2009年2月27日 (金)

コイズミこそ「笑っちゃう」=読み違いばかりで焦りの色濃い現代の<東照大権現>さま

東照大権現とは、徳川家康の死後に後水尾天皇から家康へ勅諡(ちょくし)された神号。その裏では、黒衣(こくえ)の宰相と呼ばれた僧天海の力が大きくあずかったといわれる。◇あの軽~いコイズミを東照大権現になぞらえるなんて家康に申し訳ないが、あながちカリカチュアとばかりも言い切れないアナロジーがそこにはある。

◇ところで江戸時代のほうは、天海の思惑に反し、<東照大権現→東照宮>というイデオロギー操作(=共同幻想構築)が成功することはなかった。民衆の底辺にまで浸透するほどの広がりはみせなかった。

◇一方の21世紀初頭、わがコイズミ東照大権現はピーク時80%以上にもおよぶ国民からの支持を得、これだけ構造改革のイカサマ性が明らかになったいまでさえ、首相候補の2位か3位にはつけている。◇そう、あの種の手合いを日本国民は大好きだからだ。

◇飯島秘書官をプロデューサーとする座長・コイズミは、在任中の5年間、みずから酔いに酔った。◇彼の唯一の目標は、怨念(おんねん)満載の旧田中派つぶし。だから自民党をぶっ壊すとは、旧田中派をぶっつぶすに等しかった。

◇あの郵政民営化も、コイズミが郵政大臣時代いじめられたことへの仕返しの側面があるにせよ、大もとは、田中派の牙城たる郵政族への爆弾投下だったのは間違いがない。

◇郵政解散もまた、田中派への怨念がなせるわざにすぎなかった。◇そう考えなければ、郵政ごときが解散のメーンテーマになるなど想像すらできまい。通常の神経であれば。◇自民党の国会議員ほぼ全員がぶったまげたのもムリはなかろう。

◇そしてこの個人的怨恨(えんこん)のコイズミ流カタルシス(=コイズミはとにかくしつこく、根に持つ性格だ!)に国民はまんまと引きずりこまれ、みずからコイズミを熱狂的に支持してしまった。

◇コイズミ-飯島ラインが賢かったのは、真意を見抜かれまいと、竹中平蔵を道具として利用しまくったこと。◇わけの分からぬアメリカっぽいグローバリズムが、泥臭い私怨(しえん)を隠すに格好の大義名分となり得た。◇そして竹中は竹中で、自身の利害からコイズミを積極的に使い尽くした。

◇ばかを見たのは国民だけということか。◇いやもっと正確に言えば、日本社会が最大の犠牲者となった。◇現在のテイタラクを見ればそれはもはや明らか。ゆえに多くの国民がコイズミカイカクに疑問をいだき始めた。◇ようやくといった感じで。

◇しかしわがコイズミ東照大権現は、意外にも鈍感な男である。微妙な空気の変換に気づきはしない。◇そりゃそうだろう、安倍晋三を後継者に任命したり、麻生太郎を必要以上に引き立てたりと、首相当時からピンズレが際立っていたのだから。◇ヨミの甘さはいまから5カ月前にもあった。そしてこれが、昨今のコイズミの焦りの源となっている。

★★『首相在任の間に 能力使い切った』
地元支持者に 小泉氏、引退を説明
TOKYO Web・2008.09.28

◇この時点ではまだ余裕しゃくしゃく。「小泉氏は今後、自身が顧問を務めるシンクタンクを拠点に政治活動は続ける考えを明らかにした上で、『環境保護と経済発展の両立、食の安全に力を入れたい』などと述べた」。

◇ぶっ壊すと豪語して何も変わらない自民党へ次男を四世議員として送り込む。これこそ<笑っちゃう>だが、キングメーカー気取りの大権現は気にもとめない。◇環境だ、食の安全と、まあ達観を装っていること。判断の背景には以下のような事情も存在したからである。

◇だがこれまたド・ピンズレに陥ろうとは!コイズミの想像力では到底読めなかったのだろう。まったくかわいそうに。◇期待した解散なんてちっとも実現されなかったのだから。

★★【国交相辞任】10月3日解散濃厚に
中山氏辞任うけ、公明が態度硬化。
MSN産経ニュース・08.09.29

◇IFSAは麻生が解散などするはずもないと一貫して主張してきたが、上記産経新聞は大方の専門家ともども大はずれ。◇コイズミもまたその例外ではなかった。麻生はすぐさま退陣、しかし次男は当確でgood!など、のんびり思っていたはずだから。

◇麻生が粘りに粘り、ひいては郵政民営化批判に打って出るなど、<小政局天才>のコイズミは想像だにできなかった。◇ましてや麻生との緊密連携のもと、鳩山邦夫総務相が<かんぽの宿問題>を徹底究明し始めようとは。

◇こりゃヤバイ、引退している場合じゃない!しかしいまさら撤回はできない。◇引退や落選をすれば国会議員もただのひと。権力に対し、何の防護壁にもなりはしない。◇それを知悉(ちしつ)しながらのコイズミの大誤算、それがスタートラインについたのだ。

◇「郵政民営化を堅持し推進する集い」の幹事会での発言<★★小泉元首相「怒るというより笑っちゃうくらい、あきれた」 麻生首相の郵政民営化発言に・MSN産経ニュース・09.02.12> & モスクワでの記者会見<★★給付金「衆院再議決なら欠席する」小泉元首相が明言・asahi.com・09.02.18>での引きつったようなマジ顔は、怒り・焦りと同時にこりゃどうにもマズッた!を見事なまで映し出していて、IFSAは大いに笑えた。

◇軽薄なテレビワイドショーは、小泉劇場第2幕とはやし立てたものの、続いたのはせいぜい2~3日がいいところ。◇さすがの国民もここまで痛めつけられればもはや冷静で、へえぇっといった風情アリアリだから始末に負えない。◇テレビが煽っても、それ以上の広がりは見せなかった。

◇しかもコイズミの読み違いは、これだけにとどまらない。◇今度はタイミングとしての不運が襲ったのだ。◇<★★中川財務相、G7会見で”迷言” 「深酒」や「居眠り」疑惑・TOKYO Web(共同)・09.02.15>といった迫力を前にしては、コイズミ劇場などいまさら幕も開けられまい。

<★★「究極の愉快犯」 菅代行が小泉氏批判・MSN産経ニュース・09.02.14>は菅直人らしいキレなるも、現在のコイズミには<愉快犯>的ゆとりなどあろうはずもない。

◇コイズミも竹中も、郵政民営化の<逆行>を怒って見せているうちはまだよかった。◇それがかんぽの宿を入り口とする大疑惑問題へ発展ときては、穏やかでいるなど土台ムリな相談ではないか。

◇他方、竹中平蔵もびびりまくっているであろうし、彼の大臣秘書官をつとめ、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授にうま~くおさまった岸博幸にあっては、<★★「かんぽの宿」への政治対応はモラルハザードの塊・DAIAMOND online・09.02.06号>といったオドオド丸出しの文章を書きなぐり、必死に自己正当化を試みている。

◇「今回の騒ぎに乗じて、様々な政治家や評論家の類いの方が発言していますが、『宮内会長はけしからん』、『売却価格が安過ぎる』、『地元の資本に売却すべき』など、呆れる位に感情論ばかりです」。

◇「第一の問題は、かんぽの宿の一括売却という日本郵政の経営判断を否定するのは、郵政民営化の流れを逆行させるのに他ならないということです」。◇「(前略)年間の赤字は40億円です。鳩山大臣の意向によって、日本郵政は今後数年に渡り多額の追加的なコスト負担を強いられることになるのです。このように民間で当たり前の効率経営が否定されるのは、民営化を逆行させることに他なりません」。

◇「第二の問題は、オリックスの宮内会長が規制改革会議の議長だったことを以てオリックスの入札を否定するならば、政府のすべての審議会について同様の見地からメスを入れるべきではないか、ということです」。

◇「厚生労働省のグリーンピアだって、年金保険料2000億円をつぎ込んだのに48億円で売却されたのです。1万円で譲渡したかんぽの宿が6000万円で転売されたと喧伝されていますが、民営化前の公社時代に行われた極端なケースを以て現在の民間経営を否定するのはおかしくないでしょうか」。

◇もういい。しょぼすぎるからやめておこう。詳しくは岸の原文をご覧いただくとして・・・・・・・。◇どちらがモラルハザードかはそのうえでの判断にお任せしよう。◇コイズミ・竹中、そしてその周辺の関係者たち。攻撃は最大の防御とばかり打って出る気持ちを、IFSAも分からないではない。

◇あくまでIFSAの推論にすぎないが、郵政民営化の闇には東京地検も多大の関心を寄せていることだろう。◇もちろん郵政分野に限らず、<規制緩和→民営化>の美名のもと、行われまくった多くの利権に対しても。

◇余談だが、その後の東京新聞にはこんな記事が掲載された。◇<★★2年内でも譲渡可能 かんぽの宿 対オリックス 契約に『ただし書き』・TOKYO Web・09.02.20>。◇なるほどというべきか、やはりというべきか。

◇IFSAの記憶では、落札後もオリックスは雇用を守ってくれる、だから表面価格の多寡だけで論じられても困る、日本郵政はそう言っていたはずだけどネ。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2009年2月 1日 (日)

IFSA注目の<ベタ>記事=<ワークシェアリングにだまされるな>ほか(09.01.18現在)

★★麻生と心中か麻生を切るかの岐路
Today's Gendai メール ・2009.01.13

◇「内閣支持率はついに20%を切り、逆に不支持は70%台に急上昇」。◇「このままでは自民党も公明党も選挙で消えてなくなるぞ」。◇サラリーマン時代の愛読紙、日刊ゲンダイの最近はず~っとこんな”恨み節”的調子で、これじゃ買う気にもならない。

日刊ゲンダイといえば大昔から自身での取材はほとんどなく、いつも評論調。◇しかしそこには多少の毒が含まれ、企業の仕事で神経をすり減らしたサラリーマンには格好のリフレッシュ剤となっていた。◇だから私も、茅場町駅のホーム売店でついつい手にして。

◇しかし一日でも首相の座にとどまりたい麻生太郎相手には、ゲンダイ的手法は無力。◇だから毎日毎日、こんなことをしていると日本はつぶれるゾのご託宣ばかりとなる。◇こんなものでは<逆リフレッシュ剤>。おそらく購読者も急減していることだろう。

◇麻生は解散などする気なし、せっかく就いた首相の座に一日でも長くとどまりたいと、当初からIFSAはずっと主張しているのに、総裁選後すぐ解散せめて年内には解散・・・・・の希望的観測にすがったマスコミは、一様に裏切られずっこけた。◇シニカルなはずの日刊ゲンダイも同様だからシラケル。

◇従来のゲンダイなら、麻生首相、やりたきゃ最後までやれよ、それを前提に民主党、さあどうする?そうした<逆張り>戦法へ打って出たはず。◇日刊ゲンダイも市民主義に堕したものだ。夕方の楽しみがなくなってしまった。

◇ネットでお世話になっている夕刊フジ(ZAKZAK)のほうがよほどおもしろい。◇古いけど<オレンジ色の憎いヤツ>ってか。

★★ワークシェアリング浮上してきたが
・・・労使「同床異夢」
asahi.com・09.01.09


◇「ワークシェアリングは過去にも議論された。完全失業率が5%台と雇用情勢が悪化した02年、政府、旧日経連、連合の3者が導入に合意した」。

◇「従業員同士が労働時間短縮と賃金引き下げを受け入れることで企業内の雇用を守る『緊急対応型』短時間労働者を増やすことで新規雇用を創出する『多様就業型』が提案された。さらに政府は導入を促すため、財政支援も行った」。◇しかし結果はといえば、誰も動かず・・・・・・・だったのはご承知のとおりだ。

◇動かなくて当たり前だろう。IT不況下で編み出された絶対善的詐術としてのキレイゴト。◇例のコイズミカイカクと同様、日本社会はどうしてこうもコトバ(=名辞)に弱いのか、本当にいやになる。

◇IFSAは拙著にも書いたし当IFSA通信でも指摘してきた。当時テレビのスイッチを入れれば、自民党の政治家まで言いまくっていた○○のひとつ覚え、<ワークシェアリング>&<セーフティーネット>はいったいどこへいったのかと。

◇笑っちゃうのは、ついこの間のリーマンまで、この2語を話す政治家なんてもうどこにもいなかったではないか。◇そしてこんな状態になるや、とってつけたようにきれいで便利な概念を持ち出す。◇彼らの免罪符?まったく冗談ではない。

◇それにこの<ワークシェアリング>。現在の日本社会で本当にそれができるというなら、実際やって見せてもらいたいものだ。

◇なるほど、一斉休業や賃金カットや希望退職という名の早期退職などはわれわれ現役の頃もいやというほど経験させられてきたから、大ざっぱにこれらをワークシェアリングと呼ぶなら、おそらく明日からでも着手可能だろう。◇いや、方々でもうとうに行われていよう。

◇だから問題となるのは、もうひとつの<ワークシェアリング>である「短時間労働者を増やすことで新規雇用を創出する『多様就業型』」のほう。◇調子のいい学者・評論家・マスコミはすぐにでもやらなきゃなんて言うけれど、じゃあまずは下請けいじめのテレビ局から率先して始めてみたら。

◇具体的に考えてみよう。現在2人でしている仕事量を2/3にし、1/3部分を新規採用の人に譲る。◇だからいまの社員の給料はひとまず2/3に。その上で、業績悪化につき賃金はさらにカット。◇結果、企業内人間関係も仕事の効率もガタガタになる。

◇これで正社員の生活が成り立つのならそれでもよいが、そんなことはまずあり得ない。それが実情だ。◇しかし識者は言う。<大企業の正社員はいい目にあいすぎている>。◇冷静に振り返ればすぐ分かることだが、試験を受けて入社した<正社員>ってそんなに悪なのか。目の敵にされる対象なのか。月給泥棒か。

◇ここにもあえて<大企業>を持ち出す詐術が巧みに埋め込まれている。◇いや、上記のことが可能なら、社長のほかに社員2人の小企業であれ、2/3繰法は同じくやれないことがない。別に大企業じゃなくたって理屈上は。

◇ぎゅっとつめてくれれば、7人がけの座席もあと2人は座れるでしょう式の机上の空論がはびこっている。◇いいかげんなことをもっともらしく言ってもらっては困るのだ。

◇そんな連中のデタラメ発言こそ本質を見誤らせるものと、われわれは糾弾しなければならない。◇<ワークシェアリング>だ<セーフティーネット>だと煙幕を張りつつ、一方では労働環境のハイパー規制緩和を敢行。◇それが現在の非正規雇用を中心とする崩壊社会を生んだであろうに。

コイズミ・竹中(+)宮内たちをはじめとしたハイエナのごとき規制緩和論(=自分たちのフィールドへの有利な引っ張り込み)。◇彼らの思惑を隠す作用しか果たさぬ<ワークシェアリング>論など軽々に信用すればまたまただまされるということを、今度こそわれわれは肝に銘ずる必要がある。

◇すぐ持ち出されるオランダのワークシェア。インフラの整っていない日本社会へ即刻導入可能のように装おうたって、そうは問屋が卸さない。◇まずは調子のいい<名辞>にだけは引っかからない!彼らのオレオレ詐欺的甘いささやきはすべて疑ってかかる!スタートはそこからだろう。

◇コトバなんかじゃなく、現実に分け入るところからしか解決策は見つからないのだから。◇運動もせず、カロリー制限もせずにサプリメントで即効性あるダイエットをだって?◇一見遠回りにみえても、日本社会の実態改善から取り組む。まさに<急がば回れ>だ。

★★風力発電、近所で頭痛・不眠 環境省、風車の騒音調査
asahi.com・09.01.18

◇<風力=地球にやさしい=エコ>。これもまた<名辞>の詐術であることはIFSA通信ですでに指摘した。

◇「新エネルギーとして期待されている風力発電所の近くで、頭痛やめまい、不眠などの体調不良を訴える住民が増えている。原因は解明されていないが、風車から出る音が関係していると考えられており、環境省が調査に乗り出した」。

◇「騒音を測ってもらうと、低周波音で家が振動しているのが分かった」。

★★関空路線、国内・国際で減便相次ぐ 成田への集中進む
asahi.com・09.01.18

◇こんなことは開港当初から分かっていたことでありながら二期工事まで突き進み、本四連絡橋・東京湾アクアライン同様の惨状へ。◇そして燃料高騰や国際金融危機がその本質を一層あぶり出した。

◇たとえば、<★★日航と全日空、関空国際線の減便を検討 財界は存続要求・asahi.com・08.07.15><★★関空に寒風 燃油高響く冬ダイヤ、運休・減便相次ぐ・asahi.com・08.11.10>等、話題にはことかかない。◇トヨタの主体的参入で優等生に見えた中部国際空港も、過剰公共投資の正体をあらわし始めた。

★★中部空港 相次ぐ路線減 新規開設 追いつかず
「負のスパイラル」懸念も
YOMIURI ONLINE・09.01.27

◇「中部空港の国内線と国際線を合わせた航空旅客数は、統計値が出ている08年11月まで9か月連続で前年実績を下回っている」。◇「世界同時不況で世界的な観光需要の落ち込みとビジネス客が減少するなどしたためだ」。

◇「中部国際空港会社は2009年3月期決算で連結経常赤字に転落する見通しで、業績回復と2本目滑走路建設に向けた道のりは一層険しいものになりそうだ」。◇こんな状況下で静岡空港の開業ときたもんだ。それでも強行した現静岡県知事に個人的弁済を求めるのがスジだろう。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★【ドラマ・企業攻防】東京「ホテル・ウォーズ」第2幕
シャングリ・ラ上陸も「外資vs国内勢」の攻守逆転
MSN産経ニュース・09.01.18

◇東京の異常な風景といえば、とんでも規制緩和による超高層ビルの乱立。そのオフィスタワー?へ決まって入るのが、外資系ホテルだった。しかも法外に高い宿泊費。◇だがこのアブノーマル現象にも急ブレーキがかかっているらしい。何ともすっきりする産経の記事ではないか。

◇「シャングリ・ラ東京をはじめとする外資系高級ホテルは、都心の再開発計画の目玉と位置づけられ、空前の開業ラッシュが続いてきた」。◇「規制緩和によりオフィスビルに宿泊施設などを併設すると容積率が割り増しになるため、デベロッパーが競うようにホテルを誘致した」。

◇「ただ金融危機で外資系のお得意さまである外国人ビジネス客が激減する一方で、国内の老舗ホテルが、ここぞとばかりに巻き返しに打って出ており、攻守が逆転した」。◇「生き残りをかけた『外資vs国内老舗』の顧客争奪戦の激化は必至だ」。

◇「外資系にとっては、世界的にデフレが進行し、消費者の節約志向が強まるなか、これまで武器にしてきた”高級”が、逆に弱点となる」。

◇「浮き沈みの激しい”バブリー”な欧米金融機関のビジネスマンを主要顧客としてきた外資系とは異なり、おなじみの固定客が多いことに加え、節約志向で海外旅行から国内旅行への回帰が進んでいることも(国内老舗ホテルにとっては-筆者註)追い風で、不況の影響は外資系に比べれば比較的小さい」。

◇産経の記者は実にていねいに報道してくれている。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年11月 5日 (水)

IFSA・週なか掲載=かなり気になる、先週の <ベタ扱い>的重要記事(08.11.02現在)

★★麻生vs北海道新聞女記者
・・・連夜の豪遊批判に激怒
ZAKZAK・08.10.22


◇首相なんだから、どんな高いところで食事をしようが酒を飲もうが勝手にどうぞの世界で、こちらの知ったことではない。◇へんに格好をつけ、大衆的なところで飲んだからといって、<庶民派>に変身するものでもない。そんなこと、してもらう必要もない。◇ただ現代の政治というのは、一般大衆(=マジョリティー)の<生活>を知らずしてできるものでないことだけはたしかだろう。

◇なぜなら戦前とはちがって現代の<政治>は、一部特権階級の独占物や上からの<施し>ではないゆえ、大衆社会と位相を同一にしないかぎり成り立たないようになっているからだ。◇国のトップがたとえ大金持ちだろうが旧貴族の出身だろうが、政(まつりごと)自体は大衆社会内のそれでないかぎり存在しえない。◇その程度までには日本の民主主義も成長してきたとはいえよう。

◇それを考えるとき、九州の財閥だからといって責められる必要はさらさらない麻生太郎!となろうか。◇しかし、大衆の生活諸相を知らないでいいということにはならない。◇だから、プロレタリアートがブルジョアジーを弾劾するような古典的方法によってではなく、<そんな雲の上の生活ばかりで政治などできるの?>くらいのちょっかいを出したとて何ら不自然なことではない。◇大いにからかってあげれば結構!といえよう。

◇今回の勇気ある、もしくは記者クラブ的にはKYな道新の女性記者(=何とZAKZAKは<女記者>ときた。お里が知れないだろうか!)がどんな意図で聞いたかは別にして、「『1晩で何万円もするような高級店に行っているが、庶民感覚と懸け離れている』」の意見をぶつけたこと、IFSAはエラかったと評価する。◇大手報道機関の政界べったり記者にはとうていなしえない新鮮さ。それだけでもgood!ではないか。

<★★投げ出し・福田の”本性”を暴いた記者の”正体” 「あなたとは違うんです!」の「あなた」・ZAKZAK・08.09.03>をご記憶の読者も多かろう。◇「『”ひとごとのように”とあなたはおっしゃったけどね、私は自分自身のことは客観的に見ることができるんですあなたとは違うんです!』。福田首相は1日の辞任会見の終了間際、国民注視の生中継ということも忘れて気色ばんだ」。

◇「この答えを引き出したのは、広島県の『中国新聞』の男性記者(37)が質問した『総理の会見が国民にはひとごとのように聞こえる』という言葉だった」。◇官邸詰めのベテラン政治記者にはない素人っぽさというかパラダイムの違いに、福田首相も思わずプッツンし、本年度流行語大賞にもノミネートされかねない迷言を暴発させてしまった。

◇これはまた、準大手・産経新聞配下のZAKZAK(=タブロイド紙・夕刊フジの電子版)をして以下のように言わしめる快挙だった。◇「『他人顔』とも揶揄された福田康夫首相を、辞任会見の最後の質問で切り崩した地方紙記者に注目が集まっている。首相は激怒したものの、官邸記者特有の”間合い”にとらわれない乾坤一擲(けんこんいってき)の質問は、首相の”素”の部分を引き出した」。

◇この中国新聞若手記者は、「官邸のほか、永田町の各記者クラブも掛け持ちしているため、いずれのクラブにも滞在時間は短く、官邸担当だった全国紙記者も『1度も見たことがない』というほどの存在感だ」。

◇今回の麻生ぶち切れもこれと類似し、つまらなぬ言い訳&逆ギレを披瀝(ひれき)するに至る。◇「『例えば、安い所に行ったとしますよ。周りに30人の新聞記者がいるのよ、あなたも含めて。警察官もいるのよ。”営業妨害”って言われたら何と答える? 今聞いてんだ。ふふふ』などと、得意の逆質問をまくし立てた」。◇一国の首相が記者をつかまえてのゆとりのなさ。格の違いを見せつけるべき場面でサ。

◇しかし麻生太郎、いったい何を言っているんだろう、営業妨害うんぬんと。◇こんな言い方は、ホテルじゃどうも座りが悪い、神田や新橋の飲み屋じゃなきゃ調子が出ない、しかし立場上・・・・・・・といった人間がのたまうセリフだろう。◇行ったことすらない、または行木もない居酒屋を例にあげての反論?実に小ざかしい。

◇どこで飲もうと、国民の琴線に触れる政治をすりゃいいんでしょう!まかせといてよ!くらいのソフトなぶち切れをしてみたら、まったく。◇情けないったらありゃしない。

◇程度が低い、品がない、ウイットもない、気位だけは高いじゃ、もとより支持率などお呼びでない。◇コイズミほど天性の役者魂があればまた別だが。

★★株価最安値更新に首相「一喜一憂しない」
民主は一斉に政権批判
MSN産経ニュース・08.10.28

◇「(前略)衆院議院運営委員会の川端達夫民主党筆頭理事は、麻生首相が同日昼の記者団とのぶら下がり会見で、東証の前場(ぜんば)のことを『マエバ』と言い間違えたことを踏まえ、『”マエバ”といって、(首相が自身を)経済のプロだと言っていたのがハッタリだとばれてきたのではないか』と皮肉った」。

◇<ラグビーの選手が勢い余ってマエバを折った>じゃあるまいに。◇それとも、証券業界の符丁に<マエバ>があるのだろうか。ちなみに、野村證券のHPでは「ぜんば」となっている。

◇オレはそこいらの首相とはちがい、経営者をやってきた実業を知っているだから経済を肌で分かる麻生。◇社内の階梯(かいてい)一歩ずつ。そんなことすら体験したことのないボンボンが、ちょっとだけ社長のいすに座った。よって実体経済はばっちり。◇メッキがはげたどころか、最初からメッキすらのっていないというべきなのだろう。

★★記者の目:グルジア軍事介入で非難浴びるロシア
=飯島一孝
毎日jp.・08.09.12(A)
★★グルジア:開戦責任問う声強まる 反露結束に亀裂
毎日jp.・08.10.15(B)

◇「ロシアがグルジアに軍事介入し、非難を浴びている」。◇「今回の紛争で責められるべきはロシアだけだろうか。ソ連時代を含めてロシアは必要以上にバッシングを受けてきたように思う。ソ連崩壊前からロシアを取材してきた記者として、ロシア・バッシングに異論を唱えたい」。

◇エエッ?と思う読者も多かろう。しかしいまやあの冷戦期ではない。◇記者の飯島一孝、かつてのような中ソシンパの進歩的知識人目線から主張しているのでないことだけはたしかだろう。◇だからこそ、グルジア情勢にはさっぱりうといIFSAも目を引かれた。

◇「今回の紛争の経過をざっと振り返ると、8月8日の北京五輪開会式にあわせて南オセチア自治州を武力攻撃したのはグルジアだった」。◇「これに対し、ロシアが反撃した形だが、グルジアのサーカシビリ大統領の巧みなメディア戦略もあって、『悪者はロシア』という流れができてしまった」。◇「ロシア軍が停戦合意後もグルジア領内に駐留を続けていたことが、それに拍車をかけた」。

◇「日本のマスコミの一部にも、ロシアを悪者にすれば世論が喜ぶと思い込んでいるフシがある」。◇「そうした風潮が続くと、ロシアをみる国民の目が曇らされていく恐れがある」。◇そう、これはどうも米国とロシアの代理戦争であるらしい。◇しかもこの小国グルジアは、米英に次いで多い兵隊をイラクへ送り込んでいるというではないか。◇何も知らないIFSAでさえ、うん待てよ、という気にはなってくる。

◇「(前略)米国は表向きロシアを戦略的パートナーと持ち上げながら、国際安全保障上の重要問題については、ロシアの意見を聞かずに決定し、実行に移している」。◇「NATOの東方拡大しかり、東欧へのミサイル防衛システム設置計画しかりだ」。◇「こうした米国の『単独行動主義』にロシアは『無視された』と不満を募らせていた」。◇こんなところにまで米国お得意の<単独主義>が登場しようとは。

◇記事の結びで飯島はこう書く。◇「ロシアを過大評価するのはよくないが、過小評価するのもよくない。ましてわが国は隣国であり、未来永劫(えいごう)付き合っていかなければならない関係にある。互いに尊敬できる付き合いを追求することが、いま一番大事なのではないだろうか」(上記はすべて(A))。◇やはり思想は毎日毎日錬磨していかなければいけないな、惰性はヤバイなと教えられる「記者の目」であった。

◇そういえば、コイズミに唯一楯(たて)突きクビを切られた元駐レバノン大使の天木直人が、こんなブログを書いていたっけ。◇題して<★★グルジアのサーカシビリ大統領はくわせもの・天木直人のブログ・08.08.12>。◇興味のある方はご覧いただきたい。

◇この約1カ月後、同じ毎日新聞に(B)の記事がのった。◇「ロシアのグルジア侵攻から2カ月が経過し、反ロシアで結束していたグルジア国内にサーカシビリ大統領の開戦責任を問う声が強まってきた」。

◇「親欧米派の大統領は求心力を高め、戦闘終結後は『我々はロシアに勝った』と宣言した。しかし、ロシアがグルジアからの独立を主張する南オセチアとアブハジアを国家承認したことを受け、グルジア国内には『両地域を事実上失った』との敗北感が漂う」。

◇「今月1日、ブルジャナゼ前国会議長は今回の紛争に関する『43項目の質問状』を政府に突きつけた」。◇「『ロシア軍との軍事衝突はなぜ避けられなかったのか』『だれが紛争の政治的、軍事的、経済的結果に責任を負うのか』など政府を厳しく追及している」。

◇やはり表からだけの情報を鵜呑みにするのは危ない。しかし単なる裏読みもまた。これは国際関係問題にかぎらぬ鉄則だろう。◇そういえば、ワイドショー知識人がこの世の終わりのごとく、しかもずっと以前から心配していたかのごとく大騒ぎしたチベット問題。いったいどうなったんだろう。◇マスコミが取り上げなければ、はや関心外。彼らはいつも最新の情報にだけビビッドに反応し、それを食いつぶしていく。

★★【主張】新銀行東京 不正融資は氷山の一角だ
MSN産経ニュース・08.10.30

◇<新銀行東京の最近>に関し、まずは各紙のタイトルだけを引用してみよう。

<★★新銀行東京の融資、違法手数料15%要求し
 ブローカー横行・YOMIURI ONLINE・08.10.26>
<★★新銀行東京5000万円不正融資
 ・・・詐欺で元行員ら7人逮捕・YOMIURI ONLINE・08.10.27>
<★★焦げ付き、さらに3600万円
 新銀行東京不正融資事件・asahi.com・08.10.28>
<★★新銀行東京:金融庁が行政処分を検討
 不正融資事件で・毎日jp.・08.10.28>
<★★新銀行東京、逮捕の元行員が別融資でもリベート
 ・NIKKEI NET・08.10.28>
<★★新銀行東京 ブローカー暗躍・TOKYO Web・08.10.28>
<★★社説:新銀行東京 このまま存続していいのか
 ・毎日jp.・08.10.29>
<★★新銀行東京 不正融資の背景
 甘い審査 群がる悪意・TOKYO Web・08.11.02>

◇とにかくすさまじい。◇この<石原銀行>がかかえる大問題つき、今年(08年)の3月末から4月初旬、IFSAは<★★都営・石原銀行アーカイブズ=この集成、近々再注目間違いなし!とIFSAは予想>を3回にわたって連載した。◇ほとんどをそこで語り尽くしたから詳述は避けるが、IFSAの予告どおりいよいよひどさが露出してきた。それも、ブラックマターを随伴しながら。◇首のまわりがすーすーする政治家もおそらくは相当数いると思われる。

産経新聞が言う。「経営難に陥っている新銀行東京から融資金をだまし取ったとして、元行員や融資先の元暴力団組員らが詐欺容疑で逮捕された。この事件は氷山の一角だ」。◇「この事件以外にも複数のブローカーがいるといわれ、都議らに融資の口利きを依頼していたケースも伝えられている」。◇「(前略)その際、金融危機に乗じて、公的資本注入を受けて、さらなる延命を図るようなことは決して許されない」。

◇しかしm慎太郎都知事のオドオドヨイショ息子に言わせるとこうなる。「(前略)自民党の石原伸晃幹事長代理は新銀行東京が対象となる可能性について『法律の中には銀行に区別はない』と説明」(★★「新銀行東京対象なら大問題」 金融強化法改正巡り菅氏・asahi.com・08.10.26)。◇そりゃパパにどやしつけられちゃうから、そう言うでしょうね。

◇ところでこの経済情勢下、というよりその前から、東京五輪などとんでもはっぷんとIFSAは言ってきたが、都知事以下はますますやる気のよう。◇都民の支持はもともと少ないものの、国民は依然として支持しようというのだろうか。

◇山谷なら300円で泊まれるのに何でわざわざネットカフェなんぞへ?のトンテモ発言に向け書かれた毎日新聞記者の意見のなかに、こんなくだりがあった。◇「今春から都庁を担当しているが、石原知事の『東京には財政力がある』という発言を何度か耳にした(★★記者の目:「山谷なら300円」発言に見る石原都知事=市川明代・東京社会部・毎日jp.・08.10.30)

◇なるほどこれか。すべての根は、このずれまくった認識というか誇りにあるのか。その延長線上でオリンピックも、となるに相違ない。◇他人のカネなら何とも思わない男の心性が見事にあらわされている。◇富裕に見える東京だっていつ財政再建グループに入らないともかぎらないのに。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★「ハイエース」窃盗団逮捕
300台以上の自動車盗難に関与
TOKYO Web・08.10.28

◇たしか今年の3月にも同種の記事があったが、泥棒たち、トヨタの商業車・ハイエースにここまでこだわるのには理由がある。◇何といってクルマのモチがいい、それは外国でも有名、ゆえに海外からの引きが多い。◇日産のキャラバンはどこがどう不人気なのか、IFSAとしては聞いてみたい。

◇とんでもない犯罪のむこうから、日本車の思わぬ側面が見えてくる。◇それにしても、ハイエースのユーザーがリスクを負わねばならぬとは。たまったものではない。

★★薬物:白金、麻布が汚染
延べ2万人に売ったイラン人逮捕
MSN産経ニュース・08.10.30

◇「調べに対し、ザルバリ被告は容疑を否認しているが、4人は『ザルバリ被告の指示でやった』と供述、『日本人は金があるし真面目に払うからやりやすかったが、こんなに薬物を買う人がいて日本は大丈夫かと心配になったと話しているという」。

◇大きなお世話とはいえ、このアイロニーにはほとほとまいる。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年8月15日 (金)

IFSA・週なか掲載=かなり気になる、先週の <ベタ扱い>的重要記事(08.08.10現在)

★★麻生幹事長:早くも舌禍 「ナチス発言」に鳩山氏猛反発
毎日jp.・2008.08.04(A)
★★発信箱:本音・建前・・・失言=与良正男(論説室)
毎日jp.・08.08.14(B)←<日付先取り分>


◇「自民党の麻生太郎幹事長は4日、就任あいさつやテレビ番組収録などに追われた。この中で、国会内で会談した江田五月参院議長に『民主党が政権を取るつもりなら、ちゃんと対応してもらわないといけない。ナチスドイツも国民がいっぺんやらせてみようということでああなった』と発言」(A)。◇外相時代の「アルツハイマーの人でも分かる」のトンデモ放言を知るわれわれとすれば、ああまた彼流の<ホンネ>が始まったと思うだけのことだが。

◇問題は、人格・教養・知性とも拙劣きわまりないこの程度の人間を大好きになってしまう日本人のほうだろう。◇<官僚的でなく破天荒っぽければ何でもいい!>。◇官僚への根深いコンプレックス(+)いつもまわりばかりをおもんばかり、はっきりとモノを言えない自分自身への負い目。それらが麻生的な人物を持ち上げさせる。◇まさに代償行為そのものといっていいだろう。

◇毎日新聞論説委員の与良正男は、上記コラムにおいてこの麻生発言(+)例の太田誠一農相発言(=「(食品の安全に関し-筆者註)日本国内は心配ないと思っているが、消費者がやかましいから徹底する」)を取り上げるが、ポイントはむしろ以下の部分にありとIFSAはとらえる。

◇「(前略)建前を言うのは偽善的で、ともかく本音を語るのがいいことだ、あるいは分かりやすくておもしろければ、それでいいといった風潮が社会全体で強まっているのも気になる」。◇「思ったことを、ずけずけと話す。恐らく、麻生氏の『国民的人気』も、それが大きな要素なのではなかろうか」(B)。

◇そう、あのコイズミも麻生も、もともとが軽くて薄っぺらなキャラが幸いし?あることないこと軽妙かつざっくばらんに話す。◇それが国民の琴線に触れ、庶民の心を分かってくれる御仁と勘違いしては高い評価を与えてしまう。◇その効用を知悉(ちしつ)するコイズミ・麻生は、ますます図に乗って国民のコンプレックスにつけ込む。◇その悪循環が繰り返され、頂点にまで上り詰めたのが、世紀のコイズミ劇場だった。

◇そして宴の後は、ご存じ前代未聞の疲弊状態。自業自得の展開というしかない。◇しかし肝心の当事者は、双方ともにその自覚がない。だから、加害者も被害者もいない。◇あるのは荒らされまくった社会だけという不気味な構図である。

琉球新報(08.08.02)<金口木舌>なるコラムで書くように、「国民に人気のある麻生太郎氏を党幹事長に起用した。”人気取り”のつもりなら、有権者を見くびるなというほかない」などと楽観していいものか。◇これなどは、<進歩的知識人の悪いクセ>丸出しの見本といえよう。◇あのコイズミ大明神からは、5年以上にもわたってやすやすと見くびられ続けてきたというのに。

◇中身や思想などより、語り口や身ぶりこそがすべて。それがもたらすカタルシスこそがすべて。◇最後までコイズミマジックが見破られない背景はそこにあった。

◇そんななか、客観的でいられる海外メディアはさらっと本質を伝える。ロイター通信がこう言っている。◇「『国家主義者』で知られる麻生氏の登場で、中国や韓国などの離反を招く危険があるとして、福田首相にとっては『ギャンブルだ』と(ロイターは-筆者註)指摘した」(★★内閣改造:麻生幹事長起用をギャンブルと指摘 英メディア・毎日jp.<共同>・08.08.02)。◇残念ながら、ここまでずばっと表現できる大マスコミは、日本にはない。

