ある報道で知っただけで、これもまだ中身には接していない。◇ただ、田中均発言も含め、いずれも私の想像どおりであり、だから2002年以来ずっと申し上げてきたでしょう、と思わず言いたくもなってしまう。◇もしこれらが事実としても、驚くどころか「想定内」。全然不思議ではないということだ。

★★安倍晋三【首相】が拉致被害者を切り捨てた平壌の夜
「週刊現代オンライン(06.11.30)」のタイトルから

◇さらに、「講談社HP・週刊現代」のクレジット・タイトルにはこうある。◇「弊社社長宅にまたもや安倍首相から笑止千万の『通告書』が舞い込んだ。本誌の『媚朝外交』追及は『美しい国創り』に合わないらしい。イケメン総理の仮面を剥ぐ『媚朝外交』追及第4弾!」。◇田中均・田原総一朗のドンクサ二人組による、どうせ眠いだろう放談など後回しにし、こちらだけは早めに見ておかねばと思う。

◇それはそれとして、本題に戻ろう。◇私は、02年の秋に開設したHPにおいて、10篇近くの「日朝平壌宣言批判論」を展開した。結果は、無惨なまでの袋だたき。オマエは、拉致被害者が帰ってきたことにケチをつけるのか、コイズミの功績でないというのか、というわけだ。◇いや、ほんの一部の被害者であれ、帰ってきたことは実にうれしい。だが、この宣言締結自体は原理的に間違っている。そう言い続けたところ、「だからオマエは原理主義者なんだ」と、友人からも唾棄される始末。いやはや、時代の熱気というものは恐ろしい。

◇当時の私の主張を要約すればこうなる。◇コイズミは、失地回復のため、田中均らがあたためてきた「日朝国交回復」シナリオに飛びつく→それが、宣言の文面にはよくあらわれている。拉致も核も、そこにはもちろんナシ。目的は、ひとえに「日朝国交回復」→そして、一部拉致被害者の「一時帰国」了解をとりつける→首相以下は意気揚々と帰国→10月15日に拉致被害者のほんの一部である5人が一時帰国。◇まあ、ここまではよかった。◇すると、マスコミ・世論は「一時帰国」に猛反発→政府は、読み違いにはじめて気づき、「一時帰国」の考えなどはじめからなかったことにする→そして、5人は北朝鮮へ戻すことなく永住へ。

◇と同時に、日朝平壌宣言の目的は「日朝国交回復」にあったのではなく、はじめから、第一義は「拉致問題解決」にあったのだと、見事な宗旨替えを実施。◇私はここに、宣言締結時に北朝鮮へなした、何らかの約束破棄があったと見る。一時、北朝鮮が異常に反発し、強気に出た理由もここにある。◇そして安倍晋三は、この見えざるチェンジを巧みに捉え、オレは拉致問題の解決をこそ最優先で考えてきたと喧伝。一躍、国民の関心を引きつけたというわけだ。

◇この時点で、コイズミのノーベル平和賞はもちろんチャラに。◇ただ、「見えざるチェンジ」は見事成功し、またマスコミは知っていながら追及もしないため、コイズミの人気は急上昇。◇これ以降、まずは進展しないのが分かっている拉致問題を、偽善的なリボンを胸にごまかし続け、いまに至ったという次第である。

◇では、当時の日本社会を蔽う空気はどんなものだったのだろう。◇それを、2002年09~12月にアップした私のHP(アップのための使い勝手が悪く、その後閉鎖)向け文章から引用してみようと思う。◇そこには、私自身も忘れていた日本の「雰囲気」の一端が見て取れるからだ。

◇次回は、その引用から始めるとしたい。(敬称略)-来週月曜日につづく-

なお、北朝鮮問題は、当ブログでもすでに、「日朝平壌宣言を読むことから始める」と題して06.07.05に論じている

★★[IFSA]★★阿部道生   倍晋三【首相】が拉致被害者を切り捨てた平壌の夜

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2006年8月22日 (火)

