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2010年3月 9日 (火)

プリウス・リコール問題=<フィーリングの領域>を誰がリコールまで押し上げたか

☆IFSAではここ1カ月で2回、トヨタリコール問題をアップロードしたひとつは、日本でまだ大騒ぎになる前の2010.02.02に書いた《【IFSAのファーストインプレッション】=米国でのトヨタリコール問題はどこかクサイ》、そしてもうひとつは、騒動最中の 《米日社会で寄ってたかって感性的にリコール!させたトヨタのプリウス・ブレーキ問題》(10.03.01)

今回はその続篇にあたるではさっそく本論へ

★★トヨタ:大規模リコール問題
「急加速」体験の女性証言 「恥を知れ」
--米公聴会
毎日jp.・10.02.24

◇「『強欲なトヨタよ、職務を果たさなかった米道路交通安全局(NHTSA)よ、恥を知れ』」。◇「23日開かれた米下院公聴会で、トヨタ車の『急加速』で『死に近い体験をした』という米南部テネシー州在住の元同州社会福祉相談員、ロンダ・スミスさんが証言に立った」。

◇「証言によると、(中略)レクサス(ES350)で自宅近くの高速道路に乗った。間もなく、アクセルを踏んでいないのに車が急加速しているのに気付いた。ブレーキをかけたりギアをバックに入れたが加速が止まらず、時速は145キロに」。◇えぇっ?リバースに入るはずもないでしょうが。

◇「『ガードレールか木にぶつけて止めるしかない』と考えるうちに時速は160キロに達し、『私は死ぬ』と感じて、最後の電話のつもりで夫に連絡したという」。

◇「その後、『何も新しいことはしなかった』が、車は徐々に減速し、時速53キロまで落ちたところでエンジンを切ることができたという」。

◇ここでいうレクサスESは、かつてコマーシャルでもそう唱っていた日本名ウィンダム。◇私も長年愛用したクルマだが、いま日本では発売されておらず、米国での最新モデルは5代目になっている。

◇ところで、日本のマスコミの大半が上記のような感性的訴えを無批判に受け入れ垂れ流すなか、ZAKZAKはひとりこんな記事を掲載した。

★★「恥を知れトヨタ!」証言に疑問噴出
時速160キロで携帯って・・・
ZAKZAK・10.02.26

◇「トヨタの大量リコール問題で、米下院の公聴会に出席した米国人女性の証言に疑問の声があがっている」。◇「女性が全世界に向けて『恥を知れ、トヨタ!』とののしったトヨタ車は事故後、修理せずに転売され、その後は一度もトラブルなく走り続けているというのだ」。

◇それを具体的にみれば、「女性は問題のレクサスを3000マイル運転した後に転売したが、その後の持ち主は走行距離が2万7000マイルに達した今も大きなトラブルは起こしていないという」。

◇「専門家らも、証言のような制御不能状態に陥ることはあり得ないと首をかしげている」。◇「この証言内容について、『自動車用半導体の開発技術と展望』の著書がある鷲野翔一・前鳥取環境大教授は(中略)こう語る」。

◇「『(前略)ブレーキを踏み込めば、アクセルの電子制御スロットルが全開でも構造的にスピードは落ちる。万一、電子制御システムがブレーキを認識しないエラーを起こしたとしても、ギアをニュートラルに入れれば動力が伝わらず、やはりスピードは落ちる。ここでもエラーが起きたとしたら、それぞれ独立しているアクセル、ブレーキ、ギアのすべての系統で同時多発的にエラーが起きたことになる。これは天文学的な確率です』」。

◇IFSAがディーラーとこの件で雑談した際も、彼はすぐさまこう言った。◇「いわれるような現象が万々一発生したにしても、本来ギアをニュートラルへ戻しさえすればエンジン回転は遮断できるんですがね」。