◇それどころか、<超国家主義的>要素を含む安部晋三内閣が短命に終わって落胆に暮れる読売新聞産経新聞は、麻生登場こそ好機とばかりウキウキし始めている。◇<★★【主張】福田改造内閣 一丸で危機を乗り切れ 保守カラーの鮮明化に期待・MSN産経ニュース・08.08.02>など、タイトルからだけでも言いたいことが忖度(そんたく)できよう。◇予想どおり、こんな調子で・・・・・・・。

◇「首相と幹事長は、海自の支援活動の中断・撤退は国際社会の責任を果たすことにならないと強調したその通りだ。(それに懐疑的な-筆者註)公明党は政権を担う責任を自覚してほしい」。◇「外交政策で自由主義を掲げる麻生氏により保守カラーが鮮明になることを期待したい」。

◇そうした麻生を、イデオロギーの違う福田康夫首相が三顧の礼で迎えた。◇テレビ会見で思わず、幹事長の「麻生センセイ」にはなどとヨイショしちゃったりして。◇政権維持のため、対極にある人間だろうが何であろうが、利用できるものはというところなのだろう。◇だからこそ、以下のような記事がガセネタ視されることなく活きてくる。最終段階で国民的人気のある?麻生へ総裁・総理の座を譲り、その場で即解散・総選挙というシナリオが。

◇(1)<★★薄氷の再出発(下) ささやかれる「禅譲密約説」の真偽は? 不満くすぶる上げ潮派 守旧派もむくむく・MSN産経ニュース・08.08.03>。(2)<★★【政論探求】「密約」はあったのか 「麻生幹事長」決定は「大福密約」の再来?・MSN産経ニュース・08.08.05>

◇福田内閣誕生の唯一のメリットは、コイズミ-安部と続いた超右傾化路線へブレーキをかけたこと。当IFSA通信はかつてそう書いた。◇たしかに、あれだけ先鋭化していた憲法改正問題や靖国問題は、まるで火が消えるように沈静化し、いまやマスコミもほとんど取り上げることはない。◇IFSAにとっては結構なこととはいえ、何とも現金なものだ。最高権力者の意向ひとつで、日本という社会の全体がコロンコロン変わるんだから。

◇しかもそこには、弁証法的プロセスも何もない。ただ知らないうちに雰囲気が一変するという現象があるだけ。◇だから万一(=本当の意味で万一)、麻生のような人間が首相にでもなろうものなら、社会は再度右傾化へ急旋回する。何のリクツも脈略もなく、雰囲気だけで。◇いまだ成熟できない<民主社会>といわれるゆえんであろう。

★★300万円まで非課税に
麻生氏、株式配当で
ZAKZAK(共同)・08.08.09(C)
★★麻生幹事長:黒字化目標先送り論
政府・与党内に波紋
毎日jp.・08.08.05(D)

◇すでに麻生が出張ってきている。◇しかしその内実はというと、「景気対策として株式投資を拡大する必要性を指摘、300万円以下の株式配当を非課税にすべきだ」とか「税制で貯蓄から投資への流れに切り替える。日本中の株が上がることを考える」(いずれも(C))式のお粗末なものばかり。◇過去から何も学んでいないのが歴然で、これでは、サメのなんとかと評された森喜朗元首相のほうがまだマシと見えてしまう。

◇麻生の件はともかく、第二次福田内閣の迫力のなさたるや、第一次時代からさほど変わらない。◇中国国内で毒餃子による被害者が出ていた、中国政府はその事実を洞爺湖サミット直前に日本政府へ伝えたという読売新聞のスクープ。◇あわてまくった政府は、いかにごまかすかに腐心するが、その方法がこれまた稚拙で話にならない。◇ZAKZAK(08.08.07)<★★隠蔽問題、福田官邸主導か・・・中国製毒ギョーザ事件>にて指摘する。

◇「町村信孝官房長官は同日の会見で『事実無根』と否定したが、『官邸から”この件は掘り下げるな”と指示があった』との報道もあり、官邸主導の隠蔽工作や情報操作が行われていた疑いは強い」。◇「福田首相は6日朝に新聞記事を見て、『へー、知らなかった』と周辺に語ったとされるが、胡国家主席のメッセージを途中で握りつぶせる者が政府内にいるのか」。

★★景気後退局面、政府が事実上認める
・・・月例経済報告
YOMIURI ONLINE・08.08.07

◇IFSAはいやになるくらい何度も言ってきた。◇本当の意味での好景気など全然なかったという現実をひとまずおくとしても、現時点での景気急降下すら認めようとしない政府っていったい何なんだ!と。◇しかし与謝野馨の入閣で、以下の程度くらいには動き始めた。

◇それでもまだ、「前月までの『足踏み状態』から『弱含んでいる』との表現に改めた」というのだから、笑うしかない。◇与謝野の表現を借りれば、「踊り場状態から曲調が変化した」だって。よくもこんな言い回しを探してくるものだ。◇最後に読売新聞は書く。「それでも回復局面は70か月前後続いたことになり、57か月のいざなぎ景気を抜いて戦後最長の回復となることは確実だ」。

◇与謝野も読売も実に白々しい。1965-70年の高度成長(いざなぎ)と比べて何になる。◇だが、分かっちゃいるけどやめられない。これが日本の知的現実なのだ。◇これまでの誤りを認めるのは大臣・官僚・大マスコミともプライドが許さないから、メンツを保つ方策に知恵を絞る。◇この手の小ざかしさをもって<能吏>というと、日本では相場が決まっている。

◇これらに関し、IFSAの好きな毎日新聞江戸っ子記者、専門編集委員の牧太郎が、<★★牧太郎の大きな声では言えないが・・・:私はウソを申しません・毎日jp.・08.08.05>でこう憤っていた。

◇「内閣府が今年度の成長率見通しを実質ベースで2.0%から1.3%へ、名目ベースで2.1%を0.3%へ下方修正しているのに、大田弘子・前経済財政担当相が『アメリカの経済が持ち直すにつれ、日本経済も速やかに回復する』(7月14日)と発言したのには『ウソも休み休みにしろ!』と怒りまで感じた」。◇「(失礼だが)あんな可愛い顔をした(??-筆者註)女性大臣が平気でウソをつく。即座に内閣改造してくれ!と思った」。

★★暑すぎて仕事効率低下も
・・・クールビズ28度の疑問噴出
ZAKZAK・08.08.06

◇「(前略)冷房の設定基準温度とされる『28度』に疑問の声が噴出している」。◇「科学的な根拠はなく、専門家は『パンツ一丁にならないと快適さは得られない暑さ』と指摘、暑すぎて『仕事の効率が下がる』と弊害を指摘する研究結果も出ている」。

◇「設定基準温度は義務ではないが、横並び意識の強い日本人。大手企業を中心に28度を守っている会社は意外に多い」。◇「『「設定温度を守る拠点ではみんな汗だらだらで仕事しています。見ていてかわいそうになりますよ』(大手食品メーカーの女性社員)」。◇「日本建築学会によるクールビズのオフィス環境への影響に関する調査では、軽装でも室温が25度から1度上がるごとに作業の効率は2%ずつ低下」という。

◇「クールビズの源流は、関西の自治体や経済団体で構成する『関西広域機構』が99年に始めた『エコスタイル運動』にさかのぼる」。◇「同機構の広報担当者は『環境相就任直後に視察にこられた小池(百合子-筆者註)さん”それ、いいわね”と気に入っていただき全国に広まったんです』と自慢げに説明する」。

◇ありそうな話ではないか。クールビズをベースに首相を狙うってか?冗談よしこさんの世界だろう。◇とはいえ、ZAKZAKにおける一連のユニークな問題意識には敬意を表すばかりである。

★★諫早干拓、調整池のアオコから強い毒素
熊本の教授報告
asahi.com・08.08.07


◇今年、この目で諫早を実際見てきたIFSAにとっては、むべなるかな。◇とにかく、構想自体があまりにひどすぎるのだ。しかもそうした計画自体、日本社会にあっては<普遍的>であり、コト諫早の特殊性ではない。◇だからさらに救いがたい。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★文字とおり”性豪”?!
オーストラリアで性の祭典
ZAKZAK・08.08.08

◇これ以上付け加えるものはございません。IFSAはこういうのが大好きというだけのことです。◇なお、タイトルの<文字どおり>は、何度見ても<文字おり>になっていました。

★★テレビ朝日・サンデープロジェクト(08.08.10)

◇例の秋葉原無差別殺人事件の加藤容疑者に関しアナウンサーが、「(青森-筆者註)県内で<いちばん優秀な高校>を卒業」と経歴紹介。◇そんな言い方に違和感を覚えるのはIFSAだけだろうか。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年8月 9日 (土)

当今珍しく気骨ある読み物に出会い、うれしくなる=網野善彦・副田義也・外山滋比古(下)

◇このシリーズの(上)では歴史学者の網野善彦(中)では社会学者の副田義也を取り上げた。◇そして本日は、英文学者で評論家の外山滋比古へ。

◇その前に、網野善彦に関する注目すべき言及を見つけたので紹介しておきたい。◇トイレに置いては拾い読みしている岩波書店の広報月刊誌『図書』(=この超濃い中身で年間1000円・送料込は、いまどき最高のCP!)の2006.09号に、歴史学者の村井康彦「宮都の風景」と題して書いている。

◇「島国(論)といえばすぐに想起されるのは故網野善彦氏の一連の業績であり提言であろう」。◇「氏は、わが国は大陸との交流が盛んであり、日本の社会を島国という立場で見ることの誤まりを指摘し、強調され、従来の理解を大きく改められた功績はまことに大きい」。◇「しかし交流がいかに盛んであっても、島国であることと地続きであることの間には決定的な違いがある」

◇「氏も批判された戦前の偏狭で独善的な島国論(それに基づく日本文化論)は論外であり、それに戻るというのではない」。◇「しかしわが国が島国であることは厳然たる事実であって、その事実に基づかない議論では困るのである」。◇「島国であることの地政学的検討、あるべき島国論の構築が求められているのではなかろうか」。

◇こういうバランスの取れた視点をこそ、actualな姿勢というのではないかとIFSAは考える。◇網野・村井両者に漂うこの緊張感。ここから学問的パトスを<扇動>される人は、IFSAも含め大勢いよう。

◇では本日のテーマへ。毎日新聞・夕刊(08.07.25)に外山のエッセー(「晴れても降っても 素白の骨頂は散歩にあり」)があり、私は<散歩>の部分に引かれてこれを読んだ。◇氏称賛の岩本素白『東海道品川宿』(ウェッジ文庫)は早速購入するとして、うれしくなったのは以下のような個所である。

◇「ゴミゴミしたところはつまらないから、思い切って皇居のまわりを歩くことにした。途中まで地下鉄で行く。六カ月定期をもっている。これだと休みにくくなる」。

「もともと日本には歩く趣味がなかったのであろうか。旅行記はすくなくないが、散歩逍遙(しょうよう)の文章は多くない」。◇「外国をまねて哲学の道はつくったものの散歩の哲学は生まれなかった」。◇「いったいに日本の文章には灯火書巻の気がただよっていて流動に欠けるところがある。学者、文人は出不精が多いのだろう」。

◇外山滋比古といえば、08.03.21の毎日新聞・夕刊「思考は忘却から始まる」も刺激的だった。彼の著作を1冊も読んだことのない私も、爾来(じらい)、外山の言動には注意を払うようになった。◇異彩を放つコトバを引いてみよう。

「知識と思考力は比例しない。少なくとも、合力にはならない」。◇「あまり本は読んじゃいけないと考えたんです。本を読みすぎると、どうしてもその知識を借りたくなる。知識がなく、頭が空っぽであれば、自分で考えざるをえなくなります」。◇「どうせ読むなら、賞味期限を過ぎた15年も20年も前の本とか、場合によっては、誰が書いたかもはっきりしないような中世ヨーロッパの古典なら、そこから知識を借りることも少なくなります」。

◇「一番いい例が赤ん坊です。(中略)それは(=たった3年ぐらいでのでコトバの獲得は-筆者註)、ただのまねではなく、考えながら覚えているんです。だから教わらない言葉もちゃんと話す」。

◇記者からの「思考力を養うには?」の質問に対しては、「忘却です」。◇「あまり役に立たない、むしろ有害な知識を忘れること」。◇本質を突いたいいことを言ってくれている。

◇また、「昔は、ものを書くことが一番、頭が活動すると思っていたけれど、そんなことはない。しゃべったほうが、はるかに頭の回転は早くなります」とも。◇IFSAなりにこれへ付け加えれば、<歩いたほうが>も。

◇最後に余計な事実をひとつ。◇生年でいえば、故・網野善彦は1928年、副田義也は1934年、外山滋比古は1923年。◇いずれも70歳を超える人たちの怜悧(れいり)な頭脳と豊かな批判精神&闘争心。これは偶然とはいえないだろうとIFSAは思ってしまう。

◇ある意味で功成り名遂げた人たちが、この年齢にいたってもいまだ問題を提起し続ける。いやもっと言えば、コトを荒立てる。高齢者にありがちな日本的境涯なる美徳にはひたらない。◇何ともしびれるではないか。

◇さて、ここのところ暑くて湿気の多い日が続いている。当IFSA通信はついつい長くなってしまうから、今日はこのくらいにしておこう。◇外山滋比古先生にならい、夕方涼しくなったら庭の木々に水をやり、それから散歩へ出かけるとするか。◇いや、またの雷雨で水やりは不要となるか。

◇「思いついたことを街灯の下でメモしたりする。泥棒の下見とでも見えるのか、パトカーがうるさくつきまとう」という外山同様、横浜・金沢文庫の山あいを日が落ちてから散歩する私は、いつも妻から忠告される。「誤解されないようにしなさいよ、こんな時間なんだから」。

◇だからわざわざ、ばかでかい懐中電灯を手に持ち、向かいから人が来るやわざとらしく路上を照らしては<自警団>兼務のような顔をし、他意のない散歩をアピールしつつ早足で歩くのだった。◇ご時世とはいえ、うっかりブラブラ歩きもできやしない堅苦しさよ。(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年8月 2日 (土)

当今珍しく気骨ある読み物に出会い、うれしくなる=網野善彦・副田義也・外山滋比古(中)

「当今珍しく気骨ある読み物に出会い、うれしくなる=網野善彦・副田義也・外山滋比古(上)」では、もっぱら網野善彦のみを論じた。◇私が網野から受けた思索的刺激は計り知れない。◇そのひとつを紹介すれば、日本の農民とは単なる従来概念の<農>民ではなく、IFSA流翻訳では<トレーダー>、地域によっては<海民>までをも兼務、そんな存在なのだと網野は当然のような顔で言っていたように思う。

◇たったこれだけの網野的ブレークスルーでも私には十分すぎるほどであり、それ以降の展開は自分で考えよ、自分で切りひらけとハッパをかけられているような気にさせられるから不思議だ。

◇網野に対するアカデミズムサイドのシャクの種とは、実のところそういった点にこそ存するのだろう。◇結果として素人ウケを引き起こす<アジテーター・網野>こそが問題なのだと彼らは憤る。というより、歯がみする。◇しかしそれならば、文献の引用ばかりでなく、きちんと自説を展開してみろよ、中途半端な学者センセイがた。網野はそう言っているようだ。

◇このインターネット時代、資料検索など学者の独占ではなくなってきている。◇だから、海外文献の先取りだけで商売をしてきた学者たちもいまや開店休業状態で、危殆(きたい)に瀕しているのだ。◇なのに、引用文献欄の分厚さでいまもって論文を権威づけようなど、フテエ連中ではないか。

◇真のイミでのアカデミズムの学者は、古色蒼然たるスタイルで自身の対象と向き合っているもの。それならそれで大いに意義がある。◇IFSAが問題にするのは、中途半端な<政治的アカデミシャン>なのだ。そしてこういう人間が学問の世界の多くを占め、勢力を張っているから救いがたい。

◇さて本日は、社会学者の副田義也から始めよう。◇われわれ若いころの副田といえば、東京女子大に在籍する研究者というか評論家で、マンガ論を主とするアウトサイダー的存在としてしか映っていなかった。◇しかし最近、日本社会学会から年4回送られてくる『社会学評論』のVol.59(2008-1)をティータイムにぱらぱらっとめくっていてぶったまげた。

◇書評論文の欄で社会学者の筒井清忠「副田義也著『内務省の社会史』を書き、それに呼応する形で著者の副田義也自身が「『内務省の社会史』書評論文リプライ」を物するのを見、目からウロコというか、いろいろな点でガツンときたからである。◇長らくごぶさたするうちに副田ってこんなにも違う分野へ船出していたのか、それも60歳を過ぎてから本格的に。◇いい意味でこれはショックだった。

◇しかも、700ページになんなんとするこの『内務省の社会史』は70歳を超えてからの大著という。◇これだけでも恐れ入るのに、学会誌掲載の上記「リプライ」の文章が繊細かつインテリジェントな攻撃調ときている。◇60歳少々の私などは、まずその若々しさに大いに鼓舞されるのだった。◇老大家ぶらないすがすがしさよ!

筒井清忠が、「(前略)内務省関係者のタッチしていない純粋な研究者による内務省通史として本書は初めての著作(後略)」、「政治学者によらず社会学者によってそれがなされたことの意味は小さくない(後略)」との賛辞を呈する副田著『内務省の社会史』書評に関連し、間もなく74歳になる副田自身が元気に応じる。

◇まずは日本の社会学への辛らつな批判から。◇「社会学研究者はだれひとり、内務省を素材にした本格論文をも書いていない」。◇「日本の社会学は(戦後-筆者註)60年間にわたって(GHQの手で解体された-筆者註)内務省についてひたすら沈黙してきた(後略)」。◇「戦前期日本の内政は内務省が主導したこと、そして戦後期日本の内政体制の大きい部分が旧内務官僚によって構築されたことをかんがえあわせると、この沈黙にはなにか異様な印象が感じられます」。

◇1947年に解体された内務省は、自治省・警察庁・建設省へ、そして1938年にすでに分立されていた厚生省、そこから戦後派生した労働省を考えれば、その守備範囲と権力の大きさは想像がつこう。◇それなの日本の社会学は<内務省>という格好の対象に無関心。それはなぜかと、副田は大胆な説を挑発的に提示する。

◇戦後日本の社会学は以下のようであるからと。◇「(1)国家権力への関心が幼弱である、(2)反権力的社会運動が偏愛されている、(3)マクロ的な歴史的時間の展望における観察がない、(4)ミクロ的な日常的時間における好事家的関心の蔓延」。◇老社会学者の年来の怒りが集中して込められているといえよう。

◇それどころか、国家権力へのすり寄りを自慢する手合いが昨今社会学界には多くてネと、副田は唾棄(だき)するごとくに語る。

◇「(前略)いまや、社会学が権力と同調する傾向が広く流行し、産軍複合体ならぬ官学複合体という造語を連想させる現象が多く、社会学者たちの口調・文体に役人のそれらがまじる始末です」。◇「私は、自分が会員である小学会(日本社会学会-筆者註)のシンポジウムで、報告者と質問者がおたがいに多少自慢げにそれぞれが異なる政府審議会の委員をつとめていることを紹介しあうのを聞き、そのはしたなさに苦笑いしたことがあります」。

◇「他方、社会学が反権力と同調する傾向は、昔も今も変りません。(中略)そこではたらく社会学者たちの口調・文体に特徴的なのは威勢のよい悪口・雑言でしょう」。◇「趣味に走って発言すれば、私は、役人気取りの言葉より、運動家気取りの言葉をまだしも好みます」。◇この逸話からは、あくまでも単純二分法には頼らず、徹底した事実解明によってコトの真相を導き出そうとの意思が垣間見られるではないか。

◇ところで、私のように若いころ「転向論」関連の長篇評論を書いた人間からすると、内務省といえば即・警保局になってしまう。◇しかし副田は、周到にもそこへくさびを打ち込むのを忘れない。◇「(前略)私は、内務省と日本共産党の闘いを、『悪玉が善玉を迫害した』という風に見ることを拒否し、両者を『等距離にみて』分析することを主唱しました。また、その原則を固く守りました」

◇それは社会学を第3の存在として対置するということ」「社会学は両者の社会的行為を言葉によって理解することに徹して、権力にも反権力にも同一化しない」というに等しい。◇しかし「あらためて周囲をみわたせば、このような(副田のような-筆者註)学問的姿勢はあまりに反時代的であるといわねばなりません」。

◇副田はこの点にこそ、社会学界における自身の方法論的孤立を見ているに違いない。◇いや、それでも信念を押し通して著作を完成させる。そのうえで、「社会学評論」という学会誌上にて予定調和的<慣例>を破り、異論という名の正論をぶちかます。◇自信作を刊行した高揚感が後押しする要素がないとはいえないにせよ、並みの人間にはできることではない。

◇もうすぐ後期高齢者になろうという副田義也のクリアな頭脳と闘争心。◇この現実は、夾雑物をそぎ落とした人間の真の強さを物語ってあまりある。◇年をとるということの意味の深さ。こちらはまだまだ青いと痛感させられるのであった。-つづく-(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年7月30日 (水)

IFSA・週なか掲載=かなり気になる、先週の <ベタ扱い>的重要記事(08.07.27現在)

★★与党内で改革転換論広がる 衆院選危機感も首相慎重
TOKYO Web=共同(2008.07.26)

◇記事のタイトルだけでは何のことやら分かりにくいかもしれない。◇ここでいう「改革転換論」とは、「(前略)財政再建を重視する『小泉改革路線』の転換を求める声が与党内で広がっている。背景には、格差問題や原油高騰への対策予算を十分確保して『国民生活の立て直し優先』とのメッセージを発しなければ、来年秋までに行われる衆院解散・総選挙を乗り切れないとの危機感がある」といった事情に発するもの。

◇ご都合主義が売り物の公明党ばかりか、「『もう小泉時代は終わった。単に構造改革を唱えるだけでは日本が持たない』と宣言」するヤマタク(「山崎拓前自民党副総裁」)などもここに含まれる。◇「だが自民党内では『選挙を意識してばらまき路線に戻れば、かえって国民の批判を受ける』(若手)との警戒感も強い」の構造改革擁護論をバランスよく配置することも新聞は忘れない。

◇IFSAがあえてこの記事を取り上げるのは、こんなつまらぬ両者の意見に注目をしたいからではない。◇<財政再建をタテマエとするコイズミ流構造改革派>vs.<目先の経済を一時的に改善するといった幻想を与えるバラマキ派>。こうした不毛なる二分法的対峙でしか物事を発想できない十年一日の<貧困>を明らかにしたいためだ。

◇こう言えば、またまたさび付いた批判が聞こえてきそうな気がする。◇IFSAお得意のツール<二分法罪悪論>はもういい加減にやめよ!オマエこそが二分法のとりこになっているではないか!と。◇何をおっしゃるウサギさん。IFSAの言う<二分法>の深遠なる意味合いを理解できない連中から<批判>されたって、困ったもんだね、まったく!の反応しか返せはしない。申し訳ないけど、ばかばかしすぎて。

★★政府:行政の無駄を排除
有識者会議に東国原氏起用へ
毎日jp.・08.07.24(A)
★★厚労省改革の懇談会、
テリー伊藤さんら参加
asahi.com・08.07.25(B)

◇「福田康夫首相は会議を『ムダ・ゼロ政府』に向けた取り組みの目玉としたい考えで、全国的に知名度の高い東国原知事の人気にあやかる狙いもありそうだ」(A)。◇桝添厚労相が音頭をとる「厚生労働行政在り方懇談会」には「浅野史郎前宮城県知事や演出家のテリー伊藤さんら6人の有識者も参加」(B)。

◇IFSAが何度も言ってきた最悪のテレビ人・テリー伊藤(+)人寄せパンダだけがウリで、宮崎県の何をどうしてきたのか一度も報じられたことのない東国原の登場である。◇福田内閣のおつむの程度と、彼らを起用しておきさえすれば容易にだまされようと見くびられている日本国民の民度。◇このシナジー効果こそが、現在の日本社会の諸問題を現出しているといっても過言ではない。

◇問題は、こうした悪循環をどうやって断ち切るかだ。◇<ねじれ国会>など妙薬のひとつと思えど、マスコミにも国民にも評判はよろしくない。◇日本社会にあっては<ねじれていない>ことが絶対善であり、正-反-合のような弁証法的情況ほど恐れられ嫌われるものもない。◇だから、ゼロか百か、AかBかのすっきり二分法が好まれる。もしくは、足して2で割る妥協案なども。

★★社保庁の懲戒職員867人、
全員不採用最終合意・・・政府・自民
YOMIURI ONLINE・08.07.23(C)
★★年金機構:「社保庁許すまじ」自民が押し切る
職員採用で
毎日jp.・08.07.23(D)


◇社保庁から年金機構への職員移行問題。◇全員不採用方針は、「次期衆院選を意識し、『不祥事体質一掃』を世論にアピールすることを重視した自民党が、政府を押し切った形だ」(C)。◇この自民党的リクツを押し通すなら、なぜ社保庁時代に「最も軽い戒告の620人」(D)まで懲戒解雇等にしておかなかったのか。◇これでは組合の言う「二重罰」批判が説得力を帯びることになる。

◇「(前略)(厚労省案では-筆者註)自民党は『党の存亡にかかわる』と激怒。結局、厚労省が折れる形となった」。◇「こうなれば、もともと自民党の意向を熟知している舛添要一厚労相の変わり身は早く23日、党に受け入れを伝えるや福田康夫首相に電話を入れ、『政治決断をしました』と報告。首相も『結構です。国民に新しいイメージを持たれる組織にしてください』と応じた」(以上(D))。

◇「パフォーマンス優先の人減らし策に厚生族は懸念を抱きながらも沈黙を守る。厚労省幹部は『こういう時にまとめる人がいない。だから厚生族はだめなんだ』と吐き捨てるように言った」(D)。◇その結果、以下のような何とも皮肉かつ異常な事態が出来(しゅったい)する。

◇「分限免職は、過去の訴訟事例で敗訴の可能性が高く、結果的に厚労省への配置転換の道が残ることになった。機構への移行で非公務員になるはずだった懲戒処分職員が、かえって本省で公務員を続ける矛盾が生まれる結果となった」(C)。◇だがこんなこと、変節漢が板につく舛添要一にあっては何でもありゃしない。「政治決断をしました」と得々としているのだから。

★★安倍前首相は3、4年静かに
野中氏が批判
TOKYO Web・08.07.27

◇どこか怪しげな野中広務も、眼力だけはあるから、しばしばまっとうなことを言う。◇「(前略)安倍晋三前首相が対北朝鮮問題などで積極的に発言していることについて『所信表明演説に対する代表質問の当日に辞意を表明するという、大変な迷惑をかけた。せめて三、四年はもの静かに反省すべきだ』と厳しく批判した」。◇そう、民主党の前原誠司ともども!

★★防衛フィクサー・秋山専務理事逮捕
・・・2億脱税の疑い
ZAKZAK・08.07.24(E)

★★防衛汚職:秋山容疑者、
肩書使い分け蓄財 裏金の流れ、焦点に
毎日jp.・08.07.25(F)

◇「社団法人『日米平和・文化交流協会』専務理事、秋山直紀容疑者(58)」は「『政界と日米の軍事産業をつなぐパイプ役』と呼ばれ、防衛省汚職事件でも関与が取りざたされた」(E)。

外務省所管のこの協会は、「1968年設立。理事には、久間章生元防衛相をはじめ、瓦力、斉藤斗志二、玉沢徳一郎の各防衛庁長官らが就任。歴代の理事には、福田康夫首相や安倍晋三前首相、石破茂防衛相、民主党の前原誠司副代表なども名前を連ねていた」(E)。◇安部-石破-前原ねぇ!年齢的には53-51-46。非常に意味深長な数字の配列ではなかろうか。

◇ところで、毎日新聞には「喫茶店主から永田町へ」と題した秋山容疑者の経歴が紹介されており、興味をひかれる。◇それによれば秋山は、私立高輪高校(東京都港区)→立正大→「その後、東京・神保町で喫茶店のマスターになった」。それ自体は何でもない。問題は次からだ。

◇「政界との接点ができたのはそのころで『小説吉田学校』の作者で政治評論家、故戸川猪佐武氏の事務所に出入りしたのをきっかけに、金丸信・元自民党副総裁(故人)と親しい女性の運転手になり、議員秘書に顔が売れ始めた」。◇「米国人実業家とも知り合い、15年ほど前から毎年、国会議員の米軍視察の案内役を任された。このころ前防衛事務次官、守屋武昌被告(63)とも知り合った」(F)。

◇そしてとんとん拍子に、上記外務省管轄の協会専務理事へと駆け上る。◇「(前略)久間章生元防衛相、額賀福志郎、瓦力両氏ら防衛庁長官経験者だけでなく、福田康夫首相、前原誠司民主党副代表ら与野党の大物を理事に取り込んだ。この理事リストを手に防衛企業を訪ねるなどし、三菱重工業、石川島播磨重工業、神戸製鋼などの会員企業を獲得した」(F)。

◇政界や企業にいたことのある人間なら、このすご腕ぶりが何に淵源するか、単なる実務的能力だけによるものか、それはおのずから想像がつこう。

★★労働白書:仕事の満足度低下
背景に非正規急増や成果主義
毎日jp.・08.07.22

◇もう耐えきれずにといったあんばいで、労働白書・08年版(厚労省刊)までがついに「『日本的雇用制度への再評価が広がっている』と分析」をし始めた。◇IFSAが02.08出版の拙著で、当時全盛の<成果主義>や<終身雇用制破壊>を根底より全面批判し、進歩的知識人からさえ白眼視されたのを昨日のように思い出す。

◇それがどうだ!いまでは<成果主義批判>と<日本的労働慣行ぶちこわしへの疑問>の大合唱とくるのだから。◇まったくいい気なものだ。日本的オポチュニズム(=便宜主義・日和見主義)こそが最大の問題点だということを、当の識者も日本社会もいまだ全然理解していない。

◇<いずれこういうことになるからと、事前証言のイミで私は本を書いた>のに、連中はあったりまえのようにオポチュニストぶりを発揮し、いままた堂々と真反対のことを主張している。

《IFSA好みの欄外あるいは論外記事》

★★「ブラウザ」を「ブラウザー」に
マイクロソフト、カタカナ語の表記を変更
NIKKEI NET・08.07.25


◇「プリンター」が「プリンタ」、「マネージャー」が「マネジャー」、「プロバイダー」が「プロバイダ」、「コンピューター」が「コンピュータ」。◇この汚い<日本語>が、実は「JIS規格では『その言葉が3音以上の場合には、語尾に長音符号を付けない』などの原則を取っており(後略)」に由来すとは知らなかった。◇そこへ外資系のマイクロソフトが英断を。まさにカルチャーショックである。

◇ついでにこの際、テレビと若い人の間でおおはやりの一本調子アクセントも放逐しようではないか。◇たとえば神田の<神保町>を、<じんぼうちょう>ではなく、のっぺらぼうに<じんぼうちょう>と言うカッペ発音などを。

★★今の時期が一番ヒマな人たち
・・・サンタが大集合
ZAKZAK・08.07.22

◇「デンマークで毎年恒例の『世界サンタクロース会議』が開かれ、地元だけでなくロシアや米国、日本から約140人のサンタが出席した」。◇議題は、サンタの「現代的な問題」という「煙突がない家にはどう入ればいいかなど」らしい。

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年7月26日 (土)

当今珍しく気骨ある読み物に出会い、うれしくなる=網野善彦・副田義也・外山滋比古(上)

◇日本中世史学者の網野善彦。これほど毀誉褒貶(きよほうへん)相半ばする人物も珍しい。◇いやもう少し具体的に言えば、<正統派>学者の間での評価は目の子で2割、われわれのような素人の間での人気は8割といったところだろうか。

◇かくいう私も、網野の本は数えるほどしか手にしていないし、学者としての業績がどう位置づけられるかまでは読み込んでいない。◇しかし彼から受けるインパクトは大きい。ウソでもホントでもなどと言おうものなら語弊どころでは済まないものの、(アカデミズム的にはどうあれ)思想家としての訴求力は半端じゃない。◇その点で、精神分析分野における岸田秀と似たところがあると、私は思っている。

◇こういう人はえてして学会では嫌われる。というより、ヘン!と鼻であしらわれることが多い。◇要は邪道というわけだ。◇いやおそらくは、純学問的に見ると間違いがいっぱいあるのだろうと、私などにも想像ができる。

◇しかし、アウトサイダーとしてひがみっぽく縮こまるのではなく、それを武器とし、<日本的常識>を打破する仮説を携えては打って出る。◇そしてその膂力(りょりょく)が、アカデミズムの得られぬ理路と視座を新たに獲得させる。◇アカデミズムはそれを、学問じゃない、文学だ評論だと嘲笑しだすが、それがかえって網野のような能動的アウトサイダーを鼓舞するから皮肉なものだ。

◇ところで最近、新書館の刊行する季刊誌『大航海』(2007.12)が網野善彦を特集しているのを知り、バックナンバーを買い求めた。◇まだパラパラとめくっただけだが、いずれの論文もメチャおもしろそう。◇なかでも、樺山紘一中沢新一による長篇対話「歴史の論理と倫理」はエキサイティングで、一気に読み通してしまった。

◇ご存じのように、樺山は西洋史学者で東大名誉教授。国立西洋美術館館長もつとめた。◇中沢は宗教学者で、現在は多摩美大教授。彼の『アースダイバー』については当IFSA通信で酷評したことがある。◇そして網野は中沢の叔父さん、つまりは中沢の父の妹、その夫が網野というわけだ。

◇興味のある方は本文にあたっていただくとし、ここでは網野という人間の一徹ぶり(それこそが魅力!)を示すエピソードを、同書からランダムに引用するとしたい。

中沢ただ、網野さんが秀才と言うときはちょっと要注意で、ぼくなんかにもしきりと秀才、秀才と言うわけです。それには必ず皮肉が入っていて。(笑)

中沢:ええ。目から鼻に抜けていくように物事を理解するのは良くないとか、あまりに早く結論を出して物事を意味づけるのは良くないと言ってましたねえ。(後略)

中沢:(前略)(網野の議論は-筆者註)鈍牛というか、刀でいうとあんまり切れ味が良くないけれども、ドーンと当たると大変だという論争をするんですね。(後略)

中沢:(前略)戦後の歴史学界は平泉澄(戦前の超国家主義・皇国史観の代表的イデオローグで、東大はじめ歴史学界を席巻した東大国史教授-筆者註)みたいなものを処分してしまって、もうああいうものから学ぶものはないと言っているけれども、それは違うと網野さんは言うわけです。

樺山:とにかくマルクス主義に対する自分の言動について反省して、もう何か特定のグランド・セオリーや権威主義を笠にかけた理論でもって世の中を変えられるわけではないから、フィールドワークやりながら文書を読んで、わかるところから見方を変えていこうとしていた。(後略)

樺山:(前略)やはり網野さんはマルクス主義との格闘あるいは学生運動、青年運動での体験を自分なりに反省したり咀嚼したりするなかで、物事を語るにはまずはともかく原理より先に事実から行こうじゃないかと考えた。そのうえで原理が見えたところについては、自信をもって語る。

樺山:とくに網野さんは『日本社会の歴史』(岩波新書)をお書きになったんですが、これは日本社会史と大きく銘打ったにもかかわらず、じつは近代どころか近世でも臆病な議論とならざるを得なかった。それは(中世史家の網野としては-筆者註)当たり前のことなんで、人によるとああいう失敗作を書かないほうがいいと言う人もいましたが、やっぱりやってみようというのは歴史家の業というべきものでしょうか。

中沢:ある意味では原則的すぎるくらい原則的で、ぼくは網野さんに、原則を立てて現実の複雑さを見ない、一種のスターリニストじゃないかなんて言って、半分冗談でしたが、ひどくしかられたことがありました。(笑)(後略)

中沢:(前略)まあスターリニストという言い方はちょっとジョークですけれども、少なくとも原理主義者だったかもしれません。(笑)

中沢:(前略)いざ歴史学の論争になると、たとえばぼくが網野さんの批判者の言っていることもけっこう理があるんじゃないなどと言おうものなら、もう大変ですよ。君はいったい何を見てるんだということになって、もう何時間でもボカスカやられるんですから。(笑)

◇最後にひとつ、こんなおもしろい話も。◇座談会で網野が、<この話はヨーロッパではどうなってるの?>云々と樺山に訊いてきた。樺山は「半分以上謙遜」で、以下のようにこたえたらしい。

◇「(前略)私たちはそんな細かいことまでわからないし、そもそも自分たちは所詮ヨーロッパのことをやっている日本人であって、わかっていることはその中のほんのわずかで(後略)」と。◇すると網野は、何と言うことを言っているんだと烈火のごとく怒り、「そんなところにうちの息子(新大陸史の研究者-筆者註)を通わせてていいのかと言われた」。

都立北園高校(わが板橋区にあり)で10年以上教諭をつとめ、その後は名古屋大学助教授→神奈川大学短期大学部教授。◇冗談めかせば、ここにも「原理主義者」の側面が露出しているやもしれぬ。◇<網野はなぜ梅原猛を認めないのか。志向性は同じなのに>と吉本隆明が指摘したという話、それが当対話で明かされているが、梅原が中曽根康弘と組んで国際日本文化研究センターを設立したことを網野は「倫理的」に許せなかったらしい。