小泉首相における「心の問題」

1カ月におよぶ入院中は当然ながらベッドでの生活がベースであったため、背中の筋肉が落ちてしまったのでしょう、椅子に座るとすぐに疲れてしまい、なかなか執筆とはいきません。でも今日は退院から1週間、だいぶ回復してきましたので少しずつでも書いていくこととしますお伝えした再開が遅れてしまい、申し訳ありません

◇入院中はベッド際にある小さなテレビをよく見ていた。スイカのような先進のICカードに千円をチャージすると、20時間のテレビ鑑賞が可能。長ったらしいCMにあたれば、カードを抜いたりしていた。セコイようだが、お金を払ってまでCMを見せていただくなど間尺に合わないからだ。◇病院の消灯は21:00。慣れてくると20:30には眠くなって就寝。05:00前には目覚めとなる。この季節、日の出が04:30過ぎとは、これではじめて知った。◇朝食まではすることがないので、自然にテレビを見ることとなる。従来は08:00頃から見ていた番組の前座を、おかげでたっぷりと味わうことができた。

◇そこで感じたのは、どの民放も各種新聞をベースとしたコメント合戦のオンパレード。テレビ朝日が昔からやっていた「やじうま新聞」の焼き直しである。◇この全面的な新聞依存は、あれだけ大金をかけている報道局の無力さを証明しているみたいで、可哀想になる。◇そしてみずから新聞にあたることのない視聴者はこれをつまみ食い。このなかから絵になる部分だけをピックアップしたテレビ局は、朝8時以降のワイドショーでそれを本格的に「報道?」するという仕掛けになっている。◇05:00前からテレビを見てみて、その実態がよく分かった。早起きさまさまだ。

◇そんななか、靖国におけるコイズミの「心の問題」発言が各局で取り上げられ、あれだけコイズミカイカクを称揚してきた論者たちがそれを批判しているのが目についた。論調は大半がケシカランというもの。◇だが綿密にコイズミを追いかけてきた私としては、思わず嗤いを禁じ得ない。コイズミ自身は、はぐらかしでそういっているのでも何でもなく、本心から「心の問題」と思っているからである。それがコイズミの本領、そしてそれをこそ5年間愛してきたのが国民でありマスコミ、それを器用にもあっさりと忘れてしまっている「無意識の転向」に同意せよという方がムリというものだろう。

◇小泉には最初から心の問題しかない。旧田中派への私怨もしかり、その延長線上にある郵政問題もしかり。だがしっかりと彼を支えてくれる青木と森だけは無視できないから、道路公団カイカクは狡猾にも形だけに留めておく。◇喧伝されるアメリカ好きも、観光ガイドブックが言う程度のヨコスカ的雰囲気の剽窃に過ぎないのであって、若い頃にどぶ板通りや若松町を歩き回り、基地に入り込んでの体感的なそれとは到底思えない。だからせいせいがプレスリー。あくまでも「心の問題」の次元を一歩も出ることはない。

◇こう見てくると、小泉の内面においてもっとも無縁なものは、「構造」的な発想であるということがよく分かろう。この哲学的・社会学的概念ほど、彼が理解不能なものはない。社会学辞典を引くまでもなく、手元にある電子版・スーパー大辞林(三省堂)から引用するだけでそれはよく分かろうというもの。いわく、「さまざまな要素が相互に関連し合って作り上げている総体。また、各要素の相互関係」だと。◇この定義がコイズミに似つかわしいという人がいたらお目にかかりたい。彼にはそんなアタマはもともとないのだから。 にもかかわらず、彼の政策理念のトップに「コウゾウカイカク」を掲げさせた人物の秀逸なこと。飯島秘書官なのか、優秀な官僚なのか、そのスタッフが誰であったのかは不明なままなるも。