◇そしてきわめつきは、ZAKZAKが的確に指摘する「そもそも、そんなパニックの中でどうやって携帯電話をかけたのかもよく分からない」。◇時速160キロでクルマが暴走、しかもアンコントロ-ラブルのさなかに携帯電話を。まさに神業といえよう。

◇まあ、米国でのトヨタバッシング・序章はこれくらいにし、例の<プリウス・ブレーキきかない問題>へ歩を進めるとしたい。

<ブレーキがきかない!>。クルマを論じるにあたり、これを上回る扇情的?な表現がはたしてあるだろうか。◇こう言われ、こう書かれりゃ、運転できないお年寄りだって、すわっ一大事と<エモーショナル報道>に釘付けとなるにきまっている。

◇それを知っているからこそ、ニュースバリュー超絶大とばかり、大マスコミは単一論調にて吠えまくる。◇しかも相手は世界のトヨタ。ワイドショー的にはおもしろくて仕方のないネタではないか。

◇検察のリークをベースに、絶対善から小沢一郎をたたきまくったのと同一手法がここにはある。◇自分は<絶対善サイド>だからまず安全!おまけに相手は反撃の手段を持ちにくい!とくれば敵なし。いうことはない。

◇しかも、世間知らずの技術屋副社長が以下のように言ってくれるものだから、格好の舞台が整ってしまったという次第。◇マスコミにとっては至福のシチュエーションになった。

◇そう、トヨタの佐々木真一副社長(品質保証担当)が「それはフィーリングの問題」と思わず本音で口走ってしまったため、トヨタは高飛車!いったい何さまだと思ってるんだ!素人を馬鹿にしたこの上から目線はなんなんだ!

◇まさにワイドショーの思うつぼ。トヨタはボコボコにされてしまった。◇IFSAに言わせれば、副社長は正直。しかしもっと言い方があるでしょう!って。あれこそは社内向けの発言に留めておかねば。◇われわれが培ってきた営業センスからすると、正しいことを言えばいいってものじゃないのです。

◇だからこんなところへ技術屋を出せばすと大変なことになる。企業にとってはいい教訓だろう。◇それがメーカーに30年籍をおいたIFSAの率直な感想だ。◇ここはせめて、客あしらいに精通したセールスエンジニアのトップを出さなければうまくない。

◇それはさておき、問題の新型プリウスだが(=3代目なので、われわれは3プリと称している)、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)を踏めばススッ~とくるだって?◇そりゃ当たり前田のクラッカーでしょうが。

◇たとえばアイスバーンのような鏡面でブレーキを踏めば、クルマはスケート状態に。だからポンピングブレーキで対応しろと昔の教科書は教えたが、プロでなくては所詮ムリという代物でしかない。

◇だって、本来は急ブレーキを踏むべき場面で小刻みにペダルをゆるめろなんて逆張りに、パニック状態のさなか対応できるはずもないのだから。◇だいいち、知識はあったところで技術がついていかない。◇しかも、雪道など未体験に近い東京の人間が、東北でいきなりそんな場面に遭遇したところで。

◇それだからこそ、コンピューターでブレーキの小刻みなオンオフをやってあげましょう、わざと少々ブレーキをオフにして接地力を回復し、すぐさままたブレーキングといった案配でネと。

◇そうすれば、スケート状態よりは制動距離がちぢまるし、それよりなにより、直進以外まったくきかなくなっていたハンドル操作を取り戻すことができる。障害物も回避できる。◇このイロハさえちゃんと知っていると、ススッ~感覚なんて必然の現象!となろうし、むしろ逆に、ススッ~となってもさらに強く踏み続けよの教えがが理解できるようになる。

◇いまどき<誰にでも運転できるクルマ>でなきゃダメとはいえ、トン単位の鉄のかたまりをひとりで動かす以上、必要最小限のイノベーション知識くらいはやはり運転手自身が保持していなければならない。◇特に先端技術満載のご時世にあっては。