◇そんなの、うまく利用しちゃえばいいのに!◇しかし、梅原のしたたかさと政治性は網野には無縁のものというか、忌避すべきもの。と同時に、到底及ばぬもの。◇IFSAは、一見対極にありながら同質的方向性をはらむこの両者に、非アカデミズムの強さと魅力とを感じているのだが。

◇最後に中沢新一が、網野流<気骨>についてこう語っている。

中沢:ことに歴史学者は、年取ってくるとお茶碗とか書画骨董とか趣味に走る人も多いんだけれども(笑)、網野さんはそういう趣味は一切なかった。(後略)

◇そして、「網野さんの対局のような人は山ほど見かけるけれども」とも。

◇なお、この密度の濃い特集を組んだ『大航海』。論壇時評などではしばしば取り上げられる名門誌とは知っていたものの、じっくり読んだのは今回がはじめてだった。◇正式には『ダンスマガジン別冊』という位置づけもミステリアスだ。

◇この号に触発されて手に入れた最新刊『大航海』(08.06)の特集「日本思想史の核心」。◇まだ読んではいないが、目次を見ただけでワクワクする内容となっている。◇最近そうした雑誌にはほとんどお目にかかれなくなってしまっただけにうれしい。-つづく-(敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

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2008年6月17日 (火)

原油高への無為無策=仲間がいれば<高齢者予備軍>のデモを打ちたい心境だ!(下)

◇本連載の(上=2008.06.09)では暫定税率撤廃・復活にともなう<IFSAの個人的な歴史体験>を、また(中=08.06.15)では原油高騰に関する<近過去>からの振り返りを中心に論じてきた。◇そして最終回。ここまでくれば、これらに対して何の反応も示さない福田政権っていったい何なんだという<弾劾>以外、思い浮かぶものはあるまい。

★★NY原油が史上最高値、一時57.50ドル
YOMIURI ONLINE・05.04.02
★★NY原油、一時
139.89ドルの最高値
YOMIURI ONLINE・
08.06.17

◇たった3年間でのこの異常なる変化。見比べていただくだけでその真相(深層)は明らかとなろう。◇それでも、これをBRICs等の消費増による需給問題にすりかえたがる姑息(こそく)なやからは跡を絶たない。◇連中もまた、合法的不当利益への<侵犯防止>に躍起だからだ。◇しかし事態は、日本の役所ですらこう言わざるを得ないところまできてしまっている。

★★エネルギー白書:原油高騰は投機資金が相場押し上げ
毎日jp.・08.05.27(A)

◇エネルギー白書は、「原油価格の高騰について、原油先物市場に流入する投機資金が相場を押し上げていると指摘」。◇「07年下半期の米国産標準油種(WTI)の平均価格1バレル=90ドル程度のうち、需要と供給のバランスを反映した実勢価格は60ドル程度で、3分の1の30ドル程度は投機資金による押し上げとする分析を明らかにした」(A)。

◇サブプライム問題の余波で「金融市場からの原油市場への流入が急増していることが要因」と認めざるを得なくなったのだ。◇経済産業省の事務次官にかかると、もっとストレートな発言の連発となる。◇近ごろの官僚にしては珍しく、<勇気>あるダイレクトな物言いといえよう。

★★原油高騰:市場への投機資金流入規制を 経産次官が発言
毎日jp.・08.06.12

◇「経済産業省の北畑隆生事務次官は12日の会見で、原油高騰は原油市場に流れ込む投機資金が大きな要因として『何らかの規制をすべきだ』との見解を示した」。◇「北畑次官は、原油価格の指標となる米国産標準油種(WTI)が取引されるニューヨーク原油先物市場について『規制が緩く、投機資金が無尽蔵に入ってくる』と指摘。『石油の現物を売買する人が市場に参加することが基本』として、投機資金の流入を規制すべきだとの考えを示した」。

◇別のところで北畑は、もっと過激な表現を示してもいた。◇「『何でも、もうかればいいというマネー経済、(米金融街)ウォールストリート資本主義の悪い面が出ている』」。◇「9日の会見で経済産業省の北畑隆生事務次官は怒りをあらわにした。同省は原油の適正価格を60ドル程度とみており、その2倍を超える価格が『世界経済失速の大きなリスク要因』と警告してきた」(★★エコナビ2008:打つ手なし原油高 猛威ふるう投機資金・毎日jp.・08.06.10)

◇この記事では、さらに重要なことも伝えてくれる。◇「政府が5月にまとめた07年度の『エネルギー白書』によると、世界の株式、債券市場の規模はそれぞれ数千兆円に達しているのに対し、米国の原油先物市場の規模はわずか15兆円程度」。◇「白書は『株式などからの資金流入が原油価格に大きな影響を及ぼす』と強調する」。

◇世間知らず、いや生活知らずでならす肝心の福田首相は、これをどう聞くか。◇いや、とんと関心はないようだ。原油なんて、かつても高騰したことはありましたよ、ってな調子なんだから。

◇上記投機マネーによる甚大な影響は、その創設者・推進者である米国にすら及び始めている。◇「車社会の米国でガソリン価格の高騰は大打撃。ブッシュ政権が4月末から始めた減税の効果を相殺しかねない」。◇「サブプライム問題が深刻化した昨年9月以降、FRBは大幅利下げを断行した。だが、その結果、ドル安も進行し、ドル資産から流出した資金が商品市場に向かい原油、穀物価格を急騰させた」。

◇「(前略)バーナンキ議長は利下げ休止も示唆。従来の『景気優先』から『景気とインフレの両にらみ』に軸足を移しつつある」。◇「ただ、失業率の大幅悪化など米景気は停滞し、市場では『すぐに利上げに踏み込むのは困難』との指摘が多い」(以上、★★エコナビ2008:原油・穀物高騰 世界インフレ懸念拡大・毎日jp.・08.06.13)。◇自分のまいた種とはいえ、米国社会はデッドロック状態といえよう。

<★★サウジなど産油国、増産を否定 「原油高の責任ない」 ・NIKKEI NET・08.06.09>はまさにそのとおり。◇<★★OPEC事務局長「原油、要請あれば増産」、価格「高い」明言・NIKKEI NET・08.06.12)>などは、ウハウハの余裕にあってのリップサービスといったところだろう。

◇そんななか、海外では暴動に近い動きまで起きている。◇ブラウン英首相が「『世界経済はいま、第3次石油ショックに直面している』」、「『世界規模の対応が必要だ』」と語ったり、フランスのサルコジ大統領が、北海道洞爺湖サミットでは「『特に原油高騰問題への対処が必要だ』と言及」したりするのも、社会にそれだけの緊張感があるからこそ。

◇それに比してわがお坊ちゃま首相は、その時ばったりの環境一辺倒とくる。ああ、この落差!◇洞爺湖サミットを環境問題できれいに処理しようというんだから甘い。

★★フランス:燃料費高で漁民、怒りの海峡封鎖
毎日jp.・08.05.24
★★燃料費高騰で漁師ら暴徒化、EU本部に投石・官庁街騒然
YOMIURI ONLINE・08.06.05
★★原油高、世界が悲鳴 デモ暴徒化・マグロ・・・
asahi.com・08.06.08

◇日本ではどうか。せいぜいが庶民の台所に「狂乱物価」以来の高騰が押し寄せてネ!とぼやく程度。迫力のないことおびただしい。◇<★★新車販売、5月は大幅減 暫定税率復活・燃料高響く・asahi.com・08.06.02><★★”ガチャガチャ”消える?300億円市場も原油高直撃 やむなく容器小型化や素材変・ZAKZAK・08.05.12>くらいが似合っているんじゃないの?と茶々を入れたくなるあんばいなのだ。

◇して、福田政権の経済中枢たるべき大田弘子経済財政担当相はどう言っているのだろう。

★★3カ月ぶりに下方修正 6月月例経済報告
TOKYO Web=共同通信・08.06.16


◇いまさら下方修正って?それ自体も驚きだが、以下にはもっとびっくりさせられた。◇「内閣府は、引き続き景気が拡大過程にあるものの一時的に停滞している状態である『踊り場的状況』との認識は変えない」。◇「4月の景気動向指数で、国内景気が後退に入った可能性が示されたことについては『米景気が今年後半に持ち直すことがメーンシナリオ』とし、依然として景気復調への期待を抱いている」。

◇すごい、すごすぎる、十万石まんじゅう!◇朝日新聞にも同様の記事が見られる。◇「内閣府は『大型減税の効果が出て米経済が今年後半から持ち直せば、輸出は回復し、国内の企業活動も上向く』と期待する(★★景気「一部弱い動き」、3カ月ぶり下方修正 月例報告・asahi.com・08.06.16)。◇恒例としかいいようのない、たらればの米国頼み。こんな認識で経済政策をやられたんじゃネ。もう怒る気もしないってか!

◇先の経産次官が憤るごとく、米国が仕掛けた投機マネーをどうにかせずに世界的原油大不況を乗り切る、そんなことはできるはずもない。◇すなわち、日本の首相がまずなすべきは、投機資金への抜本規制や高率課税へ向けてのアクション。◇にもかかわらず、米国へのお追従(ついしょう)は一向に止まることがないのである。◇下記のように。

◇「議長を務めた甘利明経済産業相は会合後記者会見し、『消費国が危機感を共有し、結束してメッセージを発するのは初めてのことだ』と共同声明の意義を強調した」。◇「ただ、原油急騰の背景にある投機マネーなど、金融市場の問題を是正する策には言及しなかった」。

◇「投機資金規制に消極的な米国が、原油高騰は中国などの経済発展による需要増に供給が追いついていない『需給ギャップが原因』(ボドマン米エネルギー長官)と主張」。◇「日本も強く規制を求めず、参加国の意見が一致しなかったためだ」(★★日米中印韓 原油異常高騰に懸念 エネ相共同声明 投機規制は盛らず・TOKYO Web・08.06.08)

◇自分たちのやってきたことを棚に上げ、「需給ギャップが原因」と言い切るんだから、米国も大した神経だ。◇もちろん、そのまま言わせておくほうも大問題だけれど。

◇ブッシュ米国ならびにコイズミ・竹中のような世界中のエピゴーネン(=猿まね人間)が広めた新自由主義。◇現行資本主義にまん延するこの思想に対し、根底からノンを突きつけないかぎり、原油高騰・食料(食糧)高騰の無政府状態はおさえようがない。◇少なくともこれだけははっきりしている。◇それでもまだ、<小さな政府>の絶対善路線でしょうか?(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生 

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2008年6月15日 (日)

原油高への無為無策=仲間がいれば<高齢者予備軍>のデモを打ちたい心境だ!(中)

「原油高への無為無策=仲間がいれば<高齢者予備軍>のデモを打ちたい心境だ!(上)」(2008.06.09)では、暫定税率廃止・復活に伴うIFSA流<歴史的>三段階ガソリンスタンド体験記をもとに、あえて卑近な事象に終始しつつ話を展開した。◇そして今回は一転、原油価格の流れに目をやることにする。

◇この異常高騰は周知の事実だが、ここでは一歩引き、まずは<近過去>から振り返ってみたい。

★★NY原油が史上最高値、一時57.50ドル
YOMIURI ONLINE・05.04.02

◇「原油相場は先週から下げ基調に転じ、3月30日(2005年の-筆者註)には一時、52ドル台半ばまで下落していた」。◇「しかし、米証券会社ゴールドマン・サックスが31日、、原油相場が1バレル=100ドルを突破する可能性を指摘するリポートを発表し、機関投資家などを中心に買いが増え、一気に急騰に転じた。◇「市場では『下値の底堅さが確かめられたことで、60ドル突破が視野に入ってきた』(米アナリスト)との見方も出ている」。

◇その1週間後のChunichi Web Press(05.04.09)が、原油高騰に関する詳細なリポート(★★原油高騰の”真相”)を掲載している。◇「原油価格の高騰が再び始まっている。昨年九月に一バレル(百五十九リットル)=五〇ドル台に乗せて、年末に低下した後、反転。このところは六〇ドルに迫る勢いだ」。◇高騰の背後に、投機筋が行う『ゲーム』がある」

◇「なぜ、原油価格が高騰しているのか。需要と供給の関係からは説明できない、と専門家たちは口をそろえる」。◇「要は、原油の価格が市場に左右されているのだ。それも投機筋の資金に」。◇「財団法人・国際開発センターの畑中美樹(よしき)主任研究員は、そのからくりを三段跳びで説明する」。

◇畑中説を要約すればこうなる。◇(1)ホップ=中国・インド等の急激な需要増。(2)ステップ=イラク・イラン・ロシア・中国等、「原油生産をめぐる世界環境の不安定さ」。(3)ジャンプ=「その結果、心理的な逼迫(ひっぱく)感が働き、投機筋が便乗して、空前の高値傾向を招いた」。◇「ブッシュ一族やチェイニー副大統領らは米系国際石油資本と深く関係している」、こんな連中の動きまで加わってと、中日新聞は解説する。なかなかの説得力である。

◇とはいえ、約3年前はまだこんな程度(=六〇ドルに迫る勢い)でしかなかった。◇しかしその10カ月後には、以下のような記事へと飛躍した。

★★メジャー4社の当期利益11兆円 原油高で空前の規模
asahi.com・06.02.08


◇「国際石油資本(メジャー)上位4社の05年決算が7日出そろった。当期利益は合わせて978億8100万ドル(約11兆5500億円)と、原油高で空前の規模に膨らんだ」。◇「米英ではガソリン高などに市民の不満が強く、議会や政府が課税強化を模索する動きもあり、メジャー各社は『もうけすぎ』との批判をかわすのに躍起だ」。

◇「国際指標であるニューヨーク市場の原油価格は05年、年初の1バレル=40ドル強から一時は70ドル台に上昇。06年に入っても60ドル台の高値水準が続く」。◇「これに対し、米議会では昨秋以来、上院を中心に石油会社への課税強化を求める動きが出ている。ブッシュ政権の反対などで実現していないが(後略)」。◇「英国政府は、北海油田での事業収益にからむ上乗せ課税(10%分)を06年度から2倍にする方針を昨年末に表明」。

◇そして70数ドルから一時的な反落を経て急上昇。◇2008年に入るや未曾有の3桁に突入した。

★★NY原油、連日の100ドル台 株・ドル急落、金急騰
asahi.com・08.01.04

◇「ニューヨーク商業取引所の原油市場は08年の取引初日の2日、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格が一時、史上初めて1バレル=100ドルちょうどまで急騰した」。◇「原油価格は、一時1バレル=50ドルを割り込んだ昨年の1月から約1年で2倍になった」。◇「米低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き急増などで米景気の先行き不安から株やドルが急落すると、有利な運用先を求めて原油相場への資金流入が活発化した」。

◇そして直近の08.06.11には136.38ドルにまで。◇これと連動しながら、国内ガソリン価格もまた大変なことになっている。◇<★★ガソリン172.4円 また最高値更新 7月には180円台予測も・YOMIURI ONLINE・08.06.12>。◇IFSAの言う<道路の戒厳令下状態>がいっそう進もう。でもエコにいいってか?ご都合主義でふざけてる場合じゃないんだよ。

◇前回の(上)でIFSAはこう書いた。◇「3月末=150円暫定税率廃止により4月1日以降=125円暫定税率の復活プラスアルファで5月からは=157円6月1日以降は原油高の影響で=170円台へ突入正常な感覚をもってすれば、4月比45円(=暫定税率分25円+さらなる値上げ分20円)ものアップになっているのだ」と。
(註)以上は東京地区におけるかなり安めのGSを基準にIFSAが試算。

 ◇案の定、米国でもこんなことが言われ始めた。<★★米ガソリン、初の4ドル台(1ガロン-筆者註) 米経済の下押し必至・NIKKEI NET・08.06.10>。◇「当面の節目とみられていた1ガロン4ドルを突破したことで、消費者心理への悪影響は免れない情勢だ。輸送コストの増加から、食料品を含む物価全体にも上昇圧力がかかり始めている」。

◇当然であろうが、原油高の犯人を養成しバックアップしてきた本家本元のこの国にも、ブーメランのごときお仕置きが。何とも皮肉なものだ。◇だが、自業自得以外の国や地域はたまったものじゃない。怒り心頭、アタマにキノコ。本来なら暴動がおきてもおかしくないような状態に立ち至っている。

◇海外ではあちらこちらで<やってらんねえ>の渦が発生しかけるが、日本だけは毎度のことながらきわめて平静。◇暫定税率時も、ただただGSに並んだりする1回ぽっきりの<自己防衛策>が関の山で、大衆的なムーブメントにはいたらなかった。

◇学生さんなんざ、動きのそぶりさえ見せない。◇われわれの時代の学生運動をエリートの跳ねっ返りと嘲笑してきた現・後期高齢者世代のお父さんたちは、こうした現状をいったいどうとらえるのだろう。◇何事にも静かな社会、これぞ理想といまもひたすら信じているのだろうか。

なめきった「後期高齢者医療制度」、こんなものはなめきられた結果にしかすぎない。◇単なる擬制改革以外の何ものでもないタチ悪きコイズミカイカクや郵政民営化へ心から拍手喝采を送った<見返り>としての荒野。◇次回は、原油高を契機とする怒りの発露らスタートするとしよう。(敬称略)-つづく-

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年6月 9日 (月)

原油高への無為無策=仲間がいれば<高齢者予備軍>のデモを打ちたい心境だ!(上)

◇私は月に何度も東京都板橋区と横浜市金沢区の間を行き来する。◇その際通る道は都道環状8号線(環八)で、例の暫定税率問題時にテレビで超有名となったゼネラル石油八幡山SS(=正式な会社名は別)などは何度も利用したことがあるし、そうでない場合も、手っ取り早い<ガソリン価格指標>として環八上下線よりかならず定点観測してきた。

◇しかし、安さと構内レイアウトのよさでは定評のあるここ八幡山SSも、あまりのハイテンションに疲れてしまったのか、暫定税率強硬復活後は精彩なく、凡庸ないちガソリンスタンドへと堕してしまっている。◇ユーザーはその辺には敏感だから、現在はガラガラ。◇もちろんのこと、テレビからもお呼びはかからない。6月1日の値上げ時に放映されたくらいで。

◇さてこの2カ月間、ガソリン問題では歴史的な場面に3度も立ち合ったと、われわれ夫婦は冗談交じりに話している。◇1度目は例の暫定税率切れの深夜。08.04.01の00:00を日限に、一部の有力GSは暫定税率分の25円をさっと値引きした。◇まだ旧価格対象の在庫がタンクにあるにもかかわらずの<英断>であった。

◇テレビライトに煌々(こうこう)と照らされ、取材陣でごったがえす八幡山SS。その反対車線(環八外回り)を通り過ぎたのは、1時間後の08.04.01・01:00くらい。◇しかしその他のGSでは、まだ旧価格のままといったところが大半であった。

◇そして第2弾は、福田トンチンカン内閣が暫定税率を<復活>させた08.05.01。◇ここでもまた旧価格の(=暫定税率ナシの)在庫が残っているはずなのに、今度ばかりはあの08.04.01とはまったくちがい、99%に近いGSが25円分プラスアルファ(=暫定税率分+原油アップ分)の一斉値上げに踏み切ったのだった。◇そこを甘く見、04.30に給油しなかった私は、だから近くのGSで入れておけばと言ったのにと妻から怒られた。

08.05.01の01:00ごろ、横浜から板橋へと向かっていたわれわれは、沿道のGSを見て驚いた。◇横浜の環状2号線から第三京浜へ入るまでの間、旧価格を保っていたのはたったの1軒。深夜というのに、そこにはクルマがずらっと並んでいた。◇横浜ゆえ高めだけどラストチャンス、ここで給油すべしとの妻のアドバイスを尻目に、反対側へのUターンは面倒、東京の環八へ行けばまだまだいくらでもあるからと、我を張り続けた。

◇しかし、第三京浜を出て環八に入るや、形勢不利はもはや明らかに。◇すぐのところの対向車線に1軒だけ見えたものの、それ以外は値上げ組ばかり。◇こりゃ失敗したとあきらめかけたころ、いつも高くて見向きもしないGSが砧公園を過ぎた辺で目にとまる。◇ベース単価が割高とはいえ、暫定税率25円分上乗せされていない価格の新鮮さといったらない。◇これで何とか面目を保てたとホッとし、満タンにしてもらった。

◇そこから家までの間には相当の数のGSがあるが、以後1軒たりとも暫定税率を乗せない店に遭遇することはなし。◇あの八幡山GSもぴしゃりと値上げをしたようで、給油のクルマはまったく見当たらない。◇カウントダウン(カウントアップ?)の瞬間を撮影に来たクルーたちが、器材の片付けに入っていた。

◇そして最後の第3弾、これはわれわれのまったく意識しないものだった。◇ときは1カ月後の08.06.01・00:00。これまた、露骨なほどに00:00きっかりだったようだ。◇<ようだ>というのも、われわれはぬかっていたからだ。◇そりゃ新聞で、新日石の会長が値上げを表明したなどの記事は読んでいる。ただ、毎度の声明だから、厳密な日付などアタマにはない。しかし・・・・・・・。

◇そういえば08.05.31の夕方、横浜市内の変哲なきスタンドにクルマがちょろちょろと並んでいて、アレッと思ったものだった。しかし深く考えずにパス。◇そして深夜の帰京時にびっくりしたというわけだ。◇先ほど見たばかりのあの店。もう閉店はしているが、明日用に価格表が書き換えられている。それも10円以上のアップにして。

◇そして環八に入るや、すべての店が同様に値を上げているのに気づかされた。今回ばかりは例外など1軒もなかった。◇夕方に入れておけばよかったと思ってはみても、後の祭り。これはもう大ちょんぼだった。

◇しかしそんなこと以上に驚いたのは、まるで戒厳令下のような環八の姿。大晦日から正月へかけて以外は見たことがない。◇第三京浜を出て環八の外回りに入るや、東名入口付近までほぼノンストップ状態。◇そしてHシステムの警報音がピロピロ鳴るのを聴きながら、成城警察署前・芦花公園へと進むが、いつものノロノロどころか、がら空きもいいところ。◇そこそこ流れの悪くなる甲州街道(R20)交差点付近もフリーパスだった。

◇さらには、五日市街道を含めて複数の道路を串刺しに渡る高架橋。ここは深夜といえどもかならずといっていいほどVICS表示が赤または黄色になる地点だというのに、前方にクルマはほとんど見当たらない。

◇これぞ世間知らずの政府高官がくちにする、<ガソリン値上げはエコにいい>の証左なのだろうか。◇皮肉な現象とはいえ、何もエコを意識してクルマを控えているわけじゃない、われわれは。まったく冗談じゃないのだ!。◇毎日jp.福井版<★★ガソリン:県内169~172円に値上げ GS閑散、消費者当惑 福井・08.06.03>には、何と「自衛の動き?自転車売り上げアップ」とあった。

◇苦しまぎれの大衆自衛策を、エコという絶対善へすりかえる為政者の薄汚さ。◇このとってつけたような偽善をたたくことから、われわれはまず始めなければならないだろう。

◇そういえばもう半年近くも前、あの福田お坊ちゃまがこう言っていたのを思い出す。◇「石油会社(丸善石油-筆者註)でサラリーマン経験のある福田首相は、原油高について『ガソリンは155円ぐらいになったことが過去にもあった。25年前には169円もあった』と知識を披露したが、切実さは皆無といっていい」(★★福田内閣呆れた経済無策・・・家計の悲鳴黙殺、増税布石・ZAKZAK・07.12.21)。◇だから、冗談じゃないっつ~の!

◇そして現在はその169円どころか、「★★ガソリン:価格高騰天井見えず 初の170円を突破」(毎日jp.・08.06.04)ときたもんだ。◇「石油情報センターが4日発表したガソリンの小売価格調査(2日現在)によると、レギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル=171.9円となり、87年の統計開始以来初めて170円を突破した」。◇「前週の5月26日に比べ11.6円の大幅高となった」(いずれも同上)。

◇それにしても、海が近く精油所もある横浜地区GSの高いこと。いったい何が作用しているのだろう。◇逆に、埼玉の北部へ行くほど安くなり、栃木もそこそこ、茨城の内陸部といったら、もう感激するほどの価格差を見せる。◇海からの横持ちが相当あるというのに。

◇まあそんなぼやきはともかく、今回の(上)では皮膚感覚によるガソリン問題アプローチを心がけた。◇せこい生活感丸出しついでに、3月~6月のレギュラーガソリン価格推移を理念型的に記せば、以下のようになる。◇地域差・GS差が大きいから、絶対値というより、アップダウンの幅に注目していただきたい。◇以下は、東京地区におけるかなり安めのGSが基準だ。

3月末=150円。◇暫定税率廃止により4月1日以降=125円。◇暫定税率の復活プラスアルファで5月からは=157円。◇6月1日以降は原油高の影響で=170円台へ突入。◇正常な感覚をもってすれば、4月比45円(=暫定税率分25円+さらなる値上げ分20円)ものアップになっているのだ。◇与党の皆さんは、3月との対比を望むだろうけれど。

◇さて次回からは、原油・ガソリンの高騰に対してメッセージすら発しない日本政府へ、怒りの矛先を向けるとしよう。◇いやそういえば、5月1日からの暫定税率再議決→復活。それに向けてのメッセージ(いずれも大略)がたしかあったっけ。◇最後にそれを見ておくとしよう。

福田首相=「便乗値上げについては監視していく」のズレズレ!◇町村官房長官=「連休明けまで値上げはないだろう」の大ハズレ!◇お恥ずかしいことにと言おうか、さすがと言おうか、こんなその場限りのやせた発想しか日本政府のトップはお持ちでないのだった。(敬称略)-つづく-

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年2月16日 (土)

郵政民営化選挙というコイズミの大芝居=熱烈支持した国民の自己矛盾がいま顕在化

◇日本的風土にあっては、IFSAは少々しつこすぎるかもしれない、過去にこだわりすぎるかもしれない、と前々から自覚している。といって、もちろん反省などはしていない。◇一方で、済んでしまったことは仕方がない、後ろ向きの議論など非生産的、そんなヒマがあるならこれから何をするか、ただそれだけだ!・・・・・・・式の、楽天的でさわやかな<前のめり思考>がいまや行き詰まりをみせているのも、紛れもない事実だろう。

◇いまだ<無意識>の段階ではあれ、日本社会がどこかでこのことに気づき始めているからこそ、昨年後半から今日にいたる<特異な情況>がアタマをもたげつつあるのだといえよう。

◇そこで早速、この<特異な情況>の大もとともいえる近間の過去を振り返ってみれば、以下のようになろう。◇戦後史をいろどるコイズミ劇場には、田中眞紀子の登用と更迭><旧・田中派つぶし><北朝鮮訪問と拉致被害者の一部帰国><道路公団民営化といった4大クライマックスシーンのあったことは記憶に新しいが、それらを経て最後にたどり着いたのは、田中派壊滅と並ぶコイズミカイカク本命中の本命、あの郵政民営化であった。

◇だがコイズミにあっては、田中眞紀子(+)北朝鮮問題(+)道路公団民営化など、あくまで政権浮揚への便宜的・テクニック的マターでしかなかったのはいうまでもない。◇だからそれらが以後どうなろうと、コイズミは無関心。フォローや検証などしようとするはずもない。

◇一方、旧田中派せん滅(+)郵政民営化は、コイズミ年来の私怨を全開させるに足る最大目標であり、とにかくムカツク!だからあいつらは徹底的にたたいてやる、そのためにこそ何度もチャレンジしては首相になったのだ!といった対象であった。◇また、大好きな米国への拝跪(はいき)貢献を成就させるためにも、郵政民営化は象徴的行為となりえた。

市場原理主義の全社会的導入(+)アフガンを通した米国貢献(+)イラク戦争貢献(+)郵政民営化。米国にあって、これほど心強いものはなかったであろう。◇<国内における私怨の全面解放=天敵せん滅>と<米国に対する貢献欲の実現>という一石二鳥。それゆえ、外部からは理解不能なほど病的なまでに、彼は必死になったのだ。

◇しかしこれらもまた、コイズミの内部でカタルシスが達成されさえすれば、ジ・エンドとなる。◇前者の北朝鮮・道路公団民営化等と同様、念願だった郵政民営化の帰趨(きすう)にさえ、もはや何の興味も覚えない。そうしたコイズミの内面もうなずけようというものだ。
◇それゆえ、本日時点での郵政民営化の進捗状況&効果はいったいどうなっているの?といった設問に対しては、そんなもの、野となれ山となれ!ケセラセラさ!の心境だろう。

◇いや、それはコイズミだけにかぎらない。当時熱烈に支持した国民もマスコミも、いまやまったく同じ思いであろうから。◇郵政民営化の内実なんてはじめから知ったことじゃない、それにいたる<儀式>をこそわれわれは求めていたんだ。◇例の刺客たち。当選日にはすでに、コイズミから「ご苦労さん」のお払い箱にされていたのは当然といえよう。

◇そうはいえ、コイズミ自身のでたらめさなんてこの際どうでもいい。問題なのは、彼にぴったりくっついては引っかき回された日本国民と日本社会のほうである。◇北朝鮮拉致問題対応のウソっぱちは、当IFSA通信でいやというほど論じてきたし、道路公団改革問題は、先日の「道路特定財源に関する自民党の動きを、コイズミ時代の報道から逆照射してみれば」(08.02.08)で詳述したから、残るは<郵政民営化>になる。

◇ではまた、じくじくと過去へさかのぼってみるとしようか。◇あのときの自民党は、郵政民営化というシングルイッシューで選挙をするのだと、恥ずかしげもなく広言していた。◇選挙で郵政が認められたあかつきには再度即解散というのなら、これも分かる。だが、そんなことなどあろうはずもない。

◇案の定、自民党記録的大勝利の恩恵により、コイズミを引き継いだ安部晋三は強行採決を連発することとなった。◇どこがシングルイッシューだって?郵政にかぎらず、国民はすべてを白紙委任したに等しかった。自民党はまんまとオールマイティーを手にした。

◇本来は<郵政民営化>などにとんと関心のない国民が、コイズミのケンカスタイルに魅入られて票を投ずる。◇その結果、安部の強行採決連発。ひいてはコイズミフリークが嫌悪してきたはずのあの<道路族>にパワーを与えるという、予期だにしない自己矛盾に国民は直面させられた。

◇自民党の小泉純一郎が、孤立無援ながらもいまだ党内で戦っているというならいざしらず、道路特定財源に対して何の発言もない。◇あの米つきバッタの石原伸晃など、熊しか歩かぬ高速道路は不要と当時は吹きながら、いまは手のひらを返し、道路特定財源の10年必要論を説いて回っている。

◇大甘の大マスコミ。これではカイカクが後退するなどと嘆いてみせるものの、最初からカイカクなんてなされてもいないのだから、<後退>はありえないだろう。◇宴は宴のためにこそ必要!個人的な目的を達成したコイズミはサバサバし、まわりの族議員はバイパスから本道に戻ってきただけの話である。◇その結果、6年半引き回された日本社会はバッタバタになった。◇格差社会到来といわれる根因は、まあこんなところにあろう。

◇さすがの国民も、この情況だけは肉体的に察知し、なんかヤバイと思い始めている。◇その第一弾が、昨年の参院選挙だったというわけだ。◇だから、福田首相がひょうひょうと何をしようが、策謀公家のごとき伊吹文明幹事長が硬軟取り混ぜた仕掛けをめぐらそうが、また民主党のトップ・小沢一郎が失策を重ねようが、内閣支持率は下がりこそすれ上がりはしない。◇まさに<特異な情況>の出来(しゅったい)である。

◇ところがどっこい、あの郵政選挙での白紙委任は絶大な効力を発揮し、自民・公明は綱渡りながらも我が世の春を謳歌できている。◇いくら切歯扼腕(せっしやくわん)しても、オールマイティーを与えたのは当の国民なのだから仕方がない。◇それゆえ、参院選での野党勝利に発する<ねじれ国会>と日本社会の<特異な情況>。これを大事にするところから始める以外に手段はないということだ。

◇そしてワイドショー的シーンに戻ってみれば、岐阜では郵政民営化反対の野田聖子が自民の公認を勝ち取り、佐藤ゆかりの国替え儀式では、刺客実行委員長の武部勤が佐藤の手を取って「おててつないで」を熱唱する。◇野田と佐藤が同じひざ掛けを使って仲良しを演出し、お互いをほめあげたりもする。◇国民はクサイ芝居を目一杯見せつけられ、そこはかとなく傷に塩をすりこまれた感触をいだく。

◇こうした自己矛盾のすべては、コイズミカイカクという空虚なものへの熱狂に端を発している。◇その結果、いまやセミ能動的虚無ともいえる<特異な情況>が生まれ始めている。◇それでも<過去>から目をそらせというのなら、この先も前向きのプラス思考だけで脳天気にいくしかないことになる。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年2月 8日 (金)

道路特定財源に関する自民党の動きを、コイズミ時代の報道から逆照射してみれば

◇過去は振り返らない主義の日本社会とテレビメディアだが、感覚だけではあまりに頼りない。◇ねじれ国会のおかげで道路特定財源が注目される現在、コイズミカイカクの名のもと、大騒ぎをしまくった<道路公団民営化>へとさかのぼってみるのも悪くはあるまい。◇資料は、IFSAが収集した2005年・2006年の報道記事である。

★★ムダ投資排せるか 道路公団民営化1日スタート
asahi.com・2005.09.30<A>

◇「日本道路公団など道路関係4公団が1日、株式会社6社に移行し、郵政民営化と並ぶ小泉改革の『本丸』に位置づけられる道路公団民営化がスタートする」。◇「国土交通省の高速道路整備計画(9342キロ)のうち未完成区間は約2000キロ。計画では、うち約700キロは国と地方自治体が建設費を負担する『新直轄方式』で建設し、民営化会社は1300キロ近い残り区間について、採算性を重視して建設するかどうか決める」。

◇「しかし、民営化会社の株式はすべて国と地方自治体が保有し、影響力を持つ。そのうえ、整備区間を最終的に決めるのは社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)で、国交省が道路建設を許可する。このため、道路整備を優先する国交省や自民党道路族の意向で、不採算路線の建設が続く可能性は高い」。◇コイズミ内閣が健在の05年09月、すでにこう予言されているのだ。◇そしてこのわずか4カ月後には、以下のようなダイレクトな報道が登場した。

★★高速道路、結局は全線建設 税投入約3兆円 国幹会議
asahi.com・06.02.07<B>


◇「高速道路整備計画を審議する国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議、北側国土交通相の諮問機関)が7日、昨年10月の道路関係4公団の民営化後初めて開かれ、国の整備計画9342キロのうち、事業主体が未定だった19路線・49区間(1276キロ)について整備方法を決めた」。

◇「民営化会社が建設する有料高速が42区間(1153キロ)、国と地方が税金で造り通行無料になる『新直轄方式』が7区間(123キロ)」。◇「民営化は無駄な道路建設の中止が目標だったが、結局は全計画路線が造られる」

◇「(前略)交通量が少なく不採算のため高速道路会社が造らない道路は、建設費の全額を公費で賄い、開通後は通行料を無料とする『新直轄方式』で造る」。◇「建設費は国が4分の3、地元の7道県が4分の1を原則負担する。国は建設費にガソリン税などからなる道路特定財源を充て、06年度から用地取得を本格化する」。

◇これらをまとめてより正確にいえば、以下のようになろう。◇「道路公団の民営化議論の結果、高速道路建設は、(1)民営化会社が、45年以内に債務を返済できる範囲で建設(2)採算性が低いが、地元が開通を望む区間は税金で建設し無料開放する『新直轄方式』で建設--のどちらかで整備することになった」(★★高速道路:税金投入の「新直轄方式」で7区間の整備決定・Mainichi INTERACTIVE・06.02.07<A>)

◇だからというか、45年先なんてだれも知ったことではないから、結論としては当然こうなる。

◇「国土交通省が7日開いた国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で、国の高速道路整備計画の未開通区間すべての建設を決めた」。◇「小泉純一郎首相が『無駄な道路を造らない』と掲げて進めた高速道路改革だが、一部区間の当面の着工先送りや、建設コスト削減にとどまった」(★★高速道路:未開通区間すべて建設 「改革」は道半ば・Mainichi INTERACTIVE・06.02.07<B>)

◇それにしても、<道路公団民営化ムダな道路を造らないため>という分かったようで分からない理屈は、<道路特定財源環境を守るため>なるムチャクチャな論理とどこか似ていて、実に興味深い。

◇民営化すれば採算第一になるから、ムダな道路建設に手を染めることなどありえないとでも言いたいのだろうが、何のリーダーシップも持てない疑似民営化会社の実態からして、それが空論なのは明らかだろう。◇あのJR各社に、国鉄時代よろしく、いらない新幹線建設をおっかぶせようとするくらいなのだから。

「民営化会社の株式はすべて国と地方自治体が保有」「整備区間を最終的に決めるのは社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)」「役員は民間出身の会長を除き、公団理事や旧建設省官僚らが大半を占めた」(上記記事)というだけでも、疑似民間会社の正体が分かろうというものだ。

◇しかも、この民営化会社のコアはいったいどこにあるのかという企業の非主体性ぶりが、以下につづられている。◇と同時に、このスキーム自体のうさんくささも垣間見える。

◇「道路など資産の大半と債務は、独立行政法人『日本高速道路保有・債務返済機構』(機構)が保有」。◇「民営化会社は機構から道路を借り受け、道路管理や通行料の収受、サービスエリアなどの運営事業を続けて、機構にリース料を支払う」。◇「新たな道路建設資金も、民営化会社が政府保証付きの社債で賄い、完成後は債務とともに機構に移す」。◇「機構はリース料収入で、公団から引き継ぐ債務約40兆円と新規建設費用を45年以内に完済し、完済後は通行料を無料にする計画となっている」(上記・asahi.com・2005.09.30<A>)