◇とにもかくにも、バブル崩壊後のアパシーに浸る国民のモヤモヤを「構造」なる生硬な概念できりっと集約させ、そこにかぶせるのは、何と手法と語り口とパフォーマンスが一流のコイズミの「心」のみ。この絶妙なミスマッチ(=矛盾)が、閉塞感から抜け出せないながらも、向こう傷を恐れて自分ではカイカクになど乗り出したくない国民とマスコミの代償行為願望を十二分に満たしたのであった。◇だからこそ、いまさら靖国における彼の「心の問題」発言に異を唱えたところで、あまりにずれている。あのコイズミに、靖国を「構造の問題」として捉えろという方がむしろどうかしているではないか。◇彼は言う。「私は靖国へA級戦犯を参りに行っているのではない」と。これは言い訳ではあるまい。むしろ、「構造」が分からない人間の面目躍如と私には見える。

◇すべての問題を「構造」ではなく「心」の問題で処理してきた小泉政権。イラク戦争における大量破壊兵器問題だって、米国支持だって、イラクへの自衛隊派遣だって、少しでも「構造」が脳裡を過ぎる首相なら、悩んでしまってあんなことはできやしない。平板な「心」が唯一の思想信条だからこそ可能だったコイズミの産物といえよう。◇何の屈折もなく「心」を明快に語る前代未聞の首相。その一点にのみ支持を捧げたのはいったい誰だったのか。あとでこの負の5年間を悔いたところで遅いというものだ。◇若い連中に浅薄なナショナリズムが受けるのも、この「構造なき心の問題」と密接な関係があるに違いない。

★★[IFSA]★★Michio Abe

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2006年7月 5日 (水)

◇日朝平壌宣言を読むことから始める◇田中康夫知事擁立者の転向

「機種依存文字」という用語が世の中に存在し、それをHPやブログで使うと検索に大きな支障を来す場合があるとの、この世界では自明の事実を知りませんでした。「にほんブログ村」というサイトのQ&Aを読んで、はじめて気づいた次第です。☆今は当然ながら個人商店で、企業時代のように教えてくれる部下もなく、まったく独力でのブログ開設。汗の出るようなことがいろいろあります。☆今回もまたGoogle検索にちっとも引っかからない。その理由が、案外こんなところに隠れているのかもしれません。ということで、典型的な「機種依存文字」らしき丸数字(数字をマルで囲ったもの)を、中身ばかりかタイトルにも平然と使っていた以下の文章、これを一度削除し、その部分だけ直して再録します。☆テポドン?発射の日に以下の文章を再アップというのも皮肉なものです。☆なお、Google検索に引っかからない理由のいくつか(禁則等)をご存知の方は、一般論で結構ですからお教えください。☆

[昨日(06.06.15)の出来事から(IFSAの視点)]

私は朝日・毎日・読売・日経・産経・東京・共同・ZAKZAK(夕刊フジ)・日刊ゲンダイの電子版ならびに新聞の地方版、各種HP・ブログ、テレビ等を毎日見ては、この6年間データバンクを作ってきていますが、今後はそのなからIFSA的感性が受信したものを素材に、簡単なコメントを加えていきます。ご愛読ください。

■★★「北朝鮮人権法が成立 拉致で経済制裁促す」 
(06.06.16・KYODO NEWS)