◇いまでは標準装備のパワステだって、車種により堅さ?はまったく違うもの。◇最近トヨタ・アリストからレクサスRX・450hへ乗り換えたIFSAも、そのあまりのちがいに最初は調子が狂ったほどだ。

◇これぞまさにフィーリングの違いであり、ふにゃふにゃに柔らかくなったからハンドルを切りすぎて事故を起こしかけた!。そう主張してメーカーへ怒鳴り込む輩がいるものだろうか。◇いや逆に、ハンドルが堅すぎればすぎたで、切りようが遅れてぶつかったとでも?◇国交省よ、リコール・リコール!

◇しかもいま問題のクルマは、パラダイムシフトをユーザーに要求するハイブリッド車・プリウスときている。◇だから話はさらにややこしくなる。

◇IFSAのようにここ30年、6台のトヨタ車を乗り継いできたトヨタファン(=そしていずれもが経年的なものを除き故障皆無に近い)にして、7台目にあたるはじめてのハイブリッド車との出会いは戸惑いの連続だった。

◇セダンばかりでRXのような背の高いSUVは初体験というハンディが加わったのを差し引いても、やはりハイブリッドには驚くことばかり。

◇走行は<エンジンのみ><モーターのみ><エンジン+モーター>の3種類。それはディスプレーに表示される。◇また渋滞時は(電池が充電されているかぎり)モーターのみでの走行となるから、一般車と逆に燃費は向上する。

◇逆に100km以上の高速走行時は、エンジン走行が主になるので相対的に燃費がダウンする。◇さらには停車時はまったく音がしないから、ついエンジンを切るのを忘れ、外からそのままドアロックしようとしてピーッの強烈警報音。◇慣れ始めたのは3カ月を経過した最近のことである。

◇プリウスABSで問題とされた回生ブレーキなんてのも、鉄道大好き人間のIFSAですらぶったまげの対象でしかなかった。◇正直、ハイブリッド車を試乗するまで、クルマに回生ブレーキが、なんてことすら知らなかったのだから。

〔註〕回生ブレーキ>=「電気鉄道で、モーターを発電機として働かせることによって生ずる抵抗で制動を行い、発生した電力を架線に送り返すもの」(広辞苑第六版・電子版)

◇今回プリウスとともにリコールさせられたレクサスのHS250hに試乗してまず驚いたのは、信号で止まる際、遠くでサイレンが鳴っているのかと思えるほどの異音?が発生したこと。◇そこではじめて助手席のセールスマンより、回生ブレーキの作動音だと知らされた。

◇ちなみにこのHS250hは大人気で、昨年12月時点ではたしか半年ほどの待ちだったと記憶する。◇そしてこのレクサス小型車のトヨタ版が、やはりリコール対象の<SAI>(サイ)というわけだ(=ちなみに、両者ともプリウスと同じハイブリッド専用車)。

◇この回生ブレーキと油圧ブレーキのベストミックス(協調)に向け、トヨタは相当考え抜いたに相違ない。◇プリウス3代にわたってカイゼンを積み重ねてきた集大成に向け。◇具体的にはブレーキングにおける<油圧のみ><回生のみ><油圧+回生>の最適配分を。

◇そして皮肉にも今回糾弾されたのが、ABS作動時に回生ブレーキから油圧ブレーキへと切り替わる際の<抜けるようなフィーリング>であった。

◇また専門家によれば、ABS作動はもはや不要!の状態となった直後にいきなり標準レベルのブレーキへ戻すと、またまた滑りかけてABS再作動、これはまずいから復帰時当初のレベルを若干下げるプログラミングをしたといわれる。

◇だが今回の<クレーム&リコール>に強いられ、トヨタはそのレベルを若干上げるという政治的判断をした。◇佐々木副社長の言うフィーリングの領域を、<米国とお上とマスコミサイドのフィーリング>に合わせたというわけだ。

◇科学によらざる前代未聞の政治的リコールがここに成立した。

◇「トヨタが新型プリウスのリコール実施を届け出た9日、前原誠司国土交通相『ユーザーの視点が欠如していたのではないか。そのことで機敏な対応ができなかったのではないか』と述べ、対応の遅さを批判した」(★★トヨタ創業家KY社長に”退任説”あの人がリリーフ登板か・ZAKZAK・10.02.12)

◇あのお調子者で噴飯ものの軽率マエハラにふさわしい<な~んちゃって発言>というほかはない。さすが永田メール信奉者だけのことはある。◇米国と絶対善大好きな日本のマスコミ&世論に悪のりしちゃってサ。

◇こういう場合、国交相&国交省の役割っていったいなんなのか、キミたちは考えたことがあるのか。◇そして旧左翼の大嫌いな<国益>に関しても。

◇以上のようなねじ伏せバッシングの背景には、<大企業=悪>旧左翼的イデオロギーがいまだ日本社会に根づいているという、悲劇的現実が存在する。◇もうけ優先・搾取断行・情報非開示の秘密主義、そうした独占資本が社会的に対していいことをするはずはない・・・・・・・といったような悪しきアプリオリが。

◇だからこそ逆に、こうした安全パイの共同幻想へすりよりさえしておきゃ二重丸と相成る。◇<絶対善>大好きのマスコミがそのうま味を見逃すはずはない。

◇クルマへの知識ゼロ、そんなコメンテーターの倫理一辺倒発言は論外として、本来は分かっていながらカマトトを決め込む記者・放送記者をIFSAは許すわけにいかない。◇大広告主のトヨタに対してこれだから、そこそこの企業ならもっとメッタメタに打ちのめされていたことだろう。企業解体にいたるまで。

◇ただ、超右派の読売新聞がこんなことを書いているのはおもしろい。

★★「トヨタたたき」政治の影、秋の中間選挙意識
YOMIURI ONLINE10.02.25

◇「トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題で、23日から米議会の公聴会が始まった」。◇「8日間にトヨタ問題を上下両院で計3回も審議する計画で、人命にかかわる問題とはいえ、異例の過熱ぶりだ」。

◇「背景には、秋の中間選挙を見据えた公聴会の『政治ショー』化など米国の事情もある」。◇そして詳しいレポートの後、記事はこう締めくくられている。

◇「ただ、米消費者雑誌コンシューマー・リポーツは23日、最も推薦できる環境対応車として、リコール問題に揺れたハイブリッド車『プリウス』を挙げた」。◇「米国民のトヨタ車への評価はなお根強く、信頼回復のチャンスはまだありそうだ」。

◇最後に、ハイブリッドの特異性に関するエピソードをひとつ。◇こんなのはもう少ししっかりnoticeしておいてよ、トヨタさん、と思った例を紹介しておこう。小さなことだけれど。

RX450hに乗り始めて間もなく、IFSAは坂道発信でクルマが若干後退する不思議な感覚を味わった。◇それをレクサスのメカに問うと、「止まったときにブレーキを2度踏みしておいてください。そうすれば下がりませんから」。◇これをして<ヒルスタート>というらしい。

◇その理由までは聞きそびれたが、素人考えではこういうことだろう。◇ハイブリッドカーの停車時はエンジンが動いていないから、オートマチック車特有のクリープ現象が生まれない。◇だから坂道でブレーキをはなせば気持ちだけクルマが下がる・・・・・・・。

◇はたしてこの説明でいいのか、今度メカの人に会ったら尋ねてみよう。

◇それはさておき、プリウスのABS問題も、<こうこう・こういう現象に多少の違和を覚えるかもしれませんが、これはこれこれ・こういう考えからあえて設定したものです>と事前に広報しておけば、親切だったかもしれませんね。 (敬称略)

★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★

〔ご参考〕IFSAとは&IFSAの経歴>はこのリンクをクリックください。

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