◇朝日新聞や毎日新聞では<偏向>?という人のため、日経の記事も引用しておこう。「★★高速道、ほぼ全線整備・税金投入7区間追加」と題し、NIKKEI NET(06.02.08)もこんな風に言っている。◇「高速道路の整備計画9342キロのほぼ全線の建設が固まった」。◇「道路関係公団民営化など高速道路改革が動き出したが、建設コストが削減できた程度で、改革は事実上骨抜きになった

◇IFSAがもう6年間もしつこく言ってきたように、コイズミカイカクなんていずれもこんな調子でしかなかったのだ。◇コイズミにとっては、口当たりのいいスローガンを掲げ、それらを過激に決めるまでの劇場プロセスが勝負。◇それゆえ、一度決まってしまえば、あとは野となれ山となれ。

◇道路公団民営化でいえば、04年の国会通過がピークだったのであり、翌05年秋から民営化がどう動き出すかなど、関心もなければ知ったことじゃない!彼にとってはもう終わってしまっている。◇郵政民営化もまったく同じで、あの郵政解散・総選挙にいたるドラマこそがすべてなのであった。

◇さて、道路公団を民営化に導いた立役者として自認する猪瀬直樹。彼は「高速道路の整備計画9342キロほぼ全線の建設が固まった」時点(06.02)でどう述べていたかを見ておこう。◇彼のメルマガ(「日本国の研究」・08.03.02)冒頭でこう言う。

◇「2月7日に開かれた国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で、9342キロの取扱いがきまり、第二名神の『抜本的見直し区間』について、『当面着工しない』という文言が盛り込まれました。しかし、新聞報道は『骨抜き』の一辺倒です」。

◇以下は、そこに掲載された猪瀬の「ニュースの考古学 頑張っても頑張っても新聞は『民営化骨抜き』のバカのひとつ覚え」 (週刊文春 2月23日号)からの引用(=結果として孫引き)である。

◇「九三四二(キューサンヨンニイ)キロまでが、国幹審で『建設を開始すべき』とされたのは九九年。国幹審は二、三年毎に開かれた。〇一年に僕が道路公団民営化を提起しなければ、いまごろは九八××とか九九××になっていたはずである」。◇骨抜きになったのではない。九三四二キロ以内の議論に押さえ込んだことを知ってほしい

◇「今回の国幹会議で第二名神の『見直し区間』は『主要な周辺ネットワークの供用後における交通状況等を見て、改めて事業の着工について判断することとし、それまでは着工しない』という原案が提出された」。◇「そういうなかで(着工圧力の強いなかで-筆者註)国交省は『着工しない』という彼らなりの苦渋の決断を文章化したのだ。小泉首相がブレていないから」。

◇「役所が一度つくった計画を『しない』とするのは異例のことである。にもかかわらず『高速道 全線を建設』(朝日)と安易にトップ見出しにすれば、建設派は、やっぱりいいのだ、と動きを強める。まさに新聞辞令である」。 

◇ではこの第2名神問題に関し、猪瀬の怒りまくる「新聞」はどう伝えていたか。

◇「改革の成果とされるのは、一部区間の着工先送りとコスト削減。着工先送りで注目されたのが『第2名神高速道路』の2区間(大津市-京都府城陽市、同府八幡市-大阪府高槻市、計約35キロ)。近くに並行してバイパスがあり、必要性が疑問視されている」。◇「だが、西日本高速会社は35%超のコスト削減が可能として建設を主張、国交省も『必要性はある』との主張を曲げず、建設はするが着工時期は今後の交通需要を見て判断するというあいまいな決着になった」(上記・Mainichi INTERACTIVE・06.02.07<B>)

◇だからオレはすごい!に引っ張り出された第2名神問題。その後の動きをみれば、猪瀬の主張のむなしさだけが響いてくるではないか。◇まあそれはともかく、オレがやったから9342kmに収まったんだ!には恐れ入った。◇「骨抜きになったのではない。九三四二キロ以内の議論に押さえ込んだことを知ってほしい」は、9342キロまではOKと言っているに等しいだろう。

◇あまりに長くなるから、逆照射はこれくらいにしておこう。◇人の揚げ足をとるためではなく、議論の原点が奈辺にあるかを再確認するためにも、たまにはこうした作業も必要とIFSAは思うのであります。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年1月19日 (土)

コイズミカイカクとは<前向き?に失った5年>。むなしさと疲弊をどう乗り越えるか

◇コイズミ劇場という未曾有の大フィーバー。飽きっぽさが特徴の日本人社会にあり、特に政治分野ではブームなど半年ももてば立派といったところだが、あのコイズミ旋風だけはちがった。◇波はあったにせよ、5年以上も吹き荒れたからだ。

◇その直接的な要因は、まちがいなく、名優コイズミ(+)生活感というものを知りつくした稀有の演出家・飯島勲の鉄壁のコラボレーションにある。◇しかしそれだけでは、移り気な日本人をあそこまで引き留められるとも思えない。

◇IFSAが何度も指摘してきたように、日本人を深く傷つけ、閉塞させ、自信喪失に陥らせた<バブルの後遺症>があったればこそ、国民はそこからの脱却を念じ、コイズミ・竹中の変革劇に身をゆだねた。◇変革・規制緩和・小さな政府・民営化・成果主義・終身雇用打破・市場での自由競争・・・・・・等々、いままでの日本社会に対するアンチテーゼと見えるものにはすべて、<コウゾウカイカク>という水戸黄門を与えて全面的かつ熱狂的に支持し、われらがコイズミをあがめまくった。

◇その集大成が、2005年秋の郵政民営化・踏み絵衆院選挙。<刺客>とかいう威勢のいい仕掛けも、これまた変革の小道具としては恰好のものと映った。◇結果は自民党の大勝。コイズミの株は、その度胸も含めてさらに急騰する。◇しかし皮肉なことに、これがいずれ<変革>へのクエスチョンを生もうとは、当のコイズミも、変革熱に浮かされた国民も、まったく予期しないところだったにちがいない。

◇片山さつき・猪口邦子・佐藤ゆかり・杉村太蔵らの、いわゆる小泉チルドレンがテレビでもてはやされたのもわずか数カ月。◇その後の急速な話題低下は、日本社会における変革症候群の沈静化とパラレルだった。◇なぜか2007年の正月を機に、格差社会問題がマスコミで突如喧伝されるようになる以前から、国民は皮膚感覚として、どこかだまされたんじゃないかとの疑念を意識下に抱き始めていたからだ。

◇そうしたテンションの低下を見透かすように、賢明なコイズミ・飯島連合軍は大物ぶった勇退を見事演出。新保守主義の期待の星・安倍晋三に道を譲った。◇インフラはオレがきっちりと整備しておいたからナ、おいアベ君。あとはキミが憲法・国防・教育といったイデオロギー面を果敢に変革する番だ、と。◇能力もキャリアもないのに勘違った安倍は、アタマでっかちのどうにもならない同志(=おともだち)を周囲に配しては、得々と強行採決を連発していく。

◇しかしその時点ではもう、不毛なヘンカク熱に疲れ切った国民のベクトルはバラバラになり、熱を帯びた集合表象ははじけきっていた。◇それを知らぬは、生活感ゼロの安倍とブレーンたちばかり。だからこそ安倍は、辞任のずっと前より破綻をみていたのだ。◇ギリギリのところで逃げ切ったチーム・コイズミの含み笑いが聞こえてくるようではないか。

◇バブル後の<失われた10年>に対し、コイズミカイカクの期間を<前向き?に失った5年>とIFSAが言うゆえんである。◇コイズミの個人的な政治目標は、私怨にのみ発する<旧田中派つぶし>と<アプリオリな郵政民営化>。単純そのもののコイズミを象徴するかのように、首相の目的は<そのふたつだけ>に尽きる。◇案の定、コイズミはそれ以外に何の政治的興味も示さなかった。

◇そのために利用した魔法の手は、新古典派経済学によるところの市場原理主義。コイズミ自身は経済オンチだから、竹中平蔵という口達者で権力志向の強い男をうまく利用した。◇そしてこの市場原理主義さえエンジンに据えておけば、コイズミがいちばん気にする米国はとにかくご満悦の万々歳。◇あとは米国詣ででブッシュとキャッチボールに興じ、アフガン・イラクには突出した米国お追従ですべてはOKと相成る。

◇こんな調子で5年半もやられたら、さすがの日本もガタガタになったとして不思議はなかろう。◇それこそが、<格差社会>という名で総称される日本社会のいまの姿というわけだ。

◇コイズミカイカクの中期まで、閣僚や与党幹部がテレビで使いまくっていた<セーフティーネット>や<ワークシェアリング>といった口だけのエクスキューズ。◇その後なぜかパタッと使われなくなったこの安直語の行く末をフォローしてみれば、コイズミカイカクなるものの本質が明瞭(めいりょう)に見えてこようというもの。

◇そして時は、クリンチと猫なで声が専門の福田政権へと移行。◇年金と薬害C型肝炎問題では生活オンチをさらけだし、こりゃ大失敗したとさとって以降は、不似合いな<生活><国民><消費者重視>を突如連呼し始めた。◇「『国民』連発、11分で36回…首相の危機感反映? 」(ZAKZAK・08.01.17)。それというのも、コイズミカイカクの底が完全に割れ、こりゃどうにもヤバイよとようやく肌で感じだしたからだろう。

◇しかし、「失った5年」の後遺症はあまりに大きくかつ深い。◇だからというべきか、小沢一郎が、大連立謀議というどうしようもない醜態をさらしてみたり、また、衆院本会議採決中座なる悪癖を強行してさえ、自民党への逆風はいっこうにおさまらない。

◇さはさりながら、コイズミが残していった米国への完全忠誠路線。自民党政権である以上、それだけは継承せざるを得ない。◇だからこそ、以下のような珍妙な現象が起こることとなる。

◇ここで注目すべきは、インド洋給油法再可決に対する政府・自民党の理由づけ。昨今、これほど安直かつ便宜的でおもしろいものもなかったといえる。◇「この給油こそが、いちばん安上がりで低リスクな方法。小沢一郎の言うISAF(国際治安支援部隊)?そんな危険きわまりないものへ、自衛隊はとても出せない。いやそもそも、これは憲法違反だ!」(大略)。◇オ~オ~、いったいこれが自民党の言なのだろうかとIFSAは耳を疑う。

「日本も多国籍軍への『国際貢献』を迫られ、自衛隊派遣を拒否する一方で、総額130億ドルを支援した」(現代用語の基礎知識2007・自由国民社・ロゴヴィスタ電子版)のに、金だけ出して「汗をかかない」(=IFSAのもっともキライな語である!)と批判され?、以来それがずっと彼ら自民政治家のトラウマとなってきたらしい。◇その轍(てつ)だけは踏んではならぬとテレビなどで口角泡を飛ばし、ほえ続けてきたのはいったいどこのだれだったのか。

◇これぞコイズミ・安倍政権の基本的テーゼではなかったのか。◇それが一転、ハト派に近い福田康夫にかぎらず、自民党のタカ派までもが「安上がり・ローリスク・憲法範囲内」をうたい文句にし始めるというのだから、なにをか言わんや。◇当然ながら、IFSAはもともと、湾岸戦争で金だけ出して何が悪いと思っているくちなのだが。

◇さあ、この<失った5年>を挽回するには、コイズミという名優に絶対善としての<変革>をかぶせ、観客としてカタルシスを得てしまうといったチャッカリ代償行為ではなく、自分も情況へ泥臭く参加していくことを原点に据える以外に何も始まらないだろう。

◇そしてあの注目すべき参院選後のいま、若干とはいえ<曙光(しょこう)がちらちら>を感ずるのはIFSAだけだろうか。◇落ちるところまで落ちれば強い日本人。一方でそんな予感もしている。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2008年1月 4日 (金)

日本のいまを象徴する危機的現象=家族団らんのレストランでゲームに熱中する子ども

新年おめでとうございます旧年中はご愛読ありがとうございました。おかげさまで、当IFSA通信のアクセス数は順調に増えており、大いなる励みとなっています本年もよろしくお願いします

◇<日本のいまを象徴する危機的現象>と大上段にきたから、もっと大きなことかと思えば、レストランでのゲームっ子問題だって?まずはそう言われそうな気がする。◇しかも、今日述べようとするのは、例の大脳生理学的論争をよぶ「ゲーム脳」問題ではなく、もっと下世話な話にすぎない。

◇ファミレスや、少々アップグレードのレストランで堂々とゲームに興じる子どもたち。そして、それを容認する親たち。◇いつも感じるこの場違いさから、まずは触れてみようと思う。◇しかも、たまたま出会ったレアケースについてではなく、まさにしょちゅうといった感じで目にする光景について。

◇たとえば親子4人で食事にきたファミリー。◇小学生の弟は食事をしながらもちょこちょこと携帯型ゲーム機を操作。出てくる料理など上の空でささっと片づければ、あとは斜めを向いてゲームに熱中する。◇小学高学年のお姉ちゃんは、少女マンガや児童書に一心不乱。◇当然のこと、4人でテーブルを囲むその場に夫婦以外の会話はない。◇またかの男の子は、親がレジに立つまでゲーム機から目をはなすことはなかったし、出口に向かう通路でも歩きながら操作をしていた。

◇彼らは、レストランというパブリックスペースに出てきてさえ、自分とゲームという<個の磁場>しか持ち合わせていない。◇家族同士の会話のやりとり、店の雰囲気、料理の中身、店員の応対、他のお客さんたちの動向、・・・・・・、そんなものにはからきし興味がないのだ。◇もっと大げさにいえば、<社会>などまったく視野の外。◇だから、レストランにまでゲーム機という相棒(=分身)を引き連れ、ひたすらマイスペースに没入することとなる。

◇さらに不可解なのは、そこにおける親の対応。◇食事中や一家だんらん時のゲーム機を注意しないのはもちろん、どうやらそれをとんでもないこととさえ思ってもいない風情がありありで、散々小言を言ったけれどもうさじを投げたといった雰囲気はみじんもうかがえない。

◇いや、ゲーム機操作なる<自己世界の確立?>に親は目を細めている感すらありと私が言えば、いくらなんでもそれはないでしょうと妻からたしなめられた。◇ただ、そうも言いたくなるほど、親たちがばっちり容認していることだけは間違いがない。少なくとも、苦々しく思っているなどはまずあり得ない。◇そこには、気持ち悪いほどの予定調和がほんわかムードで漂っている。◇もしかすると、過酷なお勉強の合間だからいいでしょうとも。

◇一見唐突に思えても、この延長上には、携帯長電話、もしくはヘッドホン装着による街歩き&自転車走行が続いている。◇彼らは一様に、町中から押し寄せる<社会>の流入を瀬戸際で(無意識のうちに)シャットアウトし友人や音楽との関係性からマイスペースを確保しようとしている。◇だから、町の生活音・風景・他者との関係性は全然インプットされない。というより、それらに対してはまったくの無関心。

◇先日のこと、忘年会で久しぶり24:00すぎになった私は驚いた。最寄りの駅から自宅までの10数分、前を歩く若い女性はずーっと携帯電話で話しっぱなし。◇結果としてたまたま同じマンション棟の人だったのだが、私がエレベーターに乗るや、その前で立ち止まってまだ話をしていた。

◇電話が長いのが問題ではない。夜道、それも深夜の10分以上、彼女は町の音や気配から遮断され、完全に無防備だったということ、しかも本人はそれに無自覚であるということ、私はその点にこそびっくりしてしまった。◇戦後のどさくさ時代に幼児期を送った団塊世代は、「人さらいに気をつけろ」とずっと言われてきた。その私からすれば、夜中に歩くに五感動員の触覚フル稼働は当たり前のこと。

◇<社会>とは接点のないこのような若者たちが、いつ被害者になっても不思議はないだろう。◇それでも、偽善を旨とするマスメディア(特にテレビ)は、被害者=いつも絶対善でジ・エンドにする。◇本質的な問題の片面は確実に等閑視され、表層へ表層へと流されていく。

◇レストランでの小学生と、夜道で携帯電話に夢中のこの女性。◇彼らは、<社会>と無縁のところで生きている点で共通している。◇考えあって<社会>を拒絶しているのではなく、もともと<社会>とは無関係。はなから<社会>なんて眼中にはない。◇いや、深層心理的には社会がコワイ!だから無意識に避けている。

◇IFSAはこれらの点を、道徳的イッシューとして取り上げたいのではない。◇<個人>のなかに少しも<社会>をもたない若き日本人たちの、広がりのなさを問題にしているのだ。◇彼らの対他存在とは、ゲーム機とバーチャルなメル友。だからこそ、携帯電話で必死に話しを続ける。アイデンティティの寄る辺(べ)を求めて。

◇そこでの自慢は、携帯アドレス帳における友人の数。真の友人なんて、数人もいればもうけもの式の発想は彼らにはない。◇ポイントは、質よりもあくまで<人数>。まさにそれこそが、自身の社会性のバロメータなのだから。◇しかし、メール発信後に即返事がなければ不安は極大化し、チャチャカと受信を確かめることとなる。

◇「週末の夕方。東京都内の広告会社で営業を担当する佐野裕美子さん(23)=仮名=は、仕事を終えると気の合う友人2、3人に携帯メールを送る。『いま何してる?』 送り終わると、すぐに返信確認。1分、2分、3分・・・何度も操作を繰り返す」。

◇「『私用の携帯メールの返信が気になる。地下鉄に乗れば一駅ごとに”センター問い合わせ”をしてしまう』(24歳の女性会社員)、『返信が来ないで5分過ぎると貧乏ゆすりが始まる』(20歳の大学生)-」。◇「小中学生は『15分以内に(メールを)返さなければ友達じゃない』などと言う(以上、★★【溶けゆく日本人】(1)快適の代償 待てない人々 数分間でイライラ ・MSN産経ニュース・2007.11.13)。

◇彼らに対し、「少しは社会へ目を向けたら」と注文をつけたところで、それは無理というより、何のことを言われているのか分からないというのが正直なところかもしれない。◇小さいころから、その子にとってはゲーム機が<社会>。◇家の近くの路地も、レストランも、商店街も川も、そんなものは視野にすら入らない生活を送ってきたのだから。

◇BRICsにも追い越されるといった知識人たちの常套句と危機感は、はたしてこの点に注目してのことだろうか。◇いや、とんでもない。彼らは、偏差値をもっと上げなければと言っているにすぎないのだから。◇しかし皮肉なことに、上述のようなレストラン・ゲームっ子にかぎって、偏差値はけっこう高いときている。さあ本質はどこに。

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年12月28日 (金)

コトの本質から逃げまくる福田内閣=年金と薬害C型肝炎問題への対応はみごと通底

「自民党メールマガジン」というのをはじめて見た。◇いまさら引っ込められないから仕方なくおいておくしかないであろう、そのバックナンバー。◇2007.07.10付の号外版がおもしろい。題して「最後の1人に至るまで、責任を持って年金を支払います」だって。

◇全文に興味のある方はhttp://www.jimin.jp/jimin/jimin/2007_seisaku/nenkin/index.htmlをご覧いただくとして、「信頼できる年金制度へ。自民党は改革を全力で進めています」の大見出しにつづき、中見出しは「すばやい。1ケ月ちょっとで迅速な対応」となっていて、思わず吹き出す。

◇そして、あまりに抽象的で根拠レスな各論が始まる。◇「年金記録問題が国民に大きな不安・不信を呼び起こした5月末からほぼ1ヶ月。政府・与党は、国民の年金に対する信頼を回復するため、文字通り“不眠不休”で真剣に検討・議論を続けてきました」。◇「その成果が今回の包括的な対策に結実しました」。◇「この間、野党はそろって批判の大合唱をしただけ」。◇「やっぱり政治は実行力。自民党が皆さんの年金を守りました!! 」ときたもんだ。

◇さらには勢い余って、「20年5月までに名寄せするとしていた5000万件の年金記録。これを今年の12月から来年3月までに前倒しして終了します」と断言。◇ここには、安倍晋三とそのスタッフたちの軽さ・放言癖が見事なまでに結実されており、いまとなっては、あれまあと微苦笑するしかない。◇しかしそれらが、舛添厚労相の現在進行形的口吻(こうふん)とほとんど変わりないのも、これまた新鮮なる驚きである。

◇まあそれはさておき、例の「★★年金名寄せ 4割が困難 野党、徹底追及へ・TOKYO Web・07.12.12」対する毎日新聞の記事(=★★読む政治:年金「照合」「統合」、意図的に混同 自民“公約偽装”・毎日jp.・07.12.24)は、本質をきちっと伝えていて教えられた。◇「照合』『統合』の用語が意図的に混同され、政府・自民党は来年3月末までの完全解決のイメージを国民に植え付けていった」。◇「無理を承知で、国民に約束した“公約偽装”とも言えよう」。

◇「政府公約の『照合完了』は、5000万件の持ち主らしき人を探せる範囲で探し、『記録が漏れているかもしれません』と通知することにある」。◇「これに対し『統合完了』は、通知の返事を受けて全記録の持ち主を特定し、給付に結びつけることを指す。いわば全面解決に近い」。

◇「6月、自民党の公約作りで相談を受けた社保庁は、ビラには照合と同義の『突合(とつごう)』を使うよう進言していた」。◇「しかし、官邸や党幹部が『分かりにくい』と却下し、『統合』の言葉が採用された」。◇ただ公約には、「統合」の文字は入れなかった。いくら何でも危ないからと。

◇「それでも参院選公示後も、多くの与党候補は『問題は3月には解決』と訴えた」。◇「中川秀直幹事長(当時)も『5000万件については全部統合する』(7月20日、佐賀県内の演説で)と確証がないまま統合を約束した」。◇「こうした結果、政権公約は『3月に問題解決』であるかのように浸透していった」。◇にもかかわらず、自民党は参院選で惨敗を喫した。そんなもの、だれも信じていなかったことの証左だろう。

◇3カ月前の話を平気でコロッとひっくり返す自民党。◇2004年成立の年金改革法「100年安心プラン」とは、悪ふざけにもほどがある。◇コイズミのやりそうな大ボラだ。◇この一連の動きを見れば、コトの本質に迫ろうとの意欲もなければ気力もない。すべてはそのときばったりというのがあぶり出されてくる。◇そして福田内閣もまた、その伝統を引き継ぐ。所詮、安倍晋三には困ったものだといった表情を見せるだけのことで。

◇年金ばかりか、悲劇の極致のような薬害C型肝炎問題にも触れざるをえない。◇私は、筋論をちきっと述べる原告団の女性たちをテレビで見るのがつらい。◇だから、福田が議員立法方式を打ち立てようが、怒りは倍加するばかりなのだ。◇<事務処理上の名案が見つかったぞ>式の、彼ら政治家・官僚(厚労省+法務省)の薄汚さに対して。

◇どうやら、自民党への抜き差しならぬ危機感に駆られた与謝野馨・前官房長官が福田のもとへ馳せ参じ、議員立法の知恵を授けたらしい。◇だからこそ、急転直下の決定。法務省筋に強い与謝野の入れ知恵で首相はじめて動く、というのが真相らしい。

◇すなわち、いつもエラそうな町村信孝以下の官邸は、KY一色の無策一途。福田はただただそれに乗っかっているだけといったところだろう。(以上、詳しくは★薬害C型肝炎訴訟:首相が謝罪 救済「投与証明で」 原告団「法案明記を・毎日jp.・07.12.26を参照)。◇与謝野たち与党戦略家からの、内閣への歯がみが聞こえてきそうな気がする。

◇まあそれはともかく、薬害C型肝炎問題でIFSAがいちばんアタマにくるのは、次のような発言だ。◇「政治判断ばかり言っちゃうと、日本の法制度はなくなっちゃうのでないか」(概略)。だれあろう、闘う公家・伊吹文明・自民党幹事長がインタビューにこたえたお言葉。◇何が法制度だ!大阪高裁の和解骨子案を順守することこそが法制度の維持につながるといった詭弁(きべん)を、彼らはいけしゃあしゃあと使ってきた。

◇私は法律には素人だが、そもそもの話、薬害肝炎問題が明らかになった初期段階で行政がすぐさま手を打ち、それ以降の被害拡大ストップ、患者への全力をあげた治療を行ってさえいれば、今回のような形での訴訟は存在しえないはず。◇それを棚に上げ、放置するだけ放置しておきながら、和解案に忠実に行動するだって?◇命にかかわることは、科学的視点からただちに行動を起こす、それが法治国家のインフラをなすことすら彼らは知らないらしい。

◇しかも厚労省は、一律に救済すれば数兆円必要とのブラフをかけた。何たる破廉恥漢。◇IFSAは、本当に数兆円必要ならそれでも救済すべしとの立場だが、どうやらこの数字自体が真っ赤なウソのよう。◇舛添厚労相によれば、「その後に原告団が原告総数は1000人くらいと述べたから、それならと方針を変えた」(概略)だってサ。◇何を言っているんだ、この男は。そんな数字は厚労省自身の責任で把握すべきコトだろうが。

◇そうしたら、本日(07.12.28)のasahi.comにこんな衝撃的記事がのった。

「★★グロブリンからも肝炎ウイルス 70年代製2本検出」。◇「はしか治療などに使われた70年代の血液製剤『免疫グロブリン製剤』から、C型肝炎ウイルスが検出されたことが分かった」。◇「薬害C型肝炎訴訟では、フィブリノゲン製剤血液凝固第9因子製剤を投与された人を対象に救済法案がつくられることが確実になったが、肝炎感染はさらに数種類の製剤で起きた恐れが出てきた」。

◇こういうマターはすべてを科学的に究明し、最終判断を迅速にくだす。それが鉄則。◇にもかかわらず、ときの政府と旧厚生省は、他の利害を優先することで見てみないフリをし、悲劇を拡大させてきた。◇しかも、この期におよんでさえ、政府はすべて政局的判断だけでコトを<処理>している。

◇アフガン・イラク関連の自衛隊給油問題を政局にするな、年金を政局にするなと、笑止な主張を続けてきた政府・与党の面々。◇薬害C型肝炎問題では<政局>のオンパレードなのに気づかないらしい。◇しかも、司法と立法に丸投げをし、肝心の張本人である行政はいち抜けたで安穏

◇コトの本質などどうでもいい。こんなとんでもないメソッドで丸め込まれてはたまらないのだ。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年11月23日 (金)

「福田・小沢大連合」への視点(3)=自民党のダメモト戦術は逆に弱々しさを際立たせた

◇国中が大騒ぎとなった福田康夫&小沢一郎の「大連合」謀議。◇国会職員を動員し、舞台となる院内密室の盗聴マイク等を事前に調べまくったというから、相当にやばいお話だったのはたしかだろう。

◇さめやすい国民性は、あれだけの大事件をはや記憶の彼方へ追いやろうとしているが、actualを旨とするIFSAとしては、<臨場感>を忘れないうちにいろいろ書きとめておこうと考えた。◇その試みの第一弾が、「『福田・小沢大連合』への視点(1)=マスメディアから背中を押される日本政治の貧困(2007.11.10)」、第二弾が「同・(2)=小沢一郎は自民党からの誘惑になぜのったのか(07.11.13)」

◇<総論>から<小沢一郎>へときて、今回は本当の主役であったはずの<本丸・自民党>に関してだ。◇ところで、2回目の会談にのぞむ直前の福田の基本認識は、戦意のかけらも感じられぬ情けないものだった。◇党本部での会合で、彼はこう嘆いていたという。「『私もねぇ、今なかなか苦労してますよ。片肺飛行っていうんです。衆院の方はエンジンついてんですよ。参院の方はエンジン落っことしちゃった……』」。

◇「(前略)10月30日の1回目の会談は『成果なし』。同日夜には『民主党もメリットがないと、簡単に自民党と協力できないのでは』という記者団の質問をさえぎった首相は、珍しく声を荒らげた」。◇「『損得っていうことでやるんですかぁ? 損得ですか? ねぇ? 国民のためじゃないんですか? 国のため、国民のためですよ』」(上記いずれも、<★★福田首相:「参院はエンジン落としちゃった」・毎日jp.・07.11.02より>)。

◇まさに、<な~んちゃって>ではないか。「国民のため」が聞いてあきれる。◇だれが考えたって、だいいちの目的は、インド洋上での給油活動継続以外にありえない。それが「国民のため」へと短絡されるから、笑ってしまう。◇もっとミクロでいえば、何とかして自民党を存続させるため、マクロでいえばブッシュ政権への忠誠心表明のため。◇IFSAがここでいうミクロとマクロ。位置づけはけっして逆ではない。◇米国あっての自民党ということ。

ナベツネ→森喜朗から知恵を授かった福田の一大決戦が、11月2日に行われた2回目の<やらせ打ち合わせ>。◇これも無事終わり、福田としてはしめしめと思った途端、民主党による電撃的な<小沢頭越し>否決が返ってきた。◇森・福田は完全にあてがはずれた。というより、小沢の党内影響力を買いかぶりすぎた。

◇だがその直後からの、自民党的リアクションがおもしろい。◇どうせ<両面待ち>(日刊ゲンダイ)なのだから、ノンを言われたってまだまだ得るものはたっぷりある。そうした思惑が、ギラギラとアタマをもたげ始めた。

◇「首相周辺は同日夜、民主党が連立への呼びかけを断ったことについて、『党首会談を2回もやって断られたのは、やるだけのことはやったということだ。法案を通す環境整備ができた』と述べ、野党が反対しても、衆院での再議決を含めて与党が強気の国会運営を進めるとの見方を示した」。◇「参院自民党幹部も『これで振り出しに戻った。対決国会になる』」と語った(★★与党、強気の国会運営も 補給支援法案・asahi.com・07.11.03)

◇さらにはもっと踏み込んで、「政府・与党が期待を寄せるのは、政権と対峙(たいじ)する民主党から世論の支持が離れ、あわよくば民主党が分裂して与党が参院の過半数を回復できるような展開になることだ」。◇「町村派の参院議員は『小沢氏が新党を設立して飛び出すことに期待感がある。いま、自民党から手を突っ込んで、民主党は大混乱に陥っている』」(★★「憂国の情、理解されず」 小沢氏辞意に自民幹事長・asahi.com・07.11.04)

◇<小沢ドタバタ辞意撤回>時の自民の高揚感は、異常ともいえるほどのものであった。◇あれだけ低姿勢・猫なで声のクリンチ(抱きつき)作戦に徹していた福田自民が、一夜にして、強行採決連発の安倍政権手法へ戻ろうとの勢いを取り戻した。◇戦後ずっとそれを繰り返してきた自民党が、参院選後には小声で、「民主は数の横暴だ」などと笑止の叫びをあげてきた喜劇。◇それをまたさっとかなぐり捨てるような雰囲気であった。

◇しかし、この短絡的アップダウンは、もはや刹那的政局観でしか動けない幕内クラスの政党にまで落ちていることを、自民みずから証したにほかならない。◇だからこそ、第2回謀議にて福田の口から、「衆院小選挙区制を中選挙区制に見直す考え」(★★民主党が連立の打診拒否 政局流動化の可能性 首相は衆院の中選挙区制示唆・MSN産経ニュース・07.11.02)まで示されることとなるのだ。

◇民主さん、貴殿にそこそこのポジションを差し上げますから、あの55年体制のように呉越同舟でいきましょうよ。◇いや、55年体制ほど自民は突出しなくてもいい。ほぼ対等でもいい。おたがいNo.1.5くらいでどうですかと。◇そうやって一度取り込んでしまえば、あとは自民党のお家芸。民主一派を干し上げることくらい朝飯前の自負が、彼らにはある。

◇かつて細川首相の首席秘書官をつとめた成田憲彦・駿河台大学学長が、ある研究会でこう述べた。◇「89年参院選挙での社会党の大勝。土井たか子委員長は『山が動いた』と言ったが、その後が続かなかった。だが、それは必然だったのだ」(大略)。◇彼によれば、当時の社会党、中選挙区制で候補者はいつも1人のみ。最初から2人以上を当選させる意図もなければ膂力(りょりょく)もなかったという。

◇であれば、少しくらい山が動いたって、山をどかすにいたるはずはない。何十年たっても政権交代なんてありえないことになる。◇おそらく社会党にとっては、各選挙区1人当選でもう十二分の大満足。◇それだけ頂戴できさえすれば何にも困らないし、それ以上のぞめば限界利益を割り込んでしまうこととなる。◇労組上がりのおっさんが国会のセンセイとなり、何期かつとめて勲○等。◇これほどおいしい予定調和はないではないか。

◇しかし先日の参院選だけは、国民によるもっとず~っと鋭角的な問題提起を内包していた。◇小沢の失態で舞い上がった自民の面々(+)小沢一郎だけが気づかないようなそれを。◇そして、大阪市長選での自民・公明連合軍惨敗。

◇当初からIFSAの指摘していた、「ちょっと時間がたてば、今回の件は小沢民主どころか福田自民のほうにこそじわっと効いてくる。実は試合巧者の自民に修復不能な深傷(ふかで)がとIFSAは見る」が、大阪市長選という第1ステージで即あらわれたといえよう。

◇のぼせついでに公然と消費税を上げると言い始めた自民党は、お粗末ながら、大阪市長選という、たった一事のローカルマターでシュン。◇小政局ユラユラ路線を端なくもさらけだしてしまった。◇今度は一転、消費税は先延ばし、解散は当分しない!だってサ。

◇だが、そんなことは最初から分かり切っていたことだろう。何せ次の衆院選、コイズミ郵政バブル・刺客選挙を下回り、3分の2になんか到底達しないのは必定なのだから。◇減るのが確実の選挙へ打って出る。これはよほどのことがなければ踏み出せまい。◇だからこそ、自民にも民主にも勝ちのない選挙になるとIFSAは述べてきた。

◇虎の子の再議決3分の2条項を、簡単に手放すとお思いでしょうか。◇しかも、今回の謀議における公明党下部組織との亀裂が大きい。◇あれだけ創価学会ぎらいだったコイズミが、頭を下げて彼らと組んだのも、公明党ナシに自民は生き残れないと、2001年当時から認識していたためにほかならない。◇いまや、その公明党の神通力にもかげりが。

国民新党の亀井静香が、大阪市長選の結果をふまえてずばっと言っている。◇「『創価学会の麻薬で生きてきた自民党だが、麻薬が効かなくなると大変だ。慢性依存症が強くなっていて、そこが手を引くと、全体ががたついた』」と述べた」(★★創価学会は「麻薬」…亀井氏「自民は依存症」・MSN産経ニュース・07.11.21)。◇麻薬が効かなくなったから、今度は小沢君へ。何と分かりやすい図式であろう。

◇ここで原点に立ち返れば、鮫のなんとかといわれた森首相の退陣劇、いや、森の就任劇のころから、自民党政治は危殆(きたい)に瀕していたのだ。◇それを奇跡的に救ったヒーローが、コイズミという不世出の役者。◇その欺瞞的なプロセスについては、拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人-日本的閉塞社会論-』(はる書房・02.08)にて詳述したので、そちらを参照いただければありがたい。

◇国と国民全体が、彼と飯島秘書官・竹中平蔵に翻弄(ほんろう)されて幾星霜。◇その集大成が郵政民営化のトンデモ選挙(衆院の2/3を軽く超える与党336議席)。◇そしてその後、社会全般にしみわたるドンガラガラをようやく実感させられ、先の参院選挙へとたどり着いたのだった。

◇こうした経緯を経て生まれた<ねじれ国会>を嘆くだって?それって、いったいだれが嘆いているのだろう。◇政治のワンステップとして、ねじれは重要ではないか。

◇最後に余談だが、自民党が最上位におくブッシュ政権との蜜月。◇それが報道によれば、就任後初訪米の福田首相を、米政府要人は誰も空港へ迎えに出ない、ニューヨーク・タイムズなどの主要米紙はそれをほとんど報じない、そして会談は短時間。◇まあ、それが現実というものだろう。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年11月13日 (火)

「福田・小沢大連合」への視点(2)=小沢一郎は自民党からの誘惑になぜのったのか

◇小沢が誘惑の魔手にのってきさえすれば、自民にとってこれはまさに絶好の「両面(りゃんめん)待ち」(日刊ゲンダイ・2007.11.08発行)状態。◇うまくいけばこっちのもの、ダメでも小沢民主には大ダメージを与えられる。仕掛ける側にとって、そんなことは自明の理であった。◇われわれ部外者ですら、無惨な結果から逆推するまでもない超簡単な道理が、当の小沢にだけは分からなかったらしい。

◇民主党からのノンが伝えられるや、筋書きどおりといおうか、自民サイドのリークと陰の演出者(=読売)サイドによる小沢批判合戦がスタートした。◇他方では、フトコロの深さを見せるかのように、歯の浮く小沢オマージュが政府・与党幹部から繰り出された。◇来るべき第2ラウンドへ向け、小沢の機嫌だけは損ねまいとの、いつもながらの福田クリンチ(抱きつき)作戦から、小沢への秋波はなお継続している。

★★「憂国の情、理解されず」 小沢氏辞意に自民幹事長
asahi.com・07.11.04

◇「『小沢さんの憂国の情を理解してもらえず、がっかりされたんじゃないかな』。自民党の伊吹文明幹事長は4日、小沢氏の辞意表明の感想を記者団にこう語った」。◇「『大連立』に踏み切ろうとした小沢氏の行動を持ち上げ、それを拒んだ民主党執行部は『憂国の情』を理解できなかったという絵柄だ」。

★★小沢氏留任で与野党政策協議に期待 町村官房長官
MSN産経ニュース・07.11.07

◇「町村信孝官房長官は7日午前の記者会見で、辞任の意向を表明していた民主党の小沢一郎代表が続投の方針を表明したことに『小沢氏が残留し、そういう(政策協議をする)方向でリーダーシップが発揮をされることを期待する』と歓迎し、政策協議が始まることへの期待感を示した」。

◇薄汚さもここまでくれば立派なもの。しかし裏を返せば、自民党における底なしの焦りがすけて見える。◇表面的には、民主の大後退と自民の舞い上がりということになっているが、世の中そう単純なものではない。◇ちょっと時間がたてば、今回の件は小沢民主どころか福田自民のほうにこそじわっと効いてくる。実は試合巧者の自民に修復不能な深傷(ふかで)がとIFSAは見る。◇しかし、それについては稿をあらためよう。今回は小沢サイドの話なのだから。

◇ところで小沢は、読売のスクープ?(=この社のナベツネ主筆が主導者といわれるのだから、内情把握は当然のこと。記事の真偽は別として)に心底怒っているようだが、当夜から記事を精力的に公表した毎日新聞の報道もまた、非難の対象であったにちがいない。

★★大連立:党首会談の全容判明 恒久法が政権論議の糸口に
毎日jp.・07.11.04

◇「連立政権協議は両党間では決裂したが、両党首の間では基本的に一致していた。また自衛隊を海外に派遣する恒久法では国連決議を前提にすることで合意。連立政権ができた場合の閣僚ポストなどにも話題が及んでいた」。

◇「小沢氏は恒久法について、国連決議を前提にしなければ自衛隊派遣ができないという考え方をメモに書いて首相に渡した。首相は『国連決議だけの有無でいいのですか。相談させてほしい』と検討することを約束した」。◇「2日の第2回目の会談。恒久法に関する国連決議原則について、首相は『これでいいですよ』と返答。小沢氏も『じゃあ、これで(民主)党内を説得しますから』と約束した」。

◇「首相からの連立政権提案を持ち帰る際、小沢氏は『決めてきます』と告げた。この言葉で首相は連立政権協議が始まると大いに期待した」。◇これら記事のすべてが事実に合致しているのかどうか、それは分からない。◇しかし一連の流れとその後とをみれば、細部は別にして、ほぼこんなところだろうと思わせるだけの説得力はある。

◇「部屋の中では、国会職員数人がテーブルや椅子(いす)などを次々にひっくり返していた。盗聴器が仕掛けられていないかどうかチェックしていたのだ」(★★「大連立」翻弄される政界 「渡辺常雄氏仲介」混乱に拍車・MSN産経ニュース・07.11.03)といった場所でテンション高く対応する小沢をひと言で評すれば、いくら国連決議や恒久法が小沢の原理主義的悲願であり、それが丸のみされそうだとはいえ、こんな一事ですべてを投げ捨てて連立政権へ?