◇2002年の小泉訪朝直後から、IFSA通信はそれへの批判を書き続けた。そしておまえはへそが曲がっていると批判され続けてきた。◇当時の私の視点はこうだ→→→★小泉にとっての拉致問題とは、国民をあっと驚かせ、眞紀子更迭で落ちた人気を回復できればいいだけのテーマ。よって、もともとの主命題ではない。★それは02.09.17の「日朝平壌宣言」を読めばよく分かる(外務省のHPですぐに閲覧可能)。拉致に関しては3番目の項目で、「また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」の一文を掲げるのみ。なお、内容自体の歪みと文章の稚拙さはここでは問わない。★調印をした小泉は、生存とされた5人を帰国させればこの問題はすべて完了と考えていたはず。そして「国交正常化」を経てノーベル平和賞を。★だが帰国してみてびっくり。国中から拉致問題に本質的解決を迫られるとは夢にも思っていなかった。★慌てて「拉致問題の解決なくして国交正常化(交渉)なし」に修正。とってつけたような大転換をマスコミは追及しない。★これこそがいまだに尾を引く原点だ。「拉致問題はここまで」と軽く考えた小泉が、現地で金正日と何らかの約束をしていても当然と私は考えるからだ。よって、金正日が今もってそこを突いてくる。◇ここに頬かむりをしたまた乗り切ろうとした結果が、この4年弱だったというわけだ。◇にもかかわらず、平沢勝栄をはじめとする大甘の政治家や評論家の大半は、(02年秋から)半年もすれば北鮮は経済疲弊(餓死続出)で白旗を揚げてくると言い続けていた。それが正しかったかどうかは一目瞭然だろう。そして自己批判は何もないいつもの風景。◇一方の拉致被害者家族会は、小泉首相におすがりする、期待していると表明してきた。気持ちは分かるにしても、相手がコイズミであることへの認識が希薄であったのは否めない。◇そして、できもしない、もしくは、やりもしない口だけのファイティングポーズをとる安倍晋三が、幻のコワモテとイケメンとで次期首相候補第一位。この国の浮つきぶりは度し難いものがある。◇この際、「日朝平壌宣言」の再読から始めるべきであろう。そのスタート地点にこそ問題点が凝縮されているのだから。◇最後に、マスコミはなぜ北鮮をあの日から北朝鮮と言うようになったのか。なぜそれまでは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と必ず言っていたのか。是非ともチェンジの理由を聞きたいところである。

■★★「茅野実氏が知事批判の意見広告
『生みの親』 地元紙に」

(06.06.16・YOMIURI ONLINE・長野版)

◇田中康夫を長野県知事に押し上げた最大の功労者のひとりである茅野実(八十二銀行頭取から会長を歴任)が、かなり前に田中応援団を降り、田中批判を展開している。◇こうなると、日本人はその批判にだけ注目をする。だが私は違う。私が何十年前から主張している「転向論」は、その入口というか入射角、すなわち何故に茅野が田中を支持するに至ったか、その内的必然は何だったのかをこそ原点から問うものである。◇もちろん人間には間違いがあるし、逆に支持の対象が予想外の変貌を遂げることもあり得る。だから私は、従来の「転向論」のように、その道義的責任を問題にしようとするのではない。どういう論理や思考回路から支持に至ったかを再度明確にしたうえで、それをなぜ翻そうとしているのか、そこをこそ語るべきとシンプルに思っているに過ぎない。「転向=変貌」に際してそれがどのように総括されたのか、そこがいちばんポイントなのである。◇しかし日本社会では往々にして、「相手が悪いから私は支持を止めた」で片づけられていく。そして本人はつらっとして新しい相手を探しにいく。そこには何のaufhebenも見られない。だから間違いの連鎖となる。◇田中眞紀子がコイズミを熱烈支援し、捨てられるや猛烈批判に転ずる過程も同じこと。そのプロセスにこそ、本当は日本的な欠陥が凝縮されているのだから、たとえ後ろ向きと言われようとも。その解明を抜きにしての発展はあり得ない。だが「終わったことを言っても仕方がない」が大好きな日本社会には、こうした作業はクドイ・シツコイとしか映らない。◇私は02年08月発刊の拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人-日本的閉塞社会論-』(はる書房)で、小泉純一郎・田中眞紀子・田中康夫を徹底的に批判した。今にすれば予想があたったといった次元ではなく、私の論理と生活的感性からいえば、この3人がダメなのは最初から自明なことに過ぎなかった。生活人の視点に立ち返れば誰にでも分かるはずの簡単なことが、日本を挙げてどうして分からなくなってしまうのか、それが私には不思議でならない。そしてその不思議さの根因を解明したのが拙著であったというわけだった。◇今日もまた、総括なき心情的転向が諸所で繰り広げられている。(敬称略)

★★[IFSA]★★Michio Abe

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2006年7月 2日 (日)

