◇日本の大マスコミというのはふやけきっているから、あれだけ能書きを言いながらいざ菅直人首相退陣[→註]となれば、あとは「次期首相だれ?」の一辺倒。◇<政局>傾斜はけしからんなど絶対善をまき散らしておきながら、結局は<人事予想>が最大の関心事では、お粗末を通り越している。
[註]=菅退陣は決定か
◇そうは言っても希代のペテン師のこと、菅の退陣表明はまだまだ信じられないというか、要警戒との意見もある。たとえばこんな具合に。
◇「(前略):私は与野党の国会議員には、菅首相が本当に辞めるまで油断をしてはならないと忠告しておきたいと思います」(★★【高橋昌之のとっておき】小沢一郎が菅降ろしでハラをくくった・msn産経ニュース・2011.08.14)。◇三大新聞にはない冷静かつシニカルな視点である。
◇そうしたなか、地味&超不人気で首相候補ノミネートすらとてもとてもと軽視してきた野田佳彦財務相を、テレビを中心とするマスコミがあたかも寵児のようにもてはやし始めたからおもしろい。◇それは、以下の野田発言がきっかけだった。
◇IFSAもその番組を見たが、当の野田はテレビ東京でこんな風に語った。◇日経を退社後、急に良識派文化人ぶり始めたパワーレス・田勢康弘を相手に。
★★「救国内閣つくるべきだ」
野田氏、自公との連立方針明言
msn産経ニュース・11.08.13
◇野田は「『野党と連立し、救国内閣をつくるべきだ』との考えを明言した」。◇相手はもちろん自民と公明。◇「『衆参がねじれている状況では、連立でないと政治は前進しない』」と強調」。
◇「野田氏は政権公約(マニフェスト)の見直しについても『昔言ったことにしがみついていたら与野党協議などできるわけがない』と述べ(後略):」。◇「また『社会保障を支える安定財源は避けて通れない。政府、与党の従来方針に向き合って実現していく』と述べ、増税路線を堅持する考えも示した」。
◇野田にすれば、オレは菅直人などとはちがい現実直視型政治家だと喧伝(けんでん)したいのだろうが、後述するようにこれほどピントのはずれた無責任な考えもない。◇それにとどまらず、彼は以下のようなぶざまなことまで言っている
◇「野田氏は東日本大震災の復興や財政再建などを挙げて『救国内閣をつくるべきだ。野党に頭を下げて正面玄関からお願いしていくことから始めなくてはいけない』と強調した」(★★野田氏、自公と大連立めざす 「救国内閣つくるべき」 民主代表選、出馬に意欲・日本経済新聞 電子版・11.08.13)。
◇以上、材料がだいたい出そろったところで、まずは<表層的な部分>から指摘してみよう。
◇いったい何なのだ、この古めかしい戦前チックな「救国内閣」てのは。ご丁寧に、それを「挙国一致内閣」などと言い換える輩(やから)もいるけれど。◇自民党の超右寄りじいさんが唱えるのならまだしも、これって55年体制をそれこそ55年ぶりに倒した民主党、その幹部の発言だからあきれる。
◇なさけないというか、だから松下政経塾出身者はとの慨嘆がもれるわけだ。
◇そして「救国」の次は「マニフェスト」。
◇2年前の総選挙当時、大ブームのマニフェスト-強調ほどいかさまはないとさんざんけなしてきたIFSAだし、三重県知事の職から逃げだし早大教授へと出世したマニフェスト一発芸人の北川某(=あの人はいま?!)を嘲笑してきたIFSAにあって、一連の主張はいまだ不変だが、それにしても昨今の「マニフェストなんてどうでもいい!」式大マスコミ論調(=得意の、意識せざる大転向)を、そうそう見過ごすわけにはいかない。
◇モロ松下政経塾傘下で弁証法的思考などからきし持ち合わせない野田佳彦、日本マスコミの属性たるこの手のオポチュニズムにさっさと悪乗りし、「昔言ったことにしがみついていたら与野党協議などできるわけがない」とのたまうにいたっては、彼の能力からしてその程度と合点がいくとはいえ、口あんぐりというほかはない。
◇だからこそ、前原誠司一派よ、さっさと脱党して自民党へ合流しろ!とIFSAは何年も前より、それこそ「正面玄関」から主張してきたわけだ。
◇なお、毎日新聞論説委員による<マニフェストーなんぞにこだわるな>を、その時ばったりマスコミ・便宜主義マスコミの好例として引用しておく。
◇「英国は『憲法なんて封筒の裏に書けば十分』(キャラハン元首相)と言われるほど融通むげな現実主義の国だ。メンツにこだわらず、国民の必要に合わせて政策を変えていく、という柔軟な統治の技術にはおおいに学ぶところがある」(★★反射鏡:政治家は詩人であるか、散文家であるか=論説委員・小松浩・毎日jp.・11.08.14)。
◇選挙当時、まさに金科玉条のように連日マニフェストー・キャンペーンを張ってきたのはどこの誰だったっけ?◇やりまくって、状況が変わればケロッと忘れる。◇大げさではなく、8月15日を境とした当時のマスコミとどこがちがうのだろうか。本質は同じじゃないか。
◇さてそれはともかく、野田のたわ言のラストは、財務省のパシリとしての増税(=消費税アップが中心)。◇いや、これこそが本命だ。