◇それがすでにずれまくっているというのに、興奮状態の小沢には振り返る余力もない。◇年金や格差や介護や医療、そしてコイズミカイカク以来乱れまくった社会。◇参院選での民主大勝を決定づけたこのような<生活アイテム>は、小沢のあたまのなかでは<国連決議や恒久法>よりもずっと下位に位置づけられるのであろう。

◇本来は実態的にも政治的にもパラレルであるべき<生活分野><安全保障分野>が、旧型イデオロギーのひと・小沢一郎のなかでは本能的に峻別され、差別化されてしまう。◇いや、後者のほうが圧倒的に小沢の政治的パトスを刺激する。本当の大衆政治家ではない小沢がここにいる。

◇あたまでは分かっているし、事実、参院選では独特のどぶ板方式で生活関連アイテムを説いてまわり、国民の支持を集めたわけだが、本音のところでは高級?アイテムのほうに食指が動く。◇それを知る自民党は、ナベツネ大本営指示のもと、小沢ののってきそうなホイホイ誘因剤をぱらぱらっとまいた。◇理屈ではまずいと分かってはいても、歩んでしまう身体と自尊心を制御できず、案の定、ベタベタの粘着紙を踏んでしまったという次第だ。

◇その揚げ句、ウソかマコトは別にして、「与党関係者によると、首相との会談で小沢氏は『総理、あなたから連立をもちかけたことにしてもらえませんか』と切り出し、首相は『その方が都合がいいのなら、それで結構ですよ』と即答した」(同上・毎日jp.)とまで書かれる始末に相成った。◇とんでもない!とあとからどう言おうが、陰謀の輪のなかにみずから踏み込んだ以上、これはもう自業自得というしかない。

◇小沢のもうひとつの言い訳として、衆院選で民主の勝ち目がないから、最重要課題実現のため、連立を選ぼうとしたというのがある。そして、これこそ政権交代への近道だともいっている。◇とんでもない話ではないか。当事者の小沢に言われなくたって、次回の選挙で自民も民主もともに勝てないことくらい、大方の人間は分かっている。◇いや、与野党逆転などまだ何年先のことやもしれぬ。いまのような民主党の日常活動不足では。

◇それに加え、公明党が選挙区にて自民党を下支えするため、<自民などとうにこけているのに与党はこけず>といった構造になってしまっている。

◇まあそんなネガティブ要因を大前提としながらも、せっかく得た参院の議席をフル活用することで、地道にバンバン進んでいく。国政調査権なども駆使して。◇いまの民主党にはそれが求められている。◇ところが、政局のプロ(+)イデオロギーの人・小沢には、こんなまだるっこしいプロセスはどうにも耐えられない。◇もっといえば、生活というか日常性の退屈さに彼は我慢がならなくなる。

◇<小沢はそれを我慢できない>。だからこそ、最後はいつも壊し屋といわれるような、唐突なる行動パターンに陥っていく。◇子分を引き連れる浪花節調のようでありながら、その実、小沢はゲゼルシャフトしか信奉しない合理主義者。◇だから、ゲマインシャフト的なコミュニケーションは皆無で、究極にくるといつもその欠点を露呈しては失敗をする。

◇オレが党首会談から戻ったときには、専務・常務の菅・鳩山がすべてお膳立てを完了してくれているだろう。◇役員会に形式的にはかれば、全員一致でOKのはず。◇だが、政党という組織とはいえ、ゲマインシャフト的要素はあなどれない。◇小沢の持ち帰り案に対し、意外なことには役員全員がどん引き状態。◇原理主義者が原理原則も読めなければ、空気も読めない、部下たちの心情も読めないといった瞬間であった。

★★【社説】党首再会談 あきれる唐突な連立話
TOKYO Web・07.11.03

◇「ねじれ国会に期待されるのは緊張感ある与野党の論戦だ。怪しげな大連立話で、それがおざなりになるとしたら国民には由々しき事態というしかない」。◇「密室談合は打ち切って公開の場での健全な勝負を促したい」。

★★小沢・民主代表:辞意表明 奇計が生む国民の悲劇=政治部長・小松浩
毎日jp.・07.11.05

◇「総選挙を経ない大連立は政治家が権力を手にする『近道』にすぎず、国民が思い描く自民、民主両党のビジョン競争とは対極のものだ。2大政党が相違を克服しながら粘り強く合意を目指すことからしか、政権交代可能な成熟した政治風土は育たないだろう」。◇「権力を行使する側の論理だけで大連立が語られることに、日本の政党政治の不毛を見る」。

◇「奇計・奇略による合従連衡劇は、有権者に政治への無力感を植えつけるか、再びかつての乱暴な劇場型政治に引き戻すことになりかねない。それは政治の喜劇、国民の悲劇ではないか」。

◇こうした平々凡々たる市井の真実。◇これをばかにし、一見プロっぽい一足飛びを試みるようでは、情況に耐えきれない日本の政治家の未熟をみずから証明するようなもの。◇それとも、分かっちゃいるけど、米国からのこわ~い<田中角栄=ロッキード悪夢>的揺さぶりに抗し得ず、ということなのだろうか。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年11月10日 (土)

「福田・小沢大連合」への視点(1)=マスメディアから背中を押される日本政治の貧困

◇ほぼリアルタイムにものを言ってきているIFSA通信にとって、今回の「福田・小沢大連合」問題ほど恰好の対象はない。◇しかしそうはいっても、(テーマが大きすぎるからではなく)それのはらむ本質的なイッシューが広範囲にわたりすぎ、1回で語りきるなどとてもできないのが実情。

◇そこで本件に関しては、不定期連載という形をとって逐次書いていくこととする。◇それも、全貌が明らかになってからという論文執筆スタンスではなく、あくまでもブログの特性を活かした速報スタイルで。◇とにかくここには、社会学的かつ社会心理学的な材料がぎっしりつまっているのだ。

◇まずは、あわただしく推移した成り行きを、時系列的に整理しておこう。◇*2007.10.30(火)第1回党首会談。*11.02(金)=第2回党首会談。◇*11.02(金)=民主党、役員会で<小沢の持ち帰り提案>を拒否。.*同(金)=小沢、ただちに福田へ断りの電話。◇*11.04(日)=小沢、辞意表明の記者会見。*11.07(水)=小沢、辞意撤回の記者会見。◇たった9日間にこれだけのことがあったことになる。

◇なお、日刊ゲンダイ(07.11.08発行)での歳川隆雄(インサイドライン編集長)発言によれば、10.27(土)に福田私邸で第0回会談がもたれたとされる。

「先の見えない対決路線」(11.04のNHK「ねじれ国会は国の悲劇」「法律がいまだ1本も通っていない状況」といったたぐいの、ちょっと事態が行き詰まっただけですぐさま出てくる、日本的かつもっともらしい言辞の数々。◇IFSAはこんなものには到底くみしえない。理由は追い追い述べるとして、これらをこそ逆に唾棄すべきなのだと考える。◇根っこに、こんなこらえ性のない風土があるため、甘えきった<大連合>などが実行直前までいってしまうとさえ思っている。

◇<対決路線・ねじれ国会>大いに結構。◇また現在、どんな法律が通っていないのかさえ検証することもせず、「まだ1本も」としたり顔で心配してみせるテレビコメンテーターたちの知的怠慢と世渡り上手には、こちらが驚かされる。◇日本人は、<正・反・合>のなかの、<反へのとば口>に入ったくらいでもう息が詰まり、脱出をはかろうとする傾向にあるから、この種のエセ良識派がウケルこととなるのだ。

◇だから、弁証法でいう<止揚=aufheben>など、日本社会ではまだとてもとてもというしかない。◇前2回のIFSA通信で、福田も小沢も耐える力に弱い、今回の騒動の本質はそこにあると書いたのはこれを意味している。◇たとえば、毎日のようにいわれる先の「ねじれ国会」。こんなものは、民主主義を獲得するための<反へのとば口>にしかすぎまい。

◇一部の例外を除き、事実上、戦後ずっと衆参とも自民だったのが、歴史上はじめて参院だけが民主に。すると即、<ねじれ>だなんだと騒ぎだす。◇ならば、参議院などハナから不要のはず。ひねくれた言い方をすれば、ねじれさせるためにこそ参院があるのだから。◇いやおかげで、長年にわたって無用の長物と思われてきた参院の威力を、私を含め、多くの日本人が初体験させてもらったではないか。

◇前おきが長くなったが、今回はその仕掛け人たちについて書いてみたい。◇なお誤解のないよう事前に付け加えれば、もっともお粗末なのは仕掛けられるほう、仕掛けに乗るほう。以下はこれを前提としての話である。

◇ところで、今回の件に関する鳥越俊太郎の分析はさえている。彼はTBSの「時事放談」をみてピンときたという。そこでナベツネが吠えまくっていたからだ。◇そしてネットで「社説」を検索すれば、07.08.16付の読売新聞社説「民主党も『政権責任』を分担せよ」に行き着いたという。◇これですべては氷解。たしか彼はテレビでそのように述べた。

◇さあ、ひとのことはさておき、ではIFSA自身はどう見るか。◇まずはここにいわれる「時事放談」。高校生か大学生の大昔、細川隆元や小汀利得の<辛口>に接し、へえ、何が辛口。しょせんは体よく権力者と体制にこびているだけじゃないか、こういうのがいちばんタチが悪いんだと感じた記憶がよみがえる。◇それこそ彼らは、安倍晋三たち保守主義者の祖先にあたるじいさんなのだった。◇その番組がいまだ生き延びているとはネ。

11.04・早朝06:00~06:45のTBS。日曜日の朝6時台になど起きたことのない私は、トイレに立った帰り、たまたまテレビのスイッチを入れた。そこに現れたのが、渡辺恒雄と中曽根康弘。司会は東大教授の御厨貴という「時事放談」だった。◇化石番組への感慨もものかは、テーマがいまかまびすしい<大連合>そのものとあっては、すぐに気を惹かれた。うす寒いなか、パジャマ姿でしばし聞き入ることとなった。

◇11月4日といえば、第2回党首会談が終わり、民主党が断りを入れた11月2日のたった2日あと。内容よりも、あまりにタイミングがよすぎることにあれっ?の思いがよぎる。◇あとで聞けば、収録は11月2日16:00すぎというではないか(「週刊新潮」・07.11.05号)。◇この時刻、15:00に始まった第2回会談がいったん中断しかかるころで、もちろんまだ民主党よりのノンなど表明されていない時点にあたる。◇2老人の願いや切なるものがあったろう。

★★大連立協議:首相の頂上作戦、不発に
毎日jp.・07.11.02・22:14

◇「また、やはり大連立論者の中曽根康弘元首相と渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長は同日、テレビ番組の収録で構想に言及」。◇「中曽根氏『小沢氏は大連立に思い切って踏み切るべきだ。国の方向付けを首相と小沢氏の2人がやらないと責任は果たせない』と指摘。◇「大連立論者の渡辺氏『大連立は早ければ早いほどいい。年内にも大連立政権を作って懸案をどんどん処理していくべきだ』と述べていた」。

◇ここからうかがえるのは、安倍晋三お坊ちゃまがこけたことによる、保守主義者たちの焦り。◇もう一度、一発逆転で何とかしなければ!憲法改正も米国との緊密化による自衛隊の戦闘軍化も、われわれ(=渡辺・中曽根)にはいまがラストチャンス!◇彼らはこう思い詰めたに相違ない。

◇行動主義者ナベツネのアクションは早かった。福田には「小沢が乗り気」、小沢には「福田が乗り気」。誘いも巧妙だったようだ。◇そして実行部隊に選んだのが、この種の低次元謀略には定評のある森喜朗&中川秀直・・・といわれている。◇昨今の政治家には主体性がないから、ナベツネに仕掛けられればこれ幸いとばかりホイホイと出ていったのだろう。◇老練な政治家気取りで。

◇その結果、ナベツネ・ナカソネ=.福田康夫が同床異夢になろうとも、そんなことはお構いなし。◇改憲論者でもない福田がゴリゴリ2老人の仕掛けに乗り、ひるがえって小沢の国連主義にもハンドルを切っただって?◇そんなことをすれば、長老の望む<日米同盟の超一体化>とは逆のベクトルに進んでしまうというのに。

◇そう、こんなシッチャカメッチャカでも、小沢民主を抱き込んで<現在>をすり抜けさえすれば、必ず自民再浮上のみちが生ずる!◇ともかくいまの局面を転換できればあとはうまくいくという、楽観主義というか虚無主義にまで自民党は陥っているのだろう。◇まあそれはさておき、自身の力で情況を切り開く膂力(りょりょく)すらこの党には残っていないと首脳部が思い定めたことは間違いない。

◇あの元気のいいコイズミですらこう言ったとされる。◇「(前略)小泉氏は党首会談の前、大連立について『1分でも一刻でも早くやった方がいい』と語っていたという」(★★「大連立、残念だったな」 小泉元首相が漏らす・asahi.com・07.11.09)

◇そして、民主党が断りを入れた11.02の晩から深夜にかけ、いつものように大マスコミのネット閲覧とファイル保存を行っていたIFSAは、奇妙なことに気づいた。◇毎日jp.が従来どおり、記者の独自性に委ねた新鮮な記事を惜しげもなくバンバン配信しているのとは対照的に、YOMIURI ONLINEはせいぜい、「★★福田首相が党首会談で連立参加を打診、民主は拒否決定」(11.02・22:15)程度のことでお茶を濁している。◇どこかおかしい。

◇翌朝のスクープを一定時間まで隠すというよりも、現場としての主調音を決めかねているさまがアリアリなのだった。◇おそらくは、渡辺主筆の了解を得なければ動けない!というわけだろう。◇そして、価値判断を込めたような記事はといえば、翌11.03の03:02、「★★民主・小沢氏、早い段階から連立に前向き…自民関係者」となってようやくあらわれた。◇3日付の読売社説はいうまでもなく、「★★党首会談 政策実現へ「大連立」に踏み出せ」

◇保守主義の権化のようなMSN産経ニュースYOMIURI ONLINEの差異もまたおもしろい。◇今回の産経はきわめてオーソドックスで、理念なき大連合に対してはシビアなまでに批判的。◇そればかりか、米国中心主義から国連中心主義へのシフトは危険と、彼ら年来の主張を堅持している。その意味では立派というしかない。

◇マスコミ人が政治に手を突っ込むなど言語道断と怒りまくる前に、お年寄りのナベツネに引っかき回され、マゾヒスティックな喜びをあらわす政権党っていったい何ものなのか!のほうが先だろう。◇また、森・中川のみこしに乗っただけの、森派選出総理大臣って?◇さらには、いくら野心につけ込まれたとはいえ、こんな簡単な帰趨(きすう)さえ読み切れない、<他称>豪腕策士の野党党首とは!

◇以上、あまりに長くなりすぎた。これ以降は続篇へ譲るとしたい。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年11月 4日 (日)

やってみなけりゃ分からないということはあるもの=自民の参院選大敗と国際貢献問題

◇コイズミはいつも勇ましかった。いや、多くの国民にはそう映り、それがまた<カイカクの進軍ラッパ>そのものとして大いに受けた。◇だから、「戦闘地域と非戦闘地域の定義」を問われるや、「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域」などと人を食ったというか、いまなら即刻首相罷免というデタラメ発言を展開し、ひとり悦に入っていられた。◇イラク特措法では、自衛隊の活動場所をみずから「非戦闘地域」に限定しておきながらである。

◇そればかりか、この1年前には、「イラクのどこが非戦闘地域か、1個所でも言ってみてほしい」と追及され、「そんなの私に聞かれたって分かるわけないじゃないですか」と、むしろ得意満面でこたえている。◇そこらのオヤジの居酒屋政談ならまだしも、これが史上まれなる人気を誇った首相の発言だ。

◇いや、居酒屋風だからこそ、国民はそこに新しい風(=カイカクの風)を見たにちがいない。◇何とも甘いというか、だまされやすいというか、潜在的なコンプレックスに満ち満ちているというか。

◇直近の過去を振り返ればこうなる。◇「九九年には、周辺事態法が制定。九六年の日米安保共同宣言に基づいて、日本周辺地域での米軍支援(後方地域支援)を可能にするものだ」。◇「この時、小渕恵三首相は同法の対米支援の範囲について『中東とか、インド洋とか、地球の裏側は考えられない』と答弁していた(★★歴代首相にみる『9条』骨抜きの歴史・Chunichi Web Press<現・TOKYO Web>・2005.02.12)」。

◇しかし2001年9月11日、米国で同時多発テロが起こるや、「(前略)米国によるアフガニスタンでのテロ掃討作戦支援のため、テロ特措法をつくり、インド洋に海上自衛隊を派遣することになる」(同上)。◇ここからはもう一直線。安倍晋三がその仕上げを、という段取りになっていた。そう、あと一歩のところまで行ったのだ。

◇それはさておき、もう3年近く前の記事にこういうものがる。◇コイズミと菅直人との久しぶりの論戦?菅から例の「非戦闘地域」発言を蒸し返されるや、当時の小泉首相は性懲りもなくこう答えている。◇「(前略)『非戦闘地域の定義は首相だって防衛庁長官だって日本にいて聞かれてもわかるわけがない』と反論」。◇「『”人生いろいろ”は当たり前だ。それをおかしいと思う方がおかしい』と突っぱねた」(★★首相と菅氏が舌戦・衆院予算委で久々顔合わせ・NIKKEI NET・05.01.27)

◇こういうのをはたして「突っぱねた」などと表現していていいものか、IFSAとしては不可思議でならないのだが・・・・・・・。◇こうした勢いだけの滅茶苦茶。その余勢を駆って一気に保守主義者たちの宿題というか懸案を片づけようとしたのが、前述のごとく、あの安倍お坊ちゃま内閣。

★★安倍首相:憲法改正の必要性を強調 年頭所感
毎日jp.・07.01.01

◇「安倍晋三首相は1日付で年頭にあたっての所感を発表した。憲法施行60年を迎えるにあたり『新しい時代にふさわしい憲法を、今こそ私たちの手で書き上げていくべきだ』と憲法改正の必要性を強調し、1月25日召集予定の通常国会で改正手続きを定める国民投票法案の成立を目指す考えを示した」。

★★自衛隊派遣「ためらわぬ」…首相、NATOで初演説
YOMIURI ONLINE・07.01.13

◇「ベルギー・ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部を訪れ、最高意思決定機関「北大西洋理事会(NAC)」で日本の首相として初めて演説した」安倍晋三首相。◇「防衛省発足に伴い自衛隊の国際平和協力活動が本来任務になったことを説明し、『一般的な法的枠組みを含め、国際平和協力の最適なあり方を議論している。憲法の諸原則を順守しつつ、今や日本人は国際的な平和と安定のためなら、自衛隊の海外での活動をためらわない』と強調した」。

◇今年の1月時点の話だけに、何とも威勢がいい。◇その後、彼は突っ走り、<保守主義の星>へのご意見番のような屋山太郎をして、「安倍さんはマサカリかついで17回も強行採決をしたから、改革を推す人も恐怖心が出たんじゃないか」(★★「プリンス安倍」退場 保守論客の弁は・毎日新聞夕刊・07.09.18)と言わしめるほどのやりたい放題を敢行。◇世間へ武闘派ぶりを見せつけた。◇郵政解散で得た強大な議席数がバックにあるのだから、まさに怖いものナシである。

◇そして、あれよあれよという間の「イラク特措法」改正。◇IFSAも含め、一体どれほどの人がそのプロセスを覚えていることだろうか。

★★クローズアップ2007:空自イラク派遣延長 情報開示、乏しいまま
Mainichi INTERACTIVE<現・毎日jp.>・07.06.21

◇「イラク復興支援特別措置法が(6月-筆者註)20日に改正され、航空自衛隊による輸送活動が8月以降、最大2年延長が可能になった」。◇「政府は『イラクの復興努力への支援に取り組む』(塩崎恭久官房長官)と強調するが、昨年7月の陸上自衛隊撤退以降、空自の輸送支援の対象は、米軍主体の多国籍軍が中心で、イラク支援より対米支援の性格が色濃くなっている」。

◇「危険と隣り合わせの自衛隊の活動が、十分な情報開示もないまま延長されることへの懸念も強い」。◇「自衛隊のイラク派遣開始から3年半。既にオランダ、ノルウェー、イタリアを含む15カ国が撤退した。今も活動中の26カ国は中央アジアや旧東欧諸国、日本・韓国・オーストラリアなど米国とのきずなが安全保障に不可欠な国ばかり各国のイラク派遣が『対米関係維持のコスト』となっている現実が浮かび上がる」。

◇「一例を挙げる。北朝鮮の核開発をめぐる日米の温度差は、自衛隊派遣にもかかわらず広がったのか、それとも自衛隊派遣があるからこの程度で済んでいるのか--。イラク派遣継続が日米同盟のコストだとするなら、吟味すべき『国益』論はいくつもあるはずだ」。◇そのとおりで、感覚的な言辞以外、<吟味>などされた形跡はどこにもない。

★★「安保の現場」イラクと北朝鮮<上> 米兵中心に1万人空輸、実態隠す政府
TOKYO Web・07.07.23

◇「航空自衛隊の輸送機が昨年7月31日、イラクのバグダッド空港に乗り入れて間もなく1年。輸送した多国籍軍兵士はほとんどが米兵で、今年6月までに1万人を突破していたことが分かった」。◇「国連関係者の約10倍に上り『人道復興支援が中心』とする政府の説明と食い違う」

◇「派遣隊員らは『現実は米軍支援。それが日本防衛につながると信じ、命を懸けている。なぜ隠すのか』と説明責任を果たさない政府に不信感を抱く」。◇「イラクも拉致も『年金』にかすむ参院選。国民に知らされず、問われもしないまま、遠くイラクの地で『日米一体化』が独り歩きを始めている」。◇「貨物室が米兵で“満席”の60人に上る時も。『米兵のタクシー』(隊員)になっているのが実態だ」。

◇「イラク特措法に基づく基本計画は、『人道復興支援が中心』と明記。米軍の後方支援が主任務となっている現状は、基本計画を逸脱している可能性が高い」。

◇そこへ本年7月の参院選自民歴史的惨敗。◇その結果、実質的には史上はじめての「ねじれ国会」が現出した。◇当の政治家連中はもとより、われわれ国民も、それがいったい何をもたらすのか、はじめての経験だけに最初ははかりかねた。◇しかし徐々にいろいろなことが表に出始める。そうか、こうなるのか、たった参院が逆転しただけで!その印象は、私も含め、全国民にとって新鮮なものだったにちがいない。

◇本日のタイトル、<やってみなけりゃ分からない>はそのことを指している。◇そして、いままで不問に付されながら、はじめてクローズアップされたもののひとつに、<テロ特措法>問題がある。◇参院選で自民が勝っていれば、ほとんど無意識のうちにさっと通っていったであろう延長法案。◇この私も恥ずかしながら、アフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)には無知だったし、あきらめから<テロ特措法の現在>にもあまり注目してこなかった。

◇ことイラクに関してさえ、上記の記事のような感じでパスというかスルーをしてきたのに、いまやそれよりもインパクトの低いアフガニスタン問題など関心の外。◇そう言っても言いすぎではないくらい、われわれみずから、いい加減にしてきた重大問題を、あの参院選が暴き、覚醒させてくれたのだ。

◇その恩恵からすれば、昨今の政治情勢における混沌など取るに足らない。◇いやむしろ、混沌のなかからこそ何かが生まれる。たしかなものが見えてくる。◇<その混沌ごときに耐えられない短兵急な日本社会>ではやはりまずいであろう。

◇昨日のばかげた<大連立>問題。あれこそ明らかに短兵急の一現象といえる。◇与野党ともに、肝心のトップが混沌に耐えられないのだ。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年10月26日 (金)

サイデンステッカーとドナルド・キーン=日本人よりも日本を凝視しつづけた米国人

★★記者の目:サイデンステッカーさんの「遺言」
◇冷や奴にこそ日本の美--安倍さんにも伝えたい
=鈴木琢磨(夕刊編集部)
Mainichi INTERACTIVE(=当時)・
現・毎日jp.・07.09.06

◇「日本文学研究者のサイデンステッカーさんが亡くなった。享年86」。◇「『美しい国』なんて口にするわれらが首相、安倍晋三さんにもお伝えしたい。その珠玉の『遺言』を--」。◇安倍晋三君臨?時代の毎日新聞からである。

◇「『どうしたんですか、日本は! どのテレビのチャンネルも巨人ばっかり。料理ばっかり。クイズばっかり。極端すぎます。日本は貧乏が似合う国でした。それが……。文豪もいなくなって、日本で紹介したいものはなくなりましたよ』」。◇「飲むほどに顔を赤らめ辛らつになっていく。『近ごろの飲み屋、若い連中ばかりのところ、女ばかりのところ、カラオケのあるところ、みんなヤーです』」。

◇うん?日本は貧乏が似合う国だって?◇正面から聞けば、冗談じゃない、金持ちがエラそうに!となる。◇懸命なる高度成長を経て何とかここまで<豊か>になった日本を、もともとが富裕な米国人から、なぜガタガタ言われなきゃならないんだ。◇極東の小国は貧乏にとどまっていろ、それがお似合いとでもいいたいのか。

◇だが待ってほしい。誤解を招きやすいサイデンステッカーのこの発言には、言いしれぬ含蓄がとIFSAは思う。けっして<自虐史観>などからではなく。◇江戸より、高度成長達成(=バブル直前)に至るまでの長期間、日本人が備えていた凜(りん)たる姿勢と生活感。サイデンステッカーの刺激的な表現は、それをさしてのことに相違ない。

◇ふたことめには「てやがんでぇ。冗談じゃねぇ」が言えた日本人。◇何かにつけ、「結果として~」やら「ちょっと~」を話のマクラにもってこなければモノが言えない現代人とは明らかに位相を異にする。◇そう、テレビ目線など意識しない素(す)の日本人とでもいえばいいだろうか。

◇「東京では湯島のマンションで1人暮らしだった。お邪魔するとテーブルに『鍵屋』のマッチが転がっていた。多くの文人らが通いつめた根岸の老舗居酒屋」。◇「サイデンスさんお勧めの逸品は冷や奴(やっこ)だった。『おいしいですね。いいものと思います。どこかしら品があるでしょ。日本の料理のなかで私のとても好きなもののひとつです』。飽食、グルメの対極、冷や奴こそ、日本文化の粋だと教えられた」。

◇「サイデンスさん、最後のインタビューで、こうおっしゃっていた。『あの六本木ヒルズヤーな東京のシンボルです。品のない東京のシンボルです。それに比べ、冷や奴はいいです。ひんやりした白い冷や奴。東京の居酒屋でいただく冷や奴は』」。◇こちとら、品(しん)のないのはヤーだねといったところだろう。<品>って、何も上流階級やセレブのそれじゃなく、下町の庶民にあったところの品。◇いいコトバではないか。

◇サイデンステッカーは、川端康成の講演『美しい日本の私』の翻訳者でもありながら、安倍晋三たちのようなナショナリズム的・観念的美からは遠いところにいる。◇また彼は、こうも言ったらしい。「冷や奴はシンプルです。本当にシンプルでいいものです。でも、日本料理はきれいすぎる、と思うことがあります。見た目が美しすぎるなあ、と」。◇さらには、以下のような鋭い認識も。

◇「たまたま『利佳』で隣り合わせて飲んでいた中年紳士にしかられた、というのである。<私達は(略)江戸の庶民文化の汚さというものを軽視している。現在の日本文化は江戸文化の延長であるからして、その汚れた部分を知らないかぎり本当の日本文化を知ったことにならないのではないか。“美しい日本”ばかりを追い求めるのは不勉強である>(「新宿利佳の二十年」私家版)」。

◇サイデンステッカーには、『東京 下町山の手 1867-1923』(安西徹雄訳・TBSブリタニカ・86.03)という名著があった。◇ご存じのように、江戸の中心といえば日本橋・京橋といった東部地区。それが北方へと徐々に範囲を拡げ、上野・下谷・谷中・根津・本郷・小石川にまで展開。◇これらは、本郷のような高台(洪積台地)の一部を除けば基本的には下町そのもの。◇地形的には、神田川(平川)や石神井川の沖積平野に立地したのが、江戸期、生活の中心となった下町(サイデンステッカーの原語ではLOW CITY)なのであった。

◇だが明治後期以降、「山の手が地域的にも影響力の点でもますます大きくなってゆくにつれて、東京はいよいよ抽象的な存在となり、共同体としての性格を失ってゆくことになった」。◇「山の手は、金と権力と文化を手にして、ますます高く高台に登ってしまった」。◇「(前略)下町文化の栄光の時代はすでに終った。今はもうその挽歌を歌うしかない」(以上、同書)。◇その究極が、ホリエモンには六本木ヒルズがよく似合う。そんな品のない時代になったのだ。

◇そして、彼より1歳年下のドナルド・キーン。両者ともコロンビア大学教授であったが、日本に家をかまえた点でもふたりは共通している。◇サイデンステッカーは文京区湯島、キーンはお隣の北区。いまはやりの港・目黒・世田谷といった地域でないのがおもしろい。◇江戸時代にはピカピカゾーンの上野台地・本郷台地エリアである。

毎日新聞・夕刊「この国はどこへ行こうとしているのか」(07.01.09)に寄せた彼の発言もまた、印象に残るものである。

◇「極端から極端に走る。それは、人間にとって、いたってやさしいことなのです。自虐症から慢心に走るのはね」。◇「日本人はすぐ自虐症になる。日本はもう駄目だ、立ち直らないとか」。◇「私は日本を愛する人間として激励したいのですが、そうすると今度は『日本は最高だ』と言い始める。若い人が『ニッポンニッポンニッポン』と言うのもいい気持ちしませんね」。

◇85歳での鋭利さ。◇若けりゃいい、老練ならいい。日本人か米国人か。これらの二分法はいずれもが大間違い。◇要は個々の人間で判断するしかない、それだけのことだろう。◇だが、これが意外に難しい。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年10月 5日 (金)

参院選自民惨敗・安倍電撃辞任・福田レトロ登場=すべては浮かれコイズミ劇場の帰結

◇私の愛用する『現代用語の基礎知識・電子版・1991~2007年』(自由国民社刊をロゴヴィスタがCD-ROMにして発行)にて「構造改革」を全文検索してみると、07年版にこんな記述があった。◇タイトルは、「改革の『痛み』[いつかきた道]」

◇「『改革の痛みを最小限とする努力はするものの、ある程度厳しい状況を甘受せざるを得ないと思われます。(中略)もはや、目の前の痛みを恐れて問題解決を先送りすることは許されません。』[2001(平成13)年『首相官邸』」小泉首相のホームページより]」。◇「構造改革は痛みをともなうもの、しばらく我慢しなさいとのお達しである。国民は痛みを押しつけられ、悲鳴をあげた」。◇「『改革の痛み』というが、戦時下スローガン『欲しがりません勝つまでは』『贅沢は敵だ!』と変わりはない。非常時なんだからと従うしかなかったのだ」。

◇失われた10年(もしくは失った10年)で疲弊し、いいようのない閉塞感に陥っていた日本社会と日本人に、あのコイズミの逆説的・破壊的?なパフォーマンスはあまりに新鮮だった。◇だからこそ、日本人の大半が熱狂した。◇しかし、いくら世紀のコイズミ劇場とて、主役の力量だけであそこまで成し遂げられるものではない。そこには、陰の役者によるもうひとつの仕掛けがあった。

◇まずは、カイカクというコトバ。◇コトバのもつフレッシュな響きと、どこか高尚さを漂わせる概念。◇それは、息の詰まるどん底のような社会情況に風穴をあけてくれるばかりか、日本人の正義感(=いよいよ変えなきゃ!)をも満足させてくれる抜群の装置であった。

◇しかも、自分がその先頭に立つ必要はなく、突然どこからともなくあらわれた無名に近い代議士(コイズミ)が、オレに任せておけ、オレについてきさえすれば必ずいい社会へと行き着く、オレがブレークするから心配するなと叫んでいてくれる。◇「自民党をぶっ壊す」ということは、結局のところ、たまりにたまった日本社会の汚泥を一掃するということ。誰もがそう信じた。

◇ただ、日本人が本能的に忌避する<変革の前衛に出て傷つく>。◇それはコイズミがひとえに背負い代行してくれるらしいから、われわれは彼を下支えさえすればいい。自身がダイレクトに傷つくことはない。◇カイカクの快感を味わいながらも、戦闘だけはコイズミがやってくれる。しかも結果はgood!。◇こんないいことはないだろうと思ったとて不思議はない。だから、日本中がコイズミを英雄のようにして支持した。

◇前述の「改革の痛み」「欲しがりません勝つまでは」「贅沢は敵」のいずれもが、むしろ日本人をナルシスティックに満足させてくれたといっていい。◇日本人特有の美学をくすぐるものが、あのコイズミマジックには隠されていた。◇しかも、単なる日本的なものではなく、そこには竹中平蔵たちがふりまく<市場原理主義><規制緩和><官から民へ><小さな政府>といったグローバリズムらしきものまであしらわれている。◇戦前のようなナショナリズムとはちがうどころか、むしろその逆!

◇それが、西欧ではとっくに失敗し、時代遅れが実証されてしまっていた<新古典経済学派>的手法の再投入であるのも知らずに。◇というか、国民はそんなことなど知らされずに。

◇日本社会にとってこれ以上不幸なことはないのだが、こうした魅力的な悪魔の美学・コイズミカイカクが5年以上も市民権を得てしまった。◇いまでこそ多くの識者が<格差社会>がどうのと叫んでいるものの、大衆ばかりか、というより、マスコミや知識人が率先し、長年にわたってコイズミカイカクを大礼讃してきた。◇その事実はけっして忘れるべきではないだろう。

◇私の記憶では、コイズミ政治を最初から、真っ正面より批判していたマスメディア&出版界登場の知識人は、伊東光晴・佐伯啓思・佐和隆光・神野直彦・金子勝・山家悠紀夫・森田実・・・・・・・ら、せいぜい10数人くらいにすぎなかった。◇だから残りの多くは、頼まれもしないのにコイズミカイカクを称揚し、いままたしたり顔で<格差社会>を糾弾していることになる。

◇私事にはなるが、上記20人にも満たないであろう有名人のほかでは、無名のIFSAが2002年に拙著『変わりたい日本人 変わりたくない日本人-日本的閉塞社会論-』(02.08・はる書房)を公刊し、全面的なコイズミ批判を展開していた。◇カイカクの旗手のコイズミを批判するなんてどこまで偏屈な!と、友人たちからすら文字どおり畸人・変人扱いされながら。

◇しかし正直なことを言えば、02年初頭からの原稿執筆時、出版以前にいつコイズミ批判がコロッと反転してしまうか、本が出るころには日本全体が得意の<無意識なる転向>をシラッと成しとげているのではないか、それだけが気がかりだった。◇ただ、それは単なる杞憂(きゆう)に終わり、その後4年もコイズミ劇場はロングランを続けた。◇IFSAの大誤算!そして<無意識なる転向>は、昨今の安倍晋三退場によってようやく完遂されたというわけである。

◇それほどまでに、飯島秘書官(脚本兼演出担当)の鋭敏なる生活感覚が効いたということだろう。◇いくら主役のコイズミが優秀だとはいえ、飯島がいなければそれは成り立たない。◇だからこそ、(一部には擬装の見方があるものの)先ほどたもとを分かった飯島がコイズミのもとへ戻らないかぎり、コイズミの再登場などまったくもって不可能とIFSAは見るのである。

◇そして2007年秋というイマの季節。毎日新聞一面には、政治部編集委員・小松浩による論考「福田・自民党新総裁:『理念過剰政治』脱却を」(Manichi INTERACTIVE)が掲載された。◇小松がコイズミ劇場当時からどう考えてきたかは寡聞(かぶん)にして存じ上げないが、「『理念過剰政治』脱却を」は昨今の風のすべてを語っているだろう。◇と同時に、タイトルだけで言いたいことの大半はもう分かってしまうであろう。

◇簡単に言えば、日本社会、これからはコイズミ・安倍の真っ反対を!といいたいらしい。◇6年半も遅ればせながら。

「政治の疾風怒濤(どとう)の6年間を経て、政治家に向けられる時代の空気は今、明らかに変わりつつある」。◇「(前略)それを小泉政治の『負の遺産』と呼ぼうが呼ぶまいが、次のように言って、さしつかえはないであろう。つまり、多くの国民が望んでいるのは一人の政治指導者の国家観、個人的な信念ではなく、明日の暮らしの安心だ--と」。◇「理念過剰型政治からの脱却と目線を低くした政治の復権は、世界的な潮流でもある」。

◇「小泉政権は、改革に名を借りた、党内権力闘争の時代でもあった。安倍政権は、国家の器作りにばかり目が行き、中身(国民の生活)はなおざりにされた」。

◇IFSAの考えでは、われわれ日本人は、失われた(=失った)10年に続き、<さらに積極的かつ前向きに失っていった6年半>をもったのだ。◇これでも日本社会が根底から毀損(きそん)されないというなら、それはもはや奇跡に近いだろう。

◇そんななか、毎日新聞・朝刊(07.10.01)に先述の佐伯啓思・京大教授による『<現在>を読む 福田政権の課題-デマゴーグ的政治を清算せよ-』が載った。◇ここには、これまでIFSAの述べてきたことが、見事なまでに要領よく整理されている。◇この佐伯の文章については、いずれ稿をあらためて触れるとして、最後部にある彼の論述は示唆的だから、今回はその部分だけを引用するとしたい。

◇「福田型の『調整』と『バランス』によって自民党は一時的に小康状態を獲(え)るかもしれないが、それは事態を先送りするに過ぎない」。◇「自民党は、いずれ小泉政治をいかに評価するかという課題を避けて通るわけにはいかないであろう」。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年9月30日 (日)

保守主義者の希望の星・安倍晋三=彼らはそのズッコケをどう受け止めたか(下)

本篇は、「保守主義者の希望の星・安倍晋三=彼らはそのズッコケをどう受け止めたか(上)」(07.09.16)からのつづきですなお、週の後半より北海道へ行っていたため、アップロードが本日に遅れましたこと、お詫びします

◇戦後政治史に残る安倍辞任。しかし、これは単に政治史のマターなどではなく、広く社会学・社会心理学の範疇にもおよぶ日本社会論のテーマであろうとIFSAは見ている。

◇というのも、ちょっと冷静でありさえすれば、<安倍晋三なんてこんな程度だ>くらい、はじめから分かってもよさそうなものなのに、多くの国民・マスコミ・自民党議員がなぜか彼を前向きに支持。◇安倍の破綻とは、実のところすでに、このスタート地点に胚胎していたといえるからである。◇そう、日本社会に特有の、<その時ばったりという名の共同幻想>。それこそがいま問題とされるべきなのだ。

◇その観点からして、IFSAは政治評論家・森田実の指摘に注目する。◇ちなみに、激しいコイズミ批判でテレビから長らく干されていた森田が、社会全体のコイズミ批判トレンドとともに復権傾向にあるのがおもしろい。◇そしてこれまでは、森田のかわりに、無難な三宅久之や浅川博忠クラスの権力ヨイショ派が重用されてきたという経緯がある。

◇コイズミ・エピゴーネンとして出世しようともくろんだ安倍晋三。そのズッコケ要因を、森田は次の3点に求めている(★★「後継」に指名した小泉の罪、「続投」を支援した麻生の責任・『週刊朝日・2007.09.28号』)

◇「一つは小泉時代のアメリカのブッシュ大統領には世界中をひれ伏させる力があった。アメリカからのものすごい強い風が小泉さんを支えた。けれど今は、ブッシュの力が落ちてきて安倍さんを支えきれなかった」。◇「二つ目の要因は、国民がテレビと小泉さんとアメリカにだまされたことに気づき始めたことです」。

◇「三つ目は安倍さんの右翼的戦争好きの体質に人々が反発したこと。(中略)安倍さんは日本人の平和意識の虎の尾を踏んでしまいました(後略)」。◇この2番目、3番目は、いくらその時ばったりでも、これはもう限界という日本社会の飽和点を示していよう。

◇だがそれを、おおもとまでさかのぼり、コイズミ批判へと転ずれば、結局のところあれだけ熱狂した自分自身に跳ね返ってしまうからと、誰が見てもどうしようもない安倍お坊ちゃまに咎(とが)を背負わせる。

◇このところIFSAがずっと主張している<安倍批判による代償行為>。もっと言えば、神のように崇(あが)めてきた<カイカク・キセイカンワ・官から民へ>からの無意識の転向。◇安倍にすべてを押っつけることで、恥ずかしき一夜漬けカイカク論者からの離脱をはかってしまおうというわけだ。◇またまた、<そのときばったり共同幻想>の威力に依存して。

◇『週刊文春』(07.09.27号)の記事が、その点を見事なまでに剔抉(てっけつ)してくれている。◇「前出の政治部デスクが断言する。『小泉時代の失敗は全て安倍のせいにできたと思っているでしょうね。小泉という人は、そこまで冷徹な男なんです』」(★★「どう考えてもA級戦犯」小泉純一郎 早い逃げ足)

◇それはさておき、<闘う政治家(兼)口だけの軟弱お坊ちゃま>に、はかない夢を託してきた保守主義者たち。◇彼らの反応を特集した毎日新聞夕刊(07.09.18)の特集「『プリンス安倍』退場 保守論客の弁は」は、秀逸な企画であった。◇登場するは、岡崎久彦(外交評論家)櫻井よしこ(ジャーナリスト)屋山太郎(政治評論家)というゴリゴリの面々。◇各人の主張を、IFSA風にピックアップしていけばこうなる。

◇ひこととで保守とはいっても、度が過ぎているので有名な岡崎久彦。テレビでもよく見かけるが、あそこまで確信的であると、こちらはもう言うべきものさえないというおじいさんである。◇弁明の余地のない安倍辞任という窮地を、ニヒルっぽいながらどこかファナティックな彼はどうやってハンドリングするのか、その手腕が見もの。

◇そして驚いた。へえ~、そう出てきたかといった感じで。◇彼によれば、退陣の理由はひとえに健康問題。「退陣表明の数時間前まで、首相としてやるつもりだった」というのだ。◇「健康問題だから仕方がありません」。こう言っておけば、岡崎自身傷つかないですむし、われらがプリンスをもお守りすることができる。◇そのうえで、岡崎は安倍を評価する。

◇「安倍政権は、教育基本法改正案教育関連3法案を国会で成立させ、戦後何十年も放り出してあった国民投票についての法も整え、防衛庁も省に昇格させた。今後の日本にとってのレールを敷いた。それは非常に評価しています」。◇だから、「福田康夫氏が次期首相になったら、反動の時代が来る。麻生太郎氏なら反動もなし、ということです」。◇「総裁選の結果は分かりません。しかし我々保守は、反動の時代に備えて頑張るしかない」。

◇この<反動>というコトバ、いずれもが自分を基準とするからおもしろい。

◇そこへいくと、櫻井よしこは淡泊。◇「そういう意味で、私は、戦後体制からの脱却をうたった安倍さん自身が、戦後日本のもろさというものを体現していたのではないかと思うのです」。◇「しかし、安倍政権がこの1年間にしてきたことは、教育基本法の改正も、公務員制度の改革も、後になって必ず高く評価されると思います」。◇「自らの任期内に憲法改正すると言って、政権をつくった首相は初めてです」。

◇櫻井の文章なんてばかくさくてまともに目にしたこともないが、今回はじめて『週刊新潮』(07.09.27号)「★★『安倍首相』でなくなった『安倍首相』」を読ませてもらった。◇そして、私の予見というか偏見?に間違いのないことが判明。◇「ひどい、ひどすぎる、十万石まんじゅう!」。その主張の当否以前に、4ページにわたる<中身がピーマン>のスカスカ文章にあぜんとさせられてしまったからだ。◇これで原稿料がもらえることに、私は感動した。エッと思われる方は、是非とも原文をお読みいただきたい。

◇そしてしんがりは屋山太郎。◇彼はどこかさめていて、距離をおいている。◇安倍内閣の政治資金問題は官僚とマスコミにやられたんだといい、加えて「安倍さんはマサカリかついで17回も強行採決をしたから、改革を推す人も恐怖心が出たんじゃないか」と。

◇「安倍さんの成果は、憲法改正を真正面から取り上げ、(今年5月に)国民投票法を制定し、(昨年12月に)教育基本法を改正したこと」。◇「ただ、国民投票法も施行が3年延びたし、教育も成果が上がるまでに10年はかかる。長距離砲を撃って、着弾していないようなものだな」。◇「いずれにしても、大砲は放たれた。あとはそれがどこに着弾するか。それを待つだけだよ」。

◇彼らを見ていてなるほどなと思う共通項は、大衆ベースでの広がりをまったく視野に入れていないということだ。◇突出する保守派の権力者をかつぎ、あとは後ろから彼をエンカレッジしてはイデオロギーの実現を目指す。そんな手法が、あの人たちの常套(じょうとう)手段なのだろう。◇だから、主張はいきおい独善的かつエキセントリックに陥り、あたまでっかちものとなっていく。

◇安倍晋三の行き詰まりも実はそこに淵源する、それが今回の結論といえよう。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年9月26日 (水)

保守主義者の希望の星・安倍晋三=彼らはそのズッコケをどう受け止めたか(上)

<タカ派のプリンス>だとか<保守派の星>だとか言われて担ぎ上げられ、本人もその気になった<闘う政治家・安倍晋三>。◇安倍が首相に就任した当初から、IFSAはそうした虚構をせせら笑ってきたが、これほどぶざまな結末になろうとは、さすがに予想できなかった。◇同志社大学教授・浜矩子が8月時点で名づけた「ハジカキ王子」そのもの!

◇しかし、真の意味でアテがはずれ、落胆し、またまた思い出したように焦り、揚げ句に開き直ったりしているのは、おそらくあの復古的保守主義者連中だろう。◇まずはコイズミに地ならしをしてもらい、その後は安倍で着々と実行。彼らはそう踏んでいただけに、心中は察するにあまりある。◇何しろ、教育改革を達成、軍備大国を構築、できれば核武装をも実現・・・・・・・の構想が、一夜にして塩漬けにされたのだから。

◇まずはさかのぼり、昨年末から今年前半にかけての安倍の動きを思い返していただきたい。◇何かに憑(つ)かれたような強行採決の連発で自己を鼓舞し、あとは憲法改正へと一直線。◇そして世論やマスコミも、この流れにブレーキをかけるどころか、むしろいっしょになって浮き足立っていたではないか。

◇そうした環境下、産経新聞は元気だし、『正論』『諸君』『Will』など右派雑誌の鼻息も荒かった。◇だからこそ、いまとなっては彼らのぼやきが聞こえてきそうな気がする。◇まずは、産経新聞記者による安倍評価から見てみよう。

★★ツキに見放された安倍首相 記者が振り返る「軌跡」
阿比留瑠比(政治部首相官邸キャップ)・石橋文登(与党キャップ)
Sankeiweb・07.09.17

◇IFSAが特に注目した部分のみをピックアップすれば、以下のようになる。

阿比留 あの施政方針演説(1月の施政方針演説-筆者註)はよかったよね。自らの理念、安倍カラーを全面的に打ち出し、「戦後レジーム(体制)を見直し、新たな船出をすべき時がきた」と高らかにうたった。歴史的な演説だと思うよ。(後略)

石橋 首相は優しいから「お友達」をかばってクビにできなかったといわれているけど、それは違う。本当はメディアによる「言葉狩り」に加担するのが嫌だったんだ。(中略)首相はよく「言葉を失うことは政治家の『死』を意味する」と言っていたよ。

阿比留 そういえば、首相は以前に「仮に自分の政権が倒れても保守政権でつなぎたい」と言っていたよ。参院選後にイバラの道を選んで続投したのも、そうしなければ、自分と路線が全く異なる福田康夫元官房長官が後任になり、「戦後レジームからの脱却」への道は遠のくとの思いがあったはずだ。自民党は保守政党と言いながら、この十数年は憲法改正に慎重な「リベラル政権」だったからね。

石橋 僕は小泉前政権を「リベラル政権から保守政権の懸け橋」だったと位置づけている。小泉純一郎前首相は「保守」とは言いにくいけれど、もし小泉政権が誕生せず、旧経世会(現津島派)の支配が続いていれば、安倍政権など「夢のまた夢」だったはずだ。

阿比留 そうだよ。安倍政権は自民党内で今も少数派である保守派が握った稀有(けう)な存在だった。

石橋 この1年の間に、これまでずっと棚上げされてきた教育基本法や防衛庁の省昇格、国民投票法などさまざまな法律が通った。このスピード感にリベラル勢力は恐怖を感じたのだろうね。

石橋 安倍政権で外交や安全保障など安倍路線の本質についてほとんど論議されず、閣僚の不適切発言や「政治とカネ」の問題などで政権が傾いていったのは残念だ。ただ、戦い方が下手だったのも事実だろうね。「敵」を見くびっていた面もあるかもしれない。                       

◇IFSAにとっては論外なる意見が大半を占めるが、進歩的知識人なら見落とすような視点も用意され、参考になる。◇たとえば、「僕は小泉前政権を『リベラル政権から保守政権の懸け橋』だったと位置づけている」などは、IFSAがかねてから述べてきたこととぴたり一致するのだ。◇そう、彼ら保守主義者にとって、コイズミこそはまさに始祖的存在なのであった。

◇そしてそれを具現化する尖兵として、岸信介の血を引く(=彼らはDNAが好きだ!)若き安倍が位置づけられた。◇しかし、安倍のアマちゃんぶりを当初から見抜けなかった保守主義者たちの体たらくぶりは、大いに指摘されなければなるまい。◇彼ら講壇(=机上)保守主義者のアマさ、非実践性、非大衆性も、ここにおいて同時にあぶり出されたということなのだから。

中身は何であれ、まずもってわれらが星にすり寄る。たとえそれが安倍晋三レベルのものであったとしても。◇保守主義者たちのもつこうした同族意識が、彼らに本質を見えなくさせているにちがいない。◇そうとでも考えなければ、安倍の施政方針演説を「歴史的な演説だと思う」といったズレズレ見解の生み出されるはずもないからだ。

◇ひるがえって現実はというと、彼らがもっとも嫌悪するところのリベラルっぽい福田康夫が総裁に就任。◇となれば、こうなってほしい・こうあるべき・・・・・・・といった主張が保守主義者たちから出てきたとしても、驚くにはあたらない。

★★「保守」めぐり自民二分も(酒井充)
Sankeiweb・07.09.23

◇「安倍晋三首相の退陣を契機に、構造改革路線をめぐる政策転換の是非にとどまらず、保守勢力としての基本的立場を問われるような自民党内の路線対立が先鋭化する可能性が出てきた」。

◇そこで、「(前略)リベラル色の強い政策に否定的な議員らの多くは『保守政党の看板を降ろすわけにはいかない』(中堅)と徹底して反対する構えを見せる。福田氏が独自色を示そうとこれらに着手すれば、自民党を二分する路線対立につながる可能性は高い」。 ◇麻生太郎の予想を超えた善戦。「リベラル色の強い政策に否定的な議員」が少なからずいるのは事実だろう。それも若い層を中心に。

◇ところでリベラルといえば、軍備や憲法といったコワモテ分野どころか、ヤンキー先生で俗受けした教育再生会議すらフートモ(風前のともしび)だという。◇昨日、自民党の幹事長に就任した伊吹文明・文科相(註)の反応が実におもしろい。。◇「(前略)『国会や中央教育審議会でも意見を伺っている。再生会議がなくなったら困ることはない』と語り、再生会議は不要との見方を示した」(★★教育再生会議は存続困難の見通し、肝いり首相の退陣で・YOMIURI ONLINE・07.09.12)。

(註)政治と金(カネ)の問題ばかりか、あの自己陶酔型饒舌癖も加わり、伊吹が福田体制のアキレス腱になりそうな予感。IFSAにはそう思えてならない。

◇こうした情勢下、『週刊朝日』に載った彼ら保守主義者のコトバと嘆息は、正直そのものといえよう。◇「落胆、離反、まさかの高評価 保守論客の評価は真っ二つ」(週刊朝日・07.09.28号)と題したなかにそれはある。

◇「(前略)これで戦後体制からの脱却は10年は遅れてしまったかもしれない」(ジャーナリスト・櫻井よしこ)。◇「最後はせめて靖国神社に参拝してから辞めてほしかったんですが・・・・・・・。(後略)」(高崎経済大学教授・八木秀次)。-つづく-(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年8月23日 (木)

朝青龍問題に見る日本的風景=<心>が登場するや、世間の反応はがらっと変わる

★★朝青龍、腰を疲労骨折…全治6週間で夏巡業は休場
ZAKZAK・2007.07.25

◇すべてはここから始まった。◇ところが診断書提出の翌日には、母国モンゴルで例の華麗なるサッカーを披露。◇「★★朝青龍またトラブル、今度は仮病疑惑…狙いは巡業蹴り 腰の疲労骨折なのにモンゴルで中田とサッカー(ZAKZAK・07.07.26)」のような新聞報道ばかりか、証拠のビデオまで連日テレビで流され、安倍自民党惨敗と並んでワイドショーのメーンテーマへと上りつめていく。◇そして<朝青龍の強制帰国>→<日本相撲協会による2場所出場停止他処分>へと続いた。

◇今回の朝青龍問題に関する客観的事実とは、単にこれだけのこと。きわめてシンプルで、見ているわれわれ第三者にとっては判断に狂いの生ずる余地すらないのだ。◇だが、ここへ<心の問題>というのが入り込むと・・・・・・・。というより<心の問題を巧みに入り込ませる>と、わが情緒的国民は急に揺らぎ始め、とてつもない優しさを発揮しだす。◇まるで1億総ヒューマニストというように。

◇いや、それは正確ではない。今回に関するかぎり、怒っている人は相当に多いから、「1億総○○」はいささかオーバーにすぎよう。◇ただ、そう形容したくなるくらいに、テレビコメンテーターやら穏健なる世論やらは、<モンゴル帰国のすすめ>へと大傾斜しているのだ。◇まるで、鬼と言われるのが怖いとでもいうように。

◇この国ではいつのころからか、<心>とさえいえば素人にはアンタッチャブルの領域、専門家にまかせろといった風潮が蔓延(まんえん)するようになった。◇日本では根性主義が顕著だったから、そのアンチテーゼとして<科学を!というのは私にもよく分かる。◇しかし、いつも日本では二分法が幅をきかせ、<精神主義→.科学主義>といった飛躍を何とも思わずに実行する。◇このどちらにも真実はないというのに。

小沢牧子『「心の専門家」はいらない』(洋泉社y新書)。その扉にはこうある。◇「ここ五、六年、事件・事故が起こるたびに声高に叫ばれるものに『心のケア』『心の教育』という耳に心地いい言葉がある」。◇「日常の関係に目を向けることを避け、『心の専門家』に依存し、そこに救済願望を託す『心主義』と言いたくなる傾向に対し・・・・・・・」。

◇小学校で事件が起これば、反射的に臨床心理士や心理カウンセラーを派遣しては生徒たちの心のケアにあたる?◇それこそ、日常の関係に目を向けることを避け」、機械的に専門家を頼っては一丁上がりの見本だ。◇だが当事者は、これがいちばんの良心的方法と信じ、自分の無責任性には気づきもしない。◇<心>と聞けば、どんな問題でもすぐ専門家に。それほどに<心>だけは不可侵の領域と、なぜか最近は勘違いされている。

◇さて朝青龍問題。何人かの怪しげな医者が出てきては、<心>に関する病名をつけるや、こりゃ責任を持てないと踏んだ多くのテレビコメンテーターたちは、モンゴルへモンゴルへと唱和を始める。◇もちろん、吉永みち子大沢孝征弁護士のような一部の、いい意味での原理主義者たちや、表情を見るかぎり、自身の精神観察も必要ではと冗談を言いたくなる小田晋教授(精神病理学)を除いてのことだが。◇その小田は、「モンゴルの空港に降り立った瞬間、朝青龍のご機嫌は治るはず」(概略)と皮肉を飛ばしている。

◇この際、<心>をとっぱずして原点に戻れば話はカンタン。◇朝青龍は仮病を使って職場放棄を敢行した全治6週間なるデタラメ診断書を書いた不法医師がいた予想もしないバレバレと、本人にとってはとてつもなく重い処分に、朝青龍はふてくされたか、もしくは大ショックを受けた・・・・・・・。◇それ以降に生起した現象は、すべてそこから派生したものばかり。

◇会社でいえば、執行役員のトップである人間が、現場総動員の企業一大行事を仮病ですっぽかし、郷里へ帰っては同級生とゴルフに興じていた。まあそんなところだろう。◇これはモラルの問題でもなければ、品性・人格の問題でもない。◇会社というゲゼルシャフト(兼)ゲマインシャフト内にかぎっていえば、刑法とは違うれっきとした犯罪行為匹敵の重大問題なのである。◇だから、相撲協会の巡業部首脳は怒りまくるし、現場だってふざけるなとなって当然だろう。

◇「(巡業中の-筆者註)力士たちは連日、バスで数時間も移動するため疲労は隠せなかった。それだけに巡業に参加しなかった朝青龍への不満は大きく、ある力士は『うちの部屋でそんなことをしたらクビになる』。別の力士も『誰も同情しないし、かばいきれない』と吐き捨てた」(★★朝青龍不在でも巡業大入り 握手会など「おわび企画」も・asahi.com・07.08.22)

◇コメンテーターのなかには、横綱としての「心・技・体」「武士道」「品格」などとピンズレ方向へあえて誘導しようという人間がいる→→→あるにこしたことはないものの、職場放棄とこれとがいったいどんな関係になるのか。◇また、国技だなんだと恰好をつける者もいる→→→職場放棄や八百長報道に対して明確な対応もとらず、何が品格・国技なのか。◇さらには、外国人力士における文化的差異のハンディを言う識者もいる→→→職場放棄や仮病は、文化とは関係のない、それこそビジネス上のグローバルスタンダードではないのか。

◇そして最後は得意の外圧。◇モンゴルでデモがあった。貴重な地下資源を持つ国と、外交問題をこじらせてはいけないと。◇だがモンゴルでは、例の診断書問題はいっさい報じられておらず、朝青龍が子どもとサッカーをしたとだけ伝えられているらしい。◇であれば、日本ケシカランの世論も当然といえよう。◇こちらから事実をきちっと伝え直せば済むことである。

◇相撲解説者や相撲ライターやかつての相撲アナまでがワイドショーに出てきては、きれいごとを言っている。◇しかしこの連中は、いままで八百長疑惑や朝青龍の問題行動にどこまできりっとした意見を述べてきたか。◇ましてや、杉山邦博・元NHK名物相撲アナら、NHK関係者はおそらくいろんなことを知っておられるのではと、IFSAは思いますが。◇かのNHKこそ相撲協会の実質的大スポンサーなのだから。

◇そんななか昨晩、朝青龍がはじめて外出をしたとか。◇どのスポーツ紙も報道協定やらで独自の写真はなく、NHKニュースのみが堂々と放映。その絵を各紙、一面に載せているのだという。◇NHKと相撲協会のこの癒着。背景にたゆたうイヤ~な雰囲気を、IFSAは感じざるをえないのであります。(敬称略)

《欄  外》

★★包茎に続き…朝青龍、今度の診断医師の専門は「肛門」
帰国めぐり大相撲界二分する“熱い綱引き”
ZAKZAK・07.08.22

◇吉田・相撲診療所所長の専門が「肛門」だと、この記事は伝えている。◇なお前者は、朝青龍を神経衰弱と診断した本田医師の専門を指す。◇かように、ZAKZAKはいつもおもしろい。

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年8月 8日 (水)

参院選自民党大敗=国民の<潜在意識>のどの部分が反応しての結果だろうか

◇今回の参院選。2005年のコイズミ郵政解散選挙とともに、おそらくは戦後史に残るであろう大事件となった。◇当IFSA通信も選挙日前後、何回かにわたってこれを論じてきたが、もうそろそろがらっと話題を変えてもいい時機との気がしてきている。◇安倍晋三の去就など、それこそワイドショー的感覚で見ていれば済むことなのだから。

◇そう思っていた矢先、最新のSankeiwebに興味深いタイトルを見つけてしまった。◇もちろんあの産経のこと、先日紹介した粘着的かつピンズレな月刊誌「Will」の、<選挙直前安倍応援特集>トーンに準ずるであろうことくらい予測はつくが、今回の文章は選挙結果が出てからのものだけに、またひと味違う。◇右派知識人として有名らしい執筆者の、気落ちした風情。これがまたなかなかの見もので、大いに楽しませてもらった。

◇そこでさらにもう1回、参院選がらみのIFSA通信を続けることにした次第である。

★★【政論探求】安倍首相は靖国参拝をしてはどうか
客員編集委員・花岡信昭
Sankeiweb・2007.08.08

◇「(安倍内閣は-筆者註)本格保守政権としてデビューしたはずなのだが、年金不信、政治とカネ、閣僚の失言といった問題に追われて、『戦後レジームからの脱却』『現政権で憲法改正』などの基本テーマがどこかへ吹き飛んでしまった」。

◇何をもって「本格保守政権」というのかさっぱり分からないものの、おそらく、「安倍首相の『美しい国』を牧歌的ととらえたら大間違い=美は軍隊の統制感にあり!」(07.08.03)で触れた、「イデオロギーの保守主義」(=「イデオロギーのためのイデオロギー」)あたりを思い描いてのことではないかと、IFSAは勝手に想像する。

◇「ここは安倍首相が進めようとしていた本来の路線を『ぶれず、愚直に』突き進む以外にないのではないか」。◇「具体的な課題としては、テロ特措法の延長、集団的自衛権の見直し、国家安全保障会議(日本版NSC)の創設などが待ち構えている。粛々・堂々と進めていけばいい」。◇「民主党内にも支持派は存在するのであって、真正面から打ち出せば民主党の内部分裂を促せるかもしれない」。

◇民主党の前原誠司たちへの期待が、行間ににじんでいる。◇IFSAも、前原グループなどさっさと自民党へ行けばいいと思っているくちだが、それにしてもこの文章の主、「民主党の内部分裂を促せるかもしれない」の他力本願ではあまりに弱々しすぎないか。◇こんなことにすがるしかないのかと、気の毒になってくる。◇日本の右派論客たち。先日までの笠に着た強気から一転、親分がこけ、守りに入ったときの情けなさよ。

◇「そうした『保守らしさ』の象徴的なものが『8・15靖国参拝』だろう」。◇「これが(コイズミの参拝が-筆者註)保守層の支持拡大に貢献したことを改めて想起すべきだ。保守層にとって靖国は格別の意味合いを持つのである」。◇「反転攻勢のきっかけをどうつかむか。それには『8・15参拝』が最もタイムリーであり、政権基盤の再構築につながるように思える」。

◇ずれまくった現実認識とコイズミ言うところの鈍感力?!が、ここでは全開。◇これぞまさしく、「イデオロギーのためのイデオロギー」の見事なるサンプルといえよう。◇ところで、それをバナー広告と呼ぶのかどうか、昨日のasahi.com上部にてチカチカ点滅していた早稲田大学広報。たまたまクリックしてみると、若手の女性教授がきわめて的確なことをビシビシ語っていた。◇なかでも目を引いたのが、「国民の改革疲れ」なる的確な言辞。

◇IFSA流に言い換えれば、「改革疲れ=理念疲れ」となる。◇「失われた10年=失った10年」の閉塞感から、コイズミのぶち上げるカイカクに外野観客席より代償行為として加わり、スカッとした気分にはなれたものの、5年もたって何も変わらないどころか、そのマイナス面ばかりがじわじわと生活次元で首をもたげる。◇それもボディーブローのような効き方で。◇そうなればいくらお人好しの国民でも、「何か違うんじゃないの」とようやく気づき始めた。

◇コイズミ劇場の熱狂的フィナーレとなった郵政民営化&衆院解散刺客選挙与党の圧倒的多数実現コイズミチルドレン議員の登場多数を誇示するやりたい放題コイズミ公式後継者・安倍晋三における、数を背景の強行採決や参院選日程わがまま変更さらには、安倍の生活感・判断力・リーダーシップゼロ露呈閣僚たちのとんでも低次元・・・・・・・。

◇先のIFSA通信「安倍首相の超不人気=無能力(+)コイズミの『負の成果』を安倍の中に見てしまうから(2007.07.25)」でもその一端を述べたように、安倍のような、誰が見てもひどい人物が出てきたからこそ、多数の国民は、<コイズミを支持してしまった負い目=マズッた!>を丸ごとおっかぶせ得るいいカモに恵まれたと直感したのだ。◇社会心理学的にいえば、多分、そうした無意識の心理的機制が働いたに相違ない。しめしめ、と。

◇しかもあの安倍を批判することで、カタルシス(すっきり感)さえ享受できるというおまけまでついて。◇そうなれば一転、コイズミとは対極の昭和ノスタルジー的小沢一郎、その非イケメン・悪役的オッサン顔・こわもて・非若さ・非軽さ・無愛想・ノリのなさ・古典的ニッポン体現・裏技・きめ細かなどぶ板対応・・・・・・・などが新鮮かつ安心の対象と見えてくるから不思議だ。◇それでいて小沢はコイズミとは違い、どこか論理的。これもまた新鮮に映る。

◇振り返れば、年金や何とか還元水や赤城の山の絆創膏などの即物的な批判対象は、「改革疲れ=理念疲れ」を脱するための単なる序曲というか、導入剤・起爆剤にすぎなかったこととなる。

◇それにしても、いい面の皮は、部長も取締役も経験せず、課長からいきなり社長へと昇格した安倍晋三。◇もちろん、その気になった本人と取り巻きたち(自民党)の責任以外の何ものでもないけれど。◇いまや国中にまん延する「改革疲れ=理念疲れ」の空気が読めなかった彼ら(=KY)の、自業自得というしかない。

コイズミの知恵袋・飯島秘書官は、超優秀なアンチKY(生活者の空気が読めすぎる)だったからこそ、ささっとコイズミを引かせた。◇コイズミ・竹中流のカイカク絶叫と市場原理主義導入では、もうこれ以上もたないことを熟知していたから。

◇そしてババを引いたのが、世間知らずのお坊ちゃまというわけだった。◇吉祥寺駅前で安倍の応援演説を受けた際、候補者のほうが気をつかい、近くにある首相の出身校・成蹊大学の話を振ってはみても、安倍は見向きもせずにカイカク・カイカク。◇大学の話題をマクラにさえ使えないフレキシビリティーのなさ。

◇今日現在でもなお、彼は時代錯誤的「カイカク」を連呼してやまない。◇「美しい国」と「拉致」は言わなくなったというのに。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年8月 3日 (金)

安倍首相の「美しい国」を牧歌的ととらえたら大間違い=美は軍隊の統制感にあり!

◇参院選直前の新聞に、こんな月刊誌の広告が載っていた。◇出版社は「ワック出版」、誌名は「WiLL」、責任編集は元週刊文春編集長の花田紀凱。◇何でも見てやろうの私も、これを手に取るほどにヒマではないから、まだ立ち読みすらしていないが、今号(9月号=7月26日発売)は安倍支援一色のゴリッパなもの。

◇主な目次を引いてみよう。◇★石原慎太郎「小沢総理なんてまっぴらゴメンだ」★屋山太郎「叛安倍官僚国賊論」★森喜朗「『失言問題』朝日新聞を叱る」★呉善花「『格差社会日本』という幻想」★山際澄夫「年金、年金で安倍を潰すのか」★小林よしのり・上坂冬子「激論 『慰安婦決議』には『原爆決議』で対抗せよ!」

◇IFSAには大受けの勇ましいご発言の数々。お里が知れる、まわりはとっくにお見通しとも思わないこの楽天性こそ、彼らが世を渡っていく上でのインフラなのだろう。結構なことだ。◇なかでも森喜朗。副題に「久間『失言』で大はしゃぎの朝日を見て、かつての森叩きを思い出した」だって。◇こんなところで冷静や客観を装ったってダメ。あのマスコミ協賛・コイズミ劇場をたっぷり5年間も享受したのは、どこの誰だったのだろう。そして、さらには安倍で!とたくらんだのは。

◇ここに櫻井よしこが加われば盤石なのだろうが(彼女は「正論」「諸君!」派なのか?IFSAはその辺にはうとい)、まあそれはともかく、上記執筆者に共通する真情とは、われらが若き星・安倍晋三。◇せっかくここまできたのに、参院選に敗北し、ささっと辞められては<もとも子もない>との焦燥感が、一見すると勇ましいながら、すがるようなタイトルによくあらわれている。

◇昨日掲載したIFSA通信「安倍首相にみる生活感・直感力・判断力の欠如=安手のイデオロギーが唯一の頼り」のつづきでいえば、まさに上記執筆陣たちに担ぎ上げられた岸信介DNAの傀儡(かいらい)お坊ちゃま・安倍晋三となろう。◇みこしは軽いほうがいいというあれだ。◇とはいっても、首相という権力をもたせているのだから、利用価値は無限大。

◇担ぐほうは、安倍に下りられては大変だし、安倍は安倍で、ご大層な<劇画風の岸信介回帰イデオロギー>、それは参院選惨敗くらいで傷つくものではない。いや、死守→拡大しなければと、妄想をさらにふくらませている。◇この日本版ネオコンは、だから周囲の辞任勧告など耳にも入らないのだ。

イデオロギーのためのイデオロギー、イデオロギーの自動回転。そこにこそ彼は「美」を見いだす。◇そんな人間にpragmaticなど興味のないのは当然のこと。普通なら悩みに悩む組織の長としての戦略・戦術だが、もともとそれには関心がないから、松岡・久間・赤城がどうあれへいちゃら。◇安倍は、空間に浮遊するイデオロギーの伝道者なのだから。

◇同じ憲法改正でも、彼は憲法をpragmaticな観点から見直そうとは考えない。自分たちのイデオロギー(宗旨)に合致するよう、そっくり入れ替えようと試みる。◇ではその宗旨は?と問われれば、まさに宗旨のゆえんで何の形もない。あるのは、イメージとしての「美しい国・日本」のみ。◇そのためにはまず「戦後レジームからの脱却」が必要と絶叫するわけだ。

◇戦後の何が悪くてどこを変えるべきかも、憲法と同じで答えない。そもそも関心がない。米国から押しつけられた全部(総体)を、ともかくそっくり自身の宗旨にて入れ替える。それが自己目的化するのである。◇国家総動員法や学徒出陣、おそらく安倍はこうしたところに「日本の美」を感じているに違いない。

◇たとえば、「スーパー・ニッポニカ2001・電子版」(小学館)「学徒出陣」の項にはこうある。

◇「これに先だつ10月21日、東京・明治神宮外苑(がいえん)陸上競技場で、秋雨降るなか出陣学徒の壮行会が行われた。東条首相は『諸君が悠久の大義に生きる唯一の道』と訓示、学徒代表は、『挺身以(もつ)て頑敵を撃滅せん、生等(せいら)もとより生還を期せず』と誓った」。

◇コロンビア大学教授のジェラルド・カーティスによれば、戦後日本の保守政治には趣旨を異にする二潮流があった。◇防衛力を抑えて高度成長へと導いた「実利的な保守主義」と、岸・中曽根に淵源する「イデオロギーの保守主義」(以上・毎日新聞朝刊・07.07.05)がそれで、当然のこと、安倍はこの流れの継承者といえる。

◇しかし私に言わせれば、積極的推進者はあのコイズミである。◇彼は上手に、イデオロギーの半分を隠し、半分をチラチラと見せながら、国民の免疫を作ってきた。◇そして愛弟子の安倍へとバトンタッチ。ただ、安倍は不器用だし、また複眼的な能力もないから、まるまるイデオロギーを露出させ、憲法改正・軍備強化一直線の無芸ぶりを披露。◇しかも、勇ましいことを言いながら、本人の風体や言説や行動はふぬけそのものだから、これじゃいくら何でも大衆受けするわけがない。

◇安倍がかたくなに信奉する<美>の一端をすら、安倍自身が体現できないのだからしまらない。◇いや、だからこそ、日本社会は大いに助かったというべきであろう。◇コイズミ二世のようなクサイ役者が次にも出てきていたら、それこそ危ないところだった。◇まずったという、コイズミの歯がみが聞こえてくるようだ。

★★小泉前首相:靖国参拝問題で中国の対応を批判 参院選遊説
Mainichi  INTERACTIVE・07.07.23

◇「自民党の小泉純一郎前首相は23日、参院選応援のため鹿児島市で行った講演で靖国神社参拝に関連し、05年11月の日米首脳会談でブッシュ大統領に『あなたがやめろと言っても、私は必ず毎年参拝する』と告げたことを改めて披露。その上で『大統領は”そんなことは言わない”と(語った)』と述べ、問題視しない意向が示されたと明らかにした」。◇「小泉氏はまた『長い目で見て、私は当然のことをした』と語った」。

◇盟主のブッシュに逆らってでもオレはやる。すごいだろう。米国のポチとして、面目躍如たるものがある。◇本来なら、「イデオロギーの保守主義」があと一歩で日本を制覇できるところだったのに!◇だが、「格差社会」など、どうでもいい生活些事(さじ)が飛び出しては、イデオロギーを邪魔し始めている。どうにかしなくては。◇彼らの認識からすれば、安倍はどうしても辞めさせられない、安倍も祖父に申し訳なくて辞められない、まあそんなところだろう。

◇pragmaticなIFSAとしては、安倍首相の支持率が10%台になっても続けられんことを切に希望している。◇さあ、どうぞどうぞ、心ゆくまで。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年8月 2日 (木)

安倍首相にみる生活感・直感力・判断力の欠如=安手のイデオロギーが唯一の頼り

ココログのメンテは昨日終わったはずなのですが、その副作用がいまだ消えず、私のパソコンからは入力できない状態が続いていますどうやら多数のクレームがあったようで、ココログも対策に乗り出したと、先ほどようやく公表しましたよって、アップが大幅に遅れてしまいました。しかも妻のパソコンを借りての原稿書きにつき、資料等の引用ができず、イマイチきびしい制約下での作業となります。

◇安部晋三首相の救いがたさは当IFSA通信でずっと論じ続けてきたし、世間でももはや通説となっているから、いまさらそれをあげつらっても始まらない。◇ただ昨秋の首相就任前夜、コイズミにはおよばないまでも、国民的人気が安部に相当あったのはたしか。◇自民党もそれを唯一の指標に、安部へ安部へとなびいていった。以下のようなよき思い出(=成功体験)があったからだ。

◇2001年、鮫の何とかといわれた首相(現在は自民党のフィクサー)が「えひめ丸」の惨事への対応等で落ちるところまで落ち、そこへ毎度の「政治と金」が加わって結党以来の危機と言われたとき、あのコイズミが県連ベースで人気を獲得。◇これで「政治と金」問題を隠せるならと、党中央も便乗して成立したのが、あの空前のコイズミフィーバーであった。◇何とかスキャンダルの拡大を隠し通そうとの悲痛な動機が、一転、自民党フィーバーへと昇華されたのだから、こりゃ笑いがとまらない。

◇それに味をしめての、安部登用であった。まずはとにかく人気・人気だ!と。◇当時のIFSA通信から、そのあたりを少々引用してみよう。

◇「派閥がなくなった分(いや、森派がダントツになった分)、薄っぺらな国民的人気だけの安倍ごときが祭り上げられ、『安倍氏支援”バブル化” 6組織入り乱れ 功名争い』(毎日新聞朝刊・2006.09.02)、『”ポスト目当て””情けない” 安倍支持へ雪崩現象』(asahi.com・06.09.08)といった、いじましい情況が生じる。権力闘争の形をとらない分、レベルの低下は免れない」。

◇「そこへいくと、一昨日のテレビで最初から最後までブレなく安倍晋三を批判し続け、谷垣禎一に出てこられた方が民主党としてはしんどかった、と言い切る国対委員長の渡部恒三老には、民主党若手の何百倍もの政治的リアリティーが感じられた」。◇「今度首相になる安倍晋三などは、コイズミレベルにも、松下政経塾レベルにも届いてはいない。この現実がまたたまらなくすごい」(以上は2006.09記述)

「★★安倍首相の所信表明演説(全文)・毎日新聞・夕刊(06.09.29)」。◇おそらくは誰も読まないであろう、新聞全面を使った首相の所信表明演説。そこでへそ曲がりのIFSAは、全文熟読に挑戦することとした」。

◇「動機は単純で、もちろん、安倍の莫迦さ加減を探すこと。しかし苦労はいらなかった。探すまでもなかった。蛍光ペンをすぐに手放した。IFSAの目標物はそこらじゅうにあり、これでは紙面が彩色で埋め尽くされてしまうからだ」。◇「年金・医療・介護・子育ての項などを見れば、安倍が現場の切実感をまったく認識していないのがよくわかる。だから、利いた風なコトバだけが虚しく躍る」。

◇「そして言うに事欠き、最近マスメディアに頻出の『飲酒運転・シンドラー・パロマ』」までをも援軍に仰いでの、ドロナワ式政策提案。何とも底が浅く、バックボーンとして本来持っているべき社会哲学の片鱗すら、顔を見せることはない」。◇「ノリとはさみ、いや今風に直してパソコン操作に置き換えれば、コピーと切り取りと貼り付けの苦心惨憺、それがよく見て取れる『壮大なるゼロ』の作文であった」(以上は06.10)

◇こんな安部でも、<コイズミの正統派継承者・若さ・イケメン??・北朝鮮への強行姿勢???>の4点セットで、当初は70%前後の支持を得る大スターだったのだ。

◇だが、いまや国民の誰もがもうご存じの、安部の稚拙と無能力。◇IFSAはその当時からしつこく指摘してきたが、たとえば民主党の年金追及に対し、「いたずらに不安をあおるなといった超ドはすれた現実認識が象徴的だろう。◇いくら片山さつきに入れ知恵されたとはいえ、「悪いのは元厚相の菅直人だ」式のピンずれキャンペーンも平気で。◇また赤城農水相の事務所費問題では、「月800円で辞任要求するのか」の仰天発言。◇こうした一見些末に見えるところにこそ、人間の本質はあらわれるもの。

◇例の政治資金のザル法問題も、あれだけ野党の意見を突っぱね、強行に採決しておきながら、選挙途中でやばいと見るやおおあわて。中川幹事長に「自民の内規を作れ」など、恥ずかしげもなく言い始める。◇完敗すれば、今度は1円からの領収書提出の法案を提出すると言い出す。これは、前国会におけるモロ共産党の主張ではないか。◇要するに、安部のアタマと感性って、ピピピッとは何もひらめかないということだ。◇石川県の重鎮?鮫の何とかのおじさんののほうが、まだよほどオリコウなのであった。

◇そこへ昨日の赤城更迭。この人事的措置にも、彼のダメさ加減が顕著にあらわれている。◇もうここに至った以上、私なら内閣改造まで赤城を引っ張り、その他大勢といっしょに流してしまうだろう。それしかない。◇というのは、こんな更迭は寝た子を起こすだけだから。◇案の定、格好のワイドショー餌食となっている。この程度のイロハすら読めない首相。そしてお粗末なブレーン。◇本人は、堪忍袋の緒が切れてずばっとやったくらいに自負しているのだろうから、つける薬はない。

◇従軍慰安婦問題もそうだ。◇いわばそのためだけに訪米し、ブッシュへ泣きついて何とか火消し成功!と意気揚々帰ってきたら、米国議会でのあの可決。◇しかも、日本の選挙が終わるまで待ってくれてのタイムスケジュールというのだから、政権党もずいぶんとかわいそうがられたもの。◇ここにも、安部の的はずれが端的に示されていた。狭義の何とかとか、広義の何とかといった苦しい言い訳が、米国の高官層からすら笑われているのも知らずに。

◇そうした細部における、というか、実はもっとも大事な諸点でのマイナスを一気にカバーすべく、安部はイデオロギーへと走る(はずだった)。

「戦後レジームの転換」=「美しい国」とは、神宮球場で整列して進む「美しさ」をイメージしてのこと。◇巷間言われるように、「美しい国」とは、谷内六郎が描くような里山の美しさ、のどかな日本を指しているのではない。そんな生やさしいものではない。◇あの祖父・岸信介が君臨した戦前を思い描いて、安部は言っているのだ。

◇そして、その手のイデオロギー以外、彼の関心はどこへも向かない。大衆の生活なんて、はなから興味がない。◇しかしこうなってしまい、憲法改正も原爆保持もずっと遠い先へ。◇その意味で、今回の参院選の意義はまことに大きいものがあった。

◇なお、あのそのときばったりの権化・田原総一朗が例によって分かったような顔をしながら、早期解散の可能性をぶちあげている。◇何を言っているのだろう。超バブル郵政解散選挙で得た自民党の資産を、みずからそう簡単に手放すとでも思っているのだろうか。◇あのチルドレンたちが皆ぶっ飛ぶ選挙に、自民が軽々しく踏み込めるとでも思っているのだろうか。

◇解散があるのは、追い込まれてどうにもならないベンカジ(便所の火事=焼け○○)のとき以外にはあり得ないではないか。◇だから小沢民主党は、そうなるようにじわじわと追い込んでいく。与野党の攻防とは、まあそんなところだろう。◇それにしても民主党。第二の永田や前原がいつ出てくるか、それこそが最大の問題点だ。(敬称略)。

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年7月18日 (水)

何事も「やらなさ過ぎ」=フレキシブルな自主性を剥奪をされたマニュアル社会の帰結

★★原発火災、消火に2時間 「想定外」の対応に課題
asahi.com・2007.07.17

◇「新潟県中越沖地震の影響で変圧器から出火した柏崎刈羽原発の火災は、消火まで約2時間を要した。消防はほかの対応に追われてなかなか現場に到着できず、東京電力側も当初、消火活動にあたったのは4人だけ」。◇そういっては何だが、マクロから見れば、人名に関係のない民家火災は放っておいても(当然、あとで国家補償)、原発施設鎮火を優先させるのが常識というもの。

◇しかし、「全隊が出払っていた」という「柏崎消防署(消防本部?)」の認識が以下のレベルなのだから、まずもって驚く。◇「同署の萩野義一警防第2消防主幹は『原発で火災が起きるなんて想定外中の想定外』といい、同原発内で消火活動をしたのは初めてという」。◇われわれにしてみれば、「想定外中の想定外」というほうが、よほど想定外。◇ここには、彼らなりのマニュアルはあっても、生活感覚に裏打ちされた常識的な感性はない。

◇しかも東電の原発。1000人もいる「大工場」に、自衛消防施設がないなど考えられないこと。メーカーに長年いた経験からしても、大手の工場は、中古消防車くらい備えているものだ。◇しかも、鎮火に駆けつけた社員は数えるほど。いざというときに、自身の判断で行動できる人間が皆無に等しいということを、これは示している。◇しかも、日本最大の危険度を誇る、原子力発電所という施設において。

◇原発という特有のポジションからして、素人がヘタに動けばかえって政治問題化・社会問題化するのではないか、そうであれば、<すること>により生まれるマイナスよりは、<しないこと>によるマイナスのほうに付こう。◇とっさに、そうした自己保身的精神がせりあがってきたものとIFSAは推測する。◇私がまだ一担当者だったころ、会議中急に苦しみ始めた上司を見て119番通報へと走るや、「阿部君、総務を通してからのほうがいいぞ」と宣った課長の声を思いだす。もちろん、完全に無視したのは言うまでもないが。

★★生活保護、不法に廃止 収入など調べず 北九州の孤独死
asahi.com・07.07.14

◇「辞退届によって生活保護を廃止された北九州市小倉北区の男性(当時52)が孤独死した問題」。◇「孤独死した男性は昨年12月、病気で働けないとして生活保護を認められた。その後、北九州市側から働くことを勧められ、4月2日に辞退届を提出。同月10日付で保護は廃止された。7月10日、死後約1カ月の遺体が自宅で見つかった」。

「★★日記に『おにぎり食べたい』 生活保護『辞退』男性死亡・asahi.com・07.07.11」という悲惨な事件であった。◇「辞退」どころか、実態も調べず「辞退させた」のは明白であろう。◇へたに現実のなかへ首を突っ込んで面倒なことになる<やり過ぎ>よりも、<やらなさ過ぎ>で走っておいたほうが、担当者にとってはベター。◇彼らには、そんな程度の案件にすぎないということだ。

◇子どもが虐待を受け、命を奪われる事件は引きも切らないが、児童相談所(児相)の見解は判で押したように決まっている。◇「見に行ったときは何でもなかった。こんなことになるとは予測もつかなかった。親が深く反省していたので、大丈夫と思った。分かっていれば対応できたのに。子どもにはまったく気の毒なことをした」。◇いくら品がないと非難されようと、こんな連中には「フザケルナ」というしかないだろう。

★★県警に事前通報、電話受けた刑事を調査 長崎市長銃撃
asahi.com・07.06.26

◇「(前略)県警の畔林(うねばやし)一喜刑事部長が明らかにした。同部長は『事件の2時間前に、ある人物から捜査員に電話があった。公判もあるので中身については控えさせていただきたい』と説明。さらに『緊迫した状態ではないと判断し、上まで報告が上がっていなかった(後略)』」。◇「畔林刑事部長と永松署長は、事件直後に開かれた記者会見で『事件が起きるとはまったく予想外だった』と説明していた」。

◇これなども、質はまったく同じ。その後もし銃撃事件が起きていなければ、警察にとってはno actionこそが大正解ということになっただろう。

◇そして、例のミートホープ事件。◇内部告発を受けてすら、「★★農水省と北海道、計8回の立ち入り検査でも不正見抜けず・YOMIURI ONLINE・07.06.26」や、何も起きないことを祈るような「★★保健所、ミートホープへ検査を事前通知 偽装食材を撤去・asahi.com・07.07.03」。◇これでミートホープがあそこまで取り上げられなければ、役人にとってはホント<大成功>だったにちがいない。

◇正義漢とか何とかの道徳的な次元ではなく、ここにはまず、<何よりも真実(=本当の現実)を見つけ出す>ことへの喜びを知らない連中がゴロゴロしている。◇彼らにとっての最高の価値は、<事務処理>をいかに無難に収めるか。◇そう、原発火災の鎮火も、困窮者への対応も、虐待されている子どもたちへの救済も、犯罪への事前防止も、不正食品工場への摘発も、これらはすべて、単なる<事務処理>レベルでしかないのが現状なのである。

その思想からすれば、担当者にとって効率のいい途が選ばれるのは理の当然。◇トップがその思想を根底からぶち切らないかぎり、今後もこうした対応はエンドレスで続くこととなる。

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年7月 5日 (木)

久間防衛相の<問題>発言=絶対善で叩きまくり、ああすっきり!でいいのか

◇安倍晋三首相のどうしようもなさについては、昨年9月登場のの時点からすでに何度も詳述してきたし、直近でも何回かにわたって論じた。◇そこへ今回の久間発言。核武装論者とおぼしき安倍は、また例により、どっちにもいい顔でオタオタするばかり。◇それについては別途アップするとして、今回は久間発言に対し臆面もなく<絶対善>的な反応を示す、タカ派政治家の言動にスポットを当てるとしよう。

◇その前に、例の発言。産経新聞社発行のネット「iZa」にて全文を読んでみたが、久間の<真意>はどうにもつかみにくい。◇「原爆しょうがない」だけをつかまえれば、誰一人として表立って「しょうがある」と言える人はいないわけだから、その点だけでも久間は大莫迦。◇しかしここでは、久間という相対的にはハト派的な人物と、その発言の忖度(そんたく)からあえて離れ、結果として彼が呼び覚ましてくれた大きな問題のほうへとIFSAの関心を傾斜させていくとしよう。

◇まずIFSAの第一印象としては、「政治家連中、いったいいつから全員がハト派になったんだ」というもの。◇「総論ハト派→各論タカ派」。何とも日本的な、情に訴えるこの使い分けこそ、今回もっとも追及(追究)すべき問題ではなかろうか。

◇その視点からすれば、今回エラそうに久間を弾劾してみせたあの自民党政調会長・中川昭一。まったくもって冗談ではないのだ。◇彼は北朝鮮の核に接し、いったいどう言っていたか。◇そして、外相・麻生太郎は。さらには、首相就任以前の安倍は。◇IFSAファイルから、それらを検証してみよう。

★★核保有の議論は必要 自民・中川政調会長
KYODO NEWS(2006.10.15)

◇「自民党の中川昭一政調会長は15日の民放の報道番組で、北朝鮮の核実験発表に関連した日本の核保有論について『憲法でも核保有は禁止されていない。核があることで攻められる可能性が低くなる、やればやり返すという論理はあり得る。当然、議論があってもいい』と述べ、論議は必要との認識を示した」。◇「与党の政策責任者の発言だけに、核廃絶を進める関係者の反発を招き、与野党内で波紋を広げそうだ」。

★★中川政調会長「核保有の議論あっていい」発言、火消しに
asahi.com(06.10.16)

◇「自民党の中川昭一政調会長が『核保有の議論はあっていい』と発言したことをめぐり、政府・与党幹部は16日、日本は非核三原則を堅持すると強調して火消しに走った」。◇安倍政権によるこのタテマエ路線が、実にしらじらしいではないか。

★★核保有「議論は大事」 麻生外相、国会で発言
asahi.com(06.10.19)

◇「麻生外相は18日、ライス米国務長官との会談に先立ってあった衆院外務委員会で、核保有の議論について『この話をまったくしていないのは多分日本自身であり、他の国はみんなしているのが現実だ。隣の国が(核兵器を)持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくのは大事だ』と述べた」。◇「麻生氏は『非核三原則維持は政府の立場として変わらない』としたが、政府の外交責任者の発言だけに、国内外で議論を呼びそうだ」。

★★中川政調会長:憲法上は核保有可能 政府解釈
Mainichi  INTERACTIVE(06.10.31)

★★核保有論議、首相なお黙認姿勢
asahi.com(06.11.06)

◇「核保有論議の必要性を主張し続ける自民党の中川昭一政調会長に対して安倍首相が黙認する姿勢を変えない。与党からも自制を求める声があがるが、首相は6日、記者団に『非核三原則の方針について異を唱える人は誰もいない』と強調。。『非核三原則を守る』とさえ言及すれば、議論すること自体はかまわないと事実上論議を容認した」。

◇「なぜ、安倍首相は議論を容認するのか。もともと『首相は核問題の議論をタブー視しない』(内閣官房幹部)という点で、中川氏と近いという見方もある」。◇「安倍首相は官房副長官時代の02年、講演で核兵器保有は憲法の禁ずるところではないと発言したとして野党の批判を受けた。このとき安倍氏は国会答弁で自衛のための必要最小限度内であれば、『核兵器、通常兵器を問わず、保有することは憲法の禁ずるところではない』としながらも、「その話をする前に、私は非核三原則の話をしている」などと釈明した」。

◇大笑いとはこのことだろう。核兵器を相手国へぶち込む、その可能性を堂々と容認(=先には絶対にやらないというのであれば、核兵器の意味はない。それが核の特殊性!)しておきながら、「原爆投下しょうがない」発言だけは言語道断だって?

◇いったいどういう頭脳構造というか、神経なのだろう。一日駅長ならぬ<一日ハト派>へと変身してみせた、生粋のタカ派連中は。◇そればかりか、ヒロシマ・ナガサキを平然と風化させる方向へ動いてきたのは、この連中だったじゃないか。◇それをいい子ぶって、何を今さらだ。

★★首相、「要望聞く会」4年連続欠席 被爆者から失望も
asahi.com(05.08.06)

◇「小泉首相は6日午前、広島の平和記念式に出席したが、その後開かれた『被爆者代表から要望を聞く会』は4年連続で欠席した。郵政民営化法案の参院本会議での採決を目前に控えるなか、被爆者からは、『じっくり話を聞いてほしかった』という失望の声もあがった」。

★★発信箱:失言の温床(中村秀明記者)
柳沢伯夫厚生労働相の失言問題で思った。人は、なぜ失言をするのか?
Mainichi  INTERACTIVE・07.02.02

◇「究極の棒読みとして印象深いのは、昨夏、広島平和記念式典での小泉純一郎前首相のあいさつである。前首相は国会答弁のように、一度も顔を上げず、早口で読み上げた。参列した被爆者らに対し、実に不誠実な態度を見せた」。

★★愕然とさせられた平和式典の小泉あいさつ
広島への出入りを禁止したい気分 (高橋乗宣)
日刊ゲンダイ有料電子版・06.08.11

◇「4万5000人が参列した広島の平和記念式典をテレビ中継で見た人は多いだろうが、そのほとんどが小泉首相に愕然としたのではないか」。◇「首相就任から6年連続の出席は評価しよう。しかし、そのあいさつは、去年にも増して酷かった。書いてある原稿を、とにかく急いで読み終えようとしているだけ」。◇「貴乃花の優勝に『感動した!』ときとは大違いだ。感情は一切こもっていない。ただ単にスラスラと文字の羅列を口から発することで、サッサとその場から立ち去ろうとしているようだった」。 

◇そう、こうしたイデオローグたちが、今回の久間発言を逆に<利用>し、にわか仕立ての核廃絶派ぶっているのだ。参院選のためだけに。◇こんな茶番より、久間発言を契機に「非核保有国」への途をより深める、そのほうがずっと大切なことだろう。◇久間が辞めれば核論議もオワリ。さらには、参院選が済めばまたぞろ憲法改正と核保有モードへ。

◇米国が日本へ原爆を落としたのは、日本が白人の国ではなかったから。◇もし米国よりも先に、戦前の日本が原爆を開発していたら、それを使用していた可能性は高い。◇米国の原爆投下は、20世紀最大の犯罪のひとつ。そのことを大前提にしても、日本はなぜその前に戦争を終結させなかったか、なぜ2度まで、みすみす原爆の投下を許したか。◇いったん戦争が始まってしまえば、武器はここまでとはなかなかいかないのが「戦争のもつ非情な論理」。だからこそ、戦争は何としても避けなければならない。

◇久間がこのうちのどれを言いたかったのか、いや、そんなことは念頭にもなかったのかは別にして、上記の諸点だけは紛れもない真実であろうと私には思われる。(敬称略)

★★[IFSA]★★Michio Abe

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2007年6月20日 (水)

強行採決のやりたい放題=すべては郵政解散のマジックに始まる

◇安倍政権による連日の委員会強行採決。さすがのテレビもこれには辟易(へきえき)のていらしく、批判的様相をかもし出しているが、こうしたアパシー(あきらめ)情況を作り出したのは、もとはといえばコイズミに躍りまくったマスメディアと国民であった。◇あれよあれよという間に、郵政ごときが「カイカクの本丸」と位置づけられ、これさえ突破すれば日本の国はよくなるとの短絡的幻想を懐かされた。

◇そこへ、コイズミ-竹中-飯島秘書官の何とかトリオが、郵政解散という前代未聞の大芝居を打ったものだから、日本社会は国を挙げての熱狂状態に。まさに、ええじゃないかの乱舞が襲来したのである。◇参院で否決されていながらの、郵政解散。この意外性とどんでん返し、コイズミの無法者的行動が一層の人気を呼び、<郵政一点に絞っての総選挙>が行われたのであった。◇こうなると、日本社会はもうとまらない。

◇IFSAの年来の主張、<そもそも、こんなもののどこが郵政改革なのか><郵政がなぜ、構造改革の第1位となるのか><そんなマイナーな郵政一本の選挙なんて、国民投票じゃあるまいし、成り立つはずもないではないか><それよりも、その先への影響のほうがもっと重大である>・・・・・・・などは、引かれ者の小唄のたぐいとして一蹴(いっしゅう)され、熱気にかき消された。◇本来の、郵政と財政投融資との関係、それを論じる人間すら、もういなくなっていた。

◇そして現在を迎える。◇マスコミに頻出する評論家を含め、郵政解散を経て実行された<郵政改革>で何が改善され、現在はどこまで進捗しているかを答えられる人がいたらお目にかかりたいものである。◇おそらく、そんなことはもう誰も知るまい。いや、知る必要もないということだろう。◇あの熱狂劇によって、溜飲を下げられればいいのだから。◇要は、あのクサイ演歌調のコイズミ劇場でスカッとすることだけが目的なのであって、その顛末がどうなろうが知ったこっちゃない、これが本音だろう。

◇その時バッタリのカタルシス装置を、これでもかと設定してくれるコイズミほど、ありがたい存在はいなかったことになる。◇あのエラそうな官僚がシャクのたね、とにかく官が気に入らぬ。たしかにそれは正しいのだが、それらを構造的にひっくり返そうとの、気の長い面倒なことはご免こうむり、とにかく「人間関係」としてのウサを晴らしたい。◇そう、アタマにくるのはすべて、<構造>や<制度>ではなく、<人間関係>。あいつらが気にくわない!

◇日本社会は伝統的にそのようにできている。◇だが、それじゃやっぱりまずいんじゃないの。そんな自覚もどこかにあるものだから、<構造的>とはもっとも遠い位置にあるコイズミが、<構造改革>などと巧みに言い始めるや、年来のコンプレックスを刺激され、<コウゾウカイカク>という言辞に表層ながら飛びついてもみせる。◇飯島秘書官ほど、大衆の心を知っている人間はいなかろう。敵ながらあっぱれ。

◇閉塞感に悩むわれわれのかわりに、スッパスッパとやってちょうだいよ、コイズミさん。◇だから、日本にも早く大統領制をなんて声も、当時は大いに市民権を得たのであった。◇そしてイマ。安部がどんなに無能であろうと、とんでもない法案が、審議以前に通っていく。◇テレビの評者たちは、いまごろになってケシカランとか言っているが、そんなことは郵政選挙の時から決まっていたこと。◇何しろ郵政以外にも、すべてに対して白紙委任状を与えてしまったのだから。

◇コイズミがやった、「外務省」・「道路公団(=急先鋒を装った権力志向の猪瀬直樹は、石原慎太郎のお手伝いへ)」・「郵政」・「北鮮」のイマは?◇うさ晴らしは別にして、何がどうよくなったんでしょうか。◇もしよくなっていないのであれば、なぜあの時のように、イマも継続して怒らないのでしょうか。もう飽きたのでしょうか。こんなんじゃ、いまさらスカッとできないからでしょうか。

◇そんなことを言っているうちに、<郵政→孫の徴兵>へと直結。◇これは共産党などがよくやる非現実的飛躍ではなく、論理の必然として言っているにすぎない。

◇本日朝のフジテレビ「とくだね!」で、農業家を気取る高木美保が、自民党による会期延長説について聞かれ、「会期を延ばして強行採決がなくなるならいいのでは」的な、超トンチンカン・コメントを発していた。◇会期を延長し、もっと強行採決を行おうとしているというのに。◇とにかくテレビでは、この種のうわべだけの言説が、恥ずかしげもなく大手を振っている。

◇日本社会の関心事は、<人間関係>ただその一点。だから、<社会構造>は常に置き去りとされ、本質的な改革や改良へは届かないのだ。◇郵政なんかよりずっとずっと、年金・介護・医療の社会保障分野が重要かつ喫緊の課題なのに、あの時は郵政命。◇これが下火になると、次は年金。しかし、批判は<構造>ではなく、社会保険庁の役人という<人間関係>へ矮小化。

◇今度は、日の当たらない介護がはじめて注目されたと思ったら、興味の対象は折口雅博という人物のえぐいキャラクターに限定。◇最悪玉の厚労省は逃げのび、そして、いつの間にか、ニチイ学館が善玉となっている。

◇足元から問題点をひとつずつつぶし、社会構造を変えていく。◇結果としては、それこそがいちばんの近道であるはずなのだが。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年4月18日 (水)

IFSA注目のマイナーな記事=「東電塩原の違法取水」に、またまたコンプライアンス?

◇それこそ、目を疑うような報道に出会った。読み違いがあってはいけないと、3度読んだ。◇YOMIURI ONLINEが2007.04.16・13:47に伝える、「★★東電塩原の違法取水問題、発電所の水利許可取り消し処分へ」という記事のことだ。

◇まず冒頭にこうある。「全国の水力発電ダムなどでデータ改ざんや違法取水が相次いだ問題で、国土交通省は、河川法の許可を受けずに取水続けていた東京電力の塩原発電所(栃木県那須塩原市)の水利許可を取り消すとともに、関西電力の川合(奈良県)、栃生(とちう)(滋賀県)の両発電所の最大許可取水量を減量などの処分とする方針を固めた」。◇「塩原発電所はこれにより長期間、使用停止となるという」。

◇いったいどういうこと?と思えば、「運用開始直前の1994年ごろ、上部にある八汐(やしお)ダムのダム湖から地盤への大量の漏水が発覚。東電は本店の副部長らの了承の下、総量で7000万立方メートル以上の水を川から違法に補充、無許可で改修工事なども行っていた」というのだからすごい。◇私の企業時代、お相手は通産省(天下のMITI)だったが、われわれはピリピリしていた。お役所もなめられたものだ。

◇私の乏しい現代文読解力をもってすれば、ポイントは<自社のエリア(=ダム湖)で大量の水漏れが発生したため、発電に支障が。そこで発電用の水を、人様(=お上?=国民の財産)のエリアから無断でガッポリ頂戴した>となる。◇執筆の07.04.16午後時点では、朝日・毎日・日経・産経・東京・共同に関連記事を見つけられないから、速断に多少の不安は残るものの、お役所の処分まで伝えるYOMIURI ONLINEに間違いのあろうはずもない。

先日、原発重大事故の隠ぺい問題に関してIFSAが書いたブログ、その背景にある日本社会の複雑さ・ねじれぶりとは次元を異にする、単なる「いただき事案」のようだから、コトバもない。◇後日、首脳陣がどのような弁明とお詫びをするのかが楽しみだ。◇また例によって、「社内コンプライアンス(法令順守)の強化・徹底をはかります」だろうか。◇いいかげん、そんな生煮えの気持ち悪い用語は放擲(ほうてき)してもらいたいものだ。

◇ここでIFSAは、一部の識者のように、カタカナ使用を批判しようというのではない。私だって、ブログでバンバンとカタカナを使っている。◇ただ、わけの分からぬカタカナ(=謝罪に使う本人すら、実はその雰囲気しか分かっていない)をもって、他人と自身を煙に巻く、そんなみみっちいことはやめるべきと言っているにすぎない。◇そりゃそうでしょう、黙って水を頂戴しておいて、何が「コンプライアンス」だって。そんな上品な話ではないはずだ。

◇平たく言えば、経営者・社員・企業全体のばかさ加減という「プリミティブ(またカタカナ!)で泥臭いイロハ」と、格好をつけた「コンプライアンス」とが、いったいどう切り結び、どう馴染み合うというのだろう。◇コトバだけで気取っている場合ではなかろう。◇何事にも鋭角化を避けたがる国民ご用達の、コトバのアイマイ化・中庸化、そしてそれを増幅させるマスメディア。加えて、そのメリットだけは正確に見抜く政治家と経営者。◇だからこそ、「コンプライアンス」的な欺瞞用語が大手を振り、事態は改善の兆しすら見せないのである。

◇昨今おおはやりの、こうした意味不明用語。その代表格は、何といっても「説明責任」という代物だろう。◇この便利なコトバが、テレビで使われない日はない。与党を追及する時にも、野党はきまってこう言う。「説明責任を果たしてないじゃないか」。◇IFSAに言わせれば、こんな軟弱なコトバを出した瞬間にもう勝負アリ。「説明責任」というツールは、体のいい助け船でしかないからだ。◇いくらとんでもない行動に出たって、信じられないことを言ったって、あるいはウソをついたって、きっちり説明しさえすればOKというのだから。

◇松岡ナントカという、あのナントカ還元水のおじさんをいまだに追い詰められないのは、「説明責任を果たせ」なんて甘っちょろいことを言っているためだ。◇そんなエセ・ニュートラルより、単刀直入に中身へ切り込み、ぎゃふんと言わせる。説明なんてしてもらわなくても結構!それが本筋というものだろう。◇にもかかわらず、しょっぱなから、お行儀のいい「説明責任」の要求。◇「コンプライアンス」も「説明責任」も、ここらで収めましょうのサインを双方が送り合っている以外の何ものでもない。

◇こういうものをこそ、真の意味での「なれ合いの構図=予定調和」という。◇まずぶっ壊すべきは、コイズミお得意の「自民党」などではなく、日本社会にまん延する、この種の気色悪き共同幻想。◇それにしても、損保・生保のデタラメも含め、電力会社・お菓子屋・ガス器具メーカー・自動車メーカー・・・といった、低次元の連鎖。

◇かつては当たり前のように存在していた、サラリーマン社会の最低限の矜持(きょうじ)は、いったいどこへ吹き飛んでしまったのだろうか。◇そしてその契機は。◇あの時代、「コンプライアンス」も「説明責任」も、コトバすらなかったというのに。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年4月11日 (水)

原子力発電所の重大事故隠し=その本質は、単なる「企業の隠ぺい体質」にあらず

◇まずは最近の報道から、原子力発電所事故に関する記事をピックアップしてみよう。

★★東電、福島第一原発でもデータ改ざん 20年前からか
asahi.com(2006.12.05)

★★東北電力でも改ざん 女川原発・排水温データ
asahi.com(06.12.07)

◇両者とも温排水の温度改ざん。やっぱり相変わらずなんだな、電力会社というのは、と思っていたら、3月には超弩級の事故隠しが発覚。

★★北陸電力:制御棒抜け「臨界」、緊急停止遅れる
志賀原発で99年、事故報告せず・Mainichi  INTERACTIVE(07.03.15)
★★クローズアップ2007:志賀原発
・臨界事故 重大ミス重なる
Mainichi  INTERACTIVE(07.03.16)
◇例のジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で起きた臨界事故が99.09.30だったから、志賀原発(石川県志賀町=しかまち)の「臨界」は、その3カ月ほど前に起きていたこととなる。◇これが明るみに出るや、他の電力会社でもボロボロと重大事故&事故隠しが発覚。◇いったい、この国の行政と企業はどうなっているのかという、絶望的なひどさだ。

★★原発制御棒:中電、東北電でも落下 91年浜岡、88年女川
--臨界には至らず・Mainichi  INTERACTIVE(07.03.19)
★★原発制御棒脱落、福島と柏崎刈羽でも 臨界には至らず
asahi.com(07.03.20)

◇北陸電力・中電・東北電力ときたら、次は東電の2件。これは93年と00年だ。◇そしてダメ押しが、以下の重大事故。

★★福島第1原発:78年に臨界事故か 東電は国に報告せず
Mainichi  INTERACTIVE(07.03.22)
★★原発制御棒脱落:抜け落ちた安全 東電、28年間情報秘匿
Mainichi  INTERACTIVE(07.03.23)
★★東電でも臨界隠しか 
福島第一78年に 7時間半継続の形跡
Chunichi Web Press(07.03.23)

◇国内唯一の臨界事故といわれたJCO(99.09.30)より約20年も前に、けた外れの重大事故が発生か、ということとなる。◇これら一連の隠ぺいに対するマスメディアの批判は、以下の見解にほぼ集約されよう。◇毎日新聞朝刊(07.03.31)の「クローズアップ2007」は、見出しの形でこう言う。「事なかれ主義まん延」「安全より生産優先」「『独占企業のおごり』露呈」

◇なるほど、正しい指摘だろう。ただ、いまひとつ本質へ届いていないというか、届かせていないきらいがある。◇また、当事者である電力各社は、決まり文句のように「『コンプライアンス(法令順守)意識が不十分だった』と口をそろえた」のだという。化石のような想像力のなさとお座なりなさまは、表彰もの。◇「コンプライアンス」なんて一知半解なコトバを無批判に使う自分が、恥ずかしくないのだろうか。

◇なぜこうしたことが起こるのかの技術的問題は、ここではおこう。IFSAの最大関心事は、なぜ隠ぺいするのかのほうにある。◇マスコミが、分かっていながら周到にも触れようとしない点、それは国民の原発アレルギー+進歩主義者たちの「原子力なら問答無用でノー」>(対)<情報を100%開示しては「科学的」に正面から挑もうとの気概に欠け、その場限りを得意とする姑息な電力業界と行政>の、ガチンコ勝負の実態である。◇「科学」と、それにもとづく「客観的直視」などそっちのけの情緒的対立が、日本社会を覆ってもう半世紀というのに。

◇そう、上記一連の隠ぺい工作も、こうしたイデオロギー情況が根因と考えられるのだ。◇「原子力批判に油を注いではいけないから隠した」が本音であって、真実は、コンプライアンスの欠如なんかではあるまい。

◇日本の発電構成は、原子力が30数%、水力が10%、バランスの大半が火力。◇一方は、脱ダムで水力はダメ、原子力は論外といいながら電気だけはバンバン使い、火力が大きく「寄与」する二酸化炭素の排出には口をつぐむ。◇苦しまぎれに風力でごまかしたりすれど、発電は不安定(風まかせ)、電力量は微々たるもの、おまけに公害までささやかれ始める代物。◇他方は、原子力発電をスイスイ進めたいだけのことで、あの手この手のミエミエ・プロパガンダと、窮迫する地方自治体へのアメ攻勢。◇そのためには、ヤバイ話など隠すのが当たり前でしょうとなる。

◇この非生産性が、日本社会の閉塞を生む。◇ならば、いまや堂々と、原子力発電の可能性と限界、リスクとを明らかにし、その必要悪の部分をどう修正しながら使いこなしていくか、また将来展望をどう設定するかを、非イデオロギー的立場から、事物に即してザッハリッヒに論ずる以外、手はないであろう。◇右か左かの伝統的な戦いを連綿と続ける、大河をはさんだような遠吠えはいい加減にやめ、現実から出発する国民的議論が、今日のきょうからでも求められているのだ。

◇30数%を占める原子量発電を、たとえば直ちに全面ストップした場合、もしくは他の発電手段に置き換えた場合、いったい何が起こるか、そんな素朴なシミュレーションから始めるのがいちばんいいのかもしれない。◇これは生活の隅々にまで影響をおよぼす大問題だけに、つまらぬイデオロギーなどさっと吹き飛ばしてしまうactualなものとなろう。

◇原発反対派が金科玉条のように奉じてきた欧州の「脱原発」。その風向きが、原油価格の高騰や二酸化炭素問題等で一変し始め、「原発回帰」というコトバを生むにまでいたっている。◇それがいいかどうかは別にして、彼らの持つ思考の柔軟性と社会のflexibilityに、見習うべき点の多々あることだけは間違いあるまい。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年3月23日 (金)

AかBかにあっさりついてしまう二分法の国民性=日本社会はこれで行き詰まっている

◇IFSAを立ち上げてからの6年半、日本社会における二分法の弊害をずっと論じてきた。◇なぜかそれを面白く思わない友人からは、「オマエこそ二分法の権化だと皆で笑っているぞ」のメールが。◇阿部は、日本人の二分法的思考法・行動形態を得々と論じ、分類するばかりの、実行を伴わぬ観念論者というわけらしい。◇若いころに真の意味での弁証法を体得していない人間というのは困ったもので、あえてAとBに理念型的に分けては物事の本質を鮮明化させ、その上で、いかに両者の現実的架橋をはかるか、そこの重要性を言っているのが理解してもらえないようなのだ。

◇まあ理屈はともかく、現実へと戻ろう。◇ネットには掲示されない部分の新聞紙面をハサミで切り抜き、大判はスーパーのコピー機でA4へ縮小したうえ、スキャナーでPCに読み込んでプリントアウトもする、そんな面倒なことを月に1度ほど行っているが、昨日、そうした単純作業のなかから、刺激的な文章に出会った(引用のすべては毎日新聞からである)。◇上記の二分法うんぬんと関連づけながら、触れてみたい。

★★中島岳志的アジア対談「地方の視点で改革を問う」(夕刊・2007.03.19)
◇対談相手は、北大教授の山口二郎。この市民派の権化のような行政学者が、自身の二分法的思考に疑問を呈し始めているのが興味深い。それで食っていながら、何をいまさらというのが私の印象だが。◇山口は言う。「ただ、あのころの私は(小泉流-筆者註)新自由主義がここまで社会を分断し、格差や貧困をもたらすとは思わなかった」。◇「それとあのころまでは、自立した市民が腐敗した官僚や自民党を乗り越え、民主政治を作り出すというイメージを持っていた」。

◇そう、山口は「イメージ」ではなく、生活感に根差さない浅薄な、頭でっかち「幻想」をもっていたのだ。権力対市民という、古典的単純二分法からくるところのそれを。◇そして、本当にプロかと思えるような、恥ずかしくなるほどの正直さで、こうも言う。◇「当時は、腐敗した族議員や役人をたたきつぶすという具体的な課題を市民主義者と市場原理主義者が共有していたんです」。「ところが、問題が実体的な再配分の話になると、市民主義と市場主義の矛盾が急に見えてきた」だって。

◇私が02年8月に出した最初の著書、その主題はまさに「市民主義」と「市場原理主義」双方への徹底批判、プラス、両者の融合化批判であった。4年半後の山口のこの認識(=反省)と、結果的には偶然の一致なのだろうか。◇いつでも良識派でいる山口二郎。何を考えたのか、当時の悪名高き田中眞紀子外務大臣「私的懇談会・有識者」のひとりとして、まめに「外務省大臣接見室」へ出向いていたのだから笑える。◇新左翼的に言えば、まず「きちっと総括してもらわなきゃ」。

★★欧州統合の50年「理想への意思と現実主義」(朝刊・07.03.11)
◇一昨日のブログにおいても、浜矩子によるEU論にちらっと触れたが、この文章は東京外大教授・渡邊啓貴(国際関係論)によるもの。◇彼は言う。「ユーロ導入が成功し、冷戦の終結で東欧諸国との敷居もなくなった。共通の課題を克服するという意味では、一般市民にとって統合の切迫感は薄らいだ。理念が優先しているかのような欧州憲法条約の実現が足踏みをしている背景に、こうした心理状態がある」。

◇しかし、渡邊は留保をつける。◇「だが、筆者の友人である駐日EU代表部の前公使は、欧州統合を『意思』の問題である繰り返し述べていた。自ら積極的にコミットしていきながら共通のビジョンや方針を模索していく姿勢がない限り、事態の発展がないことも確かである。われわれにも、理想主義の『目に見えない力』に託してみる気概がもっとあってもよいのではなかろうか」。◇そうしたねばり強い膂力(りょりょく)もなく、日本の政治家のように「東アジア共同体構想」を口先でぶち上げたところで、結果は見えていよう。◇EUは50年。二分法に架橋しようとする「気概」とスパンがまったく違うと言わざるを得ない。

◇「二大政党の時代へ」がはびこったかと思えば、東国原をきっかけとする無党派の時代がまたまた一世を風靡。◇他方では、電力の恩恵にたっぷりあずかりながらも、原子力発電絶対悪の視点だけは変えようとしない。さらには、それを支援するような、電力会社における事故の隠ぺい工作。どちらにも、真のしたたかさとねばり強さが見られない。

◇これらはみな、現実的な架橋法を見出せない二分法社会の行き詰まりを象徴している。◇ねばり強さ・気概・意思。こんな一見古くさい、まるで戦後からはい上がる高度成長期のようなベクトル。これこそがいま、「架橋」というしんどい作業に求められているもの、私にはそう思えてならないのである。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月31日 (水)

日本人に根強い漠然とした「自然信仰」-そのイデオロギーが随所で障害となっている

◇日本人は「自然」というコトバが大好き。そこに含意されるのは、それこそ「まっさらな自然」であり、少しでも人手の入ったものは、イメージから排斥される。◇森林でいえば、原生林的なものを求めるわけだ。◇しかしここにも、現代日本人をむしばむ「二分法」の魔手が忍び込む。「自然」か「人工」かといった・・・・・・。◇サプリメントでも、天然成分100%といわれれば信じ込む。天然で有害なものなど、山ほどあるというのに。

◇知床半島の先端や離島の一部は別にして、日本には手つかずの自然などまずない。◇だからこそ、逆に「人工」を施さなければ森林は荒れ果ててしまう。◇日本の森林行政の貧困から、ほったらかされた森がいまどうなっているかを見るだけでも、それは明らかだろう。

◇水田を、自然の象徴のように、大仰に言い立てる進歩的知識人がいる。◇とんでもない。水田づくりほど、古代における大規模な自然破壊もなかった。◇また、たとえば平城京の大寺院。あれだけのものを造営するのに、どれほどの木を切り倒したか。近間の山をはげ山にしてしまい、それでも材木が枯渇した結果、遠く近畿圏以外に材を求めたのは歴史が教えている。◇日本人は古来から自然を大切にしてきた、それなのに近現代の堕落は!そんな単純な話ではないのである。

◇名著『森と人間の文化史』(NHKブックス・1988)のなかで、森林生態学者の只木良也は、白砂青松の「松」は実のところ、人間がその地の環境を荒らしてきた結果にすぎないと言っている。◇松は他の木に比べ、やせた土地でも育ち得る力を持っている。だから、「マツの存在はわが国の自然が酷使されてきたことの指標」だと、只野は記す。◇そして皮肉なことに、アカマツで有名だった京都・嵐山は、風致地区として「保護」されるや肥沃化し、いまは広葉樹林へと一変してしまった。

◇人間が住む地の「自然と」は、白か黒か(自然か人工か)の二分法ではいかないようにできているのがおもしろい。いや、だからこそ取り組み甲斐がある。◇只野は警告する。「わが国に多い半自然に、人為を排するのみの自然保護手段は決して現状維持にはならない。そればかりか、嵐山や赤沢(木曽谷の美しいヒノキ林がアスナロ林に変化-筆者註)のようにかえって危険ですらある。それは自然保護ではなく、自然過保護というべきかも知れない」。

◇只野が投げかけるアイロニーは、日本人の二分法的自然イデオロギーを厳しく突いている。◇「自然」が最高価値で、「人工」はダメ。しかし現実には、われわれの求める「自然」とは、それこそ「半自然」そのものなのではないか。◇江戸から戦前にかけての日本人は、いまよりもずっとそのことを現実的にわきまえていた。◇箱庭もそうだし、神社につくったミニチュア・フジの富士塚もそう。そして、路地裏の植木鉢も半自然の代表格だろう。この中庸の妙味に私はひかれている。

◇また、「見立て」というしゃれた概念も、そこへとつながっている。不忍池を琵琶湖に見立て、王子・飛鳥山周辺をリッチモンドに見立てて。◇さらには、小石川後楽園や六義園も、半自然の見立てだろう。◇これらを、スケールの小さな箱庭趣味とわらう文化人には、そうさせておけばいい。われわれ日本人は、こうした愛すべき半自然を、自然として慈しんできたのだから。

◇しかし、現代の日本人は、その諧謔精神から次第にはなれていってしまった。◇近代化の必然的産物である自分たちの「都市」に対し、それを半自然として大事にするどころか、「東京砂漠」といってはバカにし、顧みなかった。◇丸ビルが倒されようが、もっとマイナーな、日本橋際にあったレンガ造りの大栄不動産ビル(旧帝国製麻ビル・東京駅の辰野金吾設計)が消されようが、誰も反対の声すらあげなかった。

◇それは、ビルなど単なる人工物で、われわれの体内にしみついた「風景としての半自然」と思っていないからであろう。◇それでいながら、思いつきのコイズミ主導で、日本橋上の首都高を、巨費を投じてでもとっぱらえ、などと言い始める。◇背後には、あの地区の「再開発」と規制緩和の思惑が渦巻いているのを隠しながら。

◇ここに、アテネフランセでも教えたという、オギュスタン・ベルク・フランス国立高等研究院教授の興味深い日本人論がある。引用してみたい(『神田川』所収・東京新聞社会部編・同出版局刊・1994年)

◇「しかし、昔から日本文化の価値観、日本人の心の拠り所は、『自然』にあり、激しく変化した現実との間にズレを生じているという点は、ぜひ指摘したい」。◇「例えば、パリに住む子供たちに、『理想的な都市河川の風景』の想像画をかかせると、建築と調和した都市の河川を描く。しかし東京の子供たちに同じテーマで描かせたら、きっと草がいっぱい生え、建物一つ見えない田舎風の川の風景を描くでしょう」。◇「『日本人は自然志向的な根強い価値観を持つから、逆に人工的な都市の景観の調和という新しい価値観を創り出すことにうとい』という逆説的なことがいえそうです」。

◇田中康夫の、自然礼讃を装った政治的「脱ダム論」にコロッと参ってしまうのも、おそらくは、こうした小さいころからの刷り込みが影響しているのであろう。◇極端な原生林的自然ではなく、われわれの日常生活を取り巻く「都市的半自然」を大切にし、いかにその領分を広めていくか、それこそがもっとも現実的な対応であろうとIFSAは思っている。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月29日 (月)

真の「教養」とは、生活に合理を導入し、イデオロギーを排斥する行動ではないのか

◇IFSAよ、またまた堅い話か。いや、早まるのは待っていただきたい。私の好きな、「路地裏(露地裏)評論家」的日常生活面の瑣事(さじ)、それに触れたいだけなのだから。◇ここでいう「教養」とは、生活感に裏打ちされた善悪判断の力、「イデオロギー」とは、ある一定の社会的思惑から、知らないうちに身につけさせられ、それを自家薬籠中のものとしてしまった固着概念(固定観念)、というだけのことにすぎない。

◇クササの象徴としての「教養」だからそんなものは不要。大学の教養部も平気で撤廃。◇左翼思想の権化としての「イデオロギー」だからわれわれには無関係。◇用語法へのそんな誤った理解からはもっとも遠いところで、IFSAは語りたいと思っている。

◇世評高き広辞苑(岩波書店)よりもずっと信頼がおけ、的確な表現をする大辞林(三省堂)の権威を念のため借りれば、以下のようになる(CD-ROM版『スーパー大辞林』より)。◇教養=「社会人として必要な広い文化的な知識。また、それによって養われた品位」。◇イデオロギー=「社会集団や社会的立場(国家・階級・党派・性別など)において思想・行動や生活の仕方を根底的に制約している観念・信条の体系。歴史的・社会的立場を反映した思想・意識の体系。観念形態」。

◇概念や装置へのゴタクはこれくらいにし、いきなり本題の生活的事象へと入ろう。

「給食費22億円滞納 小中学校9万9000人『親の規範欠如』 文科省 全国調査」(毎日新聞朝刊・2006.01.25)。◇「滞納者総数は全体の1%にあたる」という。◇この問題を理念型的に切り分ければ、「格差社会の進行で本当に払えなくなった家庭」と、「払えるのにシカトするいい加減な家庭」となるが、前者であれば、そんな悲劇的社会を招いた行政の責任、後者であっても、それを放置し、全員ただちに差し押さえようとしない行政の責任であるのは明らか。

◇だが、今日のテーマからすれば、問題なのは払えるのに払わない親たちだ。◇テレビで見たところでは、「義務教育なのだから払う必要はない」「あんなまずい給食には払えない」「給食を出してくれとは頼んでいない」。◇最近の若い連中の通例として、屁理屈にもならない理屈まがいだけは立派で、対象となる子に給食を出さぬわけにはいかぬはずという事情を人質にとった小賢しさ、卑しさをもあわせもつ。

◇この親たち、おそらくは学校時代も、教師に対してのこの程度の抗弁をなし、それすら打ち砕けない教育サイドを尻目に、高をくくった処世術を営々と身につけてきたのだろう。◇彼らは上記の意味で無教養であるのはもちろん、擬似民主社会のイデオロギーだけはしっかりと身につけ、それを反転、武器として使用している。

◇加えて、月約4000円前後の給食費を払えないかどうかの「ボーダーラインの家庭」。◇それを想定するとして、はたしてこの親は、携帯電話に多額の通信費を払ったり、パチンコに興じたり、クルマを最低限の生活ツール以上のものにしたりしていないか、きっちりと検証する必要がある。

◇話はかわり、へっちゃらの交通違反。◇通学時間帯だけ通行禁止の道はどこにもあるが、完全無視でクルマがビューンビューン。◇テレビのリポーターが追いかければ、ここを走らざるを得ない貧困な道路行政をなじったり、警察でもないのにオマエに告発する権利があるのか、と迫る始末。◇ここでもまた、あの戦後イデオロギーが見事に作用しているから恐れ入る。

◇マスメディアは、こんな人間には空疎でしかない「モラル」を連発してアリバイ証明をなし、怒りのない警察は、騒がれたときにだけ乗り出す。◇警察にも成果主義があるのなら、60km制限を75kmでつかまえたりせず、通行禁止への確信的犯罪を摘発することでがっぽりともうけてくれればいい。

◇駅前の駐輪違反もそう。自治体は、自転車引取料を腰の引けた4000円程度に設定するのではなく、2万円などの法外な金額にして、人海戦術で自転車を持ち去ればいい。◇「駐輪場が少ないから駐めざるを得ない」「弱い庶民をいじめるのか」などのイデオロギー(マスコミは、これを便宜的に使い分けるのが得意)に裏打ちされた屁理屈におびえる行政では、最初から勝負あったも同然だろう。

◇それから、仰々しく始まったあの駐車監視員制度。私の住む板橋区や横浜市金沢区が田舎だからなのか、彼らにはめったにお目にかかれないし、効果もさっぱり上がっていない。

◇だが、この余波で駐車場が満員かといえば、そうでもない。警戒したであろうファミレスなどが、設備投資をしてコインパーク方式に転ずれば、逆にガラガラに。◇以前、まずは空きのなかった秋葉原周辺のパーキング・メーターは、新制度になってからのほうが断然駐めやすくなった。◇いずれも、いかにタダのシカト駐車が多かったかを、それは証明している。◇あのクルマは電車に転換?それとも、また知恵でどこかへ?

◇ファミレスの場合など、ひとたび注意をすれば、「客を何と思っている」「これから入るつもりだったのにどうしてくれる」「本社へ言うぞ」など、「お客様は神様イデオロギー」からくる屁理屈が怖くて、店長以下、知らぬ顔を決め込むしかなかったはず。

◇「教養」「イデオロギー」ときて、こんな程度の話かと言われそう。◇だが、これらと生活事象とのリンクこそがもっとも大事だとIFSAは考えている。◇それがもう少し高度化したのが、コイズミ現象や昨今の教育問題。◇だが、円環構造の基底部には、この程度の話が厳然と横たわっている。だからこそ重要なのだ。

◇IFSAは、この「教養」と「イデオロギー」の問題を、今後も具体的な形で取り上げていきたいと思う。◇今日はとりあえずその第一弾というとことで。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月19日 (金)

いまだコイズミ時代の「爽快=カタルシス」が忘れられず、安倍批判で代償行為をなす社会

◇日本人は、みずからの閉塞感を、あのコイズミの歯切れよい「改革アジテーション」で癒やしている、こんなことをしていると、真の変革は逆に後ろへ追いやられ、閉塞はますます深まる、「失われた5年」は目に見えている、と私は2002年の拙著でくどいほど論じた。◇結果は、ご存じの格差社会。憲法改正と軍事大国に向かってのイデオロギーや諸装置の大転換。社会保障費関係の大削減。

◇カイカク・カタルシスの対価とはまさにこれであり、郵政民営化、旧田中派憎悪、対米従属しかアタマにない単純・小泉をうまく利用しまくった官僚国家が、結局は成功を収めたのだった。

◇しかし、小泉劇場のほころびがようやく表面化し始めた時期に符合し、記者の質問の意さえくめない安倍晋三(★註)が、「イケメン?+擬似北鮮強硬路線」だけを武器に首相の座を射止めたからたまらない。◇こんな軟弱なトップなら、叩いても跳ね返りはないとばかりに、マスコミは遠慮なく批判をするし、スタート時、戦後歴代3位の支持を与えた国民も、さっさと見放し始める。

(★註)日刊ゲンダイ(電子有料版・07.01.10・配信)は書く。◇「昨年末、記者から『総理にとって今年の一文字は?』と聞かれ、真顔で『”変化”の年でしたね』。『いや、一文字で』に『ま、”責任”ですね』。アホか」。◇「本間正明税調会長の辞任では、『一身上の都合』を13回も繰り返しシドロモドロ」。◇私も両方ともテレビで見たが、ウケでわざと言えるようなタイプではなし、任と対応力との不釣り合いに、気の毒にさえなった。

◇これとは対照的な前任者のコイズミは、少しでも非難をされれば、「そういうオマエはどうなんだ」式の、祖父譲りのタンカ。◇慶応ボーイのお坊ちゃんらしからぬこの風情がまた、異色の総理として、国民の溜飲を下げるという悪循環をもたらした。◇本当は、こんな男を論破するのはいちばん簡単なのに、論争に慣れぬ日本人は、先制攻撃に出られるとハハアーッと引いてしまい、逆に、そのやくざチックな迫力を、時代変転の象徴としてどこかで評価してしまうのだ。

◇そんな人間が、飯島秘書官演出のもと、竹中平蔵と組み、5年以上にもわたって破壊し続けた社会。その残がいがいまの日本である。◇しかし、いまさら小泉を批判すれば、一時は8割もが支持した国民にとっては、まさに自己否定。さすがにそれはできない。◇だから、マスコミも国民も、手軽かつ「たしかな」ところでの安倍政権批判と相成る。

◇今朝も、テレビ朝日のスーパーモーニングが、医療費等の切り上げに怒る巣鴨地蔵通りのお年寄りを映していた。◇しかし、それを断行したのは、お年寄りこそ真っ先に支持したはずの小泉政権。だが、コイズミカイカクの結果がこれなのだという風には、回路はつながっていかない。◇揚げ句には、日本社会の底流で、安倍批判→小泉再登場待望論までうずまく始末なのである。

毎日新聞中国総局の飯田和郎が、「重いツケ」と題し、コラム「発信箱」に書いている。(毎日新聞朝刊・07.01.18)。◇「『あの時』とは05年12月の第1回サミット(=東アジアサミット-筆者註)で、小泉純一郎首相(当時)が用意されたペンを使わず、隣の温首相にペンを貸してほしいと頼んだ時のことだ。靖国神社参拝への批判を突っぱねる小泉首相と、首脳会談を拒み続けた中国。それならばと、小泉首相はペンの貸し借りでの『交流』を試みた。虚を突かれた温首相は顔を引きつらせながらペンを渡した。(中略)一方の当事者にとって当意即妙のつもりが、相手方を、さらには背後の国民のメンツを傷つけた。中国人は何よりメンツを重んじる」。

◇飯田はさらに加える。その後の1年、中国は日本侵略戦争の被害者同士としてアジア諸国を巧みにオルグし、域内での主導権を強めたと。◇そして、「影響力を増す中国は日本を尻目に第2回サミットをリードした。安倍首相は前任者の演じたパフォーマンスのツケを懐に帰国した」。◇飯田は、小さなエピソードと大きな流れとを、うまくつないで表現しているといえよう。

◇ユーモアやエスプリと、芸能界的ノリとは違う。小泉は後者の達人だった。◇それこそが、国民に大ウケした。しかし、国際的な場においてさえ、この調子でつまらぬダジャレを連発し、あのブッシュに公然と注意されては大恥をかいた。◇おそらく、自衛隊のイラク派遣に関しても、この手の軽いノリが作用していたのだとIFSAは見る。

◇そして、ノリからくる決断の早さ。石橋を叩いても渡らない政治家を多く見てきただけに、国民はまた、石橋を叩きもしない異能ぶりに喝采を送った。何も考えないがゆえのアクションのすばやさに。

◇そして、小泉の正統的継承者を期待されて登場した安倍は、ユーモア・エスプリはもちろん、芸能界的ノリもゼロ。◇形だけ石橋を叩き、判断保留でボーッとしているような人物である。◇ワイドショーも、困った、切り口がなくて、というのが実態だろう。◇この程度の人間への批判では、カタルシスがもたない、さあどうしたものか。◇無理やりアッキーを仕立ててみても、誰もついてはこないし。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月15日 (月)

IFSA注目のマイナーな記事=自衛隊派遣を「ためらわぬ」と得意満面な安倍首相

★★自衛隊派遣「ためらわぬ」…首相、NATOで初演説
YOMIURI ONLINE(07.01.13)

◇待ってました、単細胞!◇読売のこのタイトルは、安倍晋三の本質をたった1行で巧みにあらわしているといよう。

◇記事によれば、NATO本部での演説において安倍は、「防衛省発足に伴い自衛隊の国際平和協力活動が本来任務になったことを説明し、『一般的な法的枠組みを含め、国際平和協力の最適なあり方を議論している。憲法の諸原則を順守しつつ、今や日本人は国際的な平和と安定のためなら、自衛隊の海外での活動をためらわない』と強調した」とのことだ。

◇中身のない人間にかぎって、人の命や国の命のかかわるこうした局面で、苦渋すらなくさっそうと見えを切りたがる。◇それは、自分のアタマの悪さをどこかで感じているだけに、こういうところで存在意義を示さないかぎり、ウケル道はないと熟知しているからだろう。◇しかし所詮、自分のコトバでは何も語れないから、大衆にはウケナイ。支持率は下がる。◇他方の小泉は、言っている内容は大ばかでも、語りのスタイルとコトバは自己流。それが国民を勘違わせた。

◇超ベストセラー『人は見た目が9割』の著者で、劇作家の竹内一郎は言う。◇「私の言う『見た目』は顔形ではなく、政治力、実行力を見せつけるパフォーマンス、その人の生き方からにじみ出てくる信頼感です。それがないから、坊ちゃん顔の若手議員の討論には、迫力がありません」。◇また、「留学帰りで坊ちゃん顔のお利口さん」は、「肝心な場の支配力に欠ける」とも言っている(以上、「政治に思う(6)」・毎日新聞朝刊・07.01.12)。

◇そして次なるポイントは、防衛庁の省昇格。民主党も賛成なのだから、実質的には国を挙げての実現ということになる。◇日経新聞までが、「★★民主が『防衛省』法案賛成へ・参院選へ戦略見えにくく」(NIKKEI NET・06.11.30)と書かざるを得ない、閉塞社会情況の高度化である。

◇それもこれも、コイズミマジック興行大成功のなせるわざ。というより、コイズミなんかにコロッと参ってしまった国民的脆弱さのゆえだろう。◇IFSAが冗談半分・本気半分で言ってきたところの、「コイズミを熱狂的に支持した人間は、孫が徴兵制でとられてから後悔しても遅い」の、ヒタヒタとした現実性。◇安倍は単に、コイズミが栽培したフルーツを収穫したにすぎない点を銘記すべきだろう。教育基本法改正にしても。

◇弁証法のない白か黒かの日本人的思考。それを追究する私の「二分法日本人論」に対し、おまえこそ二分法の体現者だ、といっては批判したつもりになっている人間がいる。◇そして彼らはきまって、コイズミ信奉者。現時点に至っても、それへの反省すらない。◇毎日新聞が夕刊の全面を使って組む「この国はどこへ行こうとしているのか」で、85歳になろうというドナルド・キーンが、それに関して示唆に富むことを述べていた(毎日新聞夕刊・07.01.09)

◇「極端から極端に走る。それは、人間にとって、いたってやさしいことなのです。自虐症から慢心に走るのはね」。◇「日本人はすぐ自虐症になる。日本はもう駄目だ、立ち直らないとか。(中略)そうすると今度は、『日本は最高だ』と言い始める」。

◇「極端に走りやすい国では今年5月、憲法施行から60年を迎える。武力放棄をうたう条文は時代にそぐわない、自衛隊を『普通の軍隊』にできないものか、という声を最近よく耳にする。だが、キーンさんは『変える必要はないと思います。自衛隊は今のままでいい。災害時には海外に行けますから』と言う」。◇しかし現実は、以下のような体たらくへと突き進む。安倍のコトバどおりに。

★★イラク特措法の1年延長を検討 政府、米新戦略受け判断
asahi.com(07.01.12)

◇「政府は11日、ブッシュ米大統領が新戦略を発表したことを踏まえ、7月末に期限が切れるイラク特別措置法を1年延長する方向で検討に入った。段階的な米軍撤退シナリオが見送られたことで、米国主導のイラク政策の支援が引き続き必要と判断、航空自衛隊の多国籍軍への支援は当面継続される見通しだ」。

◇あの米国民ですらノンと言い始めたことに、今後もとことんコミットしていくつもりの、右派コイズミ親分メッセンジャーたる安倍晋三。◇しかし一方では、防衛大臣(当時・防衛庁長官)の久間章生が、「★★イラク戦支持は『前首相の個人的見解』 防衛庁長官」(asahi.com・06.12.07)の正論かつ奇論を展開するという、不思議な内閣でもある。

◇問題は、二分法によるスッパリしたキャッチフレーズではなく、複雑な事象をあくまでも複雑に考え抜き、方途を見いだそうとする実質。そして、その裏打ちとなるべき生活実感。◇団塊世代のまずなすべきことは、ソバ打ちや、アリバイ証明的ボランティアの前に、やはりこれではないかと、IFSAは思うのだ。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2007年1月 5日 (金)

ノーベル化学賞受賞者・野依良治教授の日本社会論は群を抜いていた

まれに見る中間層の充実とパワーが日本の社会経済力を世界有数の地点にまで高めた、しかしコイズミ・竹中的市場原理主義の導入により、その優位性はメタメタに。◇余波は「格差」にとどまらず社会の隅々にまでおよび、企業の現場をもむしばんでいる、と当IFSA通信は昨年末2度にわたって論じた。◇←(「成果主義」はなぜダメか=「高水準な中間層の存在こそ日本の原動力」の認識がないからだ(上)=06.12.22」「同(下)・06.12.25」を参照)

◇そんな情況下、正月くらいは穏やかにの思いから、ゆったりしたまなざしで新聞の電子版を眺めていたら、ノーベル化学賞受賞者の野依良治が、これに関係する重要な事柄をさりげなく発言しているのに出会い、思わず心動かされた。◇野依は長い間、名大で教え、現在は理研の理事長。◇何の関係からか、安倍晋三に懇願され、昨秋からは首相の私的諮問機関「教育再生会議」の座長も引き受けている。

◇日本人のノーベル賞受賞者といえば、人間的にも思想的にも、また文筆面でも超一級だった朝永振一郎を、われわれの世代はすぐに思い浮かべるが、野依の思想性についてはいまのところ何も知らない。◇かつてテレビで、学生をバチバチ叱りとばしている厳しい風貌を見たのと、つい最近、「塾を禁止せよ」発言に大いに注目したことくらいである。

◇それにしても、「『塾は禁止』 教育再生会議で野依座長が強調」(asahi.com・06.12.23)のスケールとインパクト。社会科学面でも、ただ者ではないことだけはうかがえる。

◇さて、東京新聞電子版に掲載された野依発言を私なり集約すれば、以下のようになる。◇引用はすべて、「野依良治 教育再生会議座長に聞く」(Chunichi Web Press・07.01.01)からだが、これぞ東京新聞(中日新聞)の見識の高さを示した記事と言えるだろう。

◇「(現在の日本人に求められるものは?-筆者註)正しい規範と実世界に生きる術(すべ)だ。その上で、立場の違う人々と理解し合い、協力しないと生きていけない。たくましく、しなやかに生きるためには、対話力、国なら外交力が必要だ(後略)」。

◇「(日本を支えるべき人材とは?-筆者註)望ましい人材は画一的ではない。多様性が必要だ。人によって能力も価値観もそれぞれ違う。一つの能力だけを見ると当然優劣がつくが、お互い尊重し、うまく交じり合わなくてはならない。異なる能力、機能をもつ人たちが相補的になったとき、初めて社会はよくなる(後略)」。

◇「(望ましい社会とは?-筆者註)僕は競争社会はあまり好きではない。家族は一番小さな社会だが、競争社会ではない。『和を以(も)って貴しと為(な)す』という聖徳太子の言葉があるが、それこそが日本社会の特質。アメリカの競争主義社会はビジネス、スポーツなどにはいいが、すべてに当てはまるものではない(後略)」。

◇「人は自然、社会環境に対峙(たいじ)し、順応しながら生きている。一人では無理、仲間がいる。両親が常に『いい友達をつくれ』と言っていた。友達との関係は、自分の存在に肯定感を与える。今の自分があるのはすべて先生と友達のおかげと言ってもいい」。

◇では、競争を勝ち抜いていく最先端の科学者・技術者、その育成をどう見ているのだろう。自分もトップを走ってきたその道は、競争ではなかったのか。◇「その通り。科学技術はトップがその水準を引き上げる。トップ人材を育てるという意味では、平等主義はよくない。個人能力の差は歴然と出るが、優れた能力を最大限伸ばす社会の風土が不可欠だ。同時に技術開発は協同による総合力が必要。競争と協力は共に必要、両立するはずだ」。

◇単純極まりない「米国流市場原理主義・競争主義・成果主義」への鋭い批判に、これはなり得ている。◇そんなこともあり、ついつい長い引用をしてしまったが、野依の発言は簡にして要、ラディカル(根源的)を旨とする。

◇それにしても、居ながらにして元日からこれほどの思想に触れられるとは。◇掲載の東京新聞には感謝だ。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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2006年12月30日 (土)

前三重県知事・北川正恭センセイ唯一のウリ「マニフェスト」の空疎と、空気のような民主党

いつもIFSA通信をお読みいただき、ありがとうございます。本年は本日版までとし、お正月は歳時記的なコラムを掲載します。新年4日から、またIFSA通信を再開します。来年もよろしくお願いします。皆さま、よいお年をお迎えください

◇年も押しつまった今日のような日は、かえって、ハードディスクに保存の無味乾燥なデジタル・データではなく、新聞・雑誌記事からスキャン&プリントアウトし、スーパーの安売りで入手したナカバヤシ「クリアブック」に収納のアナログ・スクラップにゆったり目をやるのもいいもの。◇本年最後のIFSA通信は、たまには他者の文章を玩味させてもらうことで締めくくるとしたい。

◇そのなかの気になる1枚に、早大名誉教授・内田満「蹴散らされたマニフェスト選挙」(産経新聞朝刊・05.09.19)がある。例の郵政解散総選挙直後に書かれたものだ。◇内田はそこで、マニフェストなど、刺客演芸場の前ではアワほどの存在感すら持ち得なかったが、「今回の選挙でのマニフェスト選挙の影の薄さは、これらの外在的要因に基づいていたわけではない。基本的敗因は、むしろマニフェスト自体にあったというべきであろう」と述べている。

◇マニフェストといえば、前三重県知事・現早大大学院教授の北川正恭が何とかのひとつ覚えのように提唱するそれが超有名だが、この男の処世術と思想性のなさ、薄っぺらさは、マニフェスト提唱というクサイ行為に象徴されている。◇そして情けないのは、民主党の若手=松下政経塾的部分が、空疎な北川マニフェスト路線の信奉者とくることだ。

◇内田満は、その点を以下のように揶揄する。◇「(前略)国政選挙での三度目のマニフェスト選挙で、有権者に飽きがきているところへ、民主党のマニフェストが、ガリ勉型の優等生のリポートに似て、整ってはいるが、面白みの点で難があり、明日のことは書いてあるが、十年後の社会についての構想がなく、有権者の琴線に触れる響きを欠いていた」。◇その結果、「なぜか民主党のマニフェストには、いつも有権者を鼓舞する勢いがない」と。

◇小泉劇場に沸き立つ風土にあって、大衆的実態は、何がマニフェストだ、しゃらくせえ、といったところだろう。◇ただこの現象を、日本は英国に比べまだまだ遅れているといった、例の「ではのかみ」(英国では、米国では)的思考でとらえるのも、逆に大間違い。◇そもそもマニフェストなんて、北川がエラそうに言うほどそんなにご大層なものなのか。それこそ、しゃらくせえ、とIFSAは思ってきたのだ。

◇そこで出会ったのが、早大教授・豊永郁子による秀逸な「マニフェスト政治にもの申す」(WASEDA COM on asahi.com・05.10.05)。◇この論考の全貌はネットであたっていただくとして、最小限、以下の点だけは引用しておきたい。

◇「マニフェストは、本来、有権者と政治家との間のコミュニケーションを充実させるための一つの工夫として一部有識者や政治家によって『仕掛け』られたものであるが、『流行』のせいであろうか、マニフェストをきちんと作りさえすれば政権がとれるはずといった安易な発想や、これを党内統制の手段に転じる政治手法が目につく」。

◇「マニフェスト三原則といわれ、マニフェストに必須とされる要件がある。数値目標、達成期限、財源の明示の三つである。この三つがたびたびマニフェストの定義として報道番組等で紹介され、しかもそこに常に『イギリスで行われている』という枕詞がついてまわることには閉口させられた」。

◇これだけでもすでに、豊永の結論ベクトルが示唆されているといえよう。◇日本でもっともらしく言われる「数値目標」「達成期限」「財源の明示」(どこかの企業の、ウソっぽい中期経営計画に似ていないか)など、元祖?英国でさえ厳密にはなされていない、いや、なしようがない、ということなのだ。◇それを、北川のような「知識の輸入業者」が、「ではのかみ」式ご託宣をたれる。日本の文化界で大昔から繰り返されたきた負の構図である。

◇豊永は、英国におけるマニフェストの実態と、ブレア政権での特殊事情を詳細に論じたあと、「ではのかみ」方式で導入された日本の弊害についても触れる。◇「翻って日本の二大政党に目を転じると、大きな目標や理想の次元での違いが見えてこず、各党がどういった人々の味方に立つのかが曖昧に付されたままで、マニフェストばかりが存在感を放つ異様な事態に気づかされる」。

◇「党の基本的なイメージが打ち出されないままに、一般人には意味を持ち得ない数字や専門用語がマニフェストに踊り、また、党全体を繋留する基本理念や社会集団が見失われている状態で、党内においてマニフェストの個別項目が踏み絵のように用いられ、党があらぬ方向へとどんどん漂流していく懸念が生じている」。

◇その民主党に対しては、論客の慶大教授・金子勝がかみついている。◇題して「民主党が崩れた1年間だった 」(日刊ゲンダイ・電子有料版・06.12.26配信)。◇ポイントは、金子言うところの「政経塾出身者が元凶」

◇「安倍政権の支持率が急降下している。しかし、民主党の支持率もまったく上がっていない。この1年間を振り返ると、民主党が崩れた1年だったように思う」。◇「前原代表を筆頭に、当時、民主党執行部の中枢を占めた松下政経塾出身者は、国防問題では自民党よりも自民党らしく、さらに松下幸之助が唱えた『無税国家』は、ブッシュ大統領のブレーン、ノーキストの『無税国家』とほとんど同じ。要するに、政経塾出身者は、小泉政権が推し進めた『新自