「そういうオマエはどうなんだ」式論法で5年間を乗り切った小泉首相

*ブログアドレスが変更になったため、本文は(06.06.30)アップ分の再録です。

[昨日(06.06.29)の出来事から(IFSAの視点)]

■★★「首相靖国発言は決めつけ・言い過ぎ」高村元外相が批判
asahi.com(06.06.29)

◇「自民党の高村正彦元外相は29日、小泉首相が『中国側の言い分に従いなさいという人たちが、靖国参拝してはいけないという人たちでしょう』と発言したことについて、『靖国に参拝する人は戦争を美化する、軍国主義を称揚する人だと決めつけるのと同じように、言い過ぎだ』と批判した。高村派の例会で語った」。小泉は同時に「何回行こうが問題ない」とも語っている。◇彼のように、政治家一家で女ばかりの家庭のお坊ちゃん、当然ながら小さい頃からちやほやされ、企業には一度も勤めたことがない人間(すなわち上司から叩かれたコトもない人間)が示す精神病理的範疇の問題がここにはあらわれている。自分にちょっとでも反駁を加える者は、議論の手前で排除する、絶対に許さない、批判されればされるほど、相手の根が尽きるまで意地になって跳ね返す、小泉の人生哲学はこれだけなのだ。

◇靖国は「心の問題」と言い切れば、すべては排斥できると彼は本気で信じている。「オレ様の心」に何の文句があるかと、「心から」言っている。その素朴さと幼稚さがそもそも政治家という存在に背馳する、などは意に介さない。◇子どもが、「法を犯していないのに何が悪い」と口ゲンカするにそれは等しい。法を犯してはいないけど、という分野を取り上げ、適切に処理していくのが政治の主たる任務なのにである。さすがの米国議会があきれるのもむべなるかなと言えよう。

◇しかし本日問題にするのはこの点ではなく、彼の得意な論法についてである。これもまた子どものケンカと同様で、「そういうオマエはどうなんだ!」。これが彼の最大の武器といっていい。そして、対案路線が次期政権政党の要件と勘違いした前原的・松下政経塾的オバカの民主党は、この戦法に手も足も出なかった。かつての社会党のような、「批判のための批判はしない」という、お門違いの呪縛から逃れられずに。◇小泉は、頭脳構造からして自分の考えを正面より説明することはできないし、そこを質されると顔色を変える。直感以外に根拠がなく、論理的な説明などできる代物でないのをみずから本能的に知っているのだから。そこで出るのが、「オレの発言をウソと言うけれど、そういうオマエはどうなんだ、オマエは此の方ウソをついたことはないのか。先に言っみろ」。

◇今回の「中国側の言い分に従いなさいという人たちが・・・」論法もまさにその好例。そもそも靖国とは歴史的にどういう成り立ちで、それがどういうふうに戦中・戦後とリンクしてきたか、首相なら真っ先にやってしかるべきそうした論理展開は、小泉にははなからムリときている。まずは自分の提起した問題を自分から丁寧に説明するのではなく、対立軸をもってきてはその非をあげつらい、それをもとに自身を正当化する、もしくは中和する。まさに「そういうオマエはどうなんだ、オマエは此の方ウソをついたことはないのか。先に言ってからにしろ」の真骨頂がここにある。◇しかしコトは子どものケンカではなく、一国の首相をめぐる次元の問題。まずは横綱が堂々と受けて立ち、ところで幕内(野党)のあなたはどうですか、世の中の筋とはこういうものだろう。

◇そうはいっても、この異常ぶりが国民には大受けだから始末が悪い。◇「そういうオマエはどうなんだ」は絶妙の切り返し!株価の下落を聞かれて「株は上がることもあれば下がることもある」は「人生いろいろ」「米国牛の選択は国民の好みで」と同レベルの軽さではあっても、当意即妙のフレキシブル!「株価が上がったが」に対する「それは小泉カイカクの成果さ」は、一貫してカイカクに邁進してきた自信の披瀝!◇だがその実態は、与党から提案したはずの教育基本法改正案を、みずからほとんど理解せず国会へ臨む姿に如実に見て取れる。◇「政府の教育基本法改正案に、教育の権限の在り方という視点があるのかという小沢氏の質問に『教育の権限や財源を与えてくれという要求が地方は強い』と、ずれた答弁を続け、小沢氏から『自分で提案した法案をもう一度見てほしい』と皮肉られる始末」(Chunichi Web/06.05.18)。