◇大マスコミが急に<無印・野田>へシフトし始めた理由、それがまさに上記3点のピンズレ主張(=大連合の救国内閣+民主党マニフェストぶん投げ+消費税を中心とするデフレ下の増税)にあることをまず指摘しておかなければならない。
◇いや、もっと詳しく言えば、マニフェストをお蔵入りさせて大連合を確立し、最終目的である消費税増税へひた走る。◇どうやらこうすれば、泣く子も黙る?財務官僚からたんまりとご褒美をいただける算段らしい。
◇まあ野田大連合構想における上記のごとき表層3点セットはこのくらいにし、次は<より本質的な政治論>へ入るとしよう。
◇世風にたんまり寄り添おうとするあまり、テレビ局が終始ばかにしてみせる<政局>。◇ところが<政局>こそ政治の本質!とあえて言ったりすれば、IFSAは笑いものとなるだろうか。
◇昨年(2010年)6月に誕生した菅直人内閣は、最初から「奇兵隊内閣」など間抜けな命名をしつつ、小沢一郎を陰湿な形で排除。◇そのうえで9月の参院選へとのぞんだ。◇しかしここで早速にというか、菅のこすっからい性格が全開モードとなり、初っぱなから歴史的大敗を喫する。
◇菅の勘違いは以下のような理由によった。
◇①自身の哲学のなさを棚に上げつつ、何とか独自色と男気を出したいものと菅は切望。◇②そこへ谷垣自民党がマニフェストーで「当面の消費税率を10%とする」と打ち出してくれたものだからたまらない。菅のセコさはたちまち、ひとのふんどしで相撲がとれると直感することに。
◇③自民党が10%と言っているなら、民主党が10%を打ち出したところでツーペイ。少なくとも民主に何ら不利益は生じない。◇④ならば消費税アップを堂々と打ち出そう。直前までいた財務省の官僚どもも味方につけられるし、歴代首相がひるんでいた最大の課題も成就できる。まさに千載一遇、「歴史に残る首相」が見えてきたではないか。
◇⑤しかしこうした底の浅さは直ちに見破られ、参院選は大敗北。◇⑥野田や岡田克也、前原誠司らがいま声を大にして言っているねじれ国会って、何のことはない、菅以下この連中の大失態によってもたらされたものにほかならない。◇いわば自業自得。小沢一郎ならけっしてやることのなかった、素人同然の大ヘマなのだった。
◇しかしこの敗北に、首相(党代表)も幹事長以下も誰も責任を取らない。◇それどころか、全員野球は口ばかりで絶対善の<政治とカネ>を都合よく持ち出し、小沢一郎を徹底的に干し上げる作戦へ出た。◇絶対善を武器に内閣支持率を上げよう(+)政敵を消そうとのさもしい戦術がここに始まる。
◇敵を野党にではなく与党内に求める→そして民主党を分断させ弱体化させる→結果、党内での相対的地位を強化する。◇こういうことを公然としておきながら、ねじれでどうにもならないだって?よく言うよ!とはこのことだろう。
◇菅-岡田体制は、いったいいつ選挙に勝つ努力をしたというのか。◇小沢一郎がどぶ板選挙でこつこつと築いてきた財産(政権交代)を乗っ取り、一夜にして政権交代を食いつぶす。◇与党の座をプレゼントしてくれた小沢一郎に恩義を感ずるどころか、主役を座敷牢へぶちこんだのだ。
◇何たる低開発国的発想よ。◇しかもこれを、小沢にびびる大マスコミが支えまくったのだ。
◇ただ悲しいかな、党スケールでの選挙戦、そのイロハを知らないというか勝ちにいく根性すらないアタマデッカチ・菅&岡田体制は、国政選挙も地方選挙も見事なまでの連戦連敗。党の基盤をその都度切り崩していった。◇それでも反省のかけらすらなく、彼らはその地位に座り続けたのだから驚く。
◇そして<ねじれていてどうにもならない>から大連立を導くという愚へ。◇この1年間、もし小沢がトップなら、自民党を切り崩し、公明党を味方につけ、弱小政党を集めてはそこそこの勢力にし・・・・・・・と多くの手を打ってきたに相違ない。
◇それに反し、菅-岡田や、仙谷・前原・枝野・玄葉・安住らは選挙戦の勝利のためいったいこの1年間、何をしてきたというのか。◇何もできないこと、選挙に対する能力ゼロなことを、あたかもクリーンかのようにすり替え、素人政治家として政治素人の国民を欺いてきた。
◇しかし選挙に勝たずに政党はどうしようというのか。選挙はまちがいなく政党成立のための必要条件なのに。◇それを小ばかにし、収穫物だけを簒奪してあぐらをかき、挙げ句の果ては「『衆参がねじれている状況では、連立でないと政治は前進しない』」と白昼堂々抜かして恥じない。
◇コトバの本来のイミでの<政局>から逃げる政治家など、しょせんは形容矛盾にすぎない。◇そう、だからこそ、菅・岡田・仙谷・前原以下の夜郎自大的政治ど素人どもに民主党を乗っ取らせてはならないのだ。
◇<素人=ピュア>といったお子ちゃま受けする政治から脱却しないかぎり、日本に成熟した政治など到来するはずもないのである。
◇前原誠司を次期首相として温存するだって?冗談よしこさんでしょ。◇自民党という故郷へ戻り、「永田町の郷ひろみ」でもやっていてもらうのがふさわしいのですが。(敬称略)
★★[IFSA・阿部社会学ラボ]★★阿部道生★
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