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2006年11月10日 (金)

調子のいい連中はいつでも調子がいい=「イラク戦争」をめぐる痛みなき転向

★★米中間選挙敗北 イラク 汚職 不人気
Chunichi Web Press(06.11.09)

◇アメリカ中間選挙でブッシュ・共和党が完敗。理由はいろいろあれど、イラク戦争問題が最大要因であったことは自明だろう。◇記事は的確にいう。「イラク駐留米軍の早期撤退を求める民主党に対し、ブッシュ政権と共和党は勝利の日まで撤退しない方針を堅持。政権は『イラクでの勝利で米本土へのテロ攻撃を防げる』と対抗したが、十月の米兵死傷者が過去最大規模に膨らむ中では説得力はない。大統領は選挙戦終盤になり、イラク政策で柔軟な対応姿勢を示してはみた。だが、これがかえって、過去の失敗を認めたかのような印象を与えてしまう。そして最後の『サプライズ』効果を期待したイラクのフセイン元大統領の死刑判決も結局逆転打にはならなかった」と。

◇人間というのは、特に日本人は、「現在がすべて」に陥りがち。だがやはり、常に原点への視座がなければ、物事の本質は見えてこない。◇日本の識者やマスコミは、いまや「イラク戦争失敗」の現実を前提としてすべての話をする。その怪しげな前提自体を不問に付したまま。◇「イラク戦争失敗=悪=それを批判する米国民は当然の行為をしている」。とんでもない。米国に言寄せ、そう思う人間の主体がすっぽりと抜け落ちているではないか。

◇その主体とは何か。◇戦争を仕掛けた側のブッシュらの主体は別にして、(1)イラク侵攻を圧倒的に支持した米国民とマスメディア。(2)同様に、消極的賛成ながらも支持し続けた日本国民とマスメディア(3)敢然と支持した、政治的ニュートラルを装う御用学者・御用評論家・テレビコメンテーター(4)断固支持し続けた、コイズミをはじめとする日本政府。◇要は、イラク戦争(というよりイラク侵略戦争)にノンと言い切った側の方が、圧倒的に少なかったということだ。

◇その過去の主体的現実には見事なまでに口を拭い、「イラク戦争失敗=悪」をアプリオリなものとし、今度は一転、ブッシュを批判、もしくは冷笑する。それを現実主義だと勘違いする。◇では彼らはなぜ、「イラク戦争失敗=悪」と見なすのか。答えは簡単。米兵に大量の死者が出ているにもかかわらず、先が見えないからだ。逆に言えば、米国側にそれほどの犠牲がなく、そこそこの期間で撤兵できれば大成功。誰も文句は言わなかっただろう。◇つまり彼らマジョリティーにとっては、「イラク戦争=悪」ではなく、「イラク戦争失敗=悪」なのであった。

★★イラク米兵死者 再び激増 武装勢力 米中間選にらみ攻勢か
Chunichi Web Press(06.10.20)

★★バグダッドの死者、戦争終了後最悪 5月1400人に
asahi.com(06.06.07)

◇Chunichi Web Pressでは、「開戦以来の(米兵-筆者註)総死者数は二千七百八十四人」。一方、asahi.comでは、「米英の非政府組織『イラク・ボディーカウント』は、イラク戦争とそれ以後のイラク全土での市民の犠牲者総数を、報道などから最少約3万8000人、最大約4万3000人と推計している」。◇「イラク戦争失敗=悪」だって?。冗談じゃない。これを単なる4万という数字ではなく、日本での日常生活に当てはめてみるべきだ。イチャモンをつけられて突然日本が攻め入られ、約3年半で4万人もの犠牲者を自国内で出している。しかも国土は破壊され、国民の心は分断されまくって。◇それなのに、米兵の犠牲者2784人にのみ目を向け、だからイラク戦争は止めるべきだと。◇しつこく言えば、出発点はあくまでも、「この戦争をやってはならなかった」なのだ。

◇それでも米国民はまだいい方。理由が即物的であれ、必ず揺り戻しがきて今回の選挙のような結果が出る。よれよれだった米国マスメディアも、イラク開戦決定時の情報操作を執拗に暴き始める。◇しかし日本では、あのコイズミはいまだ人気者だし、お追従だけできた安倍晋三に深刻な反省など微塵もない。しかもそれを、誰も弾劾しないで泳がせている。

★★日本政府の判断間違いない 安倍氏、米上院報告書で
KYODO NEWS(06.09.11)

◇たった2カ月前のこと、官房長官の安倍晋三は語った。◇「『イラクが大量破壊兵器を所有していると考える合理的な理由があり、日米同盟の関係からも(米国の対イラク)戦争を支持した日本政府の判断は当時として間違いがなかった』と強調」。「『米も武力行使自体は正しかったと判断していると思う』と指摘」。◇こういう人間を首相にし、しかも読売新聞の全国世論調査では70.0%もの人間が安倍内閣を支持している。同時に、この手の人間の多くが、今回の米中間選挙結果を見て、フムフムと言っている。彼らのアタマの中では、この両回路が矛盾なくしっかりと繋がっているのである。

◇改選当時の日本の雰囲気を思い出してみるべきだろう。◇国連なんて無力の象徴、あんなのは吹っ飛ばし、いきなりイラクへ突っ込んで何が悪い、といった風潮が日本を覆っていた。◇いつも進歩的・良心的が売り物の知人なども、私の国連論を児戯に類する理想主義といってせせら笑った。

◇テレビにあってはかつて、デーブ・スペクターが右派体質丸出しにイケイケ路線を支持し、日本テレビの午後のワイドショー「ザ・ワイド」では、反動を衣で包んだマッチョの草野仁が、さすが秀才だけあって周到に、「考えてみますと・・・」のエセ謙虚さを前面に出しながら、「一般的には戦争は悪だ。だが今回だけは」といった論調で、イラク戦争の正統さを視聴者に説教しまくっていた。

◇大半を占めた御用評論家のひとりがテレビで、「大量破壊兵器が出てこなければ、われわれも困ってしまいますよ」と漏らしたことがある。しかし、テレビは活字とは違って逃げ切りOK。◇絶対悪人間の追及のためには何度でも同じVTRを流す割に、自分サイドの記録は公開しない。だからこそ、テレビ政治の無責任が成立し得るのである。

◇彼らはシレッとして、中間選挙の結果を当然と論評し、北鮮の核問題では一転、(イラク開戦時を忘れたかのように)国連・国連と騒いでいる。◇どこの国でも「現在がすべて」。そうはいっても、いくら低次元の争いとはいえ、米国の方が日本よりまだ少しはましなのであった。(敬称略)

★★[IFSA]★★阿部道生

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投稿: toshiki | 2006年11月10日 (金) 22時37分

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