◇こうやって過ごしてきた5年間をいまさら後悔しても遅い。小泉が辞めれば、当然ながらこのとんでもない論法と熱気と国民の支持といった共同幻想体は一気に消滅するし、実績は何もないどころか負の遺産ばかりだから、秋以降には問題の本質が露呈する。そして小泉がいなくなった途端、マスメディアは「だから言わないことではない、われわれははじめから分かっていたし、指摘した」の論調で、小泉政治の大批判を始める。一方の国民は、頼まれもしないのに熱狂的支持を与えたのをケロッと忘れ、とんでもない政権だったの大合唱。まあだいたいこんなところであろう。◇私の論調が一見醒めたような、高みの見物のような物言いに聞こえるとすれば、IFSAは小泉登場のその日から、この政権のカラクリを分析し、真っ正面から異を唱えてきたから、にもかかわらず・・・といった、5年にわたる虚脱感のしからしめるところかもしれない。(敬称略)

★★[IFSA]★★Michio Abe

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小泉首相の本音はこんなところにポロッと出る

*ブログアドレスが変更になったため、本文は(06.06.28)アップ分の再録です。

[一昨日(06.06.26)の出来事から(IFSAの視点)]

■★★小泉「選ぶのは個人の問題」…韓国より大甘条件
7月末にも店頭に…米国産牛肉輸入再開

ZAKZAK(06.06.26)

◇日米首脳会談のために小泉が米国産牛肉の輸入再開を急いだのは周知の事実で、これを今さら彼の本質などと言い募る気もないが、ZAKZAKは民主党・山田正彦衆院議員の言葉を借りながら、日韓の甚だしい対応差を紹介している。詳細は記事に譲るが、その結果、「韓国は『米国牛肉処理施設に問題があったとして今月7日、再開を延期』した」という。◇一方の日本は、ブッシュ・コイズミ間の「諸条件を検討の結果」、輸入再開を強行するというわけだ。

◇ただ本日IFSAが注目するのはこの点ではない。◇まず第一は、「4月末には、米国の牛肉処理施設を査察した厚生労働省と農林水産省の調査報告書が国会に提出されたが、全体の70%近い数十ページに黒塗りが入るなど、戦時中の情報統制下と見間違うほどの異常さだった」。これはワイドショーでも詳細に報じられたが、異常のレベルを超え、最初から国会と国民をなめ切ったもの。◇それでも一向に怒らない国民であるから、まさに何でもありだ。こんなことを絶対にさせない、実証科学的な対応を当たり前のようにさせる、ここからの変革こそがコウゾウカイカクではないのか。しかしこんなことはまだまだ小さい。次が最大の問題なのだ。◇「首相は輸入再開合意を受けて21日、記者団にこう語った。『米国産が良いのか、日本産が良いのか、それぞれの好みもある。値段も高い、安いがある。さまざまな観点から、安全、安心どちらを評価するのか。それは個人の選択の問題だ』」と。

◇このトーンは人生いろいろの無責任さを思い出させるが、今回はそれだけでは済まない。◇①問題の重みを把握できない本質的なアタマの悪さ。②格差社会における、カネのない側の国民には、安い米国産牛肉がなければ正直なところ困るだろう、といった度し難きブルジョア意識。③イラク参戦であれだけ、世界の安全を守るとヒステリックに言い募りながら、もっとも手近にある国民の食の安全問題には意が届かないという、芸能人的バーチャル感覚。◇まだまだあるが、これ以上言及するのもバカらしくなったから止める。そこでひとこと。上記コイズミ発言を冷静に分析すれば次のようになる。◇「[好み・値段の問題vs.安全・安心]。その選択は個人の問題だ」とコイズミは言っているに等しい。この両者はそもそも比量されるべきアイテムなのか。◇であれば、薬害はあっても、安い薬を選ぶかどうかは国民の選択、ということになってしまう。冗談ではない。薬害のある薬は、国が即刻販売中止にさせる以外、選択肢などあるはずもなかろう。「国民の選択」など取り上げてしまわなければいけない問題なのだ。

◇コトバの勢い以外に何もない、小泉のアタマの悪さがここには顕著に露呈している。そして国民は、そのアタマの悪さからくる話しぶりの勢いをこそ愛している。そこにヘンカクの芽を見ている。

◇それにしても、ZAKZAK以外にこのことを詳述したマスメディアがどれほどあるか。私自身の見逃しの可能性も高いものの、いまだ見当たらない。首相官邸のHPでも見ることができない。◇それを探していたため、「昨日の出来事」が「一昨日の出来事」になってしまった。(敬称略)

★★[IFSA]★★Michio Abe

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「道路建設などムダな公共事業」の観念性

*ブログアドレスが変更になったため、本文は(06.06.20)アップ分の再録です。

◇道路建設問題には日本的二分法の不毛がもっとも顕著にあらわれる。一方には田中角栄的無際限の建設派、他方には「道路を造るからクルマが増える」の非現実的・倒錯的な進歩的知識人派。日本という国はいつもこのせめぎ合いで終始してきた。私に言わせれば、両方とも観念的そのものなのだ。55年体制に引き当てると、自民党も社会党も観念的ということ。これは拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人-日本的閉塞社会論-』(2002.08・はる書房)に詳しい。◇その間隙を縫って登場したのが例の小泉カイカクときている。田中角栄的利権を封殺するフリをし、他方では旧社会党的観念論との違いを巧みに演出しながら、前提なき(=イデオロギーなき)ゼロからの見直しを標榜する。これが大衆には大受けし、市場原理主義という時代錯誤イデオロギーの存在は、競争社会実現の正義の名のもとにうまく隠された。そんな仕掛けが5年間跋扈し続けた。

◇そしてその実、現実性はゼロの、観念的カイカクのオンパレード。だから振り返ってみれば、何をカイカクしたのか、実態がさっぱり見えてこない。アンケート調査に出会えば、今でも国民の60%ほどは小泉カイカクを評価すると答えるが、項目選択違法ではなく、カイカクされたものを挙げよと言われれば、おそらくひとつも言えまい。それとも、道路公団や郵政と、きっぱり言い得るか。◇国民の財産をジャブジャブと貯金から引き出しては都合よく移転した不良債権処理で銀行を救い、メガバンクに空前の決算をもたらしたことが最大の「実績」とくるから信じられない。◇そんな中での、なぜだか今年の正月を期した「格差社会」の大合唱。5年かけて営々と格差社会を形成し、マスコミも国民もこれを支持し、そして揚げ句の果ての格差社会糾弾論。これほど不思議な国は世界にもないだろう。

◇ところで道路だが、竹中とともに「総理が仰っているので」のゴマすりフレーズが十八番(おはこ)であった石原伸晃。当時分かった風に言っていた「第二東名不要論」や「熊しか歩かない北海道の高速道」など、体験に基づくことのないいい加減な発言は他に類を見なかった。自分の目で見て考え、ハラに入れることもせず、うわべの思いつきを口にしているにすぎなかったからだ。◇私の結論はこうだ。第二東名は必須、北海道にはこれ以上の高速はいらないと。

◇石原をはじめとする第二東名嘲笑論者は、まず自分の運転で東名を走った経験がどれほどあるのだろう。黒塗りにふんぞり返っての視察は別にしてだ。私の経験では、中央・東北・関越等に比して東名の混雑ぶりは傑出している。文字通りの数珠繋ぎ、しかもトトラックが圧倒的に多い。日本の経済的大動脈であることが肌で感じられるし、それが既に限界点に達していることもよく認識できる。一刻も早い第二東名の開通が望まれるのは自明というほかなかろう。◇石原たちはアタマだけの知ったかぶりで言う。「第二東名は東京までこない。東京の手前で現・東名に合流するなら、渋滞を増やすだけで意味がないではないか」と。嗤うしかない。彼らは東名・大井松田西等々の2路線化機能をご存知だろうか。あの有効性を見た上で、それでも最後は1路線に合流するのだから意味がないと言い張るのだろうか。◇自身で体験しない人間たちが、石原たちの一知半解な主張をそうだそうだと聞くのだから、話はますます観念論の泥沼に入っていく。そしてその観念論が現実を仕切り始めるのだ。

◇次は北海道の高速。何度も自車やレンタカーで走り回ってきた経験からすれば、北海道ではこれ以上の高速道建設は即止めるべきと考える。現状でも地平線まで一直線にのびる一般道で十分だが、あとは制限速度を上げる措置を併用すれば、一層効果があがる。一般道で制限速度70kmがあってはなぜいけないのか。◇行政のこの硬直した姿勢が、実のところムダなインフラを作らせる遠因にもなっている。東京周辺では一般道を走る限り、どんなにうまく走行したつもりでも平均時速30kmを上回ることは不可能なのを私は体験的に知っているが、北海道に限ってはそんなバリアは本来ない。

◇行政措置との柔軟な組み合わせができない日本の石頭が、あちらこちらに停滞と浪費をもたらしている。一部の湾岸線を除き、首都高の制限速度はいまだ60km。十人が十人疑問に感じているし、それを守っている人間などは、ときどきいる「流れの見えない」クルマくらい。しかも60kmを厳守したら東京全域の大渋滞は必至であり、逆に言えば速度違反のお蔭で首都高の渋滞は緩和されているとも言える。それなのに制限速度は60kmで何十年も知らん顔。速度違反で捕まえようと思えば、いつでもできる。いったいこれは何なのだろう。◇一度全車で首都高走行60kmを守る合法ストを決行し、都内中をマヒ状態に陥れでもしなければ、彼らは重い腰を上げないであろう。

◇話は飛ぶが、6月から始まった機械的駐車取り締まりにもこれがいえる。◇従来のミニパト形式のかったるさ。交差点直前などに駐めているクルマは、すぐにつかまえれば済むものを、ほとんど迷惑をかけてはいない駐車とそれらを同列に扱う。またテレビでよく放映される「名古屋駐車」。これだけ伝えられてもvividな取り締まりは行わない状態を継続しておきながら、現地警察の交通課長が6月からの措置で大いに効果があったと「感謝」を表明。これを倒錯と言わずして何と言おう。◇メリハリを付けない取り締まりが限界に達すると、今度は例外なき一網打尽。いずれにしても当事者の価値判断を放棄している点では本質的に変わりがない。◇750ccの白バイが、明らかな無謀運転車に狙いを定めず、50ccの原チャリばかりをつかまえては成果を誇っている光景をよく目にする。われわれが迷惑をする原チャリごときだろうか。つかまえれば同じという、効率を優先し効果を無視したエセ平等主義がここでもまたまかり通っている。◇建前だけの日本社会がこんなところにも顔を出しているのだ。

◇なお、国土の血管にあたる高速道路建設の是非が、単位時間あたりの通過車両数だけで判断されるべきでないのは言を俟たない。たとえば、友人がいて私自身何度かクルマで行ったことのある三重県の南端近くの熊野市周辺。紀伊半島沿いに東西から高速道路がない不便さは救いがたい。◇人が少ないから高速はいらないということにはならないのだ。政治的誘致合戦は厳にはねのけ、マクロ的見地からひとつひとつ各論でつぶしていく建設可否の判断、その科学的認識と勇気・膂力こそが日本社会全体に求められていると言えるだろう。道路建設の分野に限らず。(敬称略)

★★[IFSA]★★Michio Abe

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