日本のいまを象徴する危機的現象=家族団らんのレストランでゲームに熱中する子ども
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◇<日本のいまを象徴する危機的現象>と大上段にきたから、もっと大きなことかと思えば、レストランでのゲームっ子問題だって?まずはそう言われそうな気がする。◇しかも、今日述べようとするのは、例の大脳生理学的論争をよぶ「ゲーム脳」問題ではなく、もっと下世話な話にすぎない。
◇ファミレスや、少々アップグレードのレストランで堂々とゲームに興じる子どもたち。そして、それを容認する親たち。◇いつも感じるこの場違いさから、まずは触れてみようと思う。◇しかも、たまたま出会ったレアケースについてではなく、まさにしょちゅうといった感じで目にする光景について。
◇たとえば親子4人で食事にきたファミリー。◇小学生の弟は食事をしながらもちょこちょこと携帯型ゲーム機を操作。出てくる料理など上の空でささっと片づければ、あとは斜めを向いてゲームに熱中する。◇小学高学年のお姉ちゃんは、少女マンガや児童書に一心不乱。◇当然のこと、4人でテーブルを囲むその場に夫婦以外の会話はない。◇またかの男の子は、親がレジに立つまでゲーム機から目をはなすことはなかったし、出口に向かう通路でも歩きながら操作をしていた。
◇彼らは、レストランというパブリックスペースに出てきてさえ、自分とゲームという<個の磁場>しか持ち合わせていない。◇家族同士の会話のやりとり、店の雰囲気、料理の中身、店員の応対、他のお客さんたちの動向、・・・・・・、そんなものにはからきし興味がないのだ。◇もっと大げさにいえば、<社会>などまったく視野の外。◇だから、レストランにまでゲーム機という相棒(=分身)を引き連れ、ひたすらマイスペースに没入することとなる。
◇さらに不可解なのは、そこにおける親の対応。◇食事中や一家だんらん時のゲーム機を注意しないのはもちろん、どうやらそれをとんでもないこととさえ思ってもいない風情がありありで、散々小言を言ったけれどもうさじを投げたといった雰囲気はみじんもうかがえない。
◇いや、ゲーム機操作なる<自己世界の確立?>に親は目を細めている感すらありと私が言えば、いくらなんでもそれはないでしょうと妻からたしなめられた。◇ただ、そうも言いたくなるほど、親たちがばっちり容認していることだけは間違いがない。少なくとも、苦々しく思っているなどはまずあり得ない。◇そこには、気持ち悪いほどの予定調和がほんわかムードで漂っている。◇もしかすると、過酷なお勉強の合間だからいいでしょうとも。
◇一見唐突に思えても、この延長上には、携帯長電話、もしくはヘッドホン装着による街歩き&自転車走行が続いている。◇彼らは一様に、町中から押し寄せる<社会>の流入を瀬戸際で(無意識のうちに)シャットアウトし、友人や音楽との関係性からマイスペースを確保しようとしている。◇だから、町の生活音・風景・他者との関係性は全然インプットされない。というより、それらに対してはまったくの無関心。
◇先日のこと、忘年会で久しぶり24:00すぎになった私は驚いた。最寄りの駅から自宅までの10数分、前を歩く若い女性はずーっと携帯電話で話しっぱなし。◇結果としてたまたま同じマンション棟の人だったのだが、私がエレベーターに乗るや、その前で立ち止まってまだ話をしていた。
◇電話が長いのが問題ではない。夜道、それも深夜の10分以上、彼女は町の音や気配から遮断され、完全に無防備だったということ、しかも本人はそれに無自覚であるということ、私はその点にこそびっくりしてしまった。◇戦後のどさくさ時代に幼児期を送った団塊世代は、「人さらいに気をつけろ」とずっと言われてきた。その私からすれば、夜中に歩くに五感動員の触覚フル稼働は当たり前のこと。
◇<社会>とは接点のないこのような若者たちが、いつ被害者になっても不思議はないだろう。◇それでも、偽善を旨とするマスメディア(特にテレビ)は、被害者=いつも絶対善でジ・エンドにする。◇本質的な問題の片面は確実に等閑視され、表層へ表層へと流されていく。
◇レストランでの小学生と、夜道で携帯電話に夢中のこの女性。◇彼らは、<社会>と無縁のところで生きている点で共通している。◇考えあって<社会>を拒絶しているのではなく、もともと<社会>とは無関係。はなから<社会>なんて眼中にはない。◇いや、深層心理的には社会がコワイ!だから無意識に避けている。
◇IFSAはこれらの点を、道徳的イッシューとして取り上げたいのではない。◇<個人>のなかに少しも<社会>をもたない若き日本人たちの、広がりのなさを問題にしているのだ。◇彼らの対他存在とは、ゲーム機とバーチャルなメル友。だからこそ、携帯電話で必死に話しを続ける。アイデンティティの寄る辺(べ)を求めて。
◇そこでの自慢は、携帯アドレス帳における友人の数。真の友人なんて、数人もいればもうけもの式の発想は彼らにはない。◇ポイントは、質よりもあくまで<人数>。まさにそれこそが、自身の社会性のバロメータなのだから。◇しかし、メール発信後に即返事がなければ不安は極大化し、チャチャカと受信を確かめることとなる。
◇「週末の夕方。東京都内の広告会社で営業を担当する佐野裕美子さん(23)=仮名=は、仕事を終えると気の合う友人2、3人に携帯メールを送る。『いま何してる?』 送り終わると、すぐに返信確認。1分、2分、3分・・・何度も操作を繰り返す」。
◇「『私用の携帯メールの返信が気になる。地下鉄に乗れば一駅ごとに”センター問い合わせ”をしてしまう』(24歳の女性会社員)、『返信が来ないで5分過ぎると貧乏ゆすりが始まる』(20歳の大学生)-」。◇「小中学生は『15分以内に(メールを)返さなければ友達じゃない』などと言う(以上、★★【溶けゆく日本人】(1)快適の代償 待てない人々 数分間でイライラ ・MSN産経ニュース・2007.11.13)。
◇彼らに対し、「少しは社会へ目を向けたら」と注文をつけたところで、それは無理というより、何のことを言われているのか分からないというのが正直なところかもしれない。◇小さいころから、その子にとってはゲーム機が<社会>。◇家の近くの路地も、レストランも、商店街も川も、そんなものは視野にすら入らない生活を送ってきたのだから。
◇BRICsにも追い越されるといった知識人たちの常套句と危機感は、はたしてこの点に注目してのことだろうか。◇いや、とんでもない。彼らは、偏差値をもっと上げなければと言っているにすぎないのだから。◇しかし皮肉なことに、上述のようなレストラン・ゲームっ子にかぎって、偏差値はけっこう高いときている。さあ本質はどこに。
★★[IFSA]★★阿部道